国会質疑 Interpellation

2021年3月30日 参議院 法務委員会 一般質疑

質問内容

・選択的夫婦別姓について

・調停委員任命における外国籍排除問題について

議事録

PDFはこちら

第204回国会 参議院 法務委員会 第4号 令和3年3月30日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 早速、選択的夫婦別姓についてお伺いします。
 先週、三月二十二日の法務委員会で、一九九六年の法制審答申の当時、国民の理解がそのときに比べればもう格段に深まっていること、そして、各種世論調査で賛成が反対を大きく上回っていること、自民党の賛成派の議員連盟が立ち上げられたということなどによって法改正に向けた議論が活発化していることを挙げて、法制審答申を引き継ぐ大臣が積極姿勢を示すべきではないかと伺いましたが、上川大臣は、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関して、各党での検討を含む国会における議論の動向等も注視しながら検討を進めてまいりたいと答弁されました。
 しかし、家族の在り方の検討は、もう既に議論がなされていて、方向性が示されているわけです。法務大臣は、受け身の姿勢ではなくて、選択的夫婦別姓導入を行うよう結論付けた法制審答申が理解されるように民法改正に向けて積極的に行動すべきだと思いますが、再度お伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 御質問でございます、この夫婦の氏に関する問題ということでございますが、私といたしましては、国民的な議論を踏まえ意見の集約が図られるということが望ましいと考えております。夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関しましては、現在各党におきまして様々な形で検討が進められているものと承知をしております。
 法務省といたしましては、そのような各党での検討が充実したものとなるよう、法制審議会でのこれまでの検討の経過でありますとか、あるいはまた最近の議論の状況等につきまして積極的に情報提供をするなどして、でき得る限りの協力をしているところでございます。
 今後も、各党での検討を含む国会における議論が充実したものとなるようにこうした協力の取組を続けますとともに、引き続き国民の皆様にしっかりと広報、周知をすることを徹底してまいりたいと思っておりまして、その環境整備につきましてはしっかりと努力してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 本日は森まさこ委員の方からも最初にありましたけれども、この選択的夫婦別姓の制度ですね、これやっぱり今チャンスだと思うんですよ。チェンジのチャンスなんです。これ、今、上川大臣が、与野党もほぼ一致してくるような動きがあって質問もあるわけですね、是非ともこういったことを進めていただけるようにお願いしたいと思います。
 調停関係の、家庭裁判所ですね、調停委員任命に際して外国籍者を排除しているという問題についてお伺いします。
 昨年の法務委員会で質問しましたけれども、調停委員は、公権力を行使するものでも国家意思の形成に参画するものでもないという実態面と、法律や最高裁規則やあるいは最高裁事務総長依命通達にも基づかないで、裁判官会議にもかけられずに行われたという手続的面でも問題があることを指摘しましたけれども、理解に苦しむ答弁で到底納得できるものではありませんでした。
 最高裁は、日本国籍を必要とするのが公務員全般に関する当然の法理などとして、非常勤公務員の調停委員にも国籍は必要であると主張していますが、これお配りしていますが、資料をですね、御覧いただければと思いますけれども、非常勤公務員、これA3の一覧がありますけれども、非常勤公務員で日本国籍者に限られるのは、防衛省や外務省、原子力規制庁に限られます。
 高裁の主張には合理性がないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 調停委員も非常勤の裁判所職員として公務員に当たるわけでございますが、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員になるためには日本国籍を必要とするのが公務員全般に関する当然の法理であると解されるところでございます。
 民事調停委員、家事調停委員の法令上の権限、職務内容等としては、裁判官とともに調停委員会を構成し、調停の成立に向けて活動を行い、調停委員会の決議はその過半数の意見によるとされていること、調停が成立した場合の調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有すること、調停委員会の呼出し、命令、措置には過料の制裁があること、調停委員会は事実の調査及び必要と認める証拠調べを行う権限を有していること等があり、これらによれば、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当し、その就任には日本国籍を必要とすると考えているところでございます。
○高良鉄美君 今ありましたけれども、私が示したこの一覧表のほかに、実は国家公務員だけじゃなくて、東京都の職員についても行いました。
 昨年四月一日現在で外国籍の公務員は、これ常勤です、公務員は、外国籍ですね、二十三人在籍されて、主事、主任、課長代理もいらっしゃいます。東京都の担当者は、採用後の任用制度との整合性を配慮し、国籍要件の解除可能な職種については解除し、外国人の採用の機会を設けていると回答しました。非常勤公務員に、外国籍だからと一律に排除することに、これは合理性が、比較してですね、合理性があるとは到底思えないわけです。
 これはまあ行政機関ということもあるんでしょうけれども、裁判所です、裁判所がそういうことを、外国籍を排除しているということがあるわけですね。
 この問題については、排除しないように求める外国籍の弁護士の声があります。それから、弁護士会や日弁連から度々差別を撤廃するよう求められています。
 資料をお配りしていますが、三枚あります。
 国連人種差別撤廃委員会から家庭裁判所の調停委員のことが書かれているわけです。三度も差別撤廃を勧告されているということ。国会質疑で与野党から差別だと何度か質問が、あるいは指摘がされているということ。それから、国家資格などにあった国籍条項は今撤廃されてきた経緯があるということ。さらに、調停で扱う紛争の当事者は、現状です、紛争の当事者は日本国籍者に限られず、この当事者たちの生活習慣や文化を熟知した外国籍者が調停を務めることで調停制度の充実に貢献することが期待されること等も踏まえて、今後見直すことを検討すべきだと思いますけれども、最高裁にはいかがか、お伺いします。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 繰り返しになり恐縮でございますが、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員になるためには日本国籍を必要とするとされているところでございます。
 民事調停委員、家事調停委員の法令上の権限、職務内容等、先ほど申し上げましたけれども、これらに鑑みますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当し、その就任には日本国籍を必要とすると考えているところでございます。
○高良鉄美君 調停という作業はどういう作業でしょうかね、これ。本当に聞くんですよ、両方の言うことをね。そして、合意があれば初めて調書に書くわけですから、これが確定判決と、効力を持つわけです。
 ですから、両方の合意があるということは、何もその調停委員が公権力の行使をするとか国家意思の形成をするとか、そんなこととは全く関係ないわけですよ。しかも、国家意思の形成とかこの公権力の行使に該当しないんじゃないかということが国連の方からも指摘されているわけです。そして、確定判決といいますけれども、この調停委員会がそれをするわけであって、調停委員ではやらないわけですよね。
 だから、この中に一人外国籍が入っているということは、先ほども言いましたけれども、現在の状況の中で、国際的な、国際化をしている、あるいは日本の中にも三百万人の外国人の方がいらっしゃると、こういうことを考えると、調停制度を更に充実させていくというためにはむしろ貢献するんじゃないかと私はそう思うんですけれども、人権のとりでと、人権保障のとりでとして期待されている最高裁には、是非これ再考していただけるように強く望みたいと思います。
 資料ですね、新聞の記事がありますけれども、かつて弁護士は日本国籍に限られていました。それは司法試験に合格しても、外国籍者は法曹資格に必要な司法修習が認められていませんでした。準公務員である司法修習生の選考要項には国籍条項があったわけです。それでも、最高裁は一九七七年に外国籍者に門戸を開きました。この資料にその経緯が書かれていますが、司法修習の選考要項から国籍条項が削除されたのは二〇〇九年。しかし、最高裁は一九七八年に、この要項の国籍条項に最高裁が認めた者を除くとただし書を付けることで救済したわけです。三十年間それで救済してきたわけですね。そういった点を鑑みますと、まさに人権保障のとりでということの役割をよくしたと思うんですね。
 国籍条項をやめた理由を問われた当時の大谷直人人事局長は、今の最高裁の長官です、二〇一〇年三月十二日の衆議院法務委員会で、司法修習の選考要項から国籍条項が解除された理由について、その人の法的な地位の安定性、居住性の連続性等を考慮して日本国民と同等の取扱いをしても差し支えないかどうか個別的に判断をしたと、欠格事由という言葉、日本国籍を有していないことのみをもってあたかも採用されないというふうに思われるような記載は削除するのがよいのであろうということで判断し、その事項を削除したと答弁されています。
 しかし、その直後に、大谷人事局長は、調停委員に外国籍者を排除していることについては、法律上の規定はございません、これを取り扱っております事務当局としてそういう考えで運用しているということですというふうに答弁していますね。これは何かというと、つまり外国籍者を排除する考えで運用しているということなんですよ。
 国籍条項があったけれども差別を撤廃しているかつての最高裁と、法律や規則、通達にも基づかず差別をして、それを改めようとしない今の最高裁は、まるで対照的と言わざるを得ません。最高裁に対しても、法の支配ではなく、人の支配ではないかと言わざるを得ません。適正手続、デュー・プロセス・オブ・ローの観点からも問題があると言わざるを得ません。
 この点は今後も引き続き質問していきたいと思いますけれども、法の支配というのを、各大臣にいつもそれをお伺いしてきましたけれども、最高裁に法の支配のことを伺うというのは私はちょっと問題だと。まあ問題って、私の問題ではないですけれども、こうなるとは思わなかったですよ。
 人権保障のとりでと、それから法の支配の中身というのは、憲法の最高法規性、適正手続、さらには司法権の優位、まあ司法権を尊重するということ、そして今言ったこの適正手続ほかの法の支配の内容というのをしっかりと最高裁判所が踏襲していくと、踏んでいくということがとても大事だということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。