国会質疑 Interpellation

2022年11月10日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・屋良覚書について

・自由権規約委員会の日本政府に対する報告審査について

議事録

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第210回国会 参議院 外交防衛委員会 第5号 令和4年11月10日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。

 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案については賛成であるということを申し上げ、今回の場合は前に残したものを中心に質疑をしたいと思います。  いわゆる屋良覚書について伺います。先ほど来のお話を聞いていると、いろんな約束はどうなっていくんだろうという、返還もちょっと心配なこともあります。

 沖縄県の宮古島市にある下地島空港は、二〇一九年三月に新ターミナルが開業し、現在民間航空会社による本土定期便が就航しております。私も伊波議員と、いろいろコロナ前でしたけれども、外国からチャーターの民間機が行って、多くの外国人が、この下地島空港にぎわっておりました。

 同空港は、開港に際し、空港の管理権は沖縄県にあり、民間航空機以外の使用は認めないとし、それ以外の使用については政府が沖縄県に命令する法令上の権限を有しないとする屋良覚書を一九七一年に締結しました。また、屋良覚書を補完するものとして、一九七九年六月、当時の西銘順治知事が運輸大臣に提出した西銘確認書、その後も、二〇〇四年と二〇一三年に提出された質問主意書で、開港当時からの覚書を踏襲することを確認しています。

 ところが、今月一日の本委員会で、自衛隊が公共インフラを活用する必要性を主張する議員から、屋良覚書を変な覚書という発言がありました。この発言を沖縄タイムスが報じ、沖縄県民は今非常に不安を募らせております。良識の府、言論の府である参議院の委員会で、歴史を踏まえないで、それだけではなく、沖縄県民の心情を逆なでするヘイトとも取られる発言には憤りを感じます。

 そこで、浜田防衛大臣に伺います。  屋良覚書についての公式見解を改めて明らかにしてください。

○国務大臣(浜田靖一君) 御指摘のいわゆる屋良覚書は、昭和四十六年当時の総理府総務長官及び運輸大臣と琉球政府との間で下地島空港の使用方法について、管理者たる沖縄県が調整の権限を有している旨を確認したものと承知をしております。本空港の自衛隊機による利用については、地元住民の意向といった地域の個別事情を踏まえる必要があると考えております。

 いずれにせよ、我が国の防衛上、多様な空港等からの運用は重要であり、日頃からそのための訓練を重ね、平素から柔軟に利用できることが必要であります。国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議における御議論なども踏まえつつ、自衛隊が既存施設から、平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や地方自治体、関係団体等から御協力をいただけるよう努めてまいります。

○高良鉄美君 これはこの覚書を踏襲することということでよろしいんですか。それとも、そうじゃない場合があるということですか。

○国務大臣(浜田靖一君) この覚書が存在することは事実でありますので、これをやはり、今ここでどうこうということではなくて、我々とすれば、御理解をいただけるようにこれをお話をさせていくことを続けさせていただくということだというふうに思っております。

○高良鉄美君 いや、この覚書は、もう度々ずっと踏襲するという答弁あったわけですよね、主意書に対しても。ここで今、今のお答えを聞くと、何かもうこれからちょっと違ってくる可能性があるよというふうに私には聞こえるんですけれども、この辺は、まあ聞いても同じことが返ってくると思いますけれども。

 このような答弁がありましたけれども、一九七一年の開港以来、米軍機三百回を超える回数、下地島空港に飛来しています。そして、下地島空港管理事務所によると、二〇一九年までに自衛隊機が同空港を使用あるいは着陸したのは計八十八回と。その主な目的は、不発弾処理と県の総合防災訓練のためだったと聞いています。これは、覚書は守られているわけですね。直近でいうと、二〇一四年度十四回、二〇一五年度ゼロ回、二〇一六年度三回、二〇一七年度ゼロ回、二〇一八年度ゼロ回、二〇一九年度二十一回ということです。

 近年のこの米軍、自衛隊基地の共同使用の問題、あるいは訓練の一体化を見れば、下地島空港の自衛隊の軍事利用により米軍も使用することが考えられるため、自衛隊の軍事利用の問題というのは、もうこれは沖縄県として、あるいはこれまでの歴史も見ても、決して認めることはできないと思います。住民が懸念をしている、今、このずっと台湾有事の問題、いろいろあります。もう住民にとってはもう現場なんですよ。そういう中で、この変な覚書というような発言は私は極めて不見識だと言わざるを得ません。改めて屋良覚書は遵守されねばならないということを申し上げて、次の質問に入ります。

 次は、人権の問題ということで、自由権規約委員会の日本政府に対する報告審査について伺いたいと思います。

 今月三日、国連の自由権規約委員会が第七回日本政府報告審査の総括所見を公表しました。死刑廃止や刑事被拘禁者の処遇改善、選択的夫婦別姓の民法改正や性的指向に基づく差別の禁止、外国人技能実習生、難民保護法制の早急な採用、共謀罪法の改正と適切な人権保障措置の導入、在日コリアンなどマイノリティーへの差別解消など、多岐にわたり委員会は懸念を表明し、厳しい勧告を行っております。日本政府は、委員会の勧告を真摯に受け止め、その解決に向けて立法化を含む法制度やその実施、改善などを努力すべきだと思います。

 林外務大臣に、国連からのこの厳しい勧告の受け止めについてお伺いしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) 今御指摘がありましたように、十一月の三日、自由権規約委員会が我が国の第七回政府報告審査、これを踏まえた総括所見というのを公表しております。今般公表された総括所見の中では、旧優生保護法一時金支給法、また刑法の一部改正、男女共同参画等の幅広い施策の取組が、これは肯定的な側面として挙げられたところでございます。また、今御指摘の点も含めて、多岐にわたる事項に関して同委員会としての見解及び勧告が含まれました。

 御案内のように、この総括所見というのは法的拘束力を有するものではないわけですが、今般示された委員会の勧告等については、関係府省庁とともに内容を十分に検討していきたいと考えております。また、国際社会において、日本の考え方、これが正しく理解されるように引き続き努力をしていきたいと考えております。

○高良鉄美君 日本の見解もそうですけれども、前回、一日に林大臣にやはり法の支配のお話をちょっとお聞きしましたけれども、国際社会の中での共通の理解をしているという、そういう価値観を持っていると、日本はですね。ですから、日本らしいか分かりませんけれども、そういうものとは少し違ってくるのかなと思います、このような勧告の中ですね。

 実は、この勧告の中には、このほかにもこの委員会は、抗議やデモに対する過剰な制約や沖縄で抗議する、抗議行動をする人たちの不当逮捕があるという報告を受け、懸念を表明しています。ヘイトスピーチについて、中国人、部落民、琉球人、在日韓国・朝鮮人、こういったことを対象とした広範な人種差別的言説が続いていることにも懸念を示し、ヘイトスピーチを明確に犯罪とすることを求めています。  前回の質疑でも言及しましたけれども、在日韓国・朝鮮人に向けられるヘイトスピーチやヘイトクライムは非常に深刻な状況です。

 林大臣は、一日の私の質問に対して、我が国において、在日朝鮮人に対する差別を許容する国の政策や規則は存在せず、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組を進めてきていると、まあ先ほどもお話がありました。

 では、なぜヘイトは解消されないのでしょうか。差別を許容する国の政策や規則がないのは当然です。規則がないからヘイトがなくなるわけではありません。林大臣のこの取組というのがどれぐらいの力を入れて取り組んでいるのかというのが問われると思いますので、このヘイトのなくすことに対してどのような取組をされるか、お答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) この人種や国籍などによって差別が行われることはいかなる社会にあっても許容されることではなく、我が国としては、これまで外国人等に対する偏見や差別の解消に向けてしっかりと取り組んできているところでございます。

 日本国憲法第十四条に、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と、こういう規定がございまして、直接的又は間接的といった形態いかんを問わず、いかなる差別もない法の下の平等、これを保障しているわけでございます。

 我が国としては、今後もいかなる差別もなく、一人一人が個人として尊重され、全ての人権を享受し、その人格を発展させることのできる社会を目指して、我々外務省といたしましても、国連を始めとする国際社会や市民社会と引き続き協力の上、たゆまぬ努力を行ってまいりたいと考えております。

○高良鉄美君 やはり、海外から見たら外務省、あるいは、特に外務大臣は日本の顔と言ってもいいと思いますけれども、共通の価値を持って、法の支配をもって、人権保障あるいは適正な手続、そういったものを民主主義も含めて認識をなさっているということですので、これ、やはりこれから日本の社会をそういうふうに向けて頑張るということでございましたので、法整備も含めて実効性のあるような形で進めていただければと思います。

 次に、女性差別撤廃条約の選択議定書についてお伺いします。

 女性差別撤廃条約加盟百八十九か国のうち、現在、百十五か国が選択議定書を批准していますが、まだ我が国は批准をしておりません。選択議定書は、条約に定める権利の侵害を受けた個人や集団が直接通報できる個人通報制度と、条約上の権利の重大又は組織的な侵害があった場合に女性差別撤廃委員会がその国の協力を得て調査を行うことができる調査制度から成り立っております。

 選択議定書の規定によれば、締約国の協力がなければ調査は不可能であり、個人通報は、また国内救済手段を尽くした後に手続が開始されるため、極めて限定された手続です。そのため、選択議定書を批准して制度を活用するメリットよりも、批准しないことで条約自身に後ろ向きの姿勢を見せてしまうと、そういうデメリットの方が大きいかと思います。選択議定書批准は、我が国の国際人権保障、男女平等への積極的な取組の姿勢を国際社会に示すものであり、政府が進める女性活躍促進にも資すると言えます。

 これまで政府は真剣に検討すると答弁されていますが、まだこの進捗状況は芳しくありません。より踏み込んだ取組について、政府参考人に答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。

 女子差別撤廃条約選択議定書で規定されている個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度と考えております。  一方で、同制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無、同制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識しております。

 政府としては、これまで、二十二回にわたり個人通報制度関係省庁研究会を開催するとともに、諸外国における個人通報制度の導入前の準備や運用の実態等について調査等を行ってきているところでございます。  こうした諸外国の事情に加え、各方面から寄せられる意見等も踏まえつつ、女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結について真剣に検討を進めていきたいと考えております。

○高良鉄美君 先ほど一番最初に、締約国百八十九か国のうち百十五か国がもう批准をしていると、で、日本は批准をしていない。この批准をした百十五か国の中には、ちゃんとこれ司法制度もですね、司法権の独立もあってそれを通しているわけです。それでも批准をしていると。ですから、ここはやっぱり世界で共通認識と言っているこの人権の重要性、そこに目を向けているからこそ批准をしているわけですね。国内の立法制度、立法政策あるいは司法政策の中の問題であろうと、人権がということでこの議定書が批准をされているわけです。

 そこを今前向きに、これからそこに進めていきたいということでしたので、是非とも真摯に人権尊重の普遍化に貢献するということを出していただきまして、特に日本の場合には、もうこの女性差別撤廃委員会を始め多くの委員会に専門家委員を出しております。本当に条約実施に向けて非常に国際的な貢献をしていると思います、日本はですね。しかし、これが批准をされていないということによって、余り、何というんですかね、前向きじゃないような状況が見られるというのが外からの意見になるわけですね。それで勧告が何度も出ているということなんです。

 特に二〇〇九年の通常国会では、第六回の政府報告審査を前に自民党内で活発な議論が行われたと承知しております。自民党の女性に関する特別委員会が議論を重ね、選択議定書批准に向けてもうあと一歩というところまで来たわけですけれども、この上部の外交部会等の合同会議で、これまでの議論の積み重ねに参加していない議員の反対によって承認を見送られています。参加された議員からは、事実に基づかない発言もあったと伺っております。

 その前の年、二〇〇八年ですね、外国籍女性と日本人男性との間の婚外子の国籍を認める国籍法三条の違憲判決というのがあって、法改正が行われたことから、排外主義者が選択議定書批准に反対するキャンペーンが展開されたこともあって、結局は批准されませんでした。

 もうこの請願ですけれども、選択議定書の批准を求める国会請願は二〇〇一年から提出され、採択されてきました。二〇〇二年の通常国会での会期末には、外交防衛委員会においては、現ですね、この委員会の委員でいらっしゃる当時の武見敬三委員長が外務省に対して、請願が要請する条約の批准に向けて、内閣による検討の状況、問題点、検討終了の目途及び条約の国会提出時期について説明を求めるという異例の事態となっていたと聞いています。その後も国会において同様の請願が採択されましたが、状況は変わっていません。真剣に検討を進めているといってもう十年たっています。是非とも、このような形ではなくて、国民の請願権、参議院による請願の採択そのものを形骸化させてしまうのではないかと危惧しております。請願権というのは、憲法十六条、憲法で保障された基本的人権であるということを改めて強調しておきたいと思います。

 最後に、選択的夫婦別姓や女性への差別撤廃について伺います。

 浜田大臣は、昨年三月二十五日に設立された自民党の選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟の会長をされています。ちなみに、岸田総理もこの議連の呼びかけ人をされています。

 同議連では、法改正に向けた中間取りまとめとして、選択的夫婦別姓制度を導入しても現在の戸籍制度の原則を維持することや、夫婦が同姓か別姓に関わらず、子供の姓は本人の利益や福祉にかなう法制度を検討することを了承し、浜田会長は当時の男女共同参画担当大臣に要望書を渡されたと承知しております。

 また、今日も何名かの委員の先生方が元自衛官の女性の性被害の問題、この訓練中に性被害に遭ったことを踏まえて、全自衛隊を対象に特別防衛監察を実施されています。これは先ほども質問ありましたけれども、防衛大臣、非常にこの女性差別の撤廃とかあるいは人権保障に積極的に取り組まれているというふうに私は思います。

 その女性差別撤廃に向けた御決意を改めてお伺いしたいと思います。

○国務大臣(浜田靖一君) 女性であれ男性であれ、性別による不当な差別はあってはならないと考えますが、国会議員として行った議員連盟での活動や所管外の事項に関しては、防衛大臣としてこれ以上お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 御指摘のあった元自衛官の女性が訓練中にセクハラを受けた事案については、現在、防衛省全体として、こうした事案が二度と生起しないよう、ハラスメント防止対策の抜本的な見直しに取り組んでいるところであります。

 また、防衛省・自衛隊としては、現在、積極的な女性の活躍を推進しており、自衛隊員が性別によって差別も優遇もされず、個々の隊員の意欲と能力、適性に基づき勤務ができる組織をつくってまいります。

○高良鉄美君 防衛大臣としての立場は非常に分かりますので、そういうことでお聞きしたというよりも、今回、防衛省の職員の給与ですけれども、音喜多先生と平木先生ですね、ありました、御質問が。それにも、今お答えしたとおり、この辺の解消に向けて性別の問題というのをきちんと取り扱っていきたいということでございましたので、今後もまたいろいろ、防衛省の中での、管轄内でのやはり人権問題あるいは女性等の活躍を含めて、性差別の問題も取り組んでいただきたいと思うという要望をしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。