国会質疑 Interpellation

2022年6月2日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・法の支配について

・女性差別撤廃条約の選択議定書について

議事録

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第208回国会 参議院 外交防衛委員会 第14号 令和4年6月2日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 本日は、委員長を始め、委員の皆様方の御協力により、伊波洋一議員に代わって質問する機会をいただきましたことに感謝を申し上げます。
 まず、鈴木副大臣に、法の支配についての御認識を伺います。
 林外務大臣は、一月十七日の参議院本会議で、国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や国際秩序が厳しい挑戦にさらされているとした上で、先人たちの努力により世界から得た日本への信頼を基礎に普遍的価値を守り抜く覚悟だと述べられました。
 林大臣が守り抜くとおっしゃった普遍的な価値、とりわけ法の支配はとても重要であると思いますので、法の支配についての御認識を、林大臣に代わり、鈴木副大臣にお伺いします。
○副大臣(鈴木貴子君) 岸田内閣では、自由、民主主義、人権、法の支配、こうしました普遍的価値というものを重視をし、また、これを守り抜くことを外交安全保障の柱の一つとさせていただいております。このうち、法の支配とは、一般的に、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であります。国内において公正で公平な社会に不可欠な基礎であると同時に、友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤となっております。
 この法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくことが重要であると考え、こうした考えの下で、我が国は、この法の支配の強化を含む国際社会の取組にこれまでも、そしてまたこれからも積極的に取り組んでまいりたい、そしてまた各国ともこの点においても緊密に連携をしてまいりたい、このように考えております。
○高良鉄美君 私がお聞きしたのは、これまでも法の支配というのを政府がずっと言ってまいりました。
 私は、憲法をずっと教鞭を執っていましたけれども、法の支配というのは非常に重要な概念です。これ、あらゆる場面でこれは問題になるということなんですけれども。歴代の法務、私、法務委員会に行ったりしていますけれども、もうずっと大臣に対して聞いてきたので、外務省、外務大臣としてはいかがかなということでお聞きしたわけですけれども、今、やはり法の支配を中心に外交の方針として根底にあるということをおっしゃいました。
 ただ、憲法学的なものを含めて、法の支配というのは、国際的なあるいはまた全世界の今まさに共有している概念ですから、そこにあるのは、憲法の最高法規性、適正手続、人権の保障なんだと、こういうことが中心になっているわけですね。そして、司法権が人権を守るために優越するということがその中身なんですね。
 そこで、まさにその法の支配というのは、今言われた国際社会において共有すべき基本概念であって、日本の国内法制だけじゃなくて、国際関係、外交、防衛においても根幹に据えるべき概念だということですね。
 法律や国際取決めは法の支配にのっとって策定されなければなりません。法の支配は、独善的、今おっしゃいました、副大臣の方からですね、独善的、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利、自由を擁護することを目的としているということです。
 ところが、沖縄県に対して法の支配がまだ貫徹されていないと。むしろ、その反対の対峙概念である人の支配がまかり通ってきました。法の支配の重要な内容である適正手続は、密約や銃剣とブルドーザーといった言葉に象徴されるように、適正手続どころか、県民の意思に反する核の持込みや土地の強制接収が行われました。法の支配の内容である憲法の最高法規性もないがしろにされ、憲法より上位に扱われたのが日米安保と地位協定です。
 沖縄県民は何も知らされず、核や基地の危険と常に隣り合わせの生活を強いられ、基本的人権が脅かされてきました。いや、今も脅かされています。政府が国内外で主張する法の支配は、御答弁いただいたこの法の支配の内容の、幾つかありましたけれども、その一つも機能していません、沖縄では。適正手続を踏まずに強行されている辺野古新基地建設は、銃剣とブルドーザーから補助金とブルドーザーに形を変えた人の支配であると言えると思います。
 私も、そういうことを申し上げまして、この法の支配の重要性を今後もやっぱりしっかりと頭の中に入れた上での外交そして防衛政策やってほしいということを申し上げまして、次の質問にまいりたいと思います。
 女性差別撤廃条約、この選択議定書について質問いたします。
 女性差別撤廃条約加盟百八十九か国のうち、現在百十四か国が選択議定書を批准していますが、日本は現在まで批准していません。政府は、選択議定書批准の意義について、我が国の人権尊重の姿勢を改めて内外に表明することを通じた人権尊重の普遍化への貢献としています。そうであれば、批准しないことは人権尊重に後ろ向きであると、その姿勢を内外に表明することにほかなりません。
 選択議定書批准に関する請願は、二〇〇一年の第百五十三回国会において採択され、翌二〇〇二年七月三十一日の外交防衛委員会において、当時の武見敬三委員長が外務省に対し、請願が要請する条約の批准に向けて、内閣による検討の状況、問題点、検討終了の目途及び条約の国会提出時期について説明を求めるという異例な事態となりました。
 そこで、今日は参議院事務局に来ていただいているので、請願とはどのような位置付けか、伺いたいと思います。
○参事(金子真実君) お答えいたします。
 日本国憲法第十六条に、基本的人権の一つとして請願権が定められております。これを実現するため、国会におきましても、国会法及び衆参それぞれの規則において請願の提出及び審査に関する諸規定を設けまして、制度の運用が図られているところでございます。
○高良鉄美君 今ありましたけれども、憲法の十六条ですね。十六条の前の十五条というのは、国民主権の規定です。これほど重要な政治的な参政権の一つであるということが請願権なんです。そして、請願権の性質としては、国務請求権です。自分たちで、苦しんでいること、救済してほしいことを政府に訴えるということが請願権です。これは多くの国々でも非常に重要な権利として、言論の自由とかそういうものと同じ位置付けをする、それぐらいの意味が請願権にはあるということです。
 この選択議定書批准に関する請願というのは、参議院では、先ほど言いましたように、二〇〇一年に採択し、以降二十回も採択して内閣に送付されているにもかかわらず、政府は同様の報告を繰り返す不誠実な態度を続けてきました。このような態度は、国民の請願権を軽んじ、参議院による請願の採択、これはもう全会一致でやるものですから、その請願の採択そのものを形骸化させてしまうのではないかと憂慮します。
 鈴木副大臣の御見解を伺います。
○副大臣(鈴木貴子君) 委員からも御丁寧にこれまでの経過も述べていただいたところでありますけれども、最後にこの本請願が採択をされた、いわゆる百九十回国会におけるこの請願についてでありますが、この参議院に報告された処理の経過においては、個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えられるとしつつ、同制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無や同制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識をしており、同制度の受入れの是非については、現在、各方面から寄せられている意見も踏まえつつ、政府として真剣に検討を進めているところであるとされていると私も承知をしております。
 まさにこの注目すべき制度であるということ、事実であり、そのように認識もしておりますし、この女子差別撤廃条約選択議定書の締結について真剣に検討を進めさせていただいております。請願についても真摯に受け止めさせていただいております。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 やはりこれだけ、先ほども手続も、先生方も御存じだと思いますけれども、請願のこのルートに乗ってくるだけでも大変で、更にそれを、全会一致ですから、採択をされる、そして送付されるということはいかに大変な道筋かなと思います。ですから、個人通報制度も入っているということなんですけれども、是非とも、既に批准をしている国々もその辺をクリアして入っている先進国であるということを検討に入れられて、そのまましっかりと真摯に進めていただけるようお願いしたいと思います。
 最後に、先ほども少しありましたけれども、地方議会が決議した意見書の受け止めについて伺います。
 この女性差別撤廃条約実現アクションによると、選択議定書の批准を求める等の地方議会の決議は、二〇〇一年から今年までに八府県を含む延べ百五十五の地方議会がもう既に意見書を出している、そういった数に上ります。
 これら地方議会から送付された意見書の受け止めを外務副大臣に伺います。
○副大臣(鈴木貴子君) 請願に続きまして、今度、地方自治体からの決議ということでありますが、まさにこの地方自治体の意見書というものは、その地域の住民の皆さんの代表、地域の皆さんが選ばれた代表の皆さんからの意見であるというふうにも認識もしております。大変それは重いものである、貴いものであるというふうにも認識をしております。
 この女子差別撤廃条約選択議定書に規定をされる個人通報制度の受入れの是非等々について、先ほども申し上げさせていただきましたが、関係省庁での勉強会も行わせていただいております。引き続きこの締結に向けて政府としても検討させていただきたい、そしてまた、皆様からのお声というものも真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 この請願のこれまでの歴史というんでしょうか、この選択議定書ですね、これは特に新たな法制を必要としているわけではなくて、この議定書を批准するというだけで日本の国内の手続は済むわけですね。ですから、是非ともそこはしっかりとやっていただきたいと思います。
 そして、地方議会から送られた意見書というのは、様々なものがあります。この選択議定書の批准を求めるだけでなくて、先ほど井上委員からもありましたけれども、地位協定の改定の問題とかあります。沖縄県の方も、今年五十年ということで、県議会の方が意見書を出しています、復帰に関してですね。この中にはもちろん、ありましたように、地位協定の問題もありました、地位協定改定と。これは、沖縄からいうと、復帰前に決まっているのが地位協定なんですよ。五十年以上前です。沖縄県はこれ参加していないんですね。国会にも代表は送られていません。
 そういう中で、地位協定の一番ひずみが沖縄に来ているわけです。そういった状況も変えなきゃいけないだろう、あるいはそれに対して何らかの対応等しないといけないだろう。というのは、やっぱり抜本的な改定というのを求めているということは、少なくとも、これは日米安保を容認した、ある程度認めた上で地位協定というのはあるわけですよ。ですから、それはいきなり安保条約反対とか破棄とか言っているわけじゃなくて、地位協定の中身で人権侵害が起こるような、あるいは不平等、不公平が起こるようなことがあったらいけないので、そこはちゃんと見て改定してくれということだと思います。
 是非ともそういったことも御協力いただきまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。