2021年4月15日 参議院 法務委員会 参考人質疑
質問内容
・沖縄の所有者不明土地問題について
議事録
第204回国会 参議院 法務委員会 第8号 令和3年4月15日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
今日は、貴重な御意見いろいろお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
私の方は沖縄選出の議員ですから、所有者不明土地というともう沖縄戦の関連があって、激烈な戦火の中で、命ももちろんそうですけれども、財産、そしてやはり記録ですね、これがもう失われているということで、もうとにかく所有者不明土地というのが多いと、しかもばらばらにあるということを思い起こすわけですけれども。
まず、やはり全体的な問題として、沖縄の場合は、今全国でこの法案が問題にしている所有者不明土地というものに対して、吉原参考人に、この辺、今回法改正して、沖縄の場合と全国とは随分違うのかもしれませんが、所有者不明土地問題の沖縄の場合にはこれどういうふうに貢献されるのかなと、関係するかなと、促進とかですね、そこをちょっとお伺いしたいんですが。
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
今回の法改正が沖縄の問題に対して貢献する部分と、それから沖縄の経験が日本全体に役に立つ部分と、両方あると思っています。
まず、今回の法改正が沖縄に役に立つ部分としましては、例えば、所有者不明土地管理制度が新しくできましたので、やはり沖縄の不明地で解消が困難な部分については、こうした新しい管理人制度を使って、利用に向けて促進できる道が開かれたというふうに考えております。
それから、沖縄の経験が生かせる部分としましては、沖縄では不明地について県や市町村を管理者と立てて、登記簿にも、私の記憶違いでなければ登記簿にもその旨記載していたのではないかと思います、管理者として。その過程で県や市町村がどのように、管理者としてどういう業務を担っていて、どのぐらい負担になっていたのかということが今後管理制度というものをつくっていく上での大きな参考になるのではないかなと思っております。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
特殊、沖縄的なものという部分と、全国に適用できるような、あるいは準用できるような、そういったことがあるということでしたけれども。先ほど、地籍調査をされた御著書もあるということで豊田議員の方から、委員の方から紹介ありましたけれども。
やはり沖縄の地籍を調査していく、あるいは、國吉参考人にお聞きしたいんですけれども、くいを打って悔いをなくすというような最初に衝撃的なお話がありましたけれども、沖縄の基地の場合に、なかなか地籍が不明確であるということで、一九七七年だったと思うんですけれども、地籍明確化法ができて、もうくいを、ある程度話を聞いたりいろいろしながら、このぐらいの面積だったということで直線的に結構やったところもあるように私は聞いていますけれども。
全国でも、そういう不明土地の中で、周りが大丈夫だと、周りが明確になっているという場合に、残ったところが明確なんだというような方式があると思うんですけれども。
その辺ちょっと、沖縄のことに限らず、こういったくいを打って調べるということに対して非常に御苦労されているというのが先ほどありましたけれども、こういった形の御苦労を含めてちょっと、問題として何かありますでしょうか、今後も含めて。
○参考人(國吉正和君) 実は、土地家屋調査士といいましょうか、不動産登記法で公示されております一筆一筆の成り立ちの問題なんだと思うんですけれども、そもそも、元々は明治の地租改正の頃には一筆一筆を測りながらそれをまとめて地図を作っていくという方式を恐らく取ったんだと思うんですね。今現在の測量ですとか調査、調査、測量の観点からいいますと、大きな地域を測りながら周りから攻めていくというんでしょうか、そういうような形式でやっぱり地図などを作っているということになります。
ですから、そうすると、そもそもその地租改正時代若しくは昔の一筆一筆の土地の境界が成り立ったときの測量のやり方ですとかやっぱり精度によって、今どういうふうに復元するかというのはそれぞれの地域によってやっぱり違ってくるというふうに思います。ですから、今であれば、高度な機械を使って、それこそ何ミリですみたいな形で測量成果が出てきますけれども、昔の間尺ですとか、何尺何寸何分とかですね、そういったようなときに作った図面との成り立ちについてはやっぱりそれぞれの地域によって違ってくると思っています。
ですから、それぞれの地域の当時、昔の測量をやった方法ですとか成果の正確性だとか、そういったものも含めて考えながら要は境界を確認していくという作業がどうしても必要になってくると思います。ですので、地域のそういったもの自体をやっぱりそれぞれが確認をしながらやっていくということが重要なんだと思っております。
○高良鉄美君 本当に御苦労が大変だと思うんですけれども。
今、先ほど吉原参考人の方からもありましたけれども、沖縄の場合には県とか市町村の方が管理をしながらということでしたけれども。スタートが何か米軍の指導で、一九四六年からもう五一年の間にある程度やっていくというのがあって、残ったのがかなりあったわけですけれども、そこも継続して当時の琉球政府と市町村がやったということなので、ある程度はあっても、結構虫食いで現在も残っているという状況ですので、またこれからこれを、この法案を活用しながらやる場合もいろんな御苦労があるかと思います。
続きまして、今川参考人にお聞きしたいと思いますけれども、先ほど山添委員の方からもお話があったものですけれども、改正案の民法の九百四条の三ということで、先ほどの十年というのがえらく強調して出ているような感じがしまして、その十年をたつともう何かこれがぎりぎりかなとか、そうなるともう法定相続分の割合しかもらえないんじゃないかとか、そういうのをどうしても考えてしまうし、それから、地域的なものもあるかもしれませんが、のんびりしている方がいらっしゃると十年というのはあっという間みたいな形で、ああ、過ぎてしまったという、救済も必要かと思いますけれども。
先ほどの確認ですと、相続の開始から十年というのは一つの区切りとして取っておくということでしたけれども。分割協議というのが、法定相続分ではなくて分割協議でもうどんどん決めていくのを促進するというのがありましたけれども。その分割協議、遺産分割協議の、何というんですか、促進をして、それをきちんと、十年超えてもできますよということについてやっぱり周知をするというのはとても大切と思うんですけれども。
そこら辺の議論ですね、法制審の方で御参加されていたということで、そこを踏まえて、ちょっとこの辺の話、もう少し聞かせていただけますでしょうか。
○参考人(今川嘉典君) 今川です。
先生おっしゃったとおり、法制審議会の委員として私出ておりましたので、そのときの議論をお伝えをいたします。
我々にも、今先生おっしゃったように、まず、十年を経過したらもう遺産分割できない、分割協議できないんですか、もう法定相続分で自動的に分割されちゃうんですよねと言われる人もいます。そしてまた、十年経過すると、遺産分割協議はできるにしても、法定相続分以外で分割協議をすることはままならないというふうにもう強制されるんですかという質問がよくあります。
私もその点、法制審議会の部会で質問もしましたし、部会資料の五十一番にも書いてありますが、十年の期間経過後に、相続人間で具体的相続分による分割をするとの合意がされた場合、つまり法定相続分とは違うような協議をした場合でも、全員の合意でやる場合はもちろん分割協議でもできるし、調停や審判の場でもそれは認められるとされておりますので、相続人全員の合意があれば法定相続分によらない遺産分割を調えることが可能であるということが確認されております。
この点については、国民の皆様に混乱がないようにしっかりと政府の方も周知をしていただきたいですし、我々も依頼者にしっかりと説明をしていきたいなというふうに思っております。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
寄与分とか特別受益のも、もう全部考慮が入ってくると、この議論の際に、ということで、今そういうのが入っていたと思いますので。
もう一点、今川参考人に、この所有者不明土地の管理人の制度についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども。
この管理人ですね、所有者不明土地の管理人は、あくまでも管理をするということが中心ですので、基本的にはもうそれ以外の形で債務の弁済ということはできないと、することはできないというふうにされていますけれども、だとすると、この管理不動産を売却する必要性が生じたと仮になって、その不動産に抵当権等がある場合に、この抵当権者に対する弁済ができないのかということなんですけれども、これによって阻まれるんだから結局売却も進まなくなるんじゃないかというふうにも考えられるんですけれども、これ実務的に、この辺、何か、どういうふうに解決というか、方法があればということですけれども。
○参考人(今川嘉典君) 先生御指摘のとおり、私、司法書士ですので、実務の現場にいまして、新しい管理人ですね、所有者不明土地管理人が裁判所の許可を得て売却をする場合に、弁済はできないんだということでありますと、抵当権の抹消をすることができない。そうすると、抵当権付きの不動産を購入するような人がいるだろうかというのがすぐ司法書士として気になりまして、理論上はそうなってしまうという議論があったものですから、それじゃ売却はできませんねという話になったんですが、結局、必要な場合には裁判所の方で許可を得た上で弁済をすることは可能であるというような整理もされましたので、司法書士としてほっとしまして、今安心しておるところです。
ですから、実務の運用においては裁判所が適時判断をしていただいて、抵当権の抹消もした上で売却をしていくということが可能になる、そのような運用になるというふうに今、信じております。
以上でございます。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
やはり、こういう実務の場で、非常に気になる点とか、今回の管理人制度ですね、そこの部分からいうと、本当に今後も頑張っていただく司法書士の先生方、それから弁護士ももちろんそうでしょうけれども、土地家屋調査士の方々、そういったところできちんと、特に司法書士の先生方、大変だと思うんですけれども、またいろいろ今後も取り組んでいただきたいと思います。
最後に、阿部参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど本法案の、いろんなものが入っていますけれども、基本的には、慎重にしながらも、基本は賛成という形で議論は今あって、しかし問題点があるということで、プライバシーの問題のほかにもありましたけれども、私、ちょっとこのプライバシーの問題というのが非常に気になりまして、国が、特に国庫の問題もありますので、国がこういう制度をつくっていくといったときにやっぱり配慮しなきゃならないものというのは、このプライバシーの問題というのは憲法が国に対して要求しているものだと思うんですね、配慮するというのは。
この辺り、やっぱり御指摘によって、私、非常に、ああ、そうだなと思いまして、その辺、もう少し何か関連したことが、あるいはこの問題についてちょっと、もっと注意喚起のような主張がありましたらお願いしたいと思います。
○参考人(阿部健太郎君) 御質問ありがとうございます。
私たちの問題意識については先ほどから述べさせていただいているとおりでありますが、考えなければいけないのは、そのプライバシーや個人情報に対する意識というのが、この数年、この十年の中で非常に変容しているということがまず一点挙げられますので、今までやっていた制度で問題がなかったからこれからもそれでよいのだというふうな議論ではなくて、そういった感情や考え方が非常に変容しているというところを考えなければいけないということが一点。
それから、もう一点は、やはりITやインターネットを使った技術の革新が目覚ましいということで、以前であれば、法務局に行って登記簿を取らない限りは他人の住所、氏名であっても閲覧したりすることはできなかったわけですが、今はインターネットでパソコン、家の、前のパソコンに、いれば、全国どこの情報でも登録さえすれば取れるという形で、かなり膨大に取ることもできてしまうというようなことの技術の進歩も一つ影響しているんじゃないかなというふうに思っているところです。
こちら、少し話が違うところではありますが、一昨年ですかね、破産をした方や民事再生を申し立てた方の官報に掲載された情報をインターネット上の地図に表示するような問題が起きました。これも、官報という公に出ている情報を落とし込んだので問題がないというのが一つの考え方。まあ結果的には閉鎖という形にはなっておりますが。
これも、登記も同じように、今、登記という公開している情報を大量に集めてビッグデータ化しているような企業も出始めておりますので、やはりそういった民間利用という意味においてはよいのかもしれませんが、ある種、公示している目的とは違った形での利用につながっている可能性も非常にありますので、やはりそういった技術の革新ということに応じた対応をしていく必要があるというふうに考えております。
以上です。
○高良鉄美君 時間が来ましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。