国会質疑 Interpellation

2021年3月22日 参議院 法務委員会 予算委嘱審査

質問内容

・選択的夫婦別姓について

・嫡出推定について

・女性差別撤廃条約について

議事録

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第204回国会 参議院 法務委員会 第3号 令和3年3月22日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 三月十六日の所信表明の質疑で、通告しながらできなかった問題について質問いたします。
 上川大臣は所信で、法の支配の貫徹された社会、そして、多様性と包摂性のある誰一人取り残さない社会の実現を目指すと述べられ、十六日の法務委員会では、法の支配について、法の支配の内容として重要なものは、憲法の最高法規性の概念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、デュー・プロセス・オブ・ローということでありますが、さらに権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などと考えられていると答弁されました。
 多様性と包摂性のある誰一人取り残さない社会の実現を目指すと述べられていますので、多様性と包摂性が個別の施策でしっかり貫徹されることを願いながら、質問をいたします。
 まず、選択的夫婦別姓についてお伺いします。
 九六年の法制審議会答申から今年二月で四半世紀を迎えました。法制審議会が五年の年月を掛け、様々な観点から審議をして答申をしたことは御存じのはずです。十六日の真山委員からの質問に上川大臣は、世論も様々な意見があるということを強調して、前向きな答弁をされませんでした。
 しかし、政府は男女平等の観点から夫婦の氏の見直しを憲法や条約に照らして行ってきたはずです。そのことは、昨年の法務委員会でも小出民事局長から丁寧に御説明をいただきました。世論のみを理由に法改正しないことについては、国連女性差別撤廃委員会から厳しく指摘されています。婚外子相続分規定の違憲決定や再婚禁止期間の違憲判決などで明らかなように、最高裁が違憲、憲法違反ということを突き付けるまで法制審答申を立法化しないということは、答申を受けた側の責任が問われ、訟務機能の強化にも逆行しています。
 一九九六年の答申当時より国民の理解は格段に深まっています。政府の世論調査、報道機関やNGOの調査でも賛成が反対を大きく上回っています。自民党でもこのワーキングチーム、そして今般、選択的夫婦別姓に賛成する自民党議員による議員連盟を立ち上げ、議論が行われるということも承知しています。
 答申を受け継ぐ法務大臣としても、法改正に向けて積極的姿勢を示すときではないでしょうか。お願いします。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘いただきましたとおり、法制審議会におきましては、平成八年二月に選択的夫婦別氏制度を導入すること等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申いたしました。法務省におきましては、平成八年及び平成二十二年に法案の提出に向けまして法制審議会の答申を踏まえた改正案を準備をしたところでございます。
 しかしながら、この問題につきましては、国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内におきましても様々な意見がありました。平成八年当時は自民党を中心とした政権でありましたし、また平成二十二年当時は民主党を中心とした政権でありましたが、それぞれの当時の与党内においても異論があったこと等から改正法案の提出にまでは至らなかったものと認識をしております。
 現在、御指摘のとおり、自由民主党内におきまして、氏制度の在り方に関する検討ワーキンググループが設置されたものと承知をしております。
 法務省といたしましては、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関しまして、各党での検討を含む国会における議論の動向等も注視しながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
○高良鉄美君 今やはり様々な意見ということがありましたけれども、これは人権の問題であるということを考えると、それは世論の多寡に委ね続けて法改正ができませんというような言い訳ではいけないんじゃないかと思います。四半世紀も待たされているという国民も中にはおられますから、これはうんざりしていると思います。法の支配ではなくて人の支配で、時の政権の意向でというような言い方に聞こえます。それは人の支配で立法化できていないということを申し上げて、次の質問に入ります。
 二〇一六年二月に行われた女性差別撤廃条約第七回、第八回日本政府報告審査で、民法改正についてはフォローアップの対象とされてきました。女性差別撤廃委員会が二〇一八年十二月十七日に日本政府にフォローアップ報告の評価文書を送っていますが、公表されていなかったため、昨年九月十八日、私の方から外務省から取り寄せました。その際、外務省からは、英文の公表も仮訳の予定もないことを告げられました。
 しかし、女性差別撤廃条約は内閣府男女共同参画局が所管しています。男女共同参画局はこれまで、女性差別撤廃条約の政府報告、最終見解などをウエブサイトで公表していますが、今回の勧告では、次回定期報告と併せて報告するよう勧告されています。NGOやNPOはこの内閣府のウエブサイトを見て国連にカウンターレポートを提出したり意見交換などを行っているため、男女共同参画局は広く知らせる義務があります。
 そこで、外務省にお伺いしますが、外務省はいつ男女共同参画局に国連の文書が来たことを報告されたのでしょうか。
○政府参考人(田島浩志君) お答えいたします。
 委員御指摘の日本政府によるフォローアップ報告に対する女子差別撤廃委員会の文書については、その文書が出された二〇一八年十二月当時に関係省庁に対し迅速に情報共有すべきであったところ、情報のやり取りに不備があったものと認識しております。
 委員からの御指摘を受けて直ちに内閣府男女共同参画局に情報を共有いたしました。また、外務省ホームページにも当該文書の原文を掲載しております。仮訳については内閣府と連携して速やかに掲載する所存です。
 外務省としては、遅滞なく、かつ、しっかりとした情報発信の提供を行い、今後このようなことが起きないように対処してまいる所存です。
○高良鉄美君 間が二年ぐらい空いていましたので、きちんと連携をまた期待したいと思います。
 男女共同参画局はこれまで、女性差別撤廃条約の政府報告、最終見解の英文、仮訳をウエブサイトで公表されており、先ほどの外交文書の英文を既に公表されたと承知していますが、これはいつ公表されたのか、お尋ねします。
○政府参考人(林伴子君) 委員御指摘の文書につきましては、まさに三月十五日の夕方に、委員からの御指摘を踏まえて、直ちに外務省から取り寄せまして、そして翌日の十六日の午前に私ども内閣府男女共同参画局のホームページに掲載をいたしました。今、仮訳の作業にも着手をしたというところでございます。
 委員御指摘のとおり、ホームページなどを通じて、NGOや市民社会の皆様方に広く情報提供を行いますことは大変重要と考えておりまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○高良鉄美君 国民の知る権利にも関わりますので、よろしくお願いします。
 本来であれば、今年が第九回政府報告審査の予定でしたが、コロナ禍で国連の委員会の審査が遅れていると聞いています。男女共同参画局が外務省に報告を求めることも重要ですので、連携をしっかり取っていただけることを求めて、次の質問に入ります。
 政府が夫婦の氏について議論を始めたのは、戦後の民法の大改正から長い年月が経過し、結婚や離婚に関する価値観の多様化、女性の職場進出、男女平等意識の高まり、夫婦別姓を求める声が増えてきたことなどが背景にあります。
 一九七五年以降、国際的な女性の権利保障が推進されてきました。日本政府も女性差別撤廃条約を批准し、男女平等施策を推進するための国内行動計画を策定し、九一年の新国内行動計画では、男女平等の観点から夫婦の氏や待婚期間などの民法を見直すとされ、法制審も議論を開始し、九六年に答申をしました。国連女性差別撤廃委員会は、二〇〇三年以降、民法を改正するよう度々勧告しています。
 丸川男女共同参画担当大臣は、これまで選択的夫婦別姓の賛否についての問いに、個人の意見は申し述べる場ではないと理解しております、第五次男女共同参画基本計画に書かれておりますように、選択的夫婦別氏制度を含めて、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえて更なる検討を進めるとされております。あるいは、私の下には優秀な職員が第五次男女共同参画を決めるときの議論、つぶさにフォローしているので、支えていただき、大臣としての職務をしっかり果たしたいと答弁されています。
 答弁で第五次男女共同参画基本計画ばかりを引いていますが、男女共同参画局長はこれまでの政府の男女共同参画の取組を丸川大臣に理解していただく努力が必要なのではないですか。
 男女共同参画会議基本問題専門調査会は、二〇〇一年十月十一日、選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間取りまとめにおいて、当専門調査会としては、個人の多様な生き方を認め合う男女共同参画社会の実現に向けて、婚姻に際する夫婦の氏の使用に関する選択肢を拡大するため、選択的夫婦別氏制度の導入が望ましいと考えると、二十年前に方向性を示しています。これ、資料を出しておりますけれども。
 今後の取組をお伺いします。男女共同参画局、お願いします。
○政府参考人(林伴子君) 丸川男女共同参画担当大臣、二月に就任されて以来、私ども男女共同参画局、私、局長以下、選択的夫婦別氏制度をめぐるこれまでの議論の経緯、そして昨年末に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画の内容など、詳細に繰り返し何度も御説明を申し上げているところでございます。
 今後も引き続き、この問題について大臣にしっかり御説明をするとともに、国民の皆様方が深い議論をしていただけるよう、議論の後押しを私どもとしてもしてまいりたいと思います。
○高良鉄美君 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
 やはり、男女共同参画局の役割としても、この男女共同参画社会基本法、一九九九年に制定されておりますけれども、これの中にも、行政機関としても担当大臣にいろいろなアドバイスをすると、支援をするということが書かれていますので、そこはしっかりお願いしたいと思います。
 そして、今もありましたけれども、この資料の中、この流れを見るということ、とても大事でして、第五次だけを強調しているように見えるんですけれども、かつてこういった夫婦別姓の問題について上川大臣は賛成を表明しておられたと思いますけれども、反対を表明された丸川大臣とで、ちょっとまあ賛成と反対でベクトルは違うんですけれども、今立たれて、改正しない理由というのが第五次男女共同参画基本計画の中にあるようなことを同じようにおっしゃっているというんじゃないかということを一応指摘をしておいて、次の質問に入ります。
 上川大臣は、無戸籍状態の解消について寄り添い型の取組を継続すると述べられましたが、大臣は二〇〇七年から無戸籍の要因となっている嫡出推定規定の見直しに大変関心を持たれていると承知しています。嫡出用語については、国連子どもの権利委員会から見直しの勧告がされています。嫡出概念やこの用語を持つ国も近年廃止してきた国際的な潮流があります。
 現在、嫡出推定規定の見直し論議が行われているようですが、嫡出という概念や嫡出の用語の見直しをするときではないでしょうか。法務大臣、お願いします。
○国務大臣(上川陽子君) 無戸籍者の方々が今もその権利を主張することができない状態にあるということにつきましては、一日も早くこうした状況を改善しなければいけないという思いで、第一回目の法務大臣の当時からこの問題に取り組んでまいりました。
 今、嫡出であるかないかという、この嫡出でない子という用語につきましては、これは最高裁判所は、民法等の規定上、あくまで法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するものとして用いられているということで、差別的な意味合いを含むものではないと判示をしているわけでございますが、この用語が用いられてきました社会的、歴史的な背景も踏まえますと、この用語を見直すべきとの指摘があることも承知をしているところでございます。
 現在、法制審議会の民法(親子法制)部会におきましてこの嫡出推定制度の見直しについて調査審議がなされているところでございますが、その中でも同様の指摘がなされておりまして、この点につきましては引き続き検討が必要な課題として整理をされているものと認識をしているところでございます。
 親子法制に関しましての課題、喫緊の対応が必要な課題でございます。法制審議会におかれましては、スピード感を持って、また充実した調査審議がなされるよう期待をしているところでございます。
○高良鉄美君 嫡出という言葉も含めて、一番最初に質問をしましたが、法の支配の中の概念で、それから大臣の所信の中にもありますけれども、誰一人取り残さない社会の実現を目指すといったときのこの基本的な概念の中で、嫡出とそうでない子というような表現というのは、やはり取り残されていくんじゃないかという響きがあります。その点も踏まえて、また今後取組を私期待しておりますので。
 上川大臣、離婚後の共同親権には積極的に取り組む姿勢を見せながら、事実婚の共同親権には否定的な答弁を繰り返していますが、選択的夫婦別姓が認められないために事実婚夫婦の子供が単独親権になっています。夫婦が共に子供を養育しているのに、事実婚というだけで単独親権というのは、子供の最善の利益と思われますでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘がございましたとおり、現行の民法におきましては、この父母の婚姻中は子供の親権は父母が共同して行使すると規定する一方で、事実婚のカップルから生まれた子供の親権につきましては父母のいずれかが単独で行使することとされております。
 現行法の下で、法律婚と事実婚は相続権の有無も含めまして法的に差異が設けられているところでございます。事実婚の場合にも共同親権を認めることにつきましては、民法の法律婚制度の存在意義に遡って慎重に検討する必要があるというふうに考えております。
 また、事実婚につきましては明確な定義がございませんで、様々な形態が考えられるところでもございます。共同親権を認める基準としては不明確ではないかということでございまして、いつの時点で事実婚の状態が終了したのかが明確でない場合も考えられるところでございます。
 このため、御指摘の問題につきましては、これらの課題への対応を含めまして慎重な検討を要するものというふうに考えております。
○高良鉄美君 まあ質問というよりも締めたいと思いますけれども、時間が来ましたので。
 大臣の所信の非常に重いお言葉だと思います。法の支配というものの内容を私何度も聞きましたけれども、それから、法の支配のこの貫徹された社会というのがどういうような社会なのか、そして、多様性と包摂性のある誰一人取り残さない社会の実現というのはどのような形で進んでいくのかと。
 先ほど山添議員から同性婚の話もありました。これは最高裁、失礼しました、地裁が、裁判所が憲法違反の問題というのが出てきているわけですね。こう同性、りっしんべんの性の同性婚の問題がこれだけ憲法問題となって上がってきている、大きな話題になっているわけですね、議題に。
 かばねのおんなへんの姓の方は、なかなか、先ほど言いました二十五年、四半世紀話題に上がって法制審の答申の中でこれ変えるべきだとして、国際的にも女性差別撤廃委員会から指摘をされているということも考えていただいて、是非、大臣には、その初代のこの民法改正で大きな働きをしたと、夫婦別姓の問題について、そういうような形を私は期待しながら、もう質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。