国会質疑 Interpellation

2022年11月15日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・韓国人戦没者遺骨のDNA鑑定について

・女性差別撤廃委員会からの勧告等の周知徹底と条約実施について

・調停委員任命に際し外国籍を排除している問題について

議事録

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第210回国会 参議院 外交防衛委員会 第6号 令和4年11月15日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。

 韓国人戦没者遺骨のDNA鑑定についてお伺いします。

 第二次世界大戦の日本人戦没者のDNA鑑定、遺骨返還事業については、二〇一六年に戦没者の遺骨収集の推進に関する法律が成立した後に沖縄で始まり、二〇二一年十月からは太平洋地域、その島々の戦没者について遺族へのDNA鑑定参加者が募集されました。それによって事業が拡大したと聞いています。

 戦没者の中には日本兵として戦った韓国、朝鮮、台湾出身者の方がおられたことも分かり、韓国の遺族からも何年間もこのDNA鑑定に参加したいという要望が出され、韓国外交部からも同じような要望がされておりました。

 植民地時代に沖縄戦に動員され犠牲となった韓国人の遺骨を返還するためのDNA鑑定確認作業が進展していないということです。沖縄戦で犠牲となった韓国人の遺族百七十人が、韓国政府を通じて厚生労働省にDNA鑑定を要求しています。植民地支配によって韓国国民に多大な損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止めていると表明してきた政府は、一日も早く遺骨を返還するべきです。遺族側は既にDNA鑑定をされています。政府が遺骨のDNA鑑定を行えば照合することは可能です。そのための厚生労働省の積極的な取組をお示しください。

○政府参考人(本多則惠君) お答えいたします

。  沖縄での戦没者を含めました戦没者遺骨全体のDNA鑑定に関しましては、日本人の御遺族から令和四年十月末時点で六千六百七十件の申請を受け付けておりまして、これまでに四千四百七十八件を審議し、身元の特定、否定など、審議の結果を御遺族に通知しております。一方、身元特定に関する審議がいまだできていない件数が全体で二千百九十二件ございます。

 このように、多くの御遺族が結果を待っている状況でございますので、厚生労働省といたしましては、できるだけ多くの申請事案を処理できるよう、厚生労働省自ら、DNA鑑定を実施するための分析施設を今年九月に設置するなど、科学的鑑定体制の強化、鑑定の迅速化に取り組んでおります。

 朝鮮半島出身者の御遺族からのDNA鑑定申請につきましては、遺骨の返還の在り方など、外交交渉に関わる問題でもございますが、引き続き、鑑定体制の強化に取り組むなど、我が国の鑑定体制の状況を踏まえつつ、政府部内で適切な対応を検討してまいりたいと考えております。

○高良鉄美君 この遺骨の問題というのは沖縄戦のときの問題ですので、もちろん日本国内の、日本人の、日本国民の遺族の方々の関連もありますけれども、やはり、このどちらにしても遺族というのは自分のところの遺骨について是非とも返還してもらいたいと、こういうのがあって、かなりですね、もう時間がないんですね。遺族の方も高齢化しているということがありますので、今のお答えで、取り組みたいということでしたので、是非ともスピード感を持って、これももう時間もあることですから、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、日韓に横たわる不幸な過去清算を行うことは日韓関係の改善にも資すると思いますが、外務大臣のこの問題解決に向けた御決意を伺います。

○国務大臣(林芳正君) 日本政府といたしましては、この日本国内に所在する当時亡くなられた韓国の方々の御遺骨を早期に返還することが重要であると、こうした認識を韓国側と共有をしてきておるところでございます。  返還の実現に向けまして、引き続き厚労省等の関係省庁と連携の上で、韓国政府との協議を粘り強く続けてまいりたいと思います。

○高良鉄美君 ただいま外務大臣からも、非常に共有を含めて取り組んでいくということがございました。

 日韓請求権協定によって戦後補償は全て清算済みと理解している人が少なくありませんが、植民地支配はこれに含まれていません。外務省は遺骨問題も植民地支配の結果と認識されているので、速やかな遺骨のDNA鑑定と返還を求めて、次の質問に入りたいと思います。

 エジプトで開催中のCOP27、これは先ほども山添委員からもありました。これは現在も開かれておりますけども、首脳級会合に岸田首相は出席しませんでした。このことは地球温暖化に消極的姿勢を示すことになるのではないかと危惧していましたが、環境NGOが、先ほどもこれありましたけど、九日に化石賞に日本を選んだことで、日本への厳しい評価は揺るぎないものになりました。日本の化石燃料を使った公共投資が二〇一九年から二〇二一年に世界最多であったことが受賞理由に挙げられておりました。

 気候変動というのは、広範な中で人々に多くの悪影響と損害を引き起こしています。その影響は実は男女間で異なっていて、女性や女児はより困難な状況に置かれています。女性や女児が気候変動の影響に脆弱であることから、気候変動とジェンダーとの関連が重要視されています。ジェンダー主流化は国際的な潮流となっていますが、日本では主流化には程遠い状況です。

 これは連邦議会の議員ですね、アメリカの、と交流をするということをいろいろこちらも働きかけをしたんですが、何のために交流をするんだといったら、テーマがあるのかということでしたけれども、受け取る意味、まああちらが、アメリカ側は、ジェンダーの問題とか気候変動の問題をやるんだったらいいけれども、単なる交流は駄目だというようなことで、これはもう世界的にそういう潮流、あるいは今回の中間選挙を見ても、女性の問題、それから気候変動の問題というのは大きな課題、テーマになっていたと思います。

 経済や安全保障には積極的でも、人権や環境には消極的と評価されれば、決して国際社会からは尊敬されないということを申し上げ、女性差別撤廃に向けた政府の取組について伺います。

 前回は女性差別撤廃条約選択議定書について質問しました。本日は内閣府男女共同参画局に来ていただいていますので、女性差別撤廃委員会からの勧告等の周知徹底と条約実施について伺います。

 女性の権利の確立と男女平等の実現を願う女性たちが待ち望んだ女性差別撤廃条約が一九七九年に国連総会で採択され、十月現在で百八十九か国が加盟しています。条約実施の進捗状況を検討するために一九八二年に女性差別撤廃委員会が設置され、設立から四十年目を迎えました。日本は設置当初から途切れることなく委員を出しており、現在は国際法学者の秋月弘子さんが委員を務めておられます。

 日本政府は一九八七年に第一回報告を出し、対日審査報告を受けてきました。これまで第七回、第八回、日本政府報告審査の総括所見が公表され、フォローアップを含め、度々厳しい勧告が出されています。同じ勧告が繰り返されるということは、日本が国連の勧告を軽視、あるいは差別撤廃に消極的であると受け取られかねません。

 女性差別撤廃条約、CEDAWを所管する内閣府男女共同参画局は、関係府省や国会に対し、この条約の意義を説明し、勧告に誠実に対応するよう促す努力が必要だと思います。積極的な取組をお示しください。

○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。

 女子差別撤廃委員会からの勧告につきましては、法的拘束力を有するものではございませんけれども、政府といたしまして、我が国が施策を実施するに当たり十分考慮し、誠実に対応してきてございます。内閣府男女共同参画局におきましては、これまでも男女共同参画施策を推進する立場から、関係省庁とも連携しながら同委員会からの勧告に対応してきてございます。

 具体的には、例えば直近の第七回及び第八回審査におけます委員会の見解につきましては、関係大臣等を構成員とします男女共同参画会議に報告いたしますとともに、その対応方針につきまして、関係省庁と連携しつつ、同会議の専門調査会において有識者委員から意見聴取を行うなどの対応を行ってまいりました。あわせて、内閣府男女共同参画局では、同委員会の見解を仮訳とともにホームページに掲載するなど、積極的な情報提供に取り組んでございます。

 引き続き、男女共同参画を積極的に推進する立場から、様々な機会を通じて関係省庁との連携を図ってまいりたいと存じます。

○高良鉄美君 今積極的な取組ということで、多く紹介されました。男女共同参画局にはもっとこの権限とかマンパワーが必要だと思います。これを更に拡大していくためにはそういったことも必要かと思います。

 選択的夫婦別姓に関する世論調査で、その保守派の意向が大きく反映されていたことが明らかになりました。これは、世論調査のこの設問の中身も随分これまでとは違った形になっておりました。また、女性版骨太方針を議論する男女共同参画会議計画実行・監視専門調査会で、全ての委員が選択的夫婦別姓を早期に導入すべきと発言したのに、そのことが二〇二二女性版骨太方針に反映されなかったと調査会の委員が明らかにしました。これでは、骨太ではあるかもしれませんが、中が、中身がすかすかと、骨粗鬆症だと言わざるを得ません。

 外務省に伺いますが、このジェンダー平等や女性差別の撤廃については、このCEDAW以外に様々な国家機関あるいは国連機関から勧告を受けています。また、OECDや世界経済フォーラムといった国際機関からも日本のジェンダー不平等、男女格差が指摘されてきました。条約や国際機関の窓口となる外務省も積極的に取り組む必要がありますが、今後の取組についてお示しください。

○政府参考人(今福孝男君) 我が国のジェンダー平等の状況につきましては、先ほどありました女子差別撤廃委員会等から様々な指摘を受けていることは承知しております。こうした状況を踏まえまして、外務省といたしましても、国内外のジェンダー平等の実現と、あと女性のエンパワーメントの促進に向けて、関係省庁と協力して取り組んできており、今後も引き続きしっかりと取り組んでまいります。  具体的には、直近の取組といたしましては、来る十二月三日に国際女性会議WAW!二〇二二を開催する予定でございます。今回のこのWAW!の会議では、新しい資本主義に向けたジェンダー主流化、これをメーンテーマとして、女性の尊厳と誇りを守る社会の実現や、先ほど御指摘ありました女性と環境、男女の賃金格差の問題、女性の平和・安全保障への参画推進等、幅広くかつ包括的な議論が行われる予定となっております。

○高良鉄美君 ただいまいろんな取組、もう直近でも十二月にあるということでしたので、このジェンダー主流化にも力を入れるということでございました。この答弁聞いていると本当に進んでいきそうだなというような感じがしますけれども、歩みはどうかというとちょっと鈍いような気はします。

 日本政府は少し、どういうような世界から見られ方をしているかという危機感ですね、これはちょっと紹介しますと、二〇一二年の四月、OECDの当時のグリア事務総長は、日本は国内の男女間の経済格差に対しもっと危機感を持つべきだと警告しました。グリア事務総長は、日本の労働市場において女性の数は圧倒的に少ない、またそのほとんどが非正規労働者だと、これが男女間の格差を広げる要因になっているとした上で、日本の労働人口はOECDの中、最も高齢だと、女性を社会に参画させなければ日本は急速に衰退していくだろうと指摘をしました。十年後の現在、残念ながらそれは見事に的中しつつあります。まあ、していると言っていいと思いますけれども。

 今のコーマン事務総長も、女性の労働参加への働き方改革を強調しています。国際社会が警告していることを政府や立法府が危機感を持って政策決定するよう求めて、次の質問に入ります。

 この国連から勧告を受けているのは政府や国会だけではありません。憲法の番人、人権保障のとりでとして存在する最高裁が国連から差別を解消するように改めるよう度々勧告されている、調停委員任命に際し外国籍を排除している問題について伺います。

 今年、調停制度は百周年を迎えました。現在、多くの弁護士が弁護士会から推薦されて調停委員として活躍されています。しかし、外国籍の弁護士は、法律上の要件を満たしていても調停委員に任命されることはありません。最高裁が外国籍であるというだけで排除しているからです。

 このことについて人種差別撤廃委員会が度々勧告をしていますが、どのような内容か外務省に伺いたいと思います。

○政府参考人(今福孝男君) 家事調停委員の任命につきましては、二〇一〇年三月、人種差別撤廃委員会が公表いたしました我が国の政府報告審査を踏まえた総括所見において、調停処理を行う候補者として推薦された能力のある日本国籍を持たない者が家庭裁判所で活動できるように、締約国の立場を見直すこととの勧告が示されております。

 また、二〇一四年九月に同委員会が公表した総括所見では、能力を有する日本国籍でない者が家庭裁判所における調停委員として行動することを認めるように、その立場を見直すこととの勧告が示されております。

○高良鉄美君 今の勧告、やはり国際機関からもこういうふうに国籍による差別の問題、そこは非常に強く指摘をされているということです。これが、先ほど言いましたように、やっぱり人権保障の盾となるというんでしょうかね、そういう機関である裁判所がきちんと対応しなきゃならないということです。

 人種差別撤廃委員会から度々勧告されていることを最高裁は重く受け止める必要がありますが、本日最高裁はおられません。国会法七十二条二項で「最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。」とされているため、本日は出られないということです。最高裁を欠席裁判することになりますが、問題点を指摘しておきたいと思います。

 実は、この問題を指摘してくれたのは、私の琉大時代の教え子である白承豪弁護士でした。韓国籍です。実は、この問題を、かつて外国人の人たちは、司法試験に合格しても法曹資格に必要な司法修習も認められなかったということに起因しているわけですけれども、そのため弁護士にはなれませんでした。準公務員である司法修習生にも、当然の法理という、外国人はなれないのは当たり前だろうというですね、これが適用されて外国籍者は排除されていました。

 一九七七年に最高裁が外国籍者に門戸を開き、外国籍のまま弁護士となることが可能となりましたが、司法修習生の選考要項から国籍条項が削除されたのは三十年も後の二〇〇九年でした。このとき、最高裁は差別撤廃に向け奔走されたと聞いています。

 こういうふうに、やっぱり最高裁判所が人権の問題だということで、運用で司法修習生をきちんと国籍条項を適用しないで頑張ると、あるいは国籍で差別をしないということを率先して開いてきたわけです。これがやっぱりやるべき、あるいは取るべき姿勢だったと思います。このあるべき姿というのは、デューというのが英語の適切なという意味ですけれども、これはあるべき姿という意味ですので、これ最高裁判所のやっぱり取った、奔走したこの努力というのは、本当にあるべき姿だったろうと私は思います。

 翻って、二〇〇九年の衆議院法務委員会では、保守派の議員から調停委員には外国籍者を認めるべきではないという趣旨の発言があり、これを受けて最高裁の当時の担当者であった大谷直人前最高裁長官が、法律上の規定はないけれども、事務当局として外国籍を認めない運用をしていると答弁したことがこの問題解決を困難にしています。それ以来、最高裁は差別の正当化に固執をしています。

 調停制度百年という中で、外国籍の、しかもこれは弁護士会が推薦をした弁護士なんですよ、それがどうしてなれないのかということで、私もこの白承豪弁護士から随分気持ちを、真情を吐露されましたけれども、日本に来れば日本は法律の上でも平等なんだと、差別はないんだと。当時、彼のお父さんが韓国で軍政時代、軍事政権の時代を経験してきたので、やっぱり日本というところが非常に法律の上でも、あるいは社会もずっと韓国に比べて、当時の、平等であると、これが遺言だったそうなんです。それで一生懸命司法試験を受けて、ようやく合格したということですね。そして、彼は兵庫県の弁護士会の副会長もしていました。そして、会長にもなりました。さらには、日弁連の副会長もしました。そういう世の中にはなったんだけれども、そのような立場にはなったんだけれども、調停委員にだけはなれないという非常に変わった状況なんですね。

 これが合理性を持つかというのもありますけれども、現在、日本に中長期間滞在する外国人は二百七十万人に上ります。調停で扱う紛争の当事者は日本人だけとは限らない。生活習慣や文化を熟知した外国籍の調停委員を始め多様な人材が調停を務めることで、当事者が多様化した紛争に円満な解決をもたらすことにこの外国籍の調停委員が貢献することは言うまでもありません。国連から勧告を受けていることを重く受け止め、最高裁も同じようにスピード感を持って、一日も早く差別が解消されることを願いたいと思います。

 これ、問題はやっぱり最高裁が人権保障のとりでという期待をされている、あるいは憲法上もそういうふうに言われているわけです。ところが、その最高裁が差別をするというような問題になると、これは司法機構だけじゃなくて、国の法制度全体が、あるいは法の支配という我が国の政府が今取っているこういった問題にも大きな関連があると思いますので、そのような指摘をしながら、このような問題も含めて委員の皆様にも御理解いただき、また政府の方にもこの対応をお願いして、私の質問を終わりたいと思います、時間前ですけれども。よろしくお願いします。