国会質疑 Interpellation

2022年4月28日 参議院 法務委員会 参考人質疑

質問内容

・裁判のIT化について

・裁判の期間制限について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和4年4月28日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 今日は七十年前に沖縄が分離されたという四・二八の日ですけれども、その講和条約の中に、立法、行政、司法、この司法までアメリカが施政権の、この一部を又は全部を持つという、こういう状況で、沖縄の司法は、実は琉球政府の裁判所とそれから米国民政府の裁判所がありまして、沖縄の中の民事事件、刑事事件は基本的にこの裁判所だったんですね。で、弁護士もそこにいると。ただ、そのアメリカの利益に関わる場合には移送されると、沖縄の人同士の民事裁判であっても移送されるというのがあって、やっぱりこれ考えますと、刑事事件は全く、まあ今回民事のあれですけれども、刑事事件は全く関われないということなんですよ。
 だから、そういうことになると、今、憲法から分離されたわけで、憲法の三十一条の適正手続というのがありますが、この適正手続の次に、今日問題になっている裁判を受ける権利というのがあるわけですね。そうすると、裁判を受ける権利というのは、先ほどやっぱりあったように、迅速性というのは当然公正な中でやる場合に必要だと思います。IT化の問題もこの迅速性にはかなり関わりを持っているだろうと私は思います。
 ただ、やっぱり幾つか指摘の中で、迅速性だけではないだろうと、一つの要素ではあるかもしれないけれども、迅速性だけがこの裁判を受ける権利の保障に役に立つのかどうかということがあると思いますので、私、今日お聞きして、本当に三名の参考人の方々、やっぱりこの民事訴訟の中において実際の裁判でどういうふうになっていくのか、非常に参考になりました。そういう中で、私が、今あっているこのIT化については基本はどなたも反対されていないんじゃないかなと、基本はですよ。ただ、この期間限定をする審理期間ですね、これの六か月というのがまず入ると、しかし、これは合意によってということで途中で通常の方に戻ると。この辺が問題があるんじゃないかということでは、幾つか杉山参考人もちょっと述べましたし、それから国府参考人もそれは随分述べられました。
 そこで、やっぱりまずITの問題からちょっとお聞きしたいということで、これは小澤参考人にお伺いしたいと思います。
 この裁判のIT化というのは、ずっと本人訴訟のお話をされていましたので、裁判所が本人確認をするということが大切だと思うんですけれども、この士業者の方々は依頼者の本人確認をどの程度されているのかな、どのような感じですかねということで、ちょっとお伺いしたいと思います。
○参考人(小澤吉徳君) 先生、御質問ありがとうございます。
 先生が冒頭おっしゃられた、迅速性も大事だけれども、国民が裁判を受ける権利、これを保障することがより大切だという御指摘についても全く共感するものでして、司法書士は今年百五十周年を迎えるのですが、制度発足以来、司法代書人と言われてきた頃から、訴状、準備書面等の作成を通じて国民の裁判を受ける権利を保障してきたというふうに自負しているところでございます。
 そして、今先生からの御質問がございました本人確認の点ですが、司法書士が深く関わる不動産登記業務につきましては、成り済ましを未然に防ぐために、当連合会、そして司法書士会としても本人確認を厳格に行うことを指導しておりまして、ふだんよりそういった研修なども実施をさせていただいているところでありますし、各司法書士においても職責として執務の現場において本人確認を厳格に行っているところでございますので、このIT化後の民事裁判業務についても同様に成り済ましなどを防止する本人確認を厳格に行っていくことになろうかというふうに理解しています。
○高良鉄美君 本人確認、非常に大事な、入口としてもう大事なことだと思いますけれども。
 今日、小澤参考人のこの資料で、いろんな取組が司法書士連合会のありますけれども、写真があって、先ほど宇宙からというのが、お話がありましたけれども、こういう形で本人訴訟が多いということで、一般の人がどれだけ利用するかということが肝要だと思うんですけれども、どうすれば本人がインターネットを用いた訴えに、まあ、なじむと言ったら変ですけれども、こういう、どういうふうにしたら本人が訴えをされてくるのかなというふうに思うんですが、そこら辺いかがでしょうか。
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
 先生御指摘のとおり、やはりこの本人訴訟の多い我が国においては、一般の方がどれだけ利用するかというところが肝になるということは、従前、繰り返し申し述べてきたところであります。
 やはり、当事者でも使いやすい事件管理システムのいわゆるユーザーインターフェースの問題、これから構築されるそのシステムの仕様によって大きく左右されるところはあるのだろうと思っております。また、ITを利用した際の経済的なインセンティブというのも一つ、それを大きくすれば利用する方が増えるのではないかというふうに思っているところでもございます。また、当事者であってもウエブ会議を積極的に活用できるような運用、この三つが重要ではないかというふうに考えているところでございます。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 この辺りの利用促進をしっかり、今回お話を聞くと国のサポートも非常に重要だということをお伺いしました。ありがとうございました。
 先ほどちょっと問題にしたこの法定の審理期間の訴訟手続、この関連について、ちょっと先ほどから国府参考人もその点を少しお話ししましたし、日弁連の方からも問題点が多く指摘されておりますが、この辺についてちょっと問題があるのかなというふうに私も考えているわけですけれども、この訴訟期間の手続について、立法事実のお話が先ほどもありましたけれども、法務省の方では、やはりこの目的というんでしょうかね、裁判の迅速化と、そして期間の予測可能性を高めるための制度というふうに説明をされているわけですけれども、これについては杉山参考人はどのように御意見がありますでしょうか。
○参考人(杉山悦子君) 期間制限をすることに対してどのように評価するかということでよろしいでしょうか。
 裁判がそもそも遅い原因というのは様々あるということは先ほど国府参考人からも御指摘があったかと思いますけれども、一つはその期日がそもそも入りにくいということであれば、それは裁判所側でウエブ会議なんかも導入しながら進めていくという必要性もあると思いますし、あと、実は、今のこの民事訴訟法、平成八年に改正されて平成十年に施行されたわけなんですが、そのときの理念というのは、それまではじっくり長く、五月雨式と呼んでいるんですけれども、期日を点々と入れて、当事者はこのときに少し主張をして、でも、また新しい証拠が出たからということで、いわゆるだらだらと審理をしていたと。その場合には、結局時間が掛かっているんだけれども、充実した審理になるかというと必ずしもそうではないと。
 したがって、なるべく当事者も主体になりながら、きちんと何が重要な問題であるのか事前に整理をして、一気に証拠調べを集中してすると。それこそが、期間は短くなるし、さらに、何といいますか、より真実に近づくといいますか、裁判になるんだという発想に基づいて民事訴訟法というものが今できているわけなのですが、その当時のこの改正の何というか熱意というものも少し下がってきたのもあるかもしれませんし、事実が複雑になっているということもあるかと思いますが、実際に、本来集中して審理しなければならないのが、何といいますか、だらだらと昔の民事訴訟みたいに、五月雨式といいますか、ちゃんと証拠を開示せずに少しずつ開示するとか、一旦争点整理の手続に来るんだけれども、分からないので持ち帰るとか、そういう形で実は審理が長引いているというようなお話、調べたりするとそのような指摘も見られるところであります。
 そういうものについては、やはり、何といいますか、本来であれば、本来この民事訴訟法が目指したところの、集中的に当事者が主体となって争点を整理をして、裁判所には判断してほしいところを集中して迅速に判断してもらう、これこそが正しいといいますか、当事者が納得し、かつ充実した裁判につながるんだという発想を、何といいますか、期間を制限するとか、そこだけに、何といいますか、期間を制限することがいいかどうかというところに、何といいますか、批判の目が向いているところでありますが、元々のこの今の民事訴訟法の理念をより、何といいますか、実現するといいますか、より目に見える形で実現するというのがこの制度であろうと思います。裁判所側の努力もありますし、また当事者の方でも十分に事前にちゃんと準備をして裁判に臨むということができるのであれば実現できる制度であろうかと思っておりますし、迅速イコール拙速という発想に基づく制度ではないというのは私が認識しているところであります。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 今長期化している原因とかいろいろそういうものもあるだろうと、改善余地もということも先ほどもありましたが、実は私、裁判所定員法の問題で反対したんです。減員されていると、事務職も含めて職員、何でこんな毎年減っていくんだと。これ、今ちょうどお話ありましたけれども、先ほどの迅速化、集中審理をして整理していくということも重要だと思いますし、また、受皿としての裁判所も、やっぱり施設だけじゃなくて人員をきちんと充実させるということ、とてもこの迅速化に役立つんじゃないかなと私は思っているんですね。それでちょっとお聞きして、まあもう一つの要素としては、やっぱりこの施設、司法権の充実というのが大事かなとちょっと思った次第でした。ありがとうございました。
 国府参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど来ずっとリスクというお話をされていますけれども、このリスクについてももう少しお聞かせいただけますでしょうか。リスクの問題ですね。
○参考人(国府泰道君) お答えします。
 先ほどもちょっと申し上げましたように、当事者の方というのは、裁判所へ行けば、自分の言っていることよく理解してもらえて、自分は勝つものだと思っている方が多いですね。だけど、実際の裁判は、さっきも申し上げたように、非常に迅速、スピーディーにやる傾向が強まっておりまして、なかなか言い分をやっぱり聞いていただけなかったという不満があります。
 それと、もし期間に対する不満があるとしたら、やっぱり争点整理のやり方の問題もあろうかと思うんですね。今先生がおっしゃったように、裁判官の人員の問題なわけですけども、一人の裁判官が手持ち事件が二百件もあって、それで毎月四十件も新件が入ってくるという中で、一か月実質稼働二十日間の中でどれだけの事件がこなせるかというのがあるんですね。
 そうすると、争点整理手続というふうに言っても、裁判官自身がその事件について十分頭の中に入っていないということになれば、原告代理人、被告代理人、裁判官の三者が膝を突き合わせて議論しようにも議論ができません。そうすると、裁判官は、はい、本日は原告から準備書面が出ましたので、次回は被告、これに対する何か反論があれば反論してくれますかだけで弁論準備は終わってしまうわけですね。
 杉山先生がさっきおっしゃったように、平成八年改正で弁論準備の活性化というふうに言われてきているわけですが、そこでは実質的な期待された活性化が実現できていないというのも、やはり裁判官の事件が過重負担になっているということが影響しているのではないかと思います。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 今裁判官のお仕事の話にも関わっているということがありましたけれども、裁判官が例えばこの審理期間を六か月の限定に、そうしましょうというような、アドバイスといったら変ですけれども、何かそういう方向でお話を法廷の中で進めていくようなことというのは、国府参考人の立場から、現場で一緒に裁判の中でやっている方として、この辺はどういう御意見があるんでしょうか。
○委員長(矢倉克夫君) 高良君、時間が。
 じゃ、国府参考人、短めにお願いします。
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
 確かに、その裁判官からこの手続やりませんかと言われると、当事者としてはやっぱりそれに乗りやすいという傾向があります。そういうこともあるので、元々は、それからこういう手続使うことは慎重でないといけないというので、書面による、書面によって申入れをするというふうになっているんですが、実は裁判期日においては当事者は同意をするだけでいいということになっているので、裁判官から促しがあって当事者が同意をしたら、この手続に移行してしまいます。そういう意味では、慎重な検討がやられない、また嫌だとは言いにくい、訴訟の迅速な進行に協力してほしいという裁判所の促しがあれば、なかなか当事者としては、当事者代理人としては断りにくい問題もあるのではないかというふうに思います。
○高良鉄美君 もう時間になりましたので。
 大変参考になりました。ありがとうございました。