【図解】皇室への誹謗中傷対策とは?不敬罪・刑法232条をやさしく解説

昨夜のnews23で、皇室へのひどい中傷を防ぐために法律を作る話が出ていたね。
でも「不敬罪が復活するのか」と聞くと、急に怖くなってしまうよ。

要約図解|いま分かっている3点

結論|法案が決まった話ではなく、対策の形を考え始めた段階
9月23日夜のnews23は、ネット上などで相次ぐ皇室への誹謗中傷を取り上げ、議員らを中心に法整備を含めた対策の検討が始まったと報じました。[1]
番組では、行き過ぎれば戦前の不敬罪につながりかねない、という懸念も紹介されています。
背景にあるのは、「皇室の方々が自分で反論しにくい」という事情です。
たとえば自民党の保守系議員グループ「日本の尊厳と国益を護る会」は9月8日、皇室保護プロジェクトチームの初会合を開きました。
青山繁晴氏の本人発信によると、誹謗中傷の実態について報告を聞き、宮内庁、総務省、法務省、警察庁も参加したとされています。[2]
ここで大事なのは、検討、政策、法案を一緒にしないことです。
| 段階 | 現在確認できること | まだ決まっていないこと |
|---|---|---|
| 議員グループの検討 | 皇室保護PTが始まり、実態や現行制度を調べている。[2] | 改正条文、対象、罰則 |
| 政党の政策 | 日本保守党は、皇族への名誉毀損・侮辱を親告罪の例外にする刑法改正を重点政策に掲げる。[3] | 国会へ出す法案本文、提出時期 |
| 提出済みの法律案 | このテーマの議案番号・条文を伴う提出済み法案は、本調査では確認できない。[4] | 国会での審議・採決 |

ニュースで聞くと、もう法律ができるように感じるけれど、まだ設計図を考え始めたところなんだね。

はい。
だからこそ、今のうちに「現行法はどうなっているか」と「不敬罪は何だったか」を分けておくと、これからの報道も追いやすくなります。
現行法ではどう守る?|刑法232条の「代わって告訴する」仕組み
現在の刑法には、名誉毀損罪と侮辱罪があります。
名誉毀損は、公然と具体的な事実を示して人の名誉を傷つける行為、侮辱は、具体的な事実を示さなくても公然と人を侮辱する行為を定めたものです。[5]
この二つを含む「名誉に対する罪」は、原則として告訴がなければ公訴を提起できない親告罪です。
そこで刑法232条2項は、天皇、皇后、太皇太后、皇太后、皇嗣が被害者の場合、内閣総理大臣が本人に代わって告訴できる、と定めています。[5][6]
図解|いまの刑法232条を3点で整理

| よくある言い方 | 正確には |
|---|---|
| 「首相が皇室に代わって訴える」 | 刑事手続の告訴を代わって行う特則です。民事裁判を首相が代理する仕組みではありません。[5] |
| 「全ての皇族が対象」 | 条文に書かれた対象は、天皇、皇后、太皇太后、皇太后、皇嗣です。皇族全体を指す規定ではありません。[5][6] |
| 「親告罪なら何もできない」 | 削除依頼、発信者情報開示など別の制度もあり、個別の投稿が犯罪に当たるかも事情ごとに判断されます。 |
番組で紹介された青山氏の案は、本人の選択肢の一つとして、刑法232条の扱いを変える考え方でした。[1]
一方、日本保守党の政策は、皇族への名誉毀損・侮辱を親告罪の例外とする改正です。[3]
似て見えても、前者は条文案が公表されておらず、後者は政党の政策です。
同じ完成図として扱わない方が正確です。

この「告訴」と「起訴」は、言葉が似ていて混乱しやすいですね。
告訴は被害を受けた側からの刑事手続の申し出、起訴は検察が裁判にかける手続です。
今の議論は、誰が告訴できるのか、そもそも告訴を必要とするのか、という入口の話なんです。
不敬罪とは?|戦前にあった「皇室に対する罪」と、今の議論の違い
不敬罪は、戦前の旧刑法にあった「皇室ニ対スル罪」の中の規定を指して使われることが多い言葉です。
当時の刑法には、天皇らへの不敬な行為を処罰する規定がありました。[7]
この章と旧刑法73条から76条は、戦後の1947年の刑法改正で削除されました。
衆議院の制定法律情報には、「第一章 皇室ニ対スル罪」を「第一章 削除」と改め、73条から76条を削除したことが残っています。[8]
国立国会図書館も、新憲法に伴う改正で、不敬罪・大逆罪の廃止をめぐって日本政府とGHQのやりとりがあったと解説しています。[9]
ここで、過去と現在を短絡させないことが大切です。
現行刑法に「不敬罪」という罪名はありません。[5]
また、いま報じられているのは、既存の名誉毀損・侮辱の手続をどう変えるかを含む検討であり、旧不敬罪と同じ名前・同じ条文の復活が決まったわけでもありません。
ただし、刑法の専門家からは慎重な意見も出ています。
news23では、皇族個人の名誉ではなく、抽象的な「皇室の尊厳」を守るための広い刑罰になれば、戦前の不敬罪に近づきかねないという懸念が紹介されました。[1]
これは「中傷を放っておくべきだ」という話ではなく、守る対象と処罰の範囲を広げすぎないための問いかけです。
これから何が決まれば、記事を更新できる?|見るべき3つの点
いまの段階では、強い言葉だけを先取りしても全体像は見えません。
もし具体的な法案が出るなら、次の3点が確認どころになります。
- 誰を対象にするのか:現行の232条の対象を広げるのか、別の仕組みにするのか。
- 何を変えるのか:首相が代わって告訴できる範囲を広げるのか、親告罪の例外をつくるのか、新しい規定を置くのか。
- どこまでを処罰の対象にするのか:人格を傷つける違法な権利侵害と、政策や制度への批判・論評を、どう区別するのか。

皇室を守るか、表現の自由を守るかの二択だと思っていたよ。

実際には、その間に設計の余地がたくさんあります。
被害を受けた人を守れる仕組みは必要です。
でも、対象や手続が曖昧なまま刑罰だけを広げると、自由な論評まで縮む心配もあります。
憲法21条が表現の自由を保障しているからこそ、制度の中身が見えてから丁寧に比べることが大切になります。[10]
振り返り図解|今回のニュースを3点で確認

まとめ|「不敬罪復活」と急がず、いまは制度の違いをつかもう
今回の皇室への誹謗中傷対策をめぐる動きは、皇室保護PTでの検討、政党の政策、報道で紹介された案が重なって見えやすいテーマです。
ただ、2026年9月24日時点では、具体的な条文と議案番号を伴う提出済み法案は確認できません。[1][4]
- 現行刑法には名誉毀損・侮辱の規定があり、限られた対象について首相が代わって告訴できる特則があります。[5][6]
- 不敬罪を含む「皇室に対する罪」は、1947年の刑法改正で削除され、現行刑法に不敬罪はありません。[8][9]
- 今後、法案が公表されたら、対象、手続、処罰の範囲を確認することで、「守るための制度」が何を変えるのかを具体的に比べられます。
この記事は、法案の本文や国会での審議が公式に確認できた時点で、内容を差し替えて更新します。
いまはまず、ニュースの言葉に振り回されず、検討段階と現行法の違いをつかんでおきましょう。
あわせて読みたい
参考文献
[1] TBS NEWS DIG/news23「皇室への誹謗中傷どう防ぐ? 不敬罪への懸念も」
[3] 日本保守党「重点政策項目」
[5] e-Gov法令検索「刑法」
[7] アジア歴史資料センター「旧刑法」
[8] 衆議院「刑法の一部を改正する法律」(昭和22年法律第124号)
[10] e-Gov法令検索「日本国憲法」




コメント