国会質疑 Interpellation

2021年4月20日 参議院 法務委員会 所有者不明土地の解消関連法案

質問内容

・沖縄の所有者不明土地問題について

議事録

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第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 本日は、十三日の法務委員会でできなかった質問や、参考人からの答弁を確認させるような形で行いたいと思います。
 まず、所有者不明土地管理制度についてお伺いします。
 沖縄にはさきの大戦で土地関係の記録が焼失するなどして多くの所有者不明土地がありますが、そのような土地も所有者不明土地管理制度の対象になるのか、そういうことを伺いたいんですけれども。これ、やはり沖縄の場合に、単に相続の問題とかそういったことではなくて、それ以上に記録がなくなっているという状態がかなり違うと思うんですが、一応そういったことはおいておいても、こういう土地、沖縄の所有者不明土地に関してこの管理制度の対象になるかどうか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 沖縄県におきましては、さきの大戦におけるいわゆる沖縄戦によって公図、公簿等が焼失したため、戦後、所有権の認定作業や地籍調査が実施されましたが、これらの作業等の際に所有者を確認できなかった土地は沖縄県又はその市町村が管理することとされているものと承知しております。
 今般の所有者不明土地管理制度は、所有者が不特定又は所在不明の場合において、必要があるときにその利用が認められるものでございます。御指摘のような土地につきましては、法律の規定に基づき沖縄県又はその市町村が管理しているところでございますが、所有者が不特定又は所在不明なものでありますので、最終的には個別の事案における裁判所の判断に委ねられるものの、それとは別に、裁判所が選任する管理人による管理の必要性が認められる場合には所有者不明土地管理命令が発令されるケースがあり得るものと考えております。
○高良鉄美君 この新しい制度を、この管理制度を利用するにはその利害関係人が裁判所に請求をする必要があるということで、今そういったことも触れましたけれども、裁判所に請求するには、現行の場合には五十万から百万ぐらいの予納金が必要であるとのことでした。では、この新しい土地管理制度になればどれぐらい必要になるのかと。
 先ほど、個別に応じてとか内容をチェックしてということで、かなり個別事情で違ってくるというお話がありました。ただ、幅として、新しい制度とこれまでの制度とかなり金額が違うのか、その辺必要になるのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 所有者不明土地管理制度を利用して適切に土地の管理を行うためには、管理人による管理に要する費用や管理人の報酬に見合う金銭をあらかじめ確保しておくことが必要となりますが、管理人による管理の対象となる財産は基本的には土地のみであり、管理の対象となる財産からこれらの費用等を支出することは困難でございます。そのため、実際上、現行法上の他の財産管理制度と同様に、所有者不明土地管理命令の申立てをする利害関係人からあらかじめ費用や報酬に見込まれる予納金を納めてもらう必要があることになります。
 この予納金の金額でございますが、個別の事案ごとに、予定されている職務の内容がどのようなものであるか、例えば、現状を維持するために単にその土地の管理をするだけであるのか、あるいは、それとも売却等の処分をすることまで予定しているのかといったその職務の困難性、あるいは確実な売却先が確保されていて、既にですね、その売却代金をそのまま管理費用に充てることが見込まれるのかといった諸般の事情を考慮して判断せざるを得ないと考えられるところでございます。
 もとより、今回の改正は、特定の土地のみを管理の対象とすることにより、効率的な管理を可能として不必要な負担が生じないようにするためのものではありますが、先ほど述べた理由から、その予納金の金額の見込みなどをお答えすることは困難でございます。
 いずれにいたしましても、法務省としては、新たな制度の趣旨等についての周知を図るなど制度の円滑な施行に努めるとともに、施行後の運用状況について注視してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 午前中の質疑でもありましたけれども、やはりこの金額、それなりにある程度の金額が必要だということになると、なかなか制度の利用というのがしにくい場面もあるんじゃないかなというふうに思っているんですが。この戦災を原因とする沖縄における所有者不明土地の管理というのは、先ほども答弁の中にありましたけれども、沖縄復帰特別措置法で沖縄県又は市町村が管理することになっています。
 三月二十四日の衆議院の法務委員会で、沖縄県選出の屋良朝博議員の質問に対して法務省は、所有者不明土地を管理する沖縄県又は市町村が利害関係人として請求をすることができるというふうに答弁されていますが、それでよいか、確認したいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 所有者不明土地管理命令の申立て権者につきましては、改正案では利害関係人と規定しておりますが、所有者不明土地管理制度は所有者又はその所在が判明しないために適切な管理が困難になっている土地を対象とするものでありまして、そのような土地の管理について利害関係を有する者が申立て権を有するものと考えられます。
 どのようなものがこれに当たるかについては個別の事案に応じて裁判所により判断されるものと考えられますが、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十二条に基づいて現に土地の管理を行っている地方公共団体が利害関係人として所有者不明土地管理命令を請求することができるかにつきましては、個別の事案ごとの判断によることとなりますが、衆議院の方でも答弁したとおり、事案によっては利害関係が認められるケースがあり得るというふうに考えています。
○高良鉄美君 この法案の趣旨に沿って所有者不明土地をなくしていくと、解消していくことを、まあ促進すると言ったら変ですけれども、そういった解消していく方向性をやっぱり見極めると、この辺、もっと活用しやすいというんですかね、あるいはその趣旨に沿ったような形に対応していくということがこれからも進められるんじゃないかなと思います。
 次に、相続登記の義務化における相続登記の費用についてお伺いします。
 沖縄には母子家庭、父子家庭も多く、経済的に困窮している家庭もあります。相続登記が義務化されると、このような家庭環境にある方は更に苦しい立場に追われるのではないかと思います。
 そこで、相続登記に係る費用の負担を軽減する方策は考えておられるか、法務省に伺います。家庭環境、生活環境、そういうのはあったと思いますけれども、その辺を確認も含めてお伺いします。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 一般に、相続登記の申請における費用的な負担といたしましては、所有権の移転の登記としての登録免許税を要するほか、司法書士に手続を依頼した場合にはその報酬負担も生ずるものでございます。
 今般の手続におきましては、相続登記の申請義務の実効性を確保するため、手続面での負担軽減策のほか、費用面での負担軽減を図る観点から、登録免許税につきましては、引き続き令和四年度税制改正に向けた取組を進めてまいる予定でございます。
 また、司法書士に手続を依頼した場合にはその報酬負担が発生いたしますが、今般の不動産登記法の見直しにおきましては、相続登記の申請義務の実効性を確保すべく、相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、新たに相続人申告登記を創設することとしております。
 具体的には、相続人申告登記の申出は特定の相続人が単独で行うことが可能でありますし、申出に当たっての添付書面につきましても簡略化が図られております。これを活用することによって、相続人の手続的な負担は大幅に軽減されることとなると考えております。
 以上を含めまして、相続人の手続負担の軽減につきましては実務上も引き続き取組を続けてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 是非、家庭環境も含めて、やはり負担というんでしょうかね、そういったものが多くなるとこの制度の趣旨としてどうなるのかなというのも気になるところですけれども。
 今、相続人申告登記のお話がありました。司法書士によらなくても相続人申告登記はできるということですけれども、これ、沖縄に関わらず高齢者の方々、それから病気や足腰の不自由な面があったりして自分で登記所に出向いて手続をすることが困難な方も少なくないと思います、現在、日本の中でですね。
 このような方でも相続人申告登記をすることが可能かということですが、午前中もデジタルの話もありました。そういうことで、やはり高齢者の方が、自分では出向かなくてもいろんな形でできるといっても、そのデジタル化には対応できるかどうかというのもありますので、その辺の辺り、相続人申告登記の負担の問題ですね、法務省にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 相続人申告登記は、所有権の登記名義人の相続人からの申出を受けた登記官が職権により登記をすることを想定した制度でございまして、申出の具体的な在り方や添付書面の詳細などについては、今後省令で定めることとなります。
 相続人申告登記制度は、通常の相続登記と異なりまして、登記申請によるのではなく申出による手続としているため、一般の登記の申請手続と比べればその手続はより簡素化したものとすることが想定されます。また、登記所に出向かなくとも、郵送等の手段による申出もできますし、オンラインでの申出を可能とすることなども検討課題となるものと考えております。
 議員御指摘の、高齢者や病気等によって自ら登記所に出向いて手続をすることが困難な方につきましては、所定の期間内に相続登記の申請をしなかった場合でも正当な理由があるとの評価がされることも十分にあり得るものと考えております。
 この点をおくといたしましても、登記所に出向くことなく相続人申告登記の申出をすることがより容易なものとなるよう工夫を重ねてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 この辺の配慮、あるいは今、判こなしまで考えているような事情も政界の方であるようですけれども、この辺りも含めて重要な問題だと思いますので、対応の方よろしくお願いしたいと思います。
 次に、参考人、先日十五日に参考人からの御発言があったことについて確認をします。
 山添議員が今回の法改正で十分なのかと、残された課題はあるかという質問をしました。吉原参考人は、残された課題として相続放棄の問題を挙げられました。相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、誰もそこの土地に対して管理人の申立てをしなかった場合は、そこは宙に浮いたままになってしまうというふうに述べられています。また、今回の法改正の議論で、一つ途中で落ちたのが時効取得であるとして、実質的に共有者の一人がずっとその家に住んでいたり、あるいは土地を管理している場合に時効取得を認められるかという論点も途中で落ちましたということですね。それは今後の課題として残っているのかというふうに思うというふうに述べられました。
 参考人がこう述べられている点について、法務省の見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 まず、相続放棄の点についてでございますが、法定相続人全員が相続放棄をした場合には、相続財産に属する土地を管理する者がいないことになります。現行法では、このような土地については、相続財産管理人を選任して相続財産の清算をした上で、最終的に残余財産としての土地が残った場合には国庫に帰属することとされておりますが、その選任を申立てをする者がいないケースもあり得るわけでございます。
 そこで、平成三十年に制定された所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法におきましては、地方公共団体の長等に相続財産管理人の選任申立て権が付与されたところでありまして、事案に応じてこのような地方公共団体の長等による申立てが活用されることが期待されるところでございます。これに加えまして、改正法案では相続財産の清算手続に関する期間を実質的に短縮することとしており、制度の利便性の向上も図っているところでございます。
 また、相続財産管理人の選任は清算手続を伴うものでございまして、相続人全員が相続放棄をしたケースでは、相続財産に属する特定の土地の管理のみを行いたいケースには負担が重くて利用がしづらいという指摘がございました。
 そこで、改正法案では、特定の土地に特化した所有者不明土地管理制度を創設し、そのようなニーズにも対応することとしております。
 法務省といたしましては、相続人全員が相続放棄をした場合の土地の管理の在り方が残された検討課題であるという参考人の御指摘も踏まえまして、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法や、今回の改正法案の今後の運用状況について注視してまいりたいと考えております。
 また二点目、時効取得の点でございます。土地等が共有関係にあると、各共有者の持分権が互いに制約し合う関係に立ち、共有物の利用に支障を来す事態が生ずるため、共有物の利用を促進する観点からは共有関係の円滑な解消が極めて重要でございます。
 そこで、その共有者の一人が共有物である土地を長期間占有しているケースにつきましては、現行法の下でも一定の要件を満たせば、その共有者の一人がその土地の単独所有権を時効によって取得し、もって共有関係を解消することが可能でございます。そのため、法制審議会民法・不動産登記法部会における審議の過程では、この共有関係の解消を促進する観点から、この時効取得を幅広く活用すべく、共有者の一人が共有物を占有しているケースについて、現行法よりも広く取得時効を認める規律を設けることなどが検討されたところでございます。
 しかし、検討の過程で、共有関係の解消に当たっては、基本的に共有物の分割制度や新設する所在等不明共有者の持分取得制度など、持分を喪失することとなる共有者にその対価の支払を受ける機会を保障する仕組みを利用することが適当であり、取得時効により対価なしに単独所有権を取得することを広く認めることは相当でないという指摘がされました。このため、共有者の一人が共有物を占有しているケースにおける取得時効の成否については、引き続き解釈に委ねることとされ、改正が見送られたところでございます。
 もとより、共有関係の円滑な解消を実現することは重要でございまして、法務省としては、所在等不明共有者の持分取得制度など、改正法案により導入される新制度の適切な運用に向けて効果的な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 是非こういうケースも、時効取得のケースもフォローして、円滑な実施ということ、適用ということもまた対応していただければと思います。
 次に、吉原参考人は、今回の法改正が沖縄の問題に対して貢献する部分と、沖縄の経験が日本全体に役立つ部分と両方あるというふうに述べられました。これ、私の質問は、結局、沖縄でスタートしたこの所有者不明土地問題は、戦後すぐから五〇年代の初めまでありました。今回の場合には、かなり日本全体のこの所有者不明土地制度の問題とは少し違うかもしれないですけれども、そこどうなのかということをちょっと疑問を感じたものですから、これ質問したわけですけれども、この役立つ部分と貢献する、まあ要するに沖縄の問題に対して貢献する部分と、今度は沖縄での経験が役立つ部分と両方あるというふうに述べられました。
 今回の法改正が沖縄に役立つ部分として、例えば、所有者不明土地管理制度が新しくできたので、沖縄の不明地でも解消が困難な部分については、新しいこの管理人制度を使って、利用に向けて促進できる道が開かれたということでした。
 また、沖縄の経験を生かせる部分として、沖縄では不明地について県や市町村を管理者と立てて、登記簿にもその旨記載していたのではないかと思いますと、管理者として。その過程で県や市町村がどのように管理者としてどういう業務を担っていて、どのくらい負担になっているかということが今後管理制度をつくっていく上で大きな参考になるのではないかと述べられました。
 この参考人の発言について、法務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) この改正法案におきましては、特定の土地に特化した所有者不明土地管理制度を創設をしているところでございますが、これは沖縄における所有者不明土地にも適用され得るものでございます。参考人の御発言もこのことを踏まえてのものというふうに理解をしております。
 沖縄におきましてのこの所有者不明土地の解決は極めて重要な問題でありまして、沖縄戦によって公簿等が焼失して不動産の所有者を確認することができない土地につきましても、この新制度を活用してその解消を図ることができるよう、また環境整備も含めまして十分に配慮してまいりたいというふうに考えております。
 また、改正法案の成立後は所有者不明土地の適正な管理を実現するため、所有者不明土地管理制度の円滑な運用を図ることが必要でございます。参考人の御発言の中にも、新たな制度を運用する上で沖縄の取扱いが参考になるとしたものであると受け止めております。
 法務省といたしましては、改正法案の成立後は、こうした参考人の御発言も踏まえつつ、所有者不明土地管理制度の施行に向けまして、関係機関と連携をして必要な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
○高良鉄美君 ありがとうございます。これで質問を終わりたいと思います。