国会質疑 Interpellation

2021年4月6日 参議院 法務委員会 裁判所職員定員法

質問内容

・裁判所における女性活躍について

・家裁の充実について

・調停委員任命における外国籍排除問題について

議事録

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第204回国会 参議院 法務委員会 第5号 令和3年4月6日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 早速、最高裁に裁判所における女性活躍について伺います。
 政府は、社会のあらゆる分野において、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合を三〇%にする目標を掲げましたが、目標は達成できていません。二〇三〇年までの可能な限り早期にと先送りにしています。このいわゆる二〇二〇・三〇のこの三〇%が大きな壁になっているわけですけれども、この三〇%の目標を掲げたのは二〇〇三年の小泉政権でした。十八年掛けて達成できなかったことを十年以内、それも早期実現を目指すのなら、実効性のある取組でなければ達成することはできません。政府だけじゃなく、これは裁判所も問われていると思います。
 最高裁に伺いますけれども、裁判官、調査官、書記官など、裁判所の職員に占める女性の割合と管理職に占める女性の割合をお示しください。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 令和二年十二月一日現在における裁判官に占める女性割合は二三・〇%でございます。令和二年七月一日現在における裁判官以外の裁判所職員については、書記官が三六・二%、家庭裁判所調査官、これには家庭裁判所調査官補を含みますけれども、が五五・七%、事務官が四四・五%でございます。
 裁判官以外の裁判職員の令和二年七月一日現在における最高裁課長相当職以上に占める女性の割合は一五・六%、下級裁課長、最高裁課長補佐相当職に占める女性割合は二九・〇%、係長相当職に占める女性割合は四六・八%でございます。
○高良鉄美君 今数字が出ましたけれども、全体的に見て、この三〇%というのが基本のようですけれども、それを下回るものが幾つもあります。
 このジェンダーギャップの問題でいいますと、社会のあらゆる分野ということですから、司法権の分野ですね、そちらもやはり同じようにジェンダーギャップの対象になると思いますけれども、しっかりそこはこれから上げていくという、目標が三〇年までにということがありますので、頑張っていただきたいんですけれども。
 今お聞きしたのは裁判所全体の割合なんですけれども、最高裁判事についての女性割合についてお伺いしたいと思います。
 現在、最高裁判事十五人のうち、女性は僅か二人しかいません。今年夏には女性一人を含む四人の判事の定年退職が予定されていますが、三〇%の目標を達成するには四人を女性にしなければなりません。つまり、四人の退職者の穴を、四人女性を入れるとようやく三分の一になるということで、これは資料の新聞記事の方にあります。少なくとも、三つの小法廷ありますけれども、そこには一人いないといけないと。現状では、もう一つの小法廷には全く女性がいない状況があるわけですね。
 そういったことを含めますと、この最高裁の、二枚目の資料は、元最高裁の判事だった桜井龍子さんは、司法は社会の重要なインフラだと、一刻も早く男女共同参画をと訴えています。また、最高裁に女性判事がいることの意義について、近年、最高裁では、家族関係や雇用における性差別をめぐる事件が増えていますが、女性の視点が全くない形で最終結論がまとめられることについては異議があると、失礼、違和感があると述べられています。
 昨年十二月に閣議決定した第五次男女共同参画基本計画では、司法分野の具体的取組として、最高裁判事を含む裁判官全体に占める女性の割合を高めるよう裁判所等の関係方面に要請すると盛り込まれていました。最高裁は、要請を受けるまでもなく、率先して女性の割合を高める努力を行うべきだと考えますが、今後の取組についてお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 内閣が行う最高裁判事の任命についてはお答えを差し控えたいと存じますが、下級裁判所の裁判官について申し上げますと、最高裁としては、裁判官としてふさわしい資質、能力を備えた人につきましては男女を問わずできる限り任官してもらい、男女共に裁判官として活躍できるようにすることが重要であると考えております。
 近年、司法修習終了者に占める女性割合は二割程度であるところでございますが、司法修習を終了して判事補に採用された者に占める女性割合は三割前後となっておりまして、裁判官に占める女性割合は着実に増加をしているところでございます。
 今後とも、裁判官としてふさわしい資質、能力を備えた女性にできる限り多く任官してもらえるよう努めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 先ほど紹介した桜井龍子さんですね、女性判事がいる意義についてということで、性差別の問題というのがやはりありますので、是非ともそれを推進していただけたらと思います。
 そして、もう一つの大きい方の、二枚目といいますか、その資料ですけれども、桜井さんは行政官の出身でした、判事として。厚労省時代には旧姓の藤井姓を付けて仕事をされていましたが、最高裁判事は戸籍姓しか認められていなかったため戸籍姓を名のられて、かつての職場や知人から同一人物と認識されないこともあったとのことでした。姓は人の、かばねの方の姓ですね、姓は人の識別上重要だとしみじみ感じた、判決の最後に桜井と書くのが嫌で、大きな自己喪失感を味わったと述べられています。この自己喪失感という言葉は非常に重いと思います。
 最高裁は、二〇一七年九月一日から裁判関係文書においても旧姓の通称使用を認めていますけれども、現在、旧姓を使用している方はどれぐらいいらっしゃるのか、お示しください。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 旧姓使用者数は、裁判関係文書についても旧姓使用を認めることとした平成二十九年九月一日の時点では、裁判官が十八人、裁判官以外の職員が二百三人であったところ、その後、毎年十二月一日現在の数で申し上げますと、平成二十九年十二月一日現在では、裁判官が二十八人、裁判官以外の職員が二百二十九人、平成三十年十二月一日現在では、裁判官が五十一人、裁判官以外の職員が三百十五人、令和元年十二月一日現在では、裁判官が七十九人、裁判官以外の職員が四百九人、令和二年十二月一日現在では、裁判官が九十五人、裁判官以外の職員が四百九十人となっております。
○高良鉄美君 ただいまのお答えありましたけれども、もう着実にこの旧姓使用というのがすごく伸びているということですね。
 そういった面で、こういった現象を見てみますと、やはり氏名というのは非常に大きな問題ですね。旧姓、自分の、先ほど自己喪失感とありましたけれども、これやはり氏名ということについては人格権、憲法の十三条でいう人格権を構成する一種だということですけれども、自己喪失感まで与えてしまうということと、先ほど一番最初に質問しました、女性裁判官の割合、特に最高裁ですけれども、この感覚ですね、この自己喪失感が感じられる方の割合というのが当然ながら少なくなってしまうということですね。
 こういった人格権の問題など、あるいは憲法上の問題というのをきちんと裁くところが、あるいは判断を下すところが最高裁ですから、そこは本当にしっかりここも希望しておきたいと思います。これは先ほどお答えがあったように内閣の任命ということですから、そこまではありませんが、恐らくもう内閣の方も社会のあらゆる分野で、司法の分野にもということですので、そこは最高裁としてしっかりカバーできるようにしていただけたらと期待をしたいと思います。
 家事事件の関連についてお聞きしたいと思います。
 家事事件が増加している中での家庭裁判所の充実について伺いますが、最高裁は、今年度予算の概算要求においては、書記官二人、事務官五十六人の増員要求を行っています。しかし、昨年十二月の閣議決定では、書記官二人、事務官三十九人が増員されたものの、職員全体では十七人が減員とされました。これ、五十六人を増員要求したということですけれども、その差が十七名ありますけれども、これやはり必要だったからだと思うんですね、増員が。ただ、やみくもに増やしてこれではなくて、やっぱり必要だったと思うんです。
 毎年、家事事件の増加や複雑化に伴って、裁判官はもちろん、裁判官以外の職員についても削減ではなく増員を求めてきたというところだと思います。特に今年は、新型コロナウイルス感染拡大で裁判期日の取消しなどが続いて司法の停滞が懸念されています。先ほど山添議員の資料の中にもあったと思いますが、家裁の調停などでも感染防止のためにこれまでになかった作業が増えて、調停委員にもその負担が増えていると聞いています。
 人的、物的にも更なる充実を求めてきたところですが、裁判所、とりわけ家裁の充実に向けてどのように取り組まれるか、お伺いします。
○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。
 裁判所といたしましては、委員御指摘ありましたとおり、近年、家事事件の事件動向等を踏まえまして、適正迅速な裁判の実現のために、家庭裁判所について繁忙庁を中心に適正な人員配置等の必要な体制整備を図ってきているところでございます。
 他方、今回の改正で減員をお願いしておりますのは技能労務職員等でございまして、庁舎の清掃、警備、電話交換といった庁舎管理などの業務を行う職員でございますので、裁判事務そのものには特段の影響はないものというふうに考えております。
 また、委員からは新型コロナウイルス感染症の影響についての御指摘もございましたが、この対策につきましては、昨年四月の緊急事態宣言時の対応の経験も踏まえた上で、当事者が裁判所に、当事者に出頭していただかなくても手続が進められるような運営改善の取組を進めるとともに、専門家の助言を得て、公衆衛生学等の専門的知見に基づいて感染のリスク態様に応じた感染防止策等を実効的に実施し、これが定着をしてきております。その結果、現在では、新型コロナウイルス感染症対策のために何か現場の事務が特に負担が大きくなっているというようなことはないものというふうに承知をしております。
 今後も、新型コロナウイルス感染症の及ぼす影響には十分に注視しつつ、事件動向、事件処理状況等を踏まえて、引き続き必要な事件進行を図るための人的、物的な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 現場の影響いろいろあると思いますけれども、特に裁判所の中で家庭裁判所ですね、あるいは民事調停でもそうでしょうけれども、内容をお話しすると、調停の場でですね、いろいろ込み入ったこともお話をしたいんだけれども、換気をしなきゃならないと。そうすると、ドアを開けておくと。そこに話す、相談をするということは外に聞こえるということを物すごく気にするわけですね。そういった面での負担をどうするのかといったときには、やっぱり外で並んでいらっしゃる方、あるいは相談のために待機をしている方々の整理をしていかなきゃいけない、これは誰がやるんですかということになるわけですね。そうすると、裁判所の職員とかその他の方々が関連した形で整理をしていったり改善したり、あるいは場合によっては消毒の問題もいろいろ出てくると思います。
 これ、やっぱりコロナと裁判所というのを根本的に少し考えた方がいいと思うんですけれども、先ほど対策をしてやっていくということですけれども、今この時代そのものがあらゆる場面で大きな影響を受けているというのがこのコロナの問題だと思います。裁判所においてもそういったことに対応していただけたらと思います。
 もう質問終わりたいと思いますけれども、予告をしておきますと、外国人の家事調停において外国籍の方が外されているということについてやりますので、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。