国会質疑 Interpellation

2022年4月19日 参議院 法務委員会

質問内容

・家族の法制に関する世論調査について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和4年4月19日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 家族の法制に関する世論調査について伺います。
 三月二十九日の法務委員会で家族の法制に関する世論調査の設問の問題点を指摘しましたが、この調査結果を見ると今後の議論の参考になる点も多くありますので、本日は調査結果について法務省に伺います。
 選択的夫婦別姓制度に関する問題は、人権の問題であり、男女平等を実現するために非常に重要な問題です。そして、これから結婚しようとする若い人たちの声をしっかり受け止める必要があると思います。
 そこで、選択的夫婦別姓制度の賛否を問う設問における女性の十八歳から二十九歳まで、そして三十歳代、四十歳代の回答割合をそれぞれ教えてください。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 御指摘の設問において、女性の十八歳から二十九歳までにつきましては、夫婦同姓制度を維持した方がよいという方が一〇・四%、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよいという方が四三・三%、選択的夫婦別姓制度を導入した方がよいという方が四五・七%。
 女性の三十歳代につきましては、夫婦同姓制度を維持した方がよいという方が一一・七%、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよいという方が四五・三%、選択的夫婦別姓制度を導入した方がよいという方が四二・五%です。
 女性の四十歳代につきましては、夫婦同姓制度を維持した方がよいという方が一三・一%、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよいという方が三九・〇%、選択的夫婦別姓制度を導入した方がよいという方が四七・〇%でございます。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 御答弁いただきましたように、現行の制度のままでよいというのはいずれも一〇%台、二十代、三十代、四十代もそれぞれ一〇%、一一%、一三%ということでした。これから結婚しようとする若い世代は、一刻も早い制度改正を望んでいると言えます。
 次に、婚姻改姓による不便、不利益についてお伺いします。
 一九九六年に法制審議会で選択的夫婦別姓制度導入を内容とする答申がされたのは、現行の夫婦同姓制度の下で女性が不便、不利益を被ってきたからです。現在、通称使用拡大の取組が進められていますが、通称使用は、法制審の答申以降、民法改正が実現しないために、便宜的な措置として使用できる場面が拡大してきた経緯があります。
 設問の通称使用の法制度がどのような内容か、これまで具体的に示されておりませんので、賛否を判断するほどの情報がありません。通称使用拡大には様々な問題があり、仮にそれを法制化したとしても根本的な解決にはならないのが明らかです。
 そこで、今回の世論調査における、婚姻によって姓を変えたりすることにより不便、不利益があると思うかを問う設問と、旧姓の通称使用により不便、不利益がなくなるかを問う設問について、回答割合をお答えください。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 婚姻によって姓を変えたことにより不便、不利益があると思うかを問う設問においては、何らかの不便、不利益があると思うと回答した方が五二・一%、何らの不便、不利益もないと思うと回答した方が四七・五%でございました。
 上記設問で、何らかの不便、不利益があると思うと回答した方、全体の五二・一%に対して、婚姻前の名字を通称として使うという考え方についてどのように思うかを問う設問においては、通称を使うことができれば不便、不利益がなくなると思うと回答した方が三七・一%、通称を使うことができてもそれだけでは対処し切れない不便、不利益があると思うと回答した方が五九・三%でございました。
○高良鉄美君 不便、不利益というものに対して、やはり半数がそれを感じていると。不便、不利益をなくすために通称をということを、先ほど、大臣、少しそれに取り組んでいくというお話がありましたけれども、不便、不利益を感じているということが実際なんですよね。その不便、不利益をなくすための通称使用ではなくて、むしろもうこの通称を使用することができてもそれだけでは対処し切れない不便、不利益があると思うと回答した方が五九・三%と、これはもちろん不利益があるという中でですけれども。
 御答弁いただいたように、現行制度では結婚の際に改姓せざるを得ず、不便、不利益を感じる人がいるということが明らかであるにもかかわらず、今回の世論調査では、何ら不便、不利益はないと思うと回答している方が、またこれ、また先ほどありましたように四七・五%、半数近く存在しているということは、ここに客観的な実態とそれについての国民の認識との間に一定のずれがあることを示していると言えるのではないでしょうか。
 裁判官は二〇一七年九月まで戸籍名しか認められなかったのですが、十四日の法務委員会で、裁判官百七人が通称使用をしていることが分かりました。同姓に対することの不便さを多くの裁判官が感じておられたということだと思います。
 繰り返しになりますけれども、通称使用には限界があるのが現状であり、今後の議論においてもそうした実態を把握している方の意見を十分に参考にすべきだと考えています。
 そこで、法務省に伺いますが、今回の世論調査において、通称を使うことができてもそれだけでは対処し切れない不便、不利益があると思うと回答した方は、選択的夫婦別姓制度の賛否を問う設問でどのような回答割合であったか、お答えください。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 婚姻前の名字を通称として使うという考え方についてどのように思うかを問う設問において、通称を使うことができてもそれだけでは対処し切れない不便、不利益があると思うと回答した方が、選択的夫婦別姓制度の賛否等を問う設問においてどのような回答をしたのかというお尋ねでございますが、その回答割合は、夫婦同姓制度を維持した方がよいという方が一五・〇%、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよいという方が三三・五%、選択的夫婦別姓制度を導入した方がよいという方が五〇・二%でございました。
○高良鉄美君 今の結果を見ても、実態を把握している方の半数以上が選択的夫婦別姓制度に賛成の意見です。つまり、今回の調査結果を踏まえると、夫婦別姓制度の下での客観的な実態について国民の間で正確な認識が広まると、選択的夫婦別姓制度の導入を支持する意見が広がっていくと考えられるのではないでしょうか。
 私が先ほど聞いた中で、十代の後半、十八歳から二十九歳まで一〇%、この方たちが結婚していく世代です。そして、三十代でも一一%、四十代でも一三%。なぜそれを認めないのかということです。
 これは、先ほど一番最初に申し上げましたように、人権の問題であるということを私たちは考えなければならないと思います。男女平等であるというのも、平等権という憲法十四条の性別による差別の問題もあります。これは、政府からすると、平等権というのは個人の権利の方ですけれども、政府からすると平等取扱いをしなきゃいけない、そこに生じてしまった結果が不平等だとこれ問題になるわけです。
 ですから、先ほども、二十五年超えていますね、一九九六年に法制審の答申がありました。四半世紀ずっと不都合があると言っているわけですよ、不利益があると。ですから、これは、この問題が人の人権の問題であるということをしっかり捉えるということがとっても大事だと私は思っております。
 四半世紀というのは、沖縄が憲法が適用されているはずでした四半世紀の空白というのがありますけれども、憲法が適用されなかったんです。長いですよ、四半世紀というのは。これはもう女性の方々が一生懸命待っていたと。だから、今通称使用に取り組むということになると、また待つということになるわけですね。そういったところをちょっと指摘しておきたいと思います。
 そこで、最後に、先ほど百七名の裁判官が通称使用ということでありましたけれども、裁判官の通称使用がこれだけの人数がいると、百七人近いということはどのように受け止めていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。最高裁の方にお願いします。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答え申し上げます。
 御指摘いただきましたとおり、裁判官の旧姓使用者数は、裁判関係文書についても旧姓使用を認めることとした平成二十九年九月一日以降年々増加し、令和三年十二月一日現在では百七人となっております。
 旧姓使用をするか否かは個々の職員の意思によるところでありますため数の多少についての評価は差し控えさせていただきたいと存じますが、今後も引き続き制度の周知等に努め、希望者が支障なく旧姓を使用できるよう配慮してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 まだ少しずれてはいると思いますが、次、少し質問に入りたいと思います。
 今回の世論調査の結果については、より分析的な検討が可能となっています。それゆえ、国民や国会議員の間で更なる検討や議論がされるように、今回の世論調査の結果をより分析的な視点で紹介するなど更なる情報提供を努めるべきだと、情報提供に努めるべきだと思いますが、法務省の今後の取組を示していただけたらと思います。
○政府参考人(金子修君) 法務省におきましては、今回の世論調査の設問のうち国民の関心が特に高いと思われるものにつきましては、全体の回答割合のみならず、性別、年代別ごとの回答傾向等を分かりやすく示した資料を作成し、ホームページで紹介しているところでございます。
 今回の世論調査の結果につきましては、委員から御指摘のとおり、今後様々な観点から議論をする上で重要な資料になると考えており、国民的な議論に資するよう更なる情報提供について検討してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 是非とも検討をお願いしたいと思います。
 今、日本の国際的な法の支配の問題がありましたが、これ基本的人権を含むということで大臣はずっと答弁をされております。この中で、選択的夫婦別姓という問題も非常にこの法の支配と関わりを非常に強く持っていて、これが明治民法の中でずっと続いてきた、まあ社会の慣例ということでしょうかね、女性の改姓が多いということにつながっているということもあると思いますが、これは選択的ですから、別に変えたい人は変えて、変えなくていい人は変えなくていいということを選択するわけですね。ですから、ここは非常に大きいと思います。まあ誤解も、まだ世の中、世論の中にはそういうことを十分まだ理解されていない方もおられると思いますので、引き続き、法務省の方には今回の結果を見られて御検討をいただきたいと思います。
 大臣も何かありますか。先ほどの答弁でも、通称使用を不便や不利益を与えないようにということで取り組んでいくということでしたが、もう一歩進んで是非とも取り組んでいただければと思います。私からの要望としたいと思います。
 これで終わりたいと思います。ありがとうございました。