2022年5月10日 参議院 法務委員会
質問内容
・期間限定裁判について
議事録
第208回国会 参議院 法務委員会 第10号 令和4年5月10日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
私も、引き続きと言ったらいいんでしょうか、この法定審理期間訴訟手続、まず、先ほど来ずっと期間限定裁判と言っていますけれども、この問題について伺いたいと思います。
裁判の迅速化と期間の予測可能性を高めるためとして今回盛り込まれた期間限定裁判については、衆参の参考人質疑で実務を担っている弁護士から、近代裁判の原則に反する、あるいは諸外国にない制度で裁判の本質を根底から変えてしまうおそれがある、さらに不十分で粗雑な審理になる危険性がある、そして立法事実の検討ができていないと、多くの問題点が指摘されました。しかし、対政府質疑でも、これらの疑問に明確に答弁が行われていません。
そこで、今日は特に期間限定裁判について質問したいと思います。
まず、参考人質疑で国府参考人から、IT化研究会の第二読会に出てきたときに、その年の一月の最高裁長官の年頭の御挨拶の中で、IT化だけではなくて、この機会に訴訟手続のいろんな見直しをしてはどうかというお話がありました、だから、そういうお話を受けて、最高裁の事務局が何かないかなということで言われたのかもしれませんと答弁されていますが、大谷長官がそのような発言をされたのでしょうか。また、この発言が制度導入に影響しているのか、最高裁に伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(門田友昌君) お答えいたします。
国府参考人が言及されました大谷最高裁長官の御挨拶といいますのは、平成三十一年の一月一日付けの「裁判所時報」に掲載されました大谷最高裁判所長官の新年の言葉のことであろうかと存じます。この挨拶は、民事訴訟手続のIT化を契機として、民事訴訟の審理運営、プラクティスを改善し、裁判の質の更なる向上を図るべきであるとの趣旨を述べたものであると認識しております。
他方で、お尋ねのありましたIT化研究会の第二読会での提案と申しますのは、公益社団法人商事法務研究会が設置した民事裁判等IT化研究会において、検討のたたき台として裁判所の出席者からされました提案、具体的には、当事者が同意し、裁判所が相当と認める場合を要件として、主張、証拠関係等について一定の限定を付し、一定の期日回数又は期間の中で争点中心の集中かつ充実した審理を実現することによって、紛争解決の実効性を担保しつつ紛争を迅速に解決する手続を設けることについてどのように考えるかといった内容の提案を指すものと理解しておりますけれども、そのような提案がされましたのは、電子化される手続の下で、ウエブ会議等のITツールの特性を生かすことによって争点中心の集中かつ充実した審理を実現し、もって紛争解決の実効性を担保しつつ紛争を迅速に解決するとともに、解決に要する期間について当事者の予測可能性を高める特別な手続を創設することが考えられるのではないかといった問題意識に基づくものでございます。
○高良鉄美君 年頭の挨拶が文書で残っているということでございますけれども、この問題は、今この長官の発言が影響しているかというものをちょっと伺ったわけですけれども、制度として、今これまで質問した中では、ITの問題についてはいろいろ御質問もありましたけれども、それはもう流れだろうと、時代のですね。IT化を充実させていくということは裁判の迅速化にも役立つだろうということは、もうほとんどそこには、あとは細かい点だけだと思うんですね。
ところが、この途中で、これ、やっぱりどう見ても何で途中で入ったような感覚を受けるんですね。それ、別の話じゃないかと。迅速化は、ITはもうこれ当然でしょうと、やらない方がおかしいと。逆に、この期間限定というのはどういうことなのかと。期間限定すれば早くなるということで、先ほどの山添議員のお話もそうでしたけれども、そうではないんじゃないかと。だからこそ、いろんな、裁判を受ける権利の問題というのも指摘されているんじゃないかというふうに私は思うわけです。
時間もどんどん進んでいきますので、衆議院の質疑で、期間限定裁判を導入している国があるのかと、また、ない場合はその理由は何かを聞かれました。これについて、参考人や政府参考人から導入している国はないとの答弁が行われましたが、その理由は示されませんでした。
改めて伺いますが、諸外国が期間限定裁判を導入していない理由は何か、明確にお答えください。
○政府参考人(金子修君) 法務省が把握している限りでは、今回創設しようとしている制度と同様の制度が諸外国にあるものとは承知しておりません。
その理由ですが、もとより各国の民事訴訟制度は一様ではなく、それぞれの国の事情に応じてふさわしい制度が採用されているものと考えられます。諸外国に法定審理期間訴訟手続と同様の制度がないという理由を、その理由を問われても、お答えすることは困難でございます。
○高良鉄美君 理由を直接は調べていないということで受け取りましたけれども、普通、こういう期間限定裁判、初めて導入するのかもしれないですけれども、日本の中で、あるいは世界でもそうかもしれませんけれども、これは、じゃ何でだろうとか、何でそういうのを導入しなかったんだと、ほかの国がですね。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕
特に今、いわゆる法の支配と言っている欧米諸国、そこが入っていないということは、やはり適正な手続の問題として、あるいは裁判を受ける権利の問題として、そういった法原理上、期間を限定するというのを法律の中に突っ込むというのは問題があるんじゃないかということが予想されるんですよね。その点は、やはり私は、これから裁判を受ける権利の問題というのを展開していきたいと思いますので、次の質問に移ります。
杉山参考人ですね、先日の。この法定期間制度に関しまして、確かに裁判を受ける権利を侵害するのではないかという批判があることは承知しているのですがということは、それだけあるだろうということですよね、他方で、終わりが見えない、いつ裁判が終わるか分からない、どれぐらい時間が掛かるか分からないために訴えを提起することができない人たちがいるとすれば、それこそ裁判を受ける権利の侵害になるのではなかろうかと思っていますと述べられました。
法務省の見解も同じでしょうか、あるいは認識も同じでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 杉山参考人が参考人質疑において御指摘の御発言をされたということは承知しておりますが、杉山参考人がどのような御認識か、御指摘の御発言をされたのかにつきまして知る立場にないため、杉山参考人の発言と法務省の認識が同じであるか否かをお答えすることはそもそも困難でございます。
その上で申し上げれば、法定審理期間訴訟制度の創設は、民事訴訟において紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟の利用をちゅうちょさせる要因となっているとの指摘があることを踏まえたものでございまして、この制度の創設には、審理期間や判決までの期間についての当事者の予測可能性を高めて民事訴訟を利用する、しやすくするという意義があるものというふうに認識しております。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕
○高良鉄美君 今日聞いた私は答えがあったんですけれども、アンケート、利用者、裁判所のですね、利用者のアンケートということがあって、この中で、終わりがいつあるのか、いつ終わるか分からないということが五六・四%でしたでしょうか、それがありました。それと、そういうのがあるのでちゅうちょしましたという比率は違うんじゃないかと。
要するに、どのようなアンケートを取ったのかなと。これ、通告していませんけれども、アンケートを取っているわけですから、要するに、複数回答があったのか、それとも全体のどれぐらいの五六・四なのか、それともその五六・四というのが、終わりが見えないからちゅうちょした人が五六・四%なのか、それちょっと分かればお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(金子修君) この民事訴訟利用者調査の結果を御紹介しますが、裁判が始まった時点で裁判が終わるまでにどれくらいの時間が掛かるか事前に予測が付いたかという質問に対して、全く予測が、予想が付かなかったとの回答が五六・四%でございました。
このような利用者調査の結果が法制審議会の部会において紹介され、その法制審議会の部会において、紛争解決までに要する期間の予測可能性が低いことが訴訟による紛争の解決をちゅうちょさせる要因になっているという意見が委員から出されたと、こういうことでございまして、このような事実関係を受けて、裁判が終わるまでに時間が掛かるということが裁判の利用をちゅうちょさせる要因になっているのではないかという理解の下に調査審議が進められたということでございます。
○高良鉄美君 そうではない……(発言する者あり)
○政府参考人(金子修君) 同じ調査の中で、裁判をちゅうちょした気持ちがあったかとの質問に対して、はいとの回答が四九・四%という結果がございました。その理由として、裁判は時間が掛かると思ったからが当てはまるとの回答が七八・四%であったと、こういう調査結果もございました。
○高良鉄美君 それでは、これやっぱり違うわけですね。同じ質問で五六というわけでもないし、やはり終わる期間のめど、めどというんですかね、いつ終わるか分かりましたかといえば、いや、分からなかったというのが結構あるというのはもう想像できることですね、質問においてもですね。それを分かる人が、裁判官でも分からないかもしれないということですからね。
そういったことでいうと、今お話しされたことによると、先ほどの杉山参考人の裁判を受ける権利を侵害するのではないかという批判があるということはもう承知しているということですから、ここ問題なんですよ。これだけの批判があると、あるいはもう批判というよりも侵害があるんではないかというそういうものと、アンケートを取った、だけど、ちゅうちょする方がいらっしゃるかもしれない、まあ結構いらっしゃる、全体の半分以下ではあるかもしれませんけれども、そういうようなのがあると、アンケートの中で、考えたわけでしょうけれども、そういうものになったときの裁判を受ける権利の重さとやっぱり期間を限定していくということの問題点というのは随分差があると思うんですね。差があるというか、一方はまさに権利の実体の問題ですね、もう一つは期間というものなんですよ、迅速性というね。
行政の場合には効率が求められています、明らかに。これは国家行政組織法でもそうでしょうし、その目的として効率というのがありますね。ところが、裁判というのは、効率の問題ではなくて、やはりそこできちんと主張、立証ができるか、この問題の方が裁判を受ける権利にとってはとても重要なんですね、受ける権利にとっては。その部分でいうと、一方でというふうに比較をするレベルが違うんじゃないかと私は思うんです。まあ意見ということでお聞きいただけたらと思います。
ちょっともう時間がなくなってまいりましたので、一つの、その本人訴訟は飛ばしますけれども、参考人から、訴訟を長期化している要因として、裁判所の法廷が空いていないために期日が入りにくいとか、弁論事務室が空いていない、準備室が空いていないなど、裁判所の物的、人的な基盤整備が必要だと指摘されました。
私は、毎年、裁判所職員定員法の審議では、特に家事事件の複雑困難化等で、家裁の充実を始め裁判所の充実を訴えてきました。行政機関ではない裁判所は、政府の定員合理化計画に拘束されるものではないとしつつ、政府からの協力依頼を受け、定員を削減しています。このことに問題はないという旨の答弁も繰り返されています。
裁判所の充実を図ることが、まさに本質である訴訟の長期化を解消すると言えるんではないでしょうか。最高裁の御意見、御見解を伺います。
○委員長(矢倉克夫君) 時間ですので、お答えは簡潔にお願いします。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答え申し上げます。
裁判所の充実という点につきましては、近年、民事訴訟事件の複雑困難化への対応として合議制による審理を進めること、成年後見関係事件の増加への対応や後見監督体制の強化を行うことなどを目的に、相当数の判事や裁判所書記官などを増員して着実に人的体制の整備を図ってきたところでございます。
他方で、定員削減につきましては、庁舎の清掃等を担当する者など外注化等で対応可能な分野を中心に行っているものでございまして、事件処理に影響を与えるものではないというふうに考えております。
裁判所といたしましては、引き続き、事件動向、事件処理状況等を踏まえつつ、裁判所の体制の充実に努めてまいりたいと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、これまでの増員分も活用しつつ、今般の改正法の趣旨も踏まえながら、審理運営の改善、工夫等を引き続き行うことで適正迅速な事件処理に努めてまいりたいと考えております。
○委員長(矢倉克夫君) 時間が過ぎております。
○高良鉄美君 はい。もう時間になっておりますので、質問はこれで終わりたいと思います。また引き続き行いたいと思います。
ありがとうございました。