国会質疑 Interpellation

2023年5月25日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・選択的夫婦別姓とジェンダー平等について

・ 基盤強化法案と財源について

議事録

第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第16号 令和5年5月25日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 林大臣、G7広島サミット、お疲れさまでした。多くの方々そういう形でねぎらって、まさに議長国として御苦労がいろいろあったかと思います。
 先ほども山添委員の方からありましたけれども、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とG7サミットを開催するとおっしゃっていたわけですけれども、果たして普遍的な価値、共通の価値というのを持っているかということは、非常に同じように疑問を感じました。
 私もずっと、法務委員会、あるいは、そして外務大臣にも防衛大臣にも総務大臣にも、法の支配というのはどういうものか聞いてまいりました。その中で、聞くと、法の支配が、どうなんだろうと、きちんと理解されているかというのは非常に疑問を感じました。
 例えば、今ありました、山添議員からも、そして福山議員からもありましたけれども、法務委員会で審議されている入管法の改正案というのは、法の支配の内容とされる人権保障、憲法の最高法規性、司法権の重視、適正手続の保障のいずれにもかなっていません。G7の国々と普遍的価値を共有しているのは、我々野党が発議者であって、私もその一人ですけれども、この野党案と言わざるを得ません。
 先ほどの山添委員の資料の一番最後に、G7の中で群を抜いて難民認定率が低いと、こういうのが際立っているわけです。それだけではなくて、報道の自由度も最下位、G7の中で。そして、ジェンダーギャップも最下位。同性婚を認めていないのは日本だけ。法律婚で同一姓を強制しているのも日本だけです。それで共通の価値を持っているというものは、ちょっと十分に言えることではないと思います。
 さて、今度は、選択的夫婦別姓とジェンダー平等について、今の関連でお伺いしたいと思います。
 四月十八日の参議院法務委員会で、選択的夫婦別姓を求められた齋藤法務大臣は、国民の理解が今すぐこう行くんだという形で十分に得られているとはちょっと感じられない状況などと、法改正に否定的な答弁をされました。法制審が議論を開始した経緯や五年を掛けて審議し答申したことを軽視するだけでなく、答申を受け、それを引き継ぐ立場にあることを踏まえない発言だと指摘しておきます。
 そして、法務省は、この法制審が議論を開始した経緯、審議経過、国連機関からの要請がある、要請であることを大臣を始め広く理解してもらうためにこれまで以上に努力をすべきだと考えますが、これまでの経緯と今後の取組について伺いたいと思います。
○政府参考人(松井信憲君) お答えを申し上げます。
 まず、検討開始の経緯についてですが、平成八年に選択的夫婦別氏制度の導入に関する答申をした法制審議会の審議は、平成三年一月に開始されたものでございます。当時、政府において、昭和五十九年に国連において採択されたいわゆる女子差別撤廃条約を批准したことや、総理府の婦人問題企画推進本部に設置された婦人問題企画推進有識者会議において、男女平等の見地から婚姻及び離婚法制の見直しについて提言がされることが見込まれていたこと等を踏まえ、法務省における検討が開始されたものです。
 法制審議会の審議の過程では、それまでの審議によって明らかとなった問題点とこれに対する意見を取りまとめて公表し、関係各界に対して意見照会を行っており、そこでは多数の幅広い意見が寄せられております。これらの意見も踏まえ、法制審議会は平成八年二月に民法の一部を改正する法律案要綱を決定し、法務大臣に答申いたしました。
 その後、法務省は、平成八年及び平成二十二年に、法案の提出に向け、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備しましたが、この問題については国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内においても様々な意見があったことから、改正法案の提出にまでは至らなかったものと承知しております。
 このように、法制審議会からは既に答申を受けている上、令和二年十二月二十五日に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画では、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関しては、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進めるとされております。
 法務省としては、平成八年二月の法制審議会の答申を前提に、国民各層の意見や国会における議論を踏まえて、その対応を検討していく必要があるものと考えております。そのため、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかりと御議論いただき、コンセンサスを得ていただくため、法務省としては引き続き法制審議会の答申の内容等について積極的に情報提供してまいる所存でございます。
○高良鉄美君 法制審の議論はやはりかなり慎重にいろいろやってきたということを考えると、今、法の支配という話をしました。この夫婦別氏の問題も、女性の側の問題、いろいろありますね、同じ人間としての権利のもので、どうして日本の中でそうなのかと。だから、大臣がころころ替わってそれで答えが変わってくるような形では、これはもう、法の支配から抜けて、人の支配なんですよ。だから、法の支配というのをきちんと理解をして、人間、人権の保障なんだと、そして憲法の最高法規性なんだと、適正な手続なんだと、そういうような部分をしっかり把握していないと、あるいはそれを認識していないと一向に進まないということを指摘しておきたいと思います。是非とも、法務省には引き続きこの問題頑張っていただきたいと思います。
 次に、国連女子差別撤廃委員会は、二〇〇三年以降、繰り返し、民法改正を行うよう勧告を行っています、先ほどありましたけれども。二〇〇九年の第六回審査と二〇一六年の第七回、第八回審査では民法改正がフォローアップの対象とされましたが、実現に至っていません。フォローアップ審査の勧告文書が非公開になっていたことも問題となりました。条約実施のための審査制度やフォローアップ制度を形骸化されて、させているとの批判もあります。
 政治の問題であることは承知していますが、外務省も、条約機関からの要請については、理解されるよう説明する責任があると思います。CEDAWの第九回審査に向けた進捗と今後の取組を林大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 女子差別撤廃委員会による第九回審査でございますが、二〇二一年九月に我が国が同委員会に提出した報告に基づき行われる予定でございます。
 一般に、審査の時期については、同委員会が各締約国からの報告の提出状況及びその審査の進捗状況等を勘案しつつ決定することとなっております。我が国の第九回審査の時期についても、現在、同委員会側の決定を待っている状況でございます。
 選択的夫婦別氏制度の導入に関しましては、政府の立場は、夫婦の氏の在り方について現在でも国民の間に様々な意見があることから、今後とも国民各層の意見や国会における議論を踏まえてその対応を検討していく必要があるというものと承知をしております。
 委員御指摘のとおり、女子差別撤廃委員会からは一定の懸念が示されているわけですが、次回となる第九回審査におきましては、二〇二一年九月に提出した報告の内容に基づきまして、夫婦の氏に関する議論を深めるための取組や、我が国が女子差別撤廃条約の実施のためにとっている措置等についてしっかりと説明してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 憲法九十八条に国際条約の尊重義務があります。ということは、やっぱり国際条約をいろいろ実現していくために必要な措置をとるということですので、そこも、是非とも今後、またG7の中で断トツに変わっている状況にならないようにこの問題にも取り組んでいただきたいと思います。
 これで外務省の方は大丈夫ですかね、法務省の方もね、退席なさって結構だと思います。
 それでは、昨日、参議院本会議で……
○委員長(阿達雅志君) 法務省、御退席ください。
○高良鉄美君 あっ、大丈夫ですか。ごめんなさい。
○委員長(阿達雅志君) それから、外務省も。
○高良鉄美君 大丈夫ですか。それでは、継続しましょう。
 昨日、参議院本会議で趣旨説明が行われた基盤強化関連法について質問いたします。
 資料、今日かなり幾つかつづっておりますけれども、一を御覧ください。グラフがあります。五月二十日付けエコノミスト、まだ日本語版が出ていないもので、国会図書館からいただいた英語版記事から図表を抜粋したものです。
 四月二十日の本委員会で、購買力平価GDPにおいてBRICSがG7を抜いたという話をしましたが、これがまさにその分かりやすいグラフですので、将来どうなるのかというと、もうこの差が開く一方で、G7が世界を主導する時代が終わる可能性が高いと思っています。
 岸田政権は、G7広島サミットやNATO事務所の日本開設の動きなどで西側諸国との連携を深めています。これは世界の動きを踏まえた上でのこととは余り思えません。同様に、日本の主流メディアも、世界で起こっている出来事をきちんと伝えておらず、世界から隔絶された異様な言論空間になっているように思います。
 これから質疑が行われる基盤強化法案も、現実に起こっている様々な出来事を踏まえずに作られているように見えるという点で同じような問題があるように思います。そういった視点から質問をいたします。
 今日は、今回のこの基盤強化法案の目標とする装備品製造等事業者の基盤の強化のために国が施策を講じることあるいは海外の装備移転には、そもそも私は反対の立場です。これから、しかし、この今回の法案というのは、こういった視点とかいうことの立場から議論する必要性は乏しいと思っています。なぜなら、今回の法案については、私は、そもそも防衛産業の現状も衰退の原因も正しく見ていない、その結果、法案で取られた施策もあさっての方向を向いて、目指すところの実現可能性はほぼないと思っているからです。
 与党の皆さんは、国産の防衛装備品は優れており、武器輸出の制限を撤廃すれば海外にすぐにでも売れると思い込んでいる方もおられるかもしれません。しかし、国産の装備品の多くは低性能、高価格で、自衛隊でしか通用しないガラパゴス状態というのが実態のようです。
 つづりの資料二の方の六枚目ですね、この資料二は、財政制度等審議会に財務省から毎年出されている資料の中から必要なものを選んでつづったものです。
 このC2、国産のC2輸送機というのがありますけれども、表の下から二番目、二のつづりの六枚目ですね、この輸送機ですけれども、一機当たりの機体の単価は米国製のC17輸送機とほぼ同じ額です。それにもかかわらず、表の上から二番目の括弧内ですね、最大貨物の重量はこのC17の半分以下です。そして、その下の、下から三番目の一機当たりのライフサイクルコスト、どれだけもつかというと、このC17の二・五倍以上ということですね、お金、コストがですね。ということで、こういうような形になっているんだという、これ海外に売れますかと。量産すれば埋められる価格の差じゃないです。
 なぜこういうことになっているのか。防衛産業側の問題もあると思いますけれども、防衛省・自衛隊側の問題をまず考えてみたいと思います。
 資料二の一ページと二ページを御覧ください。昨年四月、財務省提出の資料です。
 防衛省の要望を忠実に踏まえた開発を行った結果、世界市場で売れる装備品はほとんどない。防衛関連企業は、装備品の開発、生産において、防衛省からの度重なる仕様変更、少量生産を含め、顧客の要望に応えることを求められ、自社の強みを追求しにくい状況、自衛隊向け仕様は世界的にニッチで、マーケットは国内のみとあります。
 資料二の五ページは、昨年十一月提出の資料ですけれども、上の方の三つ目の丸では、現在、防衛省では、防衛産業の基盤維持に向け、サプライチェーンリスクの回避のための企業支援などの対症療法を進めているが、本質的な課題解決アプローチが求められるのではないかと指摘されています。財務省は、今回の法案の主たる内容を対症療法と評価しているわけです。
 このページの、今言ったページの下の青い部分ですけれども、ここでは、原因を深掘りし、自衛隊独自の特殊な要求性能、海外ニーズがない機能・仕様を追求、同種品でも頻繁なシリーズ変更、中期的な調達計画がずさんを列挙しています。
 財務省にお尋ねします。
 お配りした資料二を御覧ください。二〇二一年十一月の財政制度等審議会の資料では、主要航空機を部品単位でコスト分解したところ、量産取得開始等から比較して、間接調達部品の平均単価上昇率は約五〇%から約一四五%、自衛隊の独自仕様の追求等の問題が指摘されています。こういった問題の原因がどこにあるとお考えでしょうか。財務省、よろしくお願いします。
○政府参考人(寺岡光博君) お答え申し上げます。
 御指摘の二〇二一年十一月の財政制度等審議会におきましては、主要航空機を例として、防衛装備品の実際の調達時の価格が当初の見積りと乖離している例が散見されるということについて議論がなされたと承知してございます。
 こうした課題の原因として、コスト管理が必ずしも十分ではなく、受注企業のその後の調達コストが必ずしも把握されていない、また、ライフサイクルコストを考慮した部品選定がなされていない、防衛省の独自仕様を過度に追求することによりコストを押し上げている面があるなどの指摘がなされたものと承知しております。
 こうした議論も踏まえ、今回の防衛力整備計画におきましては、装備品を効率的、効果的に取得するための取組として、長期契約の適用拡大による装備品の計画的、安定的な取得、企業の予見可能性を向上させ効率的な生産を促すこと、他国を含む装備品の需給状況を考慮した調達、防衛、自衛隊独自仕様の絞り込み等により、装備品のライフサイクルコストを通じたプロジェクト管理の実効性を高めることとされておりまして、この方針に沿って取組が進められていくものと承知してございます。
○高良鉄美君 今、高いものを買うという、これ国民の税金です、ここ。今回もこのような議論をしているわけですよね、じゃ、倍になるかとも。そういうことじゃなくて、今までの状況をまず見たらどうなんだということでございますね。
 自衛隊の独自の要求性能と、特殊な要求性能というのがありますけれども、こういった中身を、実は議論見てみますと、海外の優れた兵器を買わなくて済むように、つまり、私なりに考えますと、国内産業に仕事を回すためわざわざ不自然な要求性能を設定しているという考え方、議論があります。それからもう一つの議論としては、防衛省・自衛隊に要求性能をきちんと定める能力がなく、当事者意識もないという議論があるようです。
 そして、その点を見てみますと、先ほどのC2輸送機に戻りますが、この軍用輸送機ですね、不整地着陸能力、つまり、きちんと舗装されたところじゃなくても、滑走路以外でも着陸できる能力が必要だとされていますけれども、このC2には設計段階でこういった能力が要求されていない。その後、アラブ首長国連邦への輸出が検討された際には、この不整地着陸能力がないことが問題になったということですね。
 そして、陸上自衛隊の車両には冷房がないものが多々あると聞きます。この中には、一六式機動戦闘車ですね、これが、二〇一九年度以前に調達されたものにはクーラーがないと。ですから、もうそれ以前のものもそうだということになりますので、ほかの種類もなかったということが指摘されております。これは、指摘されている方が、資料五で、後で取り上げますけれども、清谷信一さんという方がそういう指摘をしているわけです。
 そして、これ、クーラーがないということは、自衛官の健康や福祉の面からも問題になるわけですね。沖縄はもちろん、日本のどこでも戦争があってはならないわけですけれども、こういったクーラーがないという車両は使えない兵器ということになります。ですから、この要求性能をきちんと定める能力に疑問が湧くということで、世界市場で売れる装備品はほとんどないという財務省の指摘には、これ理由がありそうです。
 防衛大臣に伺いますけれども、一六式機動戦闘車に、調達当初ですね、開始当初、クーラーを設置しなかった理由を教えてください。また、一〇式戦車で要求仕様には乗員用のクーラーがなかったというのは本当でしょうか。
○国務大臣(浜田靖一君) 一六式機動戦闘車は、多様な事態への対処において、被空輸性、路上機動性等に優れた機動力を持って迅速に展開できる戦闘車といったコンセプトの下、平成二十九年度より配備をされております。当初、C2輸送機による被空輸性の観点から、重量増となる空調装置は搭載をしておりませんでしたが、その後、展開が予想される南西地域における隊員のヒートストレスに関わる問題に着目し、令和二年度より、被空輸性に問題のない形で空調装置を搭載した一六式機動戦闘車を配備しているところであります。
 なお、平成二十九年度から令和元年度までに配備された空調装置を搭載していない一六式機動戦闘車についても、令和五年度より、空調装置を搭載していく予定であります。
 また、一〇式戦車においては、平成二十三年度より配備していますが、当初よりコンピューターを冷却するために必要な冷却装置が付いており、乗員が作戦行動を行うのに適した温度まで車内は十二分に冷却されることから、乗員のための冷却装置を搭載する必要はありません。
 以上です。
○高良鉄美君 このクーラーの問題だけじゃなくて、PAC3の問題もあります。このPAC3を調達すれば、〇三式の地対空ミサイルですね、それに比べると全然違うということで、調達単価が同じとして、この〇三式の開発費用、余計、改善するための費用ですね、これの費用をやるだけでたくさんPAC3が買えるわけですよ。
 どうしてそういうふうになったのかなということで、二つですね、どうしてPAC3だけじゃなくて〇三式改良型というのが必要か、ちょっとここも防衛大臣に聞きたいと思います。
○政府参考人(川嶋貴樹君) お答え申し上げます。
 一般に、装備品の研究開発や量産取得を検討する際には、当該装備品が適切な運用構想及びそれに見合った要求性能を有すること、各自衛隊での役割分担等を踏まえ、装備体系を最適化するための検討を経たものであること、国内外の既存製品とのコスト比較を含む代替案分析を経たものであること等の要件を満たすか否か検討した上で選定を行うこととなります。
 したがいまして、今般、防衛力整備計画に基づきまして、弾道ミサイル等への対処能力を有する陸上自衛隊の中SAM改能力向上型、これを開発することといたしましたけれども、その際、コストの観点も考慮の上で開発を決定したところでございます。
 陸上自衛隊に中SAM改能力向上型を配備することによりまして陸上自衛隊の部隊防護能力に弾道ミサイル等の対処能力を付与すること、また、これまでの弾道ミサイル防衛においては、イージス艦のSM3による上層での対処、そしてPAC3による下層での対処、この二層防護の態勢を取ってきておりますけれども、PAC3ではカバーし得ない範囲を本ミサイルによりカバーしたり、PAC3の防護範囲と重なる場合にはより下層の対処を、失礼いたしました、下層の対処をより重層的にしたりというように、より弾道ミサイル防衛の手段を増やすこと、これが可能となります。
 弾道ミサイル等の経空脅威が高度化、多様化する中、中SAM改の能力向上型の開発、取得について着実に進めてまいりたいと考えてございます。
○委員長(阿達雅志君) 時間ですので簡潔に願います。
○高良鉄美君 はい。
 もう時間ですので、今日は会計検査院の方も来ていただいたんですけれども、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。