国会質疑 Interpellation

2019年11月14日 参議院 法務委員会 一般質疑

2019年11月14日 髙良鉄美 質疑

質問内容

選択的夫婦別姓と通称の使用、さらには難民政策について質問。

法改正が必要であるという理由は様々に示されている。戦後の大改正から長い年月が経過し、結婚や家族に関する価値観が多様化したこと、結婚改姓による不利益が大きく、民法改正を求める声が高まったこと、法律で同姓を強制している国が日本以外に見当たらないこと、女性差別撤廃条約批准を念頭に、契機に、政府が男女平等の観点から見直し作業を行い、法制審議会が答申したこと、国連機関から民法改正を繰り返し勧告されていること、若い世代、とりわけ改姓を余儀なくされる女性たちの賛成が圧倒的多数であることなどが挙げられるが、同姓を法律で強制しなければならない根拠は明確に示されていないのである。

政府は、民法改正に慎重な姿勢を示す一方で、旧姓の通称使用の拡大に意欲を見せている。
法務省は、選択的夫婦別姓導入の民法改正よりも、この旧姓の通称の使用、つまり、民法上の氏の問題と、通称、ダブルネームを持つことを推奨するということでいいのか。

確かに公的に通称を認めることで不便を解消できるという考え方、意見もあるが、限りなくこの通称が可能になれば、民法上の氏というのは何なのか、あるいは通称と戸籍上の氏を区別する意味があるのかという疑問もある。
そこで、民法を所管する大臣に、民法上の氏というのをどのように捉えてい流のかを質問した。

議事録

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第200回国会 参議院 法務委員会 第4号 令和元年11月14日
200-参-法務委員会-4号 令和元年11月14日

○高良鉄美 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 先日、十二日の委員会で通告しながらできなかった選択的夫婦別姓と通称の使用、さらには難民政策についてお伺いします。今日はその三点です。
 森大臣は、七日の所信表明で、来年の京都コングレスにおいて、法の支配や基本的人権の尊重といった基本的価値を国際社会において確立させるべく指導力を発揮しますと述べられ、十二日の私の質問に対して、法の支配とは、人権の保障と恣意的権力の抑制を主として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方をいうものと認識していますと。さらに、法の支配とは、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護するということを目的としておりますので、ここでいう法は形式的な法律ではなく、今御指摘のような様々な基本的な人権や基本的価値を含む内容が合理的な法を指すものと認識していますと答弁されました。
 法務大臣の法の支配に対する御認識を伺い、大変心強く、また質疑を通して有意義な対応ができるものと御期待申し上げ、質問に入りたいと思います。
 今日、先ほど申しました選択的夫婦別姓と通称使用について伺います。
 安倍総理は、十月四日の所信表明演説で、「みんなちがって、みんないい。」と金子みすゞの詩の一節を引用し、新しい時代の日本に求められるのは多様性である、みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を根本から見直していく必要がある、多様性を認め合い、全ての人がその個性を生かすことができる、そうした社会をつくることで、少子高齢化という大きな壁も必ずや克服できるはずだと述べられました。
 まさに家族の在り方についても同じだと思います。選択的夫婦別姓が認められずに事実婚にするカップルは増えています。結婚する人の四組に一組は双方あるいは片方が再婚です。働く女性の四人に一人は通称使用をしています。子供を持たないカップルやステップファミリーなど、家族の形は多様化しています。ところが、これまで政府は、選択的夫婦別氏制度の導入の問題については、我が国の家族の在り方が深く関わるもので、国民の間にも様々な意見があることから慎重に検討すると繰り返し、夫婦別姓を認めていません。しかし、この答弁、よく見ますと理由が全く述べられていません。法改正しない根拠が示されていないということです。
 法改正が必要であるという理由は様々に示されています。戦後の大改正から長い年月が経過し、結婚や家族に関する価値観が多様化したこと、結婚改姓による不利益が大きく、民法改正を求める声が高まったこと、法律で同姓を強制している国が日本以外に見当たらないこと、女性差別撤廃条約批准を念頭に、契機に、政府が男女平等の観点から見直し作業を行い、法制審議会が答申したこと、国連機関から民法改正を繰り返し勧告されていること、若い世代、とりわけ改姓を余儀なくされる女性たちの賛成が圧倒的多数であることなどが挙げられますが、同姓を法律で強制しなければならない根拠は明確に示されていません。
 今月八日の衆議院法務委員会での所信質疑で、森大臣は、法制審議会に諮問する立場ある法務大臣としては、法制審議会における審議及びその結果である答申については重く受け止めるべきものであると考えております、法務省においては、この答申を踏まえ、平成八年と平成二十二年に選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする法律案の提出に向けて準備をしましたが、それぞれその当時の与党内でも様々な意見があったことから、いずれも提出には至らなかったと答弁されています。そのとおりで、当時の与党は自民党であったんでしょうか、その一部の強硬な反対があって法改正が実現しなかったということが言われています。事実だと思います。
 法制審の幹事を務め、法律案要綱の作成、公表に中枢で尽力された法務省の当時の小池参事官は、与党に説明するために奔走したけれども法改正に至らなかった無念さを明らかにされています。
 そこで伺います。政府は、民法改正に慎重な姿勢を示す一方で、旧姓の通称使用の拡大に意欲を見せておられます。法務省は、選択的夫婦別姓導入の民法改正よりも、この旧姓の通称の使用、つまり、民法上の氏の問題と、通称、ダブルネームを持つことを推奨するということでいいのでしょうか。
 確かに公的に通称を認めることで不便を解消できるという考え方、意見もありますが、限りなくこの通称が可能になれば、民法上の氏というのは何なのか、あるいは通称と戸籍上の氏を区別する意味があるのかという疑問もあります。
 そこで、民法を所管する大臣に、民法上の氏というのをどのように捉えていらっしゃるのか、お伺いします。
○政府参考人(小出邦夫君) まず事務方からお答えさせていただきます。
 民法上の氏は、民法によって定める個人の呼称の一部であるとともに家族の呼称としての意義を有しておりまして、選択的夫婦別氏制度の導入に慎重な意見の方の中にはこの意義を重視する方がおられるものと承知しております。
 委員御指摘のとおり、政府においては、婚姻によって民法上の氏が変わった後も旧姓の使用を望む方が引き続き旧姓を使用することができるよう、旧姓の通称使用の拡大に向けて取り組んできたところでございます。
 旧姓の通称使用が拡大しましても、あくまでそれは通称として使用されるものでございまして、家族の呼称としての氏に代わるものではないと考えられますし、旧姓の通称使用が拡大した後も通称を使用せずに民法上の氏を使用する方も相当数おられるものと思われます。
 したがいまして、選択的夫婦別氏制度を導入しないまま旧姓の通称使用を拡大しても、民法上の氏の意義、これが失われることにはならないのではないかと考えているところでございます。
○高良鉄美 今のお話は、法改正をしていないから事実婚に走っているということが多いという、なぜその法改正をしないのかという問題も絡んでいますので、政府参考人に伺います。
 以前、上川大臣は、二〇一七年の十二月の法務委員会で、世論調査の結果には、例えば十八歳から二十九歳まで、あるいは三十歳代で選択的夫婦別氏制度の導入について賛成する意見、これが半数を超えているということで、世代間の意見に大きな違いが見られたことなど、貴重なデータが含まれているものと考えるとした上で、しっかりときめ細かな分析をして、過去の世論調査の結果とも比較検討を行うなどした上で、引き続き対応の検討をしてまいりたいと答弁されました。
 その後、そのような調査や検討が行われてきたでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 選択的夫婦別氏制度に関する世論調査、これは平成八年、平成十三年、平成十八年、平成二十四年、平成二十九年に行われております。
 これらの調査結果によれば、選択的夫婦別氏制度を導入するために法律を改めても構わないとする意見の占める割合は、平成十三年に四二・一%であったものが平成二十四年には三五・五%まで減少し、その後、平成二十九年には四二・五%に増加しております。これに対応しまして、夫婦は必ず同じ氏を名のるべきであり、法律を改める必要はないとする意見の占める割合は、平成十三年に二九・九%であったものが平成二十四年には三六・四%まで増加し、その後、平成二十九年には二九・三%に減少しております。また、夫婦は同じ氏を名のるべきであるが、婚姻前の氏を通称として使えるように法律を改めることは構わないとする意見の占める割合は、平成八年以降、二二・五%から二五・一%までの範囲内で推移しております。
 このように、過去の世論調査におきましても、それぞれの意見の占める割合は変動しておりまして、国民の意見の動向については引き続き注視していく必要があるものと考えております。
 また、平成二十九年の世論調査の結果を分析いたしますと、例えば子供のいる人といない人を比べてみますと、制度の導入に賛成する意見の割合は、先ほど申し上げたとおり、全体では四二・五%であるのに対しまして、子供のいない人の中では、平成十三年に実施の調査後、初めて制度導入に賛成する意見が過半数に達したところでございます。他方で、子供のいる人は子供のいない人よりも制度の導入に反対する割合が多く、夫婦の氏に関する法改正そのものに反対の意見と通称使用の限度で法改正を容認する意見を合わせると過半数に達する状況となっております。
 また、年齢別の傾向を取り上げてみますと、おおむね年齢が若いほど選択的夫婦別氏制度の導入に賛成する意見が多くなる傾向がございまして、十八歳及び十九歳の人の中では制度の導入に賛成の意見が全体の六割近くを占めているのに対しまして、七十歳以上の人の中では夫婦の氏に関する法改正そのものに反対する意見が過半数に達しておりまして、これに通称使用の限度で法改正を容認する意見と合わせますと、過去二回の調査時よりは少なくなってきているとはいいましても、全体の三分の二を占める状況となっております。
 また、仮に選択的夫婦別氏制度を導入することとした場合に、兄弟である子供同士の名字が異なることについてどのように考えるかという質問がございましたが、これにつきまして、名字が異なっても構わないという意見の中では、制度の導入そのものについても賛成の意見が過半数に達しているのに対しまして、名字は同じにすべきであるという意見の中では、夫婦の氏に関する法改正そのものに反対の意見と通称使用の限度で法改正を容認する意見を合わせると過半数に達する状況となっております。
 このように、この問題については国民の間でも様々な観点から異なる意見が示されているところでございまして、引き続き慎重な検討を要するものと考えているところでございます。
○高良鉄美 今いろいろと理由が、理由といいますか、世論調査の結果がありましたけれども、夫婦別姓の制度というのは、同姓をやめろと言っているわけではないんですよね。同姓の人は同姓でいいんです、別姓のやりたい人はいますよと。
 そういうことで、東京地裁の、十月二日、判決がありまして、これで初めて憲法十四条の信条に当たると考えられると、別氏を希望することは。これを希望する人がいるのに、希望しない人たちの意見を参考にすると。その方たちは別に変えなくてもいいんですよ。
 そういうことで、一番最初に私、法の支配の問題を言いましたけれども、基本的人権として、この信条で、私はこうやりたいと思っている信条について、これ裁判所認めたということで、これから憲法論争の中で最高裁まで行くと思いますが、もう既にこういった裁判の波があるということ。ただ、請求は認められていないということですけれどもね。まだ憲法判例を変更するまでは行かないといいますが、これから最高裁に上告が数件ありますので、これで行くかと思います。
 ですから、法務省としては、既にもういろんな意味でこの反対派の激しい抵抗に遭ったというようなこともありますけれども、九六年からこういった法改正についてはやろうとしていたわけですよね、要するに、平成八年、平成二十二年と。そういったことですから、法改正を求める側の国民を説得するのではなくて、阻む側に理解するように努力をしていただきたいということで、これが一番重要だと思います。そして、その努力も今後されるものと私は期待したいと思っておりますので、是非ともよろしくお願いします。
 次に、難民認定の問題についてちょっと質問をしたいと思いますが。
 先ほども難民の問題が、収容の問題がありました。そういったところで、確かに餓死をしたということがあって、日本で国の施設においてそういった餓死者が出たということについてはやっぱり大きな問題だと思います。
 そういった意味で、収容・送還に関する専門部会の話が先ほど答弁の中でありましたけれども、設置されたこの専門部会について、開催状況あるいは今後の予定ということも含めまして、簡単にお願いしたいと思います。
○委員長(竹谷とし子君) お時間が過ぎておりますので、答弁を簡潔にお願いします。
○政府参考人(高嶋智光君) 御質問の専門部会につきましては、十月二十一日に第一回会合、それから十一月十一日に第二回会合が開催されました。
 今後、令和二年三月頃までの間、月一回又は二回のペースで開催しまして、三月までには政策懇談会に最終報告を行うことを目標としていると承知しております。
○高良鉄美 この議事録について、次。今公開予定がありましたけれども、公開予定といいますか予定がありましたけれども、ただ、法務省の方でのこの議事録は公開予定というふうに聞いていますけれども、昨日までは公開されていません。次の専門部会の前に公開されないと、この専門部会の委員の皆様が内容を含めて、またそれに関心のある方々が分からないということで、これもいつ頃公開されるのかということ。それから、こういった……
○委員長(竹谷とし子君) 高良鉄美君、申合せの時間を過ぎております。
○高良鉄美 済みません、もう時間がありませんですね。
 いろんな方のヒアリングも含めて、この公開について時期をいつ頃かというのをお聞かせいただきたいと思います。(発言する者あり)
 質疑を終わります。この質問をお願いします。(発言する者あり)もう駄目ですか。はい、失礼しました。