2022年5月19日 参議院 法務委員会
質問内容
・選択的夫婦別姓について
議事録
第208回国会 参議院 法務委員会 第13号 令和4年5月19日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
本日は、選択的夫婦別姓について内閣府に伺いたいと思います。
選択的夫婦別姓について、歴代の法務大臣は、法制審答申を重く受け止めていると答弁しながら、国民の間に様々な意見があるとして民法改正に後ろ向きな姿勢を示しています。これは、法制審答申を重く受け止めているのではなく、軽視していることを示す発言です。
一九九一年に、婦人問題推進本部が新国内行動計画に、男女平等の見地から夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うとしたことを受け法制審が議論を開始したことや、五年の歳月を掛けた世論調査、パブリックコメント、ホットラインを行うなど、国民の声を十分に聞いて答申したことなどを民事局長が丁寧に説明をしたにもかかわらず、法務大臣が様々な意見があるなどと繰り返し答弁することは、法制審答申だけでなく、政府の長年の男女共同参画の取組をも軽視することになります。
とりわけ、民法を所管する法務大臣が、民法改正ではなく、通称使用の拡大で事足りると考えるのであれば、法制審が通称使用の法制化はしないと決め、民法改正を答申したことを根底から覆すことになります。
改めて、男女共同参画を所管する政府参考人から政府の取組について伺います。
○政府参考人(吉住啓作君) お答えいたします。
政府においては、平成八年二月に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申した事実を重く受け止めており、これまで五回にわたり閣議決定されてきた男女共同参画基本計画においてもその姿勢は一貫しております。
旧姓の通称使用については、現行の夫婦同姓制度の下で婚姻により改姓した方が不便さや不利益を感じることのないよう、政府においてこれまで二十年以上にわたり取組を進めてきたものですが、選択的夫婦別姓制度が導入されるまでの暫定的な措置と認識しております。
政府が現在の夫婦同姓制度に代わる制度として承知しているのは、平成八年の法制審議会の答申で導入が提言された選択的夫婦別姓制度のみであり、内閣府として旧姓の通称使用についての法制度を政府方針とすることは考えておりません。
夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方については、これから結婚して家庭を築くとともに、社会の第一線で活躍する世代の方々の思いをしっかり受け止めることが重要であり、内閣府男女共同参画局としてこの問題についての議論を加速させていく必要があると考えております。
○高良鉄美君 政府の取組、内閣府の取組ということで、姿勢、その積極的な姿勢というのがよく分かりました。
今回、資料一として、私、資料二枚ありますが、これは九一年当時に官房長をされていた方が出した談話ですけれども、インタビューの内容ですけれども、やはり法務省は頑張っているというふうなこと、あるいは、今回もありました内閣府も取り組んでいるということがよく表れております。
大臣も先ほど、違いがあってそれを個々にそれぞれが尊重し合う社会ということをおっしゃいました。やはり、この問題はそういう根本的な違いを認め合うということが重要だと思います。選択的というのは、何も同姓をすることを強制、まあ保つことを強制しているわけじゃないんですね。保っても結構ですと、しかし、選択をしたい人は選択していいんじゃないかという制度なんですよ。だから、これが違いはあってもいいんじゃないかと。相手を尊重して、相手と一緒にするんじゃないと思っている方はそうしていいし、同姓に賛成の方は同姓でいいという、そういう制度です。
次に、家族の法制に関する世論調査について少し伺いますが、三月二十九日と四月十九日の本委員会でも指摘したところですが、法務省の答弁でも、先ほどもありました、内閣府の方でもそうですが、若い層で賛成が反対を大きく上回っていることが示されました。特に五十歳未満の女性では全ての年代で、夫婦同姓を維持した方がよいと答えたのが一〇%台ということです。婚姻改姓で苦しんだり、不便、不利益を感じたりする若い人たちが選択的夫婦別姓を求めていることが分かりました。
これについてどう思われているのか。また、内閣府はさらにジェンダーの視点で分析をされていると思いますので、特に注目すべき調査結果等がありましたらお示しください。
○政府参考人(吉住啓作君) お答えいたします。
今回の世論調査で注目される論点である、夫婦の氏に関する具体的な法制度の在り方については、現在の制度を維持した方がよいとする回答が全体の三割を下回ること、特に、委員御指摘のとおり、二十代から四十代では現在の制度は一〇%台の低い支持にとどまっていること、また、二十代から四十代のおよそ四割が選択的夫婦別姓制度を支持していることなどから、これから結婚して家庭を築くとともに、社会の第一線で活躍する世代を中心に新しい法制度を求める声が高まっているものと受け止めています。
特に、新しい法制度を求める割合は、男性六七・八%より女性七四・〇%の方が高く、この背景には、夫婦の約九五%において妻が夫の姓に変えているという現実などがあるものと考えております。
○高良鉄美君 やはり、正確な分析をされていると私は思います。特に若い世代の考え方というのが反映されるべき、それが政治の役割だろうと私は思っております。
資料の二の方に、これA3のちょっと、これまでのアンケートの流れが分かると思うんですけれども、中途で、中途といいますか、最後の二つのところで質問事項がちょっと増えたり、あるいは一番最後になりますとちょっと変わったりしているところがあるんですね。ところが、その前の四回、五回、四回ですね。四回分に関しては、九六年から一貫した質問なんです。だから、こういう点も含めて、今回、調査の分析というのは非常に重要な意味があると思いますし、現在の内閣府の参考人のお答えも非常にその点も見ているんじゃないかなと思います。
そもそも、人権を所管する法務大臣が人権政策を世論の多寡に委ね続けていること自体が問題だと思います。様々な意見があるからといって法改正しないのであれば、少数者、この場合は少数者というわけじゃないかもしれませんが、少数者の人権はいつまでたっても放置されてしまいます。
障害を持つ人から車椅子が入れないからスロープにしてほしいと言われて、大方の人は通れるし、困っていないから変える必要はないとは言わないわけです。それなのに、夫妻とも名前を変えられず、法律婚ができないから選択的夫婦別姓にしてほしいと言っているカップルには、大方の方は困っていない、様々な意見があるからその必要はないと法律婚を断念させるという状態になってしまいます。
今回の世論調査は、様々な問題を可視化しました。世論調査の取り方、結果の使われ方も問われていると思います。今後、世論調査の方法も含めて検討する必要があると思いますが、内閣府の意向を伺います。
○政府参考人(吉住啓作君) お答えいたします。
御指摘の夫婦の氏の問題については、昨年九月の男女共同参画会議の専門調査会において、有識者委員から、個人の尊厳に関わる問題であり、旧姓の通称使用拡大は根本的な解決策になり得ない、結婚後も自らの姓を名のれるかどうかは人権に関わる問題である、人が自分の名前を使う、呼ばれることは人格の本質的な権利であるなどの指摘が行われています。
今回の世論調査は、七十歳以上の回答者の構成比が四分の一を超える一方、結婚する者の割合が高い三十代以下の回答者の構成比は四分の一にも届いておりません。世論調査の結果については、総数だけではなく、性別、年齢別等の内訳に注目する必要があります。
今後の議論に当たっては、この問題に関する当事者である、これから結婚する若い世代の意見を的確に把握するとともに、客観的なデータに基づき議論を進めていくことができるよう、しっかりと検討を進めてまいります。
○高良鉄美君 今、今後のアンケートの在り方についても検討を進めていくということで、是非若い世代ということで、これから結婚していくという世代に対するアンケートの在り方というのも重要だと思います。
これ、今朝ですけれども、選択的夫婦別姓制度の早期導入を求める要望書ということで、これは日本女性法律家協会の方から要望を受けました。もちろん、この女性法律家協会というところ、組織は、女性の裁判官、検察官、弁護士及び女性の法学者から成る組織です。そういった方々から、この点についてもいろんな指摘がありました。そして、ここでタイトル、そうでありますように、選択的夫婦別姓制度の早期導入を求めるということが、御答弁にもありましたように、九一年から始まっているわけですし、この当時の官房長の方も九一年からその検討をということで入っている実に長い期間のものでございます。
そこで、最後の質問になりますが、日本の女性差別撤廃が進まないことや男女格差が大きいことが国際社会から厳しく指摘されています。日本のジェンダーギャップ指数は、先進国どころか、世界経済フォーラム、WEF加盟の全ての国と比較しても低い位置にとどまっています。
例えば、二〇一八年に政治分野の男女共同参画推進法が施行されました。しかし、その後の衆議院選挙では、女性割合は前回を下回る結果となりました。これは昨年の衆院選です。それから、二〇一九年の参議院選挙でも女性割合は増えませんでした。法律はできましたが、実効性がなく、更なる制度の見直しが必要ということだと思います。
なぜ、男女共同参画局の取組にもかかわらず、女性への人権侵害や差別撤廃が解消されないのかということについて、内閣府に意見を、御見解を伺います。
○政府参考人(吉住啓作君) お答えいたします。
御指摘のとおり、我が国の男女共同参画の現状は、ジェンダーギャップ指数が百二十位であることに表れているように、諸外国に比べても立ち遅れていると言わざるを得ません。男女間の賃金格差や固定的性別役割意識といった構造的な問題がその背景にあると考えており、女性が直面する課題を一つ一つ解決していく必要があります。
そのためには、あらゆる政策決定過程に男女共同参画の視点を取り込むことは極めて重要と認識しております。このため、男女共同参画会議の下で専門調査会を開催し、各省の幹部を呼んで、女性の経済的自立や教育など様々なテーマで議論を積み重ねているところです。今後、第五次男女共同参画基本計画に基づき五月から六月にかけて策定する女性版骨太の方針においても、各府省の関係施策をしっかり盛り込み、各省横断で男女共同参画に資する施策を実施してまいります。
また、男女共同参画に関する取組について、政策決定過程に携わる者を含め、全ての方に一層の御理解をいただけるよう、あらゆる機会を捉えて説明や周知に努めてまいります。
○高良鉄美君 この男女共同参画局を中心に各府省横断的にということで、やはり柱となるのが、先ほどの推進法がありましたけれども、男女共同参画社会の実現と大臣もおっしゃいました。まだ大臣はおっしゃっていないか。立法目的がとにかく明確ですね、この法律が。つまり、男女共同参画社会を目指すということですので、この男女共同参画局、内閣府ですね、ナショナル、ナショナリーという形でしっかりと国家機関として機能するためにはそれに見合う権限とマンパワーが必要だということで、その取組をまた今後もしっかりやっていただきたいと要望しまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。