国会質疑 Interpellation

2021年4月13日 参議院 法務委員会 所有者不明土地の解消関連法質疑

質問内容

・沖縄の所有者不明土地問題について

議事録

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第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 一九九六年四月十二日。昨日で二十五年目になりましたけれども、日米の共同声明があって、普天間を五年から七年以内に返還をするということで、当時の橋本首相とモンデール駐日大使がそういう発表しました。
 四月のこの時期ですね、ちょうどおとといの日曜日は、宜野湾地域の、普天間地域の、清明といって、お墓に行ってお参りをするんですけれども、この宜野湾地域の住民が普天間基地の中に入れる唯一の日に近いんですけれども、お墓の前に行ってお祈りをしてということで、御飯、まあ沖縄の特有の文化ですけれども、それを行ったんですが。そのお墓はかなり大きいんですけど、もう古いんですね。五年から七年以内に返ると思ったので、もうあれから二十年近くなるわけですけれども、古いのをもう修理しようということで、修理して保全したんですね、もうその間に。もう七年後には返ると思っていたら、まだ返らないわけですね。
 だから、そういった問題もあって、基地の中に入る、あるいは土地が、自分たちの先祖の土地があるというのが、沖縄の中の特徴というのが非常に表れている一つの例だと思うんですけれども。今日はもう既に多くの委員の先生方がいろんなお話をお聞きしておりますけれども、少し沖縄の土地問題に絡んでこの所有者不明土地問題についてお話をしたいと思います。
 まず、その所有者不明土地問題の経緯ということで、そもそもなぜこの所有者不明土地問題が出てきたのかということで、できたらその、いつ頃とかですね、戦前、戦後なのか、発生理由とかですね、そういったようなことでちょっとお伺いしたいんですけれども、法務大臣、よろしくお願いします。
○国務大臣(上川陽子君) この所有者不明土地問題でございますが、平成二十三年の三月十一日に発生をいたしました東日本大震災からの復旧復興事業におきまして、所有者不明土地等の存在によりまして円滑に用地取得が進まず、それに対する対応が大きな課題となったことを契機として広く認識されるようになったものと承知をしております。
 所有者不明土地がもたらす問題につきましては、具体的に挙げますと、不動産登記簿を見ても所有者やその存在、所在が直ちに判明しないために、所有者を探索するために戸籍等の収集や現地への訪問等を要するなど、多大な時間と費用が必要となるところでございます。この結果、所有者不明土地がある場合にはその土地の利活用が困難となりまして、民間の土地取引が阻害をされる、また、防災等の公共事業の用地取得やまた森林の管理など、様々な場面で支障を生じさせているほか、土地の管理不全化や、また周辺環境の悪化にもつながっていると、このように、所有者不明土地は土地の利活用を阻害し、国民経済に著しい損失を生じさせているものであり、このことから所有者不明土地が大きな問題となっているものと認識をしております。
○高良鉄美君 今、経緯ですね、特に東日本大震災の問題が大きなきっかけだったということで、いろんな支障の問題も、今お話があったとおり、やっぱり利活用上大きな支障があるということで、この十年間、いろいろ、震災から十年たちますけれども。
 この所有者が不明の土地ということですけれども、ちょっと沖縄の問題を少し投影してみますと、沖縄では、沖縄戦ですね、さきの大戦によって多くの市民の方々が戦争に巻き込まれて命を落とした、あるいは貴重な財産も失われたということがあります。しかし、この土地を見ますと、戦前の登記の在り方とか土地の境界線などが、これ砲撃を受けてその土地が全く違う形になってしまって、あそこにあった山がなくなっていると、そうすると分からなくなってくるわけですね。そういったものもあったということで、さらに、土地関係の記録がもう焼失してしまったということがあって、この所有者不明土地というのがたくさん存在しているわけですけれども。これ、資料の一に、沖縄本島だけじゃなくて離島も、それから都市圏も、大小ばらばらの土地がいろいろ所有者不明で存在しています。
 そして、この沖縄における所有者不明土地問題、これまで、特に先ほどは大震災が大きなきっかけということでしたけれども、政府が行ってきた沖縄の土地問題に対しての取組について、法務大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 沖縄県の土地につきましては、今委員から御紹介をされたとおりでございますが、沖縄戦によりまして公図、公簿等の記録が焼失したため、戦後、所有者、所有権の認定作業や地籍調査が実施されたところでございますが、これらの作業等によりましても所有者を確認できない土地が存在をしているところでございます。
 こうした所有者不明土地は、戦後、琉球政府が管理することとされ、沖縄の本土復帰後におきましても、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づきまして、当分の間、従前の例に準じ、沖縄県又は市町村が管理することとされているものと承知をしているところでございます。また、内閣府におきましては、沖縄県における所有者不明土地に起因する問題の解決に向けまして実態調査等の取組が行われているものと承知をしているところでございます。
 沖縄における所有者不明土地の解決は極めて重要な課題であるというふうに認識をしております。
○高良鉄美君 今、復帰特別措置法の話が出てきましたけれども、復帰特別措置法は昭和四十六年ですから、来年で五十年ということになります。そして、沖縄の土地問題の場合には、大震災から十年、特に大きなきっかけは、日本全土では、所有者不明土地というのは震災のような災害の中で土地があるということでしたけれども、沖縄の場合の特殊性は先ほどお話をいたしました。
 その沖縄県に国の方から委託を受けて実態調査をしているということは、平成二十四年、二〇一二年ですから、やはりきっかけとしては二〇一一年の震災の直後から、沖縄県の方にもこの実態調査の依頼が来てそれをやったということになるんですけれども、今その解決、沖縄の土地所有の関係ですね、所有者不明の土地問題を解決するために、実態調査の中で、結果に基づいた必要な措置を講ずるということが附則の方に書かれています、復帰特別措置法ですね。その結果、あるいは政府が講じてきた措置というものがどのようなものなのか、内閣府にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(原宏彰君) お答えいたします。
 平成二十四年に改正されました沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律の附則におきまして、政府は、沖縄県又は沖縄の市町村が管理する所有者不明土地に起因する問題を解決するため、速やかにその実態について調査を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとされたところでございます。
 内閣府では、これを受けまして、平成二十四年度以降、沖縄県に対する事業委託によりまして、測量調査等の実態調査を行ってきたところでございます。また、沖縄県における所有者不明土地に起因する問題の解決に向けた調査検討を平成三十年度から実施をし、所有者不明土地管理者が留意すべき事項を整理した管理者ガイドラインを作成する等の取組を実施しているところでございます。
○高良鉄美君 今、実態調査の話がありましたけれども、今回は所有者不明土地の関連した法案がこれだけ出されておりますけれども、今回の法案が成立した場合のその後という場合に、ビフォー、アフターみたいに、内閣府として、この沖縄における所有者不明土地問題について、以前とこの法案の以後と、お取組はどのような形でしょうか、違うんでしょうか。
○政府参考人(原宏彰君) お答えいたします。
 今般の所有者不明土地管理制度におきましては、所有者が不特定又は所在不明の場合において、必要があるときに、裁判所に選任をされた管理人は、その保存、利用、改良のほか、裁判所の許可を得た上で処分も行うことが可能というふうにされているものと承知をしております。
 この制度は、沖縄の所有者不明土地にも適用し得る制度であるものと承知をしておりまして、今般の法令が成立した場合には、同制度の内容も踏まえて、法務省を始めとした関係機関と連携しつつ、引き続き検討を行ってまいりたいと思っております。
 済みません、先ほどガイドラインとお答えしてしまいましたけど、ガイドの間違いでございました。訂正をお願いいたします。申し訳ございません。
○高良鉄美君 今回のこの所有者不明土地の問題ということですけれども、これはもちろん沖縄だけの問題にしてはならないわけですけれども、沖縄の場合には戦争ということでしたけれども、災害ですね、基本的にこの法案の、法案といいますか、これまでの所有者不明土地問題に関わる災害の問題がきっかけだったと思うんですけれども、今後大震災が起こることも想定されていますけれども、そのような場合の備えとして今回の法案では十分なものになっているか、いわゆる現状対策だけではなくて、将来予測的に対応できるようなものが入っているでしょうかということです。
○国務大臣(上川陽子君) この所有者不明土地問題でございますが、震災、東日本大震災からの復旧復興事業ということで、この契機を、非常に大きな社会的な認識が更に広まったということで、今般の取組、一連の取組に至っているところでございます。
 災害時における復旧復興等の過程で公共事業の用地取得が必要となる場面を始めまして、様々な場面におきまして問題となっているというところでございますので、政府におきましても、関係省庁役割分担、しっかりと連携協力しながら各種法整備を行ってきたところでございます。
 この間の法務省におきましての取組としてちょっと主なところでございますが、三十年、通常国会で成立いたしました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づく、長期間にわたりまして相続登記がされていない土地の解消を図るための制度を創設したところでございます。また、三十一年の通常国会で成立いたしました表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づきまして、登記官による所有者の探索作業、また新たな財産管理制度の創設などを実施してきたところでございます。このほかにも、相続登記の登録免許税の免除措置の実施でありますとか、あるいは法務局におきまして自筆証書遺言書の保管制度の創設など、相続登記の促進に向けた方策も行ってまいりました。
 そして、今回提出している二つの法律案でございますが、これまでの関係各省庁におきましての取組に加えまして、今般は、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化という両面から総合的に民事基本法制の見直しを行うものでございます。これらを適切に実施、運用することによって、政府におけるこれまでの取組と総合する形で、災害対策の場面を含めまして、課題の解決に向けまして大きく進展するものと認識をしているところでございます。
○高良鉄美君 将来に向けてもというようなお話がありました。
 次に、所有者不明土地の管理制度についてお聞きしたいと思いますけれども。
 今回、新たにこの所有者不明土地の管理制度を設けるということですけれども、この制度を設ける理由について、メリットもできたらお話しいただけたらと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 所有者を特定することができない土地や、また所有者の所在が不明となっている土地につきましては、その所有者に必要な関与を求めることができず、その管理や利用に困難を来し、社会経済上の不利益を生じさせるものでございます。
 現行法におきましては、このような不動産を管理するために不在者財産管理制度やまた相続財産管理制度が利用されることがございます。もっとも、これらの制度につきましては、問題となっている不動産だけではなく、不在者等の財産全般を管理することとされているため、手続を利用するために必要な予納金の金額がその分高くなるなど、費用対効果の観点から使いづらいという指摘もございました。また、所有者を特定することができないときはそもそも利用することができないといった指摘もございました。
 そこで、改正案におきましては、所有者不明土地の適切な管理を実現するとともに、その円滑、適正な利用を図るため、所有者を知ることができず、またその所在を知ることができない土地につきまして、裁判所が利害関係人の請求によりまして管理人による管理を命ずる処分をすることを可能とする所有者不明土地管理制度を創設することとしたものでございます。
○高良鉄美君 今、管理人のお話が出ましたので、ちょっと質問を飛ばしまして、この管理人に関して、所有者不明土地制度を利用すると、裁判所がこの所有者不明土地管理人を選任するということでありますけれども、どのような者が、どのような方がこの管理人になるかということを想定しているのか伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 所有者不明土地管理人は、他人の土地を適切に管理することを職務とする者でありますので、裁判所が個別の事案において管理人が行う具体的な職務内容を勘案して、管理人としてふさわしい者を選任することが想定されます。例えば土地の処分等を行うケースについては、弁護士や司法書士等が選任されることが想定されるものでございます。
○高良鉄美君 そうすると、今の管理人が選任されると、これがスピーディーになるということがメリットというようなことになるんでしょうかね。どのようなことが結局可能になるかということで、少しお話を伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 所有者不明土地管理人は、管理の対象とされている土地について、その適切な管理のために保存行為や利用・改良行為を行うことができます。また、所有者不明土地管理人は、不動産の売却など、利用・改良行為の範囲を超える行為についても、裁判所の許可を得ればこれをすることができます。
 そのため、例えば、個別の事案にもよりますが、所有者不明土地につき公共事業のための一時的な使用が求められるケースでは、所有者不明土地管理人は利用行為としてその使用を許すことが可能であります。また、所有者不明土地が公共事業の用地取得の対象となっている場合には、所有者不明土地管理人は裁判所の許可を得て土地を公共事業の実施主体に売却することも可能となります。
○高良鉄美君 時間があと五分なので、まず、一番最後の方に関連した、国庫に帰属させるという、相続等により取得した土地所有権を国庫に帰属させるという制度、これはもちろん負担が大きかったりということで放棄を含むような感じだと思うんですけれども、沖縄には、先祖からもらい受けた土地は後世に受け継いでいくと。これは、仮に所有者じゃなくても、小さな島ですと、その地域の人々が、将来的に地域の、あるいは島の子供たちがきっと受け継いでくれるんだろうということで、そういう風土があります。
 今回、相続した土地を手放して国庫に帰属させるという制度、これを設けることにした理由は、先ほども少し触れましたけれども、この辺りを少しお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 都市部への人口移動、また人口減少や高齢化の進展等によりまして、地方を中心に土地の所有意識が希薄化するとともに、土地を利用したいというニーズも低下する傾向があると指摘がございます。その結果、土地を相続したものの土地を手放したいと考える者が増加しているとの指摘や、相続を契機として望まない土地を取得した所有者の負担感、これが増しておりまして、このことが所有者不明土地を発生させる原因となり、又はその土地の管理不全化を招いていると、こうした指摘もなされておりました。
 このような状況を踏まえまして、相続土地国庫帰属制度におきましては、相続等により取得した土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする、こうした仕組みを創設すること、これによりまして、将来における所有者不明土地の発生や土地の管理不全化の予防、これを図るものでございます。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 所有者不明土地が増えないようにと、これは非常によく分かりました。
 こういうふうに、この制度によって国庫に帰属した土地というものを国はどのような形で使用するのかと、先ほども何名かの委員の先生方が、余り利用価値があるのかどうかというのもお話がありましたけれども、国はどのように使用するんでしょうか。参考人。
○政府参考人(小出邦夫君) 相続土地国庫帰属制度におきましては、土地の所有権は、承認申請をした者が法務大臣の承認を受けた後、負担金を納付した時点で国庫に帰属することとされ、それ以降、国有財産法上の普通財産として国によって管理されることになります。
 具体的には、主に農用地又は森林として利用されている土地は農林水産大臣が、それ以外の土地は財務大臣が管理することとなります。国庫帰属した土地は、一般には売払いや貸付けに至らず、国が長期にわたって管理し続けるものが多くなると見込まれていますが、個々の土地の状況に応じて適切な形で管理、処分が行われるものと承知しており、可能な限り有効活用を図ることが重要であると考えております。
 国庫帰属した土地の有効活用を図る方策につきましては、法務省としても関係省庁の検討に必要な協力をしてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 国庫に帰属する土地について、仮に、この復帰特別措置法の六十二条では、当分の間、沖縄県が、あるいはこの所有者不明土地の所在する市町村が管理するということで、現在もそういう形になっていますけれども、この国庫帰属する土地について、仮に沖縄県内の自治体、県や市町村が取得したいと希望した場合には、これは可能でしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 相続土地国庫帰属制度の運用におきましては、承認申請者からの申請を受け付けた法務局は、その旨を地方公共団体等の関係機関に情報提供する方向で検討しております。このような運用により、情報提供を受けた地方公共団体等が希望する場合には、承認申請者と交渉して土地の寄附を受けることにより、国庫に帰属させることなくその地域で有効活用を図ることが可能となるものと考えられます。
 したがって、個別の事案によるところではありますが、法務局から情報提供を受けた沖縄県内の自治体が承認申請に係る土地の取得を希望する場合には、承認申請者と交渉して、寄附によってその土地を取得することも可能であると考えられます。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 国庫にということで、先ほど清水委員からも、国有地の取得の問題で、海外のとかいろいろありました。そういった点でいうと、この米軍基地の周りの土地規制も今出て、そういった問題の時期にまたこの国庫帰属の土地の問題が出たものですから、その辺のちょっと懸念もあって、沖縄の土地というのがそういう基地問題に吸収されてしまわないかという心配もあったんですけれども、全く無関係だというふうにも捉えておきたいと思います。
 この問題というのは今後も、やっぱり土地ということに関しては、沖縄の島々と、その〇・六%分の面積しかない沖縄とではかなり土地の様子が違うということと、それから土地利用に関しても、大きさ的なものだけじゃなくて、その利用価値あるいは利用の方向性とか随分違うことがあると思いますので、また比較しながら参考にこの委員会でいろいろと議論していきたいと思います。
 時間になりましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。