2019年11月21日 参議院 法務委員会 給与法改正案質疑(裁判官・検察官)
質問内容
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、並びに、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成し、
・選択的夫婦別姓について(民法上の氏に関連して)
・難民認定制度における収容の長期化に対する法務省の取り組みについて(送還忌避者の定義に関連して)質問をした。
議事録
第200回国会 参議院 法務委員会 第6号 令和元年11月21日
200-参-法務委員会-6号 令和元年11月21日
○高良鉄美 沖縄の風の高良鉄美でございます。
先ほど来から、司法アクセスの問題、司法サービスの問題ありましたけれども、私も沖縄の方から来まして、最初、山下委員のありました離島の問題もありまして、裁判官あるいは裁判所その他司法アクセスの問題というのは、今ちょうど山添委員も言いましたように非常に重要なことですので、矛盾しないように整合性を持って、司法アクセスそしてゼロワン地域の解消、そういったもののために司法改革をやってきたんじゃないかということを最初に申し上げまして、今回の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、それから検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案には一応賛成ということを申し上げた上で、やはりこれの充実に向けて、裁判官及び検察官ということで司法権の充実、特に私一番最初に質問したときに法の支配というのがありましたけれども、そういったことを考えますと、やはり司法権の役割というのをしっかりとまた全うする意味で、この法案そのものには賛成をしたいと思います。
その上で、民法、前回少し時間を超過しましていろいろ御迷惑をお掛けしましたけれども、その件について少し質問をしたいと思います。民法の選択的夫婦別姓問題と、それから難民政策、これは民法ではありませんけれども出入国管理の関係で、この大きな二点について幾つか質問をしたいと思います。
選択的夫婦別姓が実現していない、こういった中で、通称使用が不便あるいは不利益を一定解消するということは理解をしています。ただ、通称がこういうふうに限りなくどんどん広がっていくということは、民法上の氏との関係で、一体この法律上、氏というのは何なのかと、その区別する意義というのは一体どういうことなのかということで御質問いたしました。それ大臣に対する質問でしたけれども、残念ながら参考人の方が出ておられて答弁をされました。
その際に、ちょっとその答弁の内容を見て、聞きますとますます疑問が強くなりまして、小出参考人の答えは、民法上の氏は、民法によって定める個人の呼称の一部であるとともに家族の呼称としての意義を有しておりまして、選択的夫婦別氏制度の導入に慎重な意見の方の中にはこの意義を重視する方がおられるものと承知しておりますと、こういうふうに答弁されました。
これ、明治民法下で、氏は家の呼称ということであり、戸主と家族は家の氏を称してまいりました。妻は婚姻により夫の家に入って家の氏を称する結果、言わば家制度の産物として夫婦同氏であったわけです。しかし、戦後の民法の大改正によって家制度は廃止されました。で、氏は個人の呼称になりました。それで、最初に個人の呼称ということを言っておられました。
政府参考人は、家族の呼称としての意義を有しているということを言われ、そういった選択的夫婦別氏に慎重な意見の方にはこの意義を重視する方がおられるという答弁をされたわけですから、これが夫婦別姓に反対する理由なのでしょうかと。今の憲法の下では、法改正をしない理由となり得るのかと、そういう方々がいらっしゃるということですね。
氏は、名前と結合することによって社会的に自己を認識させるもので、自己の人格と切り離して考えることはできないわけです。最高裁も、これ、氏名は、個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するもの、こういうふうに判示をいたしました。この人格権の一部を構成するということで氏名があるならば、本人の意思によらないで氏の変更を強制するというのは人格権の侵害として許されないということになります。
家族の呼称としての意義を重視する方がいるからという理由で別姓を望む人たちには法律婚を認めない、それが憲法上許されるのか。あるいは、通称使用では不便が解消されないために民法改正を求めている当事者がいらっしゃる。それから、通称使用の広がりで緩和されるから、もう要らないんだと、改正はですね、ということでいいのでしょうか。
小出参考人の答弁を聞いておりますと、個人の呼称としてより家族の呼称ということに重点が置かれて、個人の尊厳や両性の本質的平等と、これに基づくんだということの憲法の理念が念頭にない答弁だったと思います。
大臣に改めて伺います。
公的に通称を認めることで一定の不便は解消できることは理解できますが、ただ、限りなく通称が可能になれば、民法上の氏とは何か、あるいは通称と戸籍上の氏を区別する意味はあるのかというそもそも論になりますが、民法を所管する大臣に、この民法上の氏というのをどのように捉えていらっしゃるかということを、前回参考人の方が答えましたけれども、大臣に改めて伺いたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 高良委員にお答えします。
高良委員の一番最初の御質問を受けて光栄ですと申し上げたときに、今おっしゃったように法の支配ということをお示しになり、先ほども、司法サービスをあまねく日本国民全員が受けるということに対する委員のお考えには深く共鳴するものでございます。
御質問の点におきましては、委員が御指摘今なさったとおり、政府におきましては、婚姻によって民法上の氏が変わった後も、旧姓の使用を望む方が引き続き旧姓を使用することができるよう、旧姓の通称使用の拡大に向けて取り組んできたところでございます。
私も自民党の法務部会長を歴任しておりまして、その際にも、この問題については多くの皆様の多角的な見地からの多様な意見を部会長として伺ってきたという経験がございます。そのような中で、民法上の氏は民法によって定まる個人の呼称の一部であるというふうに思いますけれども、一方で、家族の呼称としての意義を有しているという指摘もあるわけでございます。
このように、通称とそれから民法上の氏とは、その役割、機能も異なるものでございますから、御質問の点については、選択的夫婦別氏制度についてでございますけれども、旧姓の通称使用を拡大をするという方向で政府が行っておりまして、そこが通称と民法上の氏を区別する意味が失われるという御指摘については、そういうことにはならないというふうに考えております。
○高良鉄美 法の支配の言及がありまして、ありがとうございました。
これ、ちなみに、二〇〇三年七月の衆議院の法務委員会で、参考人質疑において、元内閣法制局長官で民法の身分法を専門とする大森政輔氏が、元々氏の異なる男女が婚姻共同生活に入るに際して、氏を同じくすることが必須の事柄であるとは到底考えられないと述べられ、家族の形態や夫婦の考え方の多様化について、家族に関する法制度と申しますのは、それらを包含できる弾力的かつ柔軟性のある制度であることが望ましいという指摘がなされています。
安倍首相の所信にもありました「みんなちがって、みんないい。」、あるいは新しい時代の日本に求められるのは多様性だ、これは、言葉では言っていますけれども、氏を同じくすることを法律婚の必須の事柄、厳しい要件として画一的な家族しか認められていないというような、こういった状況では、憲法の理念あるいは法の支配といった観点から今後も少し議論していきたいと思います。ありがとうございました。
それでは、この件につきましてはまた今後ということで、難民認定制度について、急ぎ質問したいと思います。
送還忌避者ということの定義についてですね。政府参考人の高嶋参考人は、先週の衆議院の法務委員会で、送還忌避者が退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、自らの意思に基づいて法律上又は事実上の作為、不作為によって日本からの退去を拒んでいる者として、その中には難民申請者も含まれるという説明をされました。
しかし、今年の四月のパブリックコメントですね、出入国在留管理基本計画案へのパブリックコメントでは、実効性のある送還を実施するための方策を取る対象はいわゆる送還忌避者ですが、この中には、この送還忌避者の中には現状において難民認定申請中の者は含まないものと認識していますという回答をされています。
この間に送還忌避者の定義が変わったということでしょうか。政府参考人に聞きます。
○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。
御指摘のパブリックコメントは、チャーター機による集団送還、航空会社の保安要員を活用した送還などの実効性のある送還をどのように実施していくかという、その方策についていただいたものでございます。
定義が変わったのかという御質問でございますが、定義は前回も述べさせていただいたとおりで、定義が変わっているわけではございませんで、問題としている場面、時系列で申しますと、問題となっているその場面が異なっているということでございます。
ここで問題としているのは、今申し上げましたとおり、チャーター機による集団送還等を実施する場面でございますので、そういう段階ではもう既に難民認定申請の手続が終わっている者だけを問題としている、そういう場面でございますのでそういう者は含まれないという、こういうお答えをしているところでございます。
以上でございます。
○高良鉄美 申請中の者はという質問に対してということですけれども、終わっているということに対しての送還の問題ですね。
やっぱり、申請者に関しては送還を停止するということが、これは入管法でもそうでしょうし、あるいは国際法上も送還することは適当でないということなので、この送還を忌避しているという表現は不適切だというようなことで考えています。
そして、もう時間がなくなってきていますので、ちょっとだけ飛びますが、問題をですね。今、同じ難民の問題ですけれども、国際法上の原則あるいは国際的な基本理念ということで、これは送還の関連で難民申請者の送還は停止するという中身がこの国際法上の原理と、原則ということでよろしいでしょうか。これ、法務大臣はいかがでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 御指摘の難民保護の国際法及び国際的基本理念とは、難民条約第三十三条第一項に規定される、いわゆるノン・ルフールマン原則を含め、難民条約とその内容に含まれる基本理念を指すものと理解しております。
○高良鉄美 これに関しては、その基本理念の中のノン・ルフールマン原則ということで、これを理解しておきたいと思います。
最後になりますけれども、専門部会、実は、この第六次出入国管理政策懇談会、こういった際に難民認定制度に関する専門部会が設置されていましたけれども、今回、専門部会また同じようにありますが、この難民認定の問題、収容・送還に関する専門部会というのができています。この二つの部会を、これを比べますと、一年掛けて報告書を作るというのと、それから、今回の場合には六か月で三月にということですけれども、この三月の場合は期間延長なども考えているでしょうか、ということで、六か月というのは余りにも半分で短いので、その辺をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(高嶋智光君) 御指摘の専門部会で議論しております収容、送還に関する問題というのは、これは我が国の出入国管理制度の根幹に関わり、その問題は我が国の社会秩序や治安に影響を与える大事な問題でございます。したがいまして、この問題を解消することは出入国管理行政にとって喫緊の課題でありまして、可及的速やかに対策を講じる必要がございます。
そのため、専門部会の開催期間につきましては、本年十月から来年三月までの六か月間として一応設定させていただきました。三月には政策懇談会には最終報告をしていただくということを目標としております。もちろん、そうなりますと一月に複数回の部会を開催しなくてはいけないなどタイトなスケジュールとなりますが、委員の方々には大変な御負担をお掛けすること、大変恐縮だと考えてはおります。
ただ、この専門部会の開催期間を含む議論の在り方につきましては、最終的には専門部会においてお決めになることでありますので、申し上げたような現状や課題を踏まえ、議論を尽くしていただきたいというふうに考えております。
○高良鉄美 時間来ましたので、ありがとうございました。終わります。