国会質疑 Interpellation

2022年4月14日 参議院 法務委員会

質問内容

・住民票の続き柄の記載について

・裁判官の通称使用状況について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第6号 令和4年4月14日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 法案に入る前に、今、山添委員の言われたことですね、改めて、法の支配というのをずっと政府一丸となって海外にまで訴えている、この法の支配は何だという中身も何度も聞いてまいりました。適正手続とか最高法規性とか裁判所の判断の尊重とか、そういうこと入っている中で幾つか挙げられるのが四つ、五つあるわけですけれども、それ全て司法権が関連しているんですよ、法の支配というのは。だから、その法の支配というのをこれだけ大々的に言いながら、やはりそこを過小評価しちゃいけないと。それは司法権がきちんと作用しないといけないということをまず認識していただくということで、今回の法案、後でいろいろお聞きしますけれども。
 まず、法案について質問する前に、住民票の続き柄の記載について伺います。
 選択的夫婦別姓が実現していないために、法律婚をして通称使用をしたり、事実婚を選択する夫婦は少なくありません。事実婚夫婦の場合には、住民票の続き柄には夫(未届)、若しくは妻(未届)という記載方法があると承知しています。
 一方で、居住実態が変わらないにもかかわらずペーパー離婚したために、自治体が続き柄欄への妻(未届)の記載を認めず同居人としたケースの報告を受けました。その方は、家族関係を証明するのに御苦労があって、今後のことについても心配されています。同居人と記載すると不都合、不利益があるから、それを解消するために続き柄記載を夫(未届)、あるいは妻(未届)としたのだと思います。
 住民基本台帳で市町村によって違ったり、違った取扱いになることは望ましくないと思いますが、総務省の見解を伺います。
○政府参考人(阿部知明君) お答えいたします。
 住民基本台帳法第七条におきまして、住民票には世帯主との続き柄を記載することとされています。また、事実婚の場合の続き柄の記載につきましては、総務省からお示ししております住民基本台帳事務処理要領におきまして、法律上の夫婦ではないが、準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けているため、お話がございましたように、夫(未届)、妻(未届)と記載することとされてございます。
 住民票の記載内容につきましては、市町村において個別の実態に基づき判断されるものではございますけれども、住民基本台帳が住民に関するあらゆる行政の基礎であることに鑑み、事務処理要領等を踏まえ、その記載内容が住民の実態と合致するよう適切に運用されるべきものと考えております。
○高良鉄美君 居住実態があれば、事実婚で、居住実態があって事実婚であれば、夫(未届)、あるいは妻(未届)として記載できるという御答弁でした。
 そもそも、選択的夫婦別姓の民法改正が実現していればこのような問題は生じないわけでありますから、一日も早く民法改正を行うことを求めて、次の質問に入りたいと思います。
 裁判所における男女共同参画について伺います。
 二〇二一年度から実施する第五次男女共同参画基本計画では、指導的地位に女性が占める割合を二〇二〇年代の可能な限り早期に三〇%程度としています。司法分野の具体的取組として、最高裁判事を含む裁判官全体に占める女性の割合を高めるよう裁判所等の関係方面に要請すると盛り込まれたことは前回の審議でも申し上げたところです。
 最高裁に伺いますが、裁判官、調査官、書記官など裁判所の職員に占める女性の割合と管理職に占める女性の割合、さらに、育児休業取得率もそれぞれお示しください。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答えを申し上げます。
 令和三年十二月一日現在における裁判官に占める女性の割合、これは二三・七%でございます。令和三年七月一日現在における裁判官以外の裁判所職員につきましては、書記官が三七・二%、家庭裁判所調査官、これには家庭裁判所調査官補を含みますけれども、が五五・九%、事務官が四六・〇%という女性割合でございます。
 裁判官以外の裁判所職員の令和三年七月一日における最高裁課長相当職以上に占める女性の割合、これは一七・四%、下級裁課長、最高裁課長補佐相当職に占める女性の割合は三〇・〇%、係長相当職に占める女性の割合は四八・一%でございます。
 令和二年度における裁判官の育児休業の取得率は、女性が一〇〇%、男性が三六・九%でございます。裁判官以外の裁判職員の育児休業取得率は、女性が一〇〇%、男性が六二・四%でございまして、裁判所全体では、女性が一〇〇%、男性が五六・七%ということになります。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 やはりこれも、男女共同参画基本計画で求められている三〇%を超えているところもあったり、そうではないところもあるんですけれども、その裁判所職員の中の管理職の占める割合というのは、やはり女性の地位がだんだん、女性の地位という、女性の占める割合が、まあ下級職員と言ったら変ですけれども、そうなるほど多くなるという形があるのが見て取れると思います。
 そして、育児休業も、女性が一〇〇%で、男性は特に裁判官の場合は三六・七でしたでしょうか、三六・八%と。それに対して、事務職員の場合、もっと倍ぐらいあると、倍近くあると。そこも、やはり裁判所職員ということは、これ全体的に一つの見方としてあるわけでしょうけれども、その中にあるやっぱり平等と、あらゆる平等というのを実現するためのやはり社会というのが非常に重要だと思っています。
 ですから、裁判所においてそういうことを率先して、これから今回の育児休暇についてはそういう形で進んでいくんだろうと思いますので、是非ともそういう実現に向けて実施をしていくということ、そしてアピールをしていくということが非常に重要だと思います。
 これも毎年伺っていますが、裁判官の通称使用状況について伺います。
 最高裁は二〇一七年九月一日から裁判関係文書においても旧姓の通称使用を認めていますが、現在、旧姓を使用している裁判官はどれくらいいらっしゃるのか、直近の調査でお示しください。
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
 旧姓使用者数、これは先ほど御指摘ありました裁判関係文書についても旧姓使用を認めることとした平成二十九年九月一日の時点では、裁判官が十八人でございました。ちなみに、裁判官以外の職員は二百三人というところでございました。
 令和三年十二月一日現在では、裁判官が百七人、裁判官以外の職員が五百五十九人となっております。
○高良鉄美君 ちょっと驚きましたけれども、やはりこれだけニーズがあるということですよね。余りにもこの伸び方があって、何を意味するのかと、この数字はですね。やはり裁判官の通称使用だけではなくて、もう抜本的ないろんな改革というのが必要だろうと。この数字を見ますと、どんどんどんどんまた増えていくんだろうと思いますね。やっぱりそれも我々議論をしていかなければならない重要な問題だと思います。
 裁判所の充実について、先ほど山添議員のお話がありましたけれども、毎年、裁判所職員定員法の審議では、家事事件の増加に伴う家裁の充実を例示して裁判所の充実を訴えてきました。
 行政機関でない裁判所は、政府の定員合理化計画に拘束されるものではないとしつつ、政府からの協力依頼を受け、まあ自主的にと言っていますけれども、最高裁は定員を削減しています。しかし、労働訴訟の急増などで裁判官の負担は増えており、裁判官の増員や訴訟手続のIT化などで負担軽減を試みても、抜本的な解消には至っていないという指摘もあります。
 何より、裁判所の組合から裁判所の人的、物的充実を求める請願署名が出され続けているということを最高裁は重く受け止めるべきだと思います。
 裁判官はもちろん、その他の裁判所の職員を増やすことは、法の支配の役割を果たす司法の充実や司法の独立にも資すると思いますが、裁判所の見解をお示しください。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答え申し上げます。
 判事につきましては、近年、民事訴訟事件の複雑困難化への対応として、合議制による審理を進めること、成年後見関係事件の増加への対応や後見監督体制の強化を行うことなどを目的に、相当数の判事を増員し、着実に人的体制の整備を図ってきたところでございます。
 他方、事件動向につきましては、成年後見関係事件などの一部の事件を除きまして、増加に歯止めが掛かり、落ち着きが見られるようになってきていることから、令和四年度につきましては、これまでの増員分を活用しつつ、審理運営の改善、工夫等も引き続き行うことで、適正かつ迅速な事件処理を行うことができるものと考えており、判事の増員は求めないこととしたものでございます。
 また、その他の裁判所職員につきましては、例えば裁判所書記官におきましてはこれまでも事件動向等を踏まえながら大幅な増員を行うなど、必要な人的体制の整備に努めてきたところでありまして、直近の事件動向等を踏まえますと、令和四年度につきましてはこれまでの増員分を含む現有人員を有効活用することで適正かつ迅速な事件処理を行うことができるものと考えております。
 裁判所といたしましては、裁判官及びその他の裁判所職員、いずれにつきましても、今後とも事件動向等を踏まえつつ適正な事件処理が図られるよう、必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 裁判所の定員の問題ということと、それから司法権の役割というものは少し考えてみる必要があると思うんですね。
 司法権の役割というのは、先ほど申し上げましたように、法の支配との関連が非常に深いと。それから、この法の支配の及ぶ社会になっていくというのは、ずっと多様性の問題も、日本国内の、生活の多様性もそうですが、外国人はもちろんのこと、あらゆる生物の多様性、いろんな形があります。この多様性ということは、考え方もあるいは事件の問題についても、あるいは紛争についてもそれだけ多様性があるということで、それは多様性があるから、違うからこそ訴訟に上がってくるなり、そういう過程に入ってくるわけですよね。だから、そこに対応するためには、今のままじゃ対応できるのかどうかというのが非常に私は疑問に思うんです。
 そして、それだけ訴訟社会になるんじゃないかということを想定して法科大学院もできたと思うんですね。そこを考えますと、これからの社会の方に対応しながら、先ほど検討していくということでしたので、その見ながらですね。私は、これからは法化社会になっていくんだろうと。個人個人が一生を過ごす間でなるべく裁判には掛からない方がいいなという人もいるかもしれませんけれども、それは悪い意味ではなく、きちんと自分がどういう立場にあって、どういう人権あるいは権利の侵害があり、あるいは要求があるということがとても重要なことだと思っています。
 そして、やはり法の支配の担い手である司法権がどのような自覚をするのか、あるいはどのような姿をして外に見せるのかということも非常に重要だと思います。
 さらには、この適正手続ということもありますが、裁判が迅速じゃないということ自体がこれ適正じゃないというのは、海外では通常なんです、なるべく早く終わるというのが。これはもう、どこでもそうですけれども、賞味期限と言ったら変ですけれどもね、裁判を起こして何年もたってしまったらもう意味がないんですよ。だから、そういう意味で、迅速な裁判をするためには、裁判官含めて、で、裁判官だけじゃ、これはいかないわけですよ。それ支えているのは事務職員です、判事補も含めてですね、先ほどの。
 だから、そういった形をしっかりと実現するという基本的な構造を理解した上で、この委員会でも、そしてまた法務省の方でも、そして最高裁判所の方でも対応するようにお願いを申し上げまして、私の質問としたいと、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。