国会質疑 Interpellation

2022年2月9日 参議院 国際経済・外交に関する調査会

質問内容

・「海を通じて世界とともに生きる日本」のうち、グローバル化の中での海におけるネットワークの役割と課題について

・南シナ海問題について

議事録

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第208回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第2号 令和4年2月9日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。よろしくお願いします。
 今日、非常に興味深いお話がいろいろありましたので、初めて知ったこともありました。大変ありがとうございました。
 まず、伊藤参考人にお伺いしたいんですけれども、ちょうど資料の、事前に配られた、今日ではなくてですね、南シナ海問題におけるバイとマルチというのを書かれて、そして、海洋空間の連結性というタイトルが使われていますけれども、このバイとマルチは恐らく普通は二国間と多数国間の関係かなと思うんですけれども、これまでの南シナ海問題というのは、中国が一方的に出てきたのか、それともその前から南シナ海問題として幾つかの国々が関係していて何らかの対話が昔からあったのか。そこを少しお伺いして、それを海洋空間の連結性と、やっぱりこれが課題というか解決の一つの道かなと思うので、先生のこの連結性に向けた、このつながりというのは、どういうふうな形でこのタイトルをお決めになったのかなというので非常に興味深くありましたので、よろしくお願いします。
○参考人(伊藤剛君) ありがとうございました。
 このバイとマルチというのは大変重要な話でありまして、幾つか要素があります。
 一つは、もちろんその南シナ海というのは、もうこれも多くの方々が御存じのように、そこを通る船舶は物流の観点で非常に重要なことは言うまでもありません。そういう意味では、本来は機能的な多国間連携ができればいいかなと思うんですけど、しかし、私が先ほど申し上げたこともありまして、中国というのは、そもそも欧米諸国が自分の国から遠いところに領土を持っているのに、自分の隣のところでそこを主張、そこで管轄権ですかね、管轄権を主張して何が悪いんだという立場であります。
 基本的にバイといいますのは、やはりその交渉の仕方が、中国とインドネシア、中国とベトナム、中国とフィリピンというふうな、要するに多国間の連携を取らせないやり方というのは常に中国のやり方であります。最近でこそマルチの、多国間の枠組みの中へ出てくるようになりましたが、基本的にそういうことは行わないと。それはなぜかというと、答えは簡単でありまして、多国間の枠組みになると三対四対五、数多く対一になりますので、そういうところはやっぱり出てこないということであります。
 だから、マルチとバイを上手に使い分けて、やっとそのTPPに参加したいと言い始めるということは、要するに、中国が基本的に自分たちが貿易に関する一般的な協定に関してある程度影響力を大きく発揮できるんだという、そういう値踏みがあったから出てきているというわけであります。
 問題は、じゃ、それでリーダーシップを発揮して、その参加国が全体が利益を享受できるような体制になるかどうかですよね。そこがやはり一番大きな問題でありまして、マルチとバイというのは本当に重要な話で、これが本当にきちんとマルチの状態でできればいいと我々学者はよく言うんですが、実際には、マルチの協調枠組みというのは、ここにも挙げましたとおり、いろんな条件がやっぱり成立をしないとうまくはいかないというふうに考えるわけであります。
 まあ笑い話でありますが、このバイはバイラテラリズムでありまして、バイが二で、ラテラルが国と国との関係で、イズムが主義なんですが、大学でその試験を出しますと、これを学生は二つに分けて、バイラとテラリズムに分けて、何か新しい生物テロと書いた答案が多かったので私はかなりびっくりしたということで、そういうことも含めて、やっぱりきちんと用語の定義も含めて多くの方々に教えていくということが重要であるというふうにそのとき思った次第、まあ余談ですが、失礼しました。
○高良鉄美君 ありがとうございました。非常に示唆に富む言葉の選び方だと思いました。
 そして、先ほどもありましたけれども、やらなくてよい戦争をやっぱりやらないようにするという方法というのは非常に難しいと思うんですけれども、沖縄戦も一つそうだったかなと思うんですね、やらなくていい戦争をやったという。
 そういう面でいうと、今回のこのテーマ、海の関連ですけれども、やっぱり先生がおっしゃった、これまで問題になってこなかった、領有権がなかったとか、その宇宙と海という問題が挙がっていますけれども、その関連で、今まさに海の問題で中国とアメリカ、その他の国々あります。そして、宇宙の問題もまさにそういう競争が始まっているわけですけれども、この中で、政府の問題としてはそういうのがあるかもしれないけれども、民間の問題として、先生が交流をなさったり、あるいは留学生も含めて、何かちょっとその関連でいい方法というんですかね、いいエピソードでもあれば、簡単にで結構ですけれども、お話しいただけたらと思います。
○参考人(伊藤剛君) 時間の都合で一、二だけにとどめることにします。
 近年、特に中国からの留学生は私のところに多くなりました。おまえ狙われているんじゃないかという話も冗談ではあるわけですが。しかし、その中国で習ったとおりの論文は書かないで、ちゃんと、別に日本政府の言うことに従う必要はないけれども、中国人の留学生に自分の頭で考えろということを言うということで、やっぱりこの立場にいる人間としては、やはり有為な学生を政府機関に、等々を含めて、民間企業も含めてやっぱり送り出すということが私の役割でありまして、外務省に既に八名ぐらい私の門下生はいて、ついでに外務省でインタビューする新聞社はまた私の門下生がいて、おまえら内輪で何をやっているんだということを時々言うわけですが、そういうやっぱり人の養成というのは私たちの立場としては最も重要であることは言うまでもないというふうに考えています。
 まあ今思い付くことは多々ありますが、ここでとどめます。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 続きまして、合田参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、この資料の中で、これは何ページなのかな、十五ページでしょうか、この商船隊のリストと、このホワイト、ブラックのところで、香港籍があるんですけれども、中国本土とですね、これもう既に二〇一九年のお話なので香港は返還されて中国ですけれども、こういうふうに何か船籍の中で選ぶ場合にこの香港籍と中国籍というのは可能なんでしょうか。ちょっとそこの仕組みというのがちょっとびっくりしたものですから。
○参考人(合田浩之君) お答えいたします。
 船籍と国籍というのは厳密に違うというのがまさにここの部分で、海外においては同一の国にあっても法域を異にする、つまり法のルールが違っている地域というのが結構ございまして、まあ英国なんかが結構多いんですけれども、英国の海外属領みたいなところというのが英国本土とは違っている法制度を持っていて、伝統的に船籍は別にしてということをやっていて、香港もまさにそういうものでございました。
 現時点で、その香港船籍という制度がなくなって中国大陸の制度に一本化されるかという話は今のところ聞いていないんですね。何でかということを考えるに、実は日本の船会社も、あるいはほかの国の船会社もですね、香港に法人をつくって香港法人が船を持っている形を取るということのメリットを感じて、あえてそれをやっているという国が、その会社が結構あるんです。
 この理由は、香港籍を選んで中国大陸の港に入ると入港料が割り引かれる。だから、中国の商売やるときに、中国の商売やるためにオペレーターからチャーターしてもらえる船としては非常に有利という、そういうメリットがあるので香港籍をあえて選ぶということをやってきていて、それを享受しているという既得権を、中国が一方的に中国大陸の船籍にしますと、で、一本化しますと言ったら、これは大変な騒動になると思います。
 ですから、実はそういうわけで、法制度が違う国という、法制度を複数持っている国はこういうふうに船籍を分けるという慣行があって、それが根付いているというのが説明で、そして、こういう状況になっても今の段階では一本化の話は出ていませんと。
 そういう制度があるから、実は台湾というのは、実は船籍としてはきちんとしたものになっていて、その台湾船籍の船があること自体に対して中国政府がぐちゃぐちゃ言うということはないです。ただし、台湾船籍の船が直接中国に入るとかというとややこしいので、両岸でのやり取りについては第三国の船籍ということで、台湾の船会社も中国の船会社もパナマ籍などの船を使ってやり取りするというような慣行が積み重なっています。
 お答えになったかどうか。
○高良鉄美君 ありがとうございます。非常によく分かりました。
 あと一点だけ、ぱっと石井先生の方にですね。
 この見込みですね、ケーブルの保護、保護区の設定とかいうのは、今、いろんな国々がなってくると国際的傾向となって、やがて条約の方に入ってこないかなというふうに私は考えるんですけれども、EEZがそうであったようにですね、一国が始めたらそうなってしまったと。その辺、見込みだけお話しいただけたらと思います。済みません。
○参考人(石井由梨佳君) 新しく条約を作るという話にはならないのかなと思います。国連海洋法条約ありますけれども、これを改正することは事実上できませんし、その条約の範囲内でケーブルの保護は十分にできるということであればそれを新たに作るメリットもありませんので、そういうふうにはならないのかなと思っています。
○高良鉄美君 ありがとうございました。