国会質疑 Interpellation

2022年5月17日 参議院 法務委員会

質問内容

・民事訴訟手続のIT化について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第12号 令和4年5月17日

○高良鉄美君 私は、沖縄の風を代表して、民事訴訟法の一部を改正する法律案について反対の立場から討論いたします。
 民事訴訟手続のIT化については、質疑を通して課題もありましたが、IT化の必要性については一定の理解をしています。しかし、IT化を推進する法律案に法定審理期間訴訟手続、いわゆる期間限定裁判が盛り込まれたことには反対であるため、以下、反対理由を申し述べます。
 第一に、立法事実が明確に示されなかったということです。期間限定裁判は裁判の迅速化と期間の予見可能性を高めるとして盛り込まれましたが、質疑を通して、迅速化にも予測可能性を高めることにもつながる根拠は示されませんでした。
 法改正をする上で最も重要なのが立法事実であるのに、古川大臣や政府参考人が立法事実として挙げたアンケートは都合よく切り取ったもので、立法事実を基礎付けるものとは認められないということです。むしろ、期間限定裁判が近代裁判の原則に反する諸外国にない制度で、裁判の本質を根底から変えてしまうおそれがある、不十分で粗雑な審理になる危険性があるなど、この制度を導入することへの懸念が示されたことを重く受け止め、本法案から除外すべきでした。
 第二に、期間限定裁判は、裁判を受ける権利を侵害するおそれがあるということです。主張、立証が尽くされたときに判決をするというのが近代訴訟の原則でもあります。だからこそ、期間が来たら判決をするという制度は諸外国にはないのです。裁判の本質を根底から変えてしまうおそれがあることが参考人からも衆参の委員からも指摘されましたが、法務省からは明確な答弁はありませんでした。
 裁判を受ける権利は憲法に定められている国民の権利であるにもかかわらず、憲法で保障された権利を擁護する立場にある最高裁がこれを脅かすおそれのある期間限定裁判を出してきた経緯を見ても、適正手続の観点からも疑問、問題があるのではないかと言わざるを得ません。
 訴訟が長期化する要因は、裁判所の物的、人的な基盤整備が不十分であることだと指摘してきました。最高裁も、裁判を受ける権利は憲法上保障されている重要な権利だと認識している、また、適正迅速な裁判の実現のためには裁判所における人的、物的体制を確保していくことも重要であると答弁されました。訴訟の長期化を解消するために、裁判所の人的、物的体制を確保することが最優先に行われるべきです。
 以上の理由から、民事訴訟法の一部を改正する法律案に反対であるということを申し上げ、私の反対討論といたします。