国会質疑 Interpellation

2019年11月26日 参議院 法務委員会 一般質疑

質問内容

・選択的夫婦別姓について(冒頭コメント)

・女性差別撤廃条約選択議定書について

・在朝被爆者問題への取り組みについて

・共同親権について

議事録

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第200回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和元年11月26日
200-参-法務委員会-7号 令和元年11月26日

○高良鉄美 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 前回、民法上の氏の問題、そして通称使用の問題、少し御答弁いただきましたので、その件に関してコメントを含めておきたいと思います。
 民法上の氏と通称使用との関係で質問したのは、民法上の氏が公にされる、公に使われることがなくなったり、ダブルネームの使い分けやその管理の面で、個人もどちらを使うのか、あるいは企業もこの届出のときにはどちらを使うのか、こういったような負担を掛けてしまうと。夫婦別姓を認めない合理的な理由が見出せないからということになるわけですね。
 これまで多くの議員が選択的夫婦別姓を求めて質問してきましたが、政府の答弁は論点外しというか、木で鼻をくくったような答弁だと言われても仕方がないんじゃないかと。ただ、選択的夫婦別姓にしてほしいという切実な声であると、その声には様々な意見があるとして、聞き入れない態度というのがちょっと見られるんじゃないかということですね。旧姓の通称使用で、これで不便があるという人に対して、旧姓の広がりでとにかく一定程度は緩和されるということから問題がないということではいけないんじゃないかと。救済を求める個別の声に一般論で突き放すという、こういった形のものはいかがなものかというふうに感じました。やはり、例えば車椅子の方が道が通れないからこの道を広くしてほしいというようなときに、多くの人々は余り問題ないから別に広げる必要はないと言っているような形になるのかというような気もします。
 少数者の権利というのは多数決原理を取っている国会ではなかなか守られにくいですけれども、少数者の権利も憲法で保障されています。憲法で守られた個人の尊厳を保障するのは、また裁判所の役割でもあります。なかなかこのことを実感できないでこの夫婦別姓を求めている原告らはいると思います。そういった意味では、憲法の中で、個人としては平等権という形で行政に対して持っているわけですけれども、国に対して、それに対して、逆に国の方は平等に取り扱わないといけないというのがありますので、別姓を使いたいという人と、それから、いやいや、私たちは別姓ではありませんという人も、両方にどちらも害がないように、不利益がないように扱うべき義務を負っていると思います。そういうことを一つコメントしたいと思いますが。
 質問の方は、女性差別撤廃条約、関連はしていますが、選択議定書についてお伺いをしたいと思います。
 今年は、一九七九年十二月に国連総会で女性差別撤廃条約が採択されてから四十年、そして、一九九九年十月に女性差別撤廃委員会への個人通報や調査制度を定めた選択議定書が採択されて二十年の節目になりました。日本は、一九八〇年にこの条約に署名しました。そして、八五年に国会承認を経て七十二番目の加盟国となりましたが、この選択議定書については現在まで批准していません。
 そこで、外務省にお伺いします。
 女性差別撤廃条約加盟国、それから選択議定書批准国の数、さらに、OECD加盟国三十六か国のうち米国を除いて、米国の方は加盟していませんので、それ以外でOECDの加盟国のうち選択議定書を批准していない国があるかどうか、それをそれぞれお示しください。お願いします。
○政府参考人(赤堀毅君) お答えいたします。
 国連の関連ホームページによれば、十一月二十五日、本年、時点における女子差別撤廃条約の締約国数は百八十九か国、選択議定書の締約国数は百十三か国となっております。また、OECD加盟国のうち、条約本体を締結していない米国以外で選択議定書を締結していない国は、我が国、チリ、イスラエル、エストニア及びラトビアの計五か国であります。
○高良鉄美 批准していない国がOECD加盟国では五か国ということですけれども、条約全体においても、百八十九か国の加盟と百十三か国という、その議定書の間に差がありますが、この批准していない理由というのは何なんでしょうか、特に我が国の場合ですね。
○政府参考人(赤堀毅君) お答えいたします。
 女子差別撤廃条約選択議定書には個人通報制度が規定されております。この制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度です。他方、女子差別撤廃委員会から、例えば国内の確定判決とは異なる内容の見解、通報者に対する損害賠償や補償を要求する、要請する見解、法改正を求める見解等が出された場合に我が国の司法制度や立法制度との関係でどのように対応するか、他国に関する通報事例等も踏まえつつ検討する必要があると認識しております。
○高良鉄美 そういう意味で、今理由がありましたけれども、日本は、一九八五年にこの女性差別撤廃条約を批准してから現在まで、この女性差別撤廃委員会に途切れることなく委員を送り出して、林陽子さんは委員長も務められました。そして、例えば国連機関ですけれども、第八代の国連難民高等弁務官、この間お亡くなりになりましたが、緒方貞子さん、あるいは第二十二代の国際司法裁判所裁判官の小和田恆さんなどを始め、国連機関に多くの委員を出しております。
 この国連あるいは国際機関において多大な貢献をしている我が国ですけれども、それゆえに、日本の人権保障や差別撤廃の取組というのは今国際社会から注目されていると。選択議定書批准というのは、人権の問題あるいは民主主義の問題、法の支配の問題、平和構築の分野で更なる貢献を行うために、そういうための基盤だと思うんですね。
 外務省は、民主主義、平和、自由、人権、法の支配、市場経済という普遍的価値に基づく外交を推進してきたと承知しております。
 今月七日の大臣所信で森法務大臣は、京都コングレスにおいて、法の支配や基本的人権の尊重といった基本的価値を国際社会において確立させるべく指導力を発揮しますと、こう述べられました。
 選択議定書を批准するための新たな法整備は実は不要なんです。これで別の法整備をする必要はありません。国会が承認すれば批准が可能なんです。女性差別撤廃委員会から選択議定書批准を求める勧告も繰り返し出されております。我が国の国際人権保障やジェンダー平等、この取組の姿勢を国際社会に示すというチャンスでもありますし、来年に向けた今後の取組について、外務省の政府参考人と法務大臣にそれぞれお伺いしたいと思います。
○政府参考人(赤堀毅君) お答えいたします。
 政府といたしましては、これまで二十回にわたり個人通報制度関係省庁研究会を開催するとともに、諸外国における個人通報制度の導入前の準備や運用の実態等について調査等を行ってきております。
 こうした諸外国の事情に加え、各方面から寄せられつつ、意見等も踏まえつつ、個人通報制度の受入れの是非について引き続き政府として真剣に検討してまいります。
○国務大臣(森まさこ君) お答えいたします。
 個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から、注目すべき制度だと思います。個人通報制度の受入れについては、条約の締結を所掌する外務省において所要の検討が行われているものと承知をしておりますので、個人通報制度の受入れについて今外務省の事務方から答弁があったとおりでございますので、法務省としては、外務省の検討に必要な協力を引き続き行ってまいりたいと思います。
○高良鉄美 是非検討を進めていただきたいと思いますが、要するに、今のような理由もあるんですが、それ以上に、国際社会からの視点で、人権の問題である、あるいは基本的価値の問題であるということを考えると、指導力を是非発揮していただいて、もうそうでなければ、指導的にいろいろ国際社会に法の支配を訴えていくということは難しいんじゃないかと思うんですけれども、是非そういう方向でまた検討を進められていくことを期待したいと思います。
 次に、被爆者問題についての取組についてお伺いをしたいと思います。
 二十三日に来日されましたバチカンのフランシスコ教皇が、今日までいらっしゃるんでしょうか、被爆地の長崎と広島でスピーチをされ、核兵器廃絶に向けた力強いメッセージを発信されました。被爆地は核兵器が人道的にも環境的にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である、そういうこととか、あるいは、大勢の人々が苦しんでいることに無関心でいることは許されない、そういったようなことが多くの人の心に響いたと思います。
 被爆国の私たちがやらなければならないことは、核廃絶への取組と核兵器の悲惨さを示す証人でもある被爆者の救済だと思います。残念ながら、広島、長崎で被爆しながら救済を受けられない方はいまだに数多くいます。
 そこで、朝鮮被爆者問題についてお伺いします。
 広島、長崎で被爆した方の十人に一人が朝鮮半島出身者ですが、このことはほとんど知られていません。祖国解放後に帰国された被爆者は二万三千人とも言われています。日本政府は、韓国の被爆者支援には基金を拠出しています。一方で、国交のない朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮には全く支援をしておりません。しかし、朝鮮被爆者問題の取組に関する経緯を見ると、政府は一定の取組を行ってきています。
 お配りした資料で年表のようになっていますけれども、一九九四年の被爆者団体との懇談会から外務省の事務次官が在朝被爆者問題について提起されています。特に小渕政権の九九年からは積極的に取り組まれていたと承知をしております。二〇〇〇年の被爆者実務代表団来日の際には、小渕総理、野中官房長官、訪朝団の団長でもいらした村山元総理がそろって面会し、被爆者問題について懇談されています。二〇〇一年三月には、外務省のアジア大洋州局参事官を団長とする在北朝鮮被爆者実態調査代表団が現地を視察し、報告書がまとめられました。報告の取りまとめに携わった外務省北東アジア課によると、政府内で協議をして支援を考え、基本的には外務省が対応されると伺っています。ところが、その後の取組についてはほとんど公表されていません。
 そこで、外務省に朝鮮被爆者問題についてお伺いします。在朝被爆者について把握されている現状と、二〇〇一年の訪朝後の被爆者支援の取組について教えていただけたらと思います。
○政府参考人(遠藤和也君) お答え申し上げます。
 御指摘の平成十三年三月、在北朝鮮被爆者実態調査代表団が現地を訪問し、当時、北朝鮮に居住されている被爆者は約九百名、平均年齢は六十九歳である等の説明を受けたと承知しております。在外被爆者に対しては、調査を行った平成十三年当時は被爆者援護法が適用されない取扱いでございましたが、その後、累次の改正を経て支援策が講じられてきたと承知しております。
 引き続き、関係省庁間で緊密に連携しながら適切に対応する考えでございます。
○高良鉄美 厚生労働省の政府参考人、何かありますか。よろしくお願いします。
○政府参考人(奈尾基弘君) お答え申し上げます。
 御指摘の平成十三年三月の実態調査代表団につきましては、今ほど外務省からお答えしたとおりでございます。
 在外被爆者に対しては、調査を行った平成十三年当時は被爆者援護法が適用されない取扱いでございましたけれども、その後、累次の制度改正によりまして、現在は、被爆者援護法に基づき、海外からも最寄りの領事館を経由して手帳申請や各種手当の申請は可能となってございます。また、居住地で医療を受けた場合でも医療費の支給を実施しているところでございます。
 北朝鮮につきましては、在外公館などの窓口もございませんので、北朝鮮の在外被爆者に対する支援を実施することは事実上困難ではございますけれども、厚生労働省ホームページでは、在外被爆者向けに多言語による各種申請について御案内しているところでございます。
○高良鉄美 先ほど平均年齢六十九歳というのが二〇〇一年頃のお話でしたので、現在でいうと十八年たっていますので、平均年齢的にいうと八十七歳ということになるんでしょうか。そういった意味で、被爆者が生存されているうちに救済する必要があるんじゃないかと思います。
 在北朝鮮被爆者実態調査代表団の一員として参加された広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センターの伊藤千賀子所長は、帰国後、老いた被爆者は国交正常化を待つわけにはいかないということで、国交問題とは切り離した人道支援の必要性を強調されました。
 政府が公式に北朝鮮、在朝ですね、在朝被爆者問題に取り組む姿勢を明らかにしておきながら放置することは許されませんので、この問題に対してどのような取組をするのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(遠藤和也君) お答え申し上げます。
 御指摘の点に関して、被爆者が放射能による健康被害を受けたという点で人道上の問題だと考えておる次第でございます。政府として、引き続き、本件が重要な人道上の問題であることを踏まえ、関係省庁間で緊密に連携しながら適切に対応してまいる考えでございます。
○高良鉄美 今の御回答を受け止めたいと思います。今、本当に制裁で北朝鮮との関係があるということで、国との関係はありますが、弱い立場のこの被爆者の家族、またあるいは被爆者本人の問題があって、なかなか不利益が大きいということもあって、真摯に取り組んでいただけるということで今回答を得たような形ですので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 次に、共同親権についてお伺いします。
 今朝も、安江委員の方からも少し関連したことがありました。そして、この問題は嘉田委員が本委員会で取り上げておられますが、今日は事実婚の共同親権についてお伺いします。法律婚ではなくてですね。
 選択的夫婦別姓が実現しないことで事実婚にしているカップルがいます。そしてまた、やむを得ない理由により法律婚ができないカップルもいらっしゃいます。父母共に同居して子供を養育していても、親権は父か母かどちらかの一方の単独親権と、この事実婚の場合はですね。子供の最善の利益を考えるならば、共同親権にしない理由はないのではないかと思います。
 近年、行政サービスなどで事実婚も法律婚も同等に扱うようになってきていますが、事実婚には共同親権を認めないことについて合理的な理由があるのか、法務大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○国務大臣(森まさこ君) 御指摘のとおり、民法は、父母の婚姻中は子供の親権は父母が共同して行使すると規定する一方で、事実婚のカップルから生まれた子供の親権については父母のいずれかが単独で行使することとなっております。
 現行法の下で、法律婚と事実婚は相続権の有無も含めて法的な差異が設けられているところでございますが、事実婚の場合にも共同親権を認めることについては、民法の法律婚制度の存在意義に遡って慎重に検討する必要があると考えております。
 また、事実婚については明確な定義がございませんで、様々な形態が考えられると思います。共同親権を認める基準としてはなかなか不明確であると言わざるを得ず、また、いつの時点で事実婚の状態が終了したのかが明確でない場合も考えられますので、そのような場合に共同親権の状態にあるのかどうか不明確になるという問題も指摘されているところでございます。
 もっとも、現在、本年十一月十五日に第一回会議が開催された家族法研究会について、父母が離婚をした後の子供の養育等について検討がされておりまして、この研究会において事実婚の状態にある父母の子供の親権についても議論がされ得ると認識しています。
 法務省としては、親権は子供の利益のために行使をされるべきものであると考えておりますので、今後の議論の状況をしっかりと注視してまいりたいと思います。
○高良鉄美 ありがとうございます。
 二〇〇三年の十一月二十八日の法務委員会で、当時の谷垣大臣が、事実婚の父母に共同親権を求める、そういった質問に対して、事実婚の場合はと、今のようなちょっと御回答の一部がありましたけれども、事実婚の場合は、子の両親、父、母、この結び付きや生活状況というのが極めて様々であろうと思います、したがって、一定の状況を前提とした規律に親しみにくい面があるのではないか、そう述べた上で、必ずしも単独親権が不合理な規定とは考えていないと答弁されました。
 そうであればなおさら、共同親権について子供の法的安定を図ろうとする、そういうことが法務省の役割ではないかと思います。法律婚をしていても、破綻して別居している家族はあります。事実婚でも、子供を父母が一緒に養育している家族もあります。ですから、事実婚や法律婚といった、そういう問題ではないんだろうと。
 離婚後に単独親権がふさわしいという判断されるケースも確かにあるかもしれません。しかし、最も守られなければならない子供の最善の利益ということですから、事実婚であっても離婚後であっても共同親権があって、場合によってはケース・バイ・ケースで単独親権ということも、これはDVの問題があったりする場合には可能ということが立法の趣旨にかなうのではないかと思います。
 共同親権の検討に向けた議論というのは先ほどある程度御紹介ありましたけれども、森大臣、まだこれ以上、先ほどの回答で私は十分の姿勢を示されたと思いますけれども、そういったことで是非また、事実婚の共同親権についても先ほどの家族法研究会の中で議論される可能性があるということをおっしゃいましたので、よろしくお願いしたいと思います。
 私の時間ちょっともう近づいていますけれども、もし御見解あれば示していただけたらと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 父母が離婚した後であっても、子供にとっては父母のいずれもが親であることは変わりはございませんので、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子供の教育に関わる、養育に関わることが子供の利益の観点から非常に重要であると考えています。
 先ほど申し上げた家族法研究会の第一回、十一月十五日に開催されたわけでございますが、そこでは離婚後の共同親権の制度の導入の当否が今後の重要な検討課題の一つとして確認をされておると承知をしております。今後、離婚後の親権の在り方について、委員が今御指摘されたDV等の事案も踏まえて、どのような制度が適切であるかが議論されることになるものと考えております。
 法務省としては、引き続き、この研究会において積極的に議論に参加してまいりたいと思います。
○高良鉄美 これを前向きに御検討なさるというふうに受け止めたいと思います。
 もう既に研究会の方ではそういうような議論をされているということでございますので、是非、事実婚の方も含めまして、子供の最善の利益ということで、法律婚、あるいは離婚後、あるいは事実婚と、ケース・バイ・ケースの先ほどの事例もありますので、そういった点で是非前向きに御検討をいただけたらと思います。
 私の時間、近づいておりますけれども、少し前ですが、終わりたいと思います。ありがとうございます。