国会質疑 Interpellation

2022年3月30日 参議院 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

質問内容

・法の支配と選挙制度について

・1票の格差について

・女性の政治参画と選挙制度について

議事録

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第208回国会 参議院 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会 第3号 令和4年3月30日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律及び公職選挙法の一部を改正する法律案に賛成ということを申し上げ、選挙に関する基本的な質問をします。十五分という限られておりますので、大体三問ぐらいということで頑張ってみます。
 まず、法の支配と選挙制度について伺います。
 私が所属する法務委員会では、歴代の法務大臣が所信表明で法の支配の重要性を強調しています。今回、古川大臣は、自由、基本的人権の尊重、法の支配、民主主義は大変な、大切な原理だと述べられました。
 長年憲法を研究してきた私も法の支配は最も重要な原理だと思っていますが、あらゆる政策で、法の支配ではなく人の支配ではないかと言わざるを得ないような場面にも直面したりします。多数決で決めることが法の支配に合致すると思っている人は少なくありません。基本的には、政策決定するに当たり多数決で決めることは一定のルールとして否定しませんが、多数決原理で人権に関わることを決めるならば、少数者の人権は置き去りにされてしまいます。
 民主主義の最低条件は選挙である。選挙を所管する総務省の金子大臣が法の支配にどのように認識されているのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(金子恭之君) 高良委員にお答え申し上げます。
 法の支配は、人権の保障と恣意的な権力の抑制とを目的として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であり、日本国憲法も同様の考え方に立って制定されたものと承知をしております。
 法の支配の内容として重要なものは、憲法の最高法規性の観念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容や手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などであると承知をしております。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 今、金子大臣の法の支配に対するお考えを伺いました。当然、内容としてもう非常に問題がない、すばらしいと思います。しかし、国全体のいろんな問題において、例えば安全保障の問題だからと沖縄の人権とか民意が無視されていいはずはないということもこの中に含まれていると私は思います。
 基地問題は国の重要な安全保障政策ですが、同時に、住民にとっては人権に関わる問題でもあります。住民の意思が全く反映されないならば、住民の人権が軽視されるおそれがあります。基地があるがゆえに爆音で静かな夜を過ごすことができない、あるいは女性が性暴力にさらされる、紛争になれば攻撃をされる危険性は高くなります。
 沖縄では九六年、一九九六年、そして二〇一九年と、日本では非常に珍しい県民投票が行われまして、いずれもこの基地の問題で意思表明、ノーということを異議申立てのように行いました。これ例えば、百人中九十九人の人があそこに基地を置いていいんじゃないかということで、これを投票や採決で決めるということになると、これはもう大変な問題になるということをちょっと一言申し上げまして、この補足をしたいと思います。
 次に、投票価値の平等以外に考慮すべき点があるのではないかと、選挙におきましてですね、その点について質問したいと思います。
 昨年の衆議院選挙で一票の較差が二・〇八倍になったことが憲法に違反するとして、選挙無効を求める訴訟が全国で提起されております。今年二月一日には高松高裁が違憲状態とする判断を示しました。また、今月九日には広島高裁の方は合憲と判断し、これで全国で起こされた十六の訴訟の判決が出そろいました。最高裁は年内にもこれらの訴訟の統一的な判断をすると思われます。
 一票の較差はないことが望ましいのですけれども、それ以外にも考慮すべきことはあると思います。
 例えば、選挙期間、同じ選挙期間で、人口密集地の大都会と沖縄のように広い選挙区、いわゆるサイズですね、多くが島でありますので、有権者あるいは候補者へアクセスをすることに対して大きな差があります、全国の大きな密集都市と比べるとですね。
 例えば、沖縄の地理的な特性を言いますと、大阪に沖縄本島を置きますと、西は長崎になります、東は大東島の方が伊豆半島になります。ほぼ日本の、日本列島の半分ということを、これ通常の知事選挙やあるいは今回の参議院選挙は、その間を行き来すると。しかし、陸続きではありません、鉄道もありませんので。ほとんどが海で、しかも飛行機で行けるところも限られています。島々はまた船で渡らなきゃいけない。とすると、一日掛かりで島に行くということになります。そういった問題というのもいろいろあるわけですね。そして、実際、私もこの島々には行けないところもありました。
 参議院ではこの一票の較差を解消する方法として合区が導入されましたけれども、これは人口的な問題でくっつけたわけでしょうけれども、逆に問題が多いことから、一部見直しも行われました。
 選挙制度や全国の事情に精通している総務省として、投票価値の平等以外に考慮されてきたことや議論されてきたこと等をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(森源二君) お答えを申し上げます。
 お尋ねの議論につきまして、最高裁の判例を基に御紹介を申し上げますと、国政選挙における一票の較差訴訟の最高裁判決では、憲法は、投票価値の平等を要求していると解されるが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものなどとされているところでございます。
 その上で、参議院の選挙制度につきましては、令和二年十一月の最高裁判決において、いかなる具体的な選挙制度によって憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられていると解すべきであり、都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとは言えず、投票価値との平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されないというふうにされていると承知をしております。
 一方、衆議院の選挙制度につきましては、平成三十年十二月の最高裁判決において、衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度を採用する場合、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところであり、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有すると言えるか否かによって判断されるとされていると承知をしております。
 なお、現在進められております衆議院選挙区の、小選挙区の区割り改定案の作成につきましては、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の規定により選挙区間の較差については厳格に二倍未満とすることとはされておりますが、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行われなければならないこととされているところでございます。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 非常に、衆議院、参議院、それぞれの特徴を踏まえてということですので、是非ともまた今後も、やっぱりまだ憲法の中で非常に範囲があると思いますので、国会の裁量はあると思います。ただ、先ほども紹介ありましたように、この人口だけが唯一絶対ではないという上で、それぞれの議院で特徴を踏まえた上で合理的と思われる範囲で制度設計をするということですが、少なくとも国会で何やってもいいわけではなくて、やっぱり憲法の羈束があるんだと、憲法によって羈束されているといいますかね、まあそういう部分があるんだということを改めて感じました。
 三つ目の質問になりますが、先ほども山崎委員の方からも少し関連してありました女性の政治参画と選挙制度についてお伺いします。
 一九四五年、つまりあの敗戦の年ですけれども、女性の政治活動を禁じた治安維持法が廃止され、翌年、女性が初めて参政権を行使しました。これは憲法制定に係る帝国議会の選挙ですけれども、そのときには男女同権の政治参政権ということですね。実は、沖縄の女性は、本土よりも七か月早い、つまり敗戦翌月の一九四五年九月に参政権を行使したんですけれども、そのことは余り知られてはおりません。
 女性が参政権を手にしてもう七十六年、沖縄の場合には七十七年になりますが、政治参加は遅々として進まず、女性の政治参加が低いことが国際的に厳しい評価を受けています。世界経済フォーラムが昨年三月三十一日に発表したジェンダーギャップ報告書では、日本は百五十六か国中百二十位でしたが、政治分野に限ると百五十六か国中百四十七位と、もう後ろに九か国しかないと。政治分野の男女格差が総合順位を引き下げたことになります。
 昨年の衆議院選、総選挙は政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が二〇一八年に施行されて初めての選挙でしたが、女性の割合は増えるどころか前回を下回る結果となりました。昨年、推進法は改正されたものの、女性の割合が増えること、これちょっと期待できるのかなと心配ですけれども、更なる取組が必要だと思っております。
 そして、今日、ちょっともうお見せするだけですけれども、これ、内閣府男女共同参画局が作成した「諸外国における政治分野の男女共同参画のための取組」というもう非常に良い資料で、見える化をしておりまして、地図なども、世界地図の中でクオータ制を取っているところとそうじゃないところ、ぱっと分かりますと。まあ日本は白であるということで、ないわけですけれども。これ、百九十六か国中百十八か国がクオータ制を導入している国・地域であると、もう半数ですね。
 この女性の政治参加が進んだ国と我が国の違いというのはどこにあるのか、どのような取組が必要なのか、今後どのように取り組まれるのか、内閣府にお伺いします。よろしくお願いします。
○政府参考人(吉住啓作君) お答えいたします。
 我が国は有権者の五一・七%が女性であるにもかかわらず、衆議院議員に占める女性の割合は九・七%、参議院議員に占める女性の割合は二三・一%となっております。諸外国の国会議員に占める女性の割合を推移を見ますと、一九八〇年頃はフランスやイギリスも一〇%に満たず、日本と水準が変わりませんでしたが、現在、フランスやイギリスでは三割を超えており、我が国は国際的に見ても非常に低い水準にあります。
 諸外国においては、例えば世界百九十六の国と地域のうち百十八の国と地域で政治分野における性別によるクオータ制が国政レベルで導入されております。世界のクオータ制を見ますと、憲法又は法律により議席の一定数を女性に割り当てることを定めたもの、憲法又は法律により候補者の一定割合を女性又は男女に割り当てることを定めたもの、政党が党の規則等により候補者の一定割合を女性又は男女に割り当てることを定めたものの三種類ありますが、フランスやイギリスではこうしたクオータ制の導入後に女性議員の比率が上昇していると承知しております。
 我が国では、平成三十年に政治分野における男女共同参画推進に関する法律が成立し、同法第二条では、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すものとされているとともに、第四条において、政党は候補者の数に関する目標設定等に自主的に取り組むよう努めるものとされております。したがって、同法に基づき、まずは各政党において自主的に取り組んでいただくことが重要です。
 内閣府としては、同法の趣旨に沿って、候補者に占める女性の割合が高まるよう、第五次男女共同参画基本計画に基づき、政党に対し、衆議院議員又は参議院議員の候補者に占める女性の割合を二〇二五年までに三五%とすることを……
○委員長(松下新平君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○政府参考人(吉住啓作君) 努力目標として念頭に置きながら、自主的な取組の実施を要請しています。
 これらの取組を通じて、政治分野における男女共同参画の取組を後押ししてまいります。
○高良鉄美君 時間が参りました。もう最後まで丁寧に答えていただきましたけれども、クオータ制の話、今後も続けたいと思います。
 ありがとうございます。