国会質疑 Interpellation

2022年3月29日 参議院 法務委員会

質問内容

・選択的夫婦別姓について

・技能実習にまつわる様々な人権について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第4号 令和4年3月29日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 四日前、三月二十五日に公表された家族の法制に関する世論調査についてお伺いします。
 選択的夫婦別姓について導入を求める回答は、前回二〇一七年の四二・五%から今回二八・九%に減少しましたが、これは質問方法が前回までと変更になったことが影響したと思われます。
 九六年の法制審の答申以来行われた過去五回の調査でも、賛否のほかに通称使用容認の選択肢がありましたが、今回は、夫婦同姓を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよいと、そういう通称使用の容認を選択的夫婦別姓の反対に位置付けた問いで、これまでと比較しにくい問いになっています。
 年齢別に見ますと、七十歳以上が全回答者の二七・七%を占め、婚姻年齢層に当たる十八歳から三十九歳の二二・四%を上回ります。七十歳以上の五割近くが夫婦同姓維持を選択したことが今回の回答に影響しています。民間の選択的夫婦別姓の賛否のみを問う調査で賛成が圧倒的多数になっていることと比較して、この調査結果は実態を反映していないと言わざるを得ません。
 そこで、古川大臣にお伺いします。
 今回の世論調査では、選択的夫婦別姓の賛否の設問が変わっています。設問を変えると経年比較ができなくなるにもかかわらず、なぜ設問を修正されたのでしょうか。また、今回の世論調査では、前回の調査と比較すると選択的夫婦別姓に賛成する意見が減少していますが、選択的夫婦別姓に賛成する意見を減少する意図があったのではないかと受け止める国民も少なくありません。そのような意図がなかったのか、お伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
 今回の調査では、前回までの調査とは調査方法が異なりまして、また設問等にも修正を加えております。そのため、この回答の割合が増えたとか減ったというような意味での、この両者を単純に比較して論じることは必ずしも相当ではないというふうに考えています。
 なぜ、ではその設問を変えたのかということなんですけれども、これは夫婦の氏の在り方について、前回までの調査の設問につきましては、その設問の内容が分かりにくいという指摘がございました。そこで、今回の調査を実施するに当たりまして、より分かりやすいものとするために、調査の実施主体であります政府広報室等とも十分な調整を行った上で設問等を見直すこととしたということでございます。
 したがいまして、当然のことですけれども、選択的夫婦別氏制度に関する賛成意見を減少させようといった意図は全くございません。
○高良鉄美君 あるわけないということもありましたけれども、全くないということですけれども、設問の修正をされた理由が、設問内容が分かりにくいとこれまで言われたと言っているけれども、しっかりと、ぱっぱっぱっと、こう結果が出ているわけですね。ところが、今回、分かりにくくなっているんですよ、逆に。(発言する者あり)いえいえ、これですね、これ言いましょう。
 今回の世論調査で、夫婦同姓制度を維持すること、夫婦同姓制度を維持した上で通称使用について法制度を設けること、選択的夫婦別姓を導入すること、この選択肢なんですね。
 しかし、夫婦同姓制度を維持するというのと選択的夫婦別姓制度を導入するについては、今現在、法制度ではない通称使用の取組を続けることを前提にするものかどうかというのは不明確であり、それゆえ、今回の設問は分かりにくくなっているということです。そしてまた、この夫婦同姓制度を維持した上で通称使用についての法制度を設けることという選択肢については、じゃ、この通称使用についての法制度を民法のほかにもつくるのかということになると、この通称のいわゆる中身ですね、氏の方と、民法上の氏と、この関係は一体どうなりますかと。法制度であるんです、両方ともですね。そういうような問題があります。
 したがって、今後、この世論調査を実施する場合には、これ突然変えるわけではなくて、国民の意識を適切に把握していくという調査でしょうから、この観点から選択的夫婦別姓に関する賛否のみを問うなど抜本的な見直しをする必要があるのではないかと思いますけれども、政府参考人にお伺いします。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 前回までと設問の仕方の細かいところ変わっておりますが、大きく言えば、今、高良委員の御指摘にあった三つの選択肢、夫婦同氏制度の維持、それから夫婦同氏制度を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設ける、それから選択的夫婦別氏制度の導入、この三つの選択肢を挙げて一つを回答してもらうという前回までの大きな枠組みは、今回もこれを踏襲しているものと理解しています。
 もっとも、今回の世論調査に関して、本日の高良委員からの御指摘も含めて様々な御指摘があることも今後想定されます。設問の内容、設問の仕方につきましては、今後も的確な設問となりますよう、不断に検討していく必要があるとは考えております。
 今後、世論調査を実施する場合には、様々な御指摘を踏まえた上で設問の在り方について検討してまいりたいと思います。
○高良鉄美君 世論調査は、人権の問題を考える場合の手段になってはいけないということですね。
 これは三月二十二日、先週ですね、第二次夫婦別姓訴訟の最高裁決定がありましたけれども、そこで五人の裁判官のうち二人が夫婦同氏規定は憲法二十四条違反としましたが、請求は棄却しておりますけれども。この渡邉惠理子裁判官は、世論調査では四十歳以下世代で選択的夫婦別姓に賛成が半数を超えていることについて、比較的若い世代の意見の状況に鑑みれば、家族制度の維持という名の下での制約が彼らの将来にとって足かせとならないようにすべきとの意見を付しております。まさに、世論調査で反対が賛成を上回った七十歳以上の価値観が、これから結婚しようとする若い人たちの足かせにならないことを願っています。
 そして、この憲法二十四条違反というのは、これ、第三章の憲法でいう国民の基本的人権の規定なんですよ。そこには、やはり法の支配という、大臣もずっと強調しておられますけれども、基本的人権、適正手続と、このアンケートの手続も含めて、やはりこれだけの重いものがこの夫婦同氏規定にはあるんだという、最高裁の判事の考え方にもそれがあるんだということを我々意識をしながら、これ立法府に今投げています。立法府がこれを、これから結婚する、影響を受ける人たちのことを考えて私たちは立法しなきゃならないと。
 これ、裁量の問題というよりも、私たちが基本的人権というのをどう捉えるかという問題になっているということを指摘して、次の質問に入りたいと思います。
 名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告と法の支配についてちょっとお話をしたいと思います。
 先ほど来、この報告書については、衆議院の法務委員会でも、そして本日も委員会の中で多くの委員が、実態と懸け離れているんじゃないかとか、あるいは非常に中身も個別に細かく御質問されておりました、指摘ありました。
 法の支配、とりわけ適正手続の観点から問題があったと私は考えているんですが、この報告書は実態に即している、あるいは適切であるとお考えでしょうか、古川大臣にお伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) いわゆる名古屋事案、これはもうあってはならない悲しい出来事でありまして、二度と同じことは繰り返さないということのためにこの調査報告書がまとめられております。ここでは、可能な限り客観的な資料に基づきまして、医師や弁護士を含む外部有識者の御意見もいただきながら、幅広くこの論点を抽出してまとめられています。そして、そこで改善すべき点を幾つか項目として挙げておりまして、現在、それを着実に速やかに実行すべく鋭意努力中であります。
 この調査報告書で、この本事案の評価はこの調査報告書に尽くされているというふうに考えております。
○高良鉄美君 今日、いろんな御意見が出ました。そして、指摘もありました。問題ありという指摘なんです、今日のですね。
 それから考えますと、私は、この法の支配の中に、ずっと大臣の御指摘の中には人権の問題、そして適正手続というお話もありました。このデュープロセスという適正手続は、手続のことだけを言っているんじゃないということですね。手続が適正であればあとはいいのかというと、そうじゃないわけですね。法にのっとった手続を取ったからいい、調査報告書を出したからいいではなくて、内容自体が適正か、つまりデュープロセスという、デュー・プロセス・オブ・ローのデューというのは、あるべき当然の、そして公明正大に言えることを言うわけですね。ですから、この公明正大というのは誰が見てももう正当だろうというような形なので、今回これだけの指摘があるということは、やっぱりそこに、実態的な中身が問題があるという指摘なんですよ。
 それを今後是非とも、今回改善も含めてというお答えでしたので、今後もそこをまだ掘り下げながら、この問題というのを入管全体の問題、そして収容の全体の問題、そして外国人の人権全体の問題として捉えていただくようお願いしたいと思います。
 続いて、関連しまして、入管関係だと思いますので、技能実習生の多額の債務を負って来日するという問題、これは先般もお伺いしましたが、技能実習生に対する暴行について話しましたけれども、岡山の事件の被害者は、朝日新聞の取材に、来日のために貯金を崩し、百万もの借金をしましたと、暴行を受けても最初は相談せず我慢していました、もし相談したら会社の人に嫌われ、退職、帰国せざるを得なくなり、借金が返せなくなってしまうだろうと思ったからですと答えています。
 また、昨年六月の米国国務省人身取引報告書においても、送り出し機関による過剰な金銭徴収について指摘され、国際的な批判の大きな要素ともなっています。
 同報告書では、政府と送り出し国との協力覚書は、借金を理由に技能実習生を強要する主な要因の一つである外国に拠点を持つ労働者募集機関による過剰な金銭徴収を防止する上で効果を発揮していないとされています。アメリカから見た日本のこの二国間の協力覚書のことを言っているわけです。
 三月十六日の法務省の答弁では、二国間の取決め、技能実習計画の審査、実地検査等により対処しているとのことでしたけれども、現状を見ますと、とても実態に迫られているというふうには思えません。この点、有効に実態を把握して対処できるようにするため、今後、法務省としてどのような施策を検討しているか、古川大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) 技能実習にまつわる様々な人権に関する御指摘というのは、大変これは、私はこれは問題だというふうに受け止めております。いろんな要因があるのだろうと思います。その中に、委員が御指摘のその送り出し機関による不当に高額の手数料等の徴収という問題があって、それがいたずらに技能実習生本人を弱い立場に立たしめることによって起きる様々な問題というものが、やはり事実として問題があると認識しています。
 前回も申しましたように、様々、その相手国との二国間取決め等も駆使したりしながら、様々指導や、あるいはその処分、取消しといった処分を含めてやっていることはやっておるのですけれども、十分ではないという御指摘でありまして、それは率直に認めたいというふうに思っております。
 それで、では、どうするのだということでございますが、現在、特定技能等、技能実習に関しまして、法務大臣勉強会というものを省内に置いて今動かしております。そこで、様々な論点について今幅広く御意見をいただきながら、これは精力的に今検討を進めているところであります。
 やはり、この今日の委員会でも人権の尊重というのは大事であるという一貫した考え方を共有させていただいておりますけれども、そのような観点から、あるべきこの技能実習制度の姿、それを目指して、今改めるべきは改める、言わばそのチャンスが到来してきていると、到来しているというふうに思っておりますので、このチャンスを逃さないようにしっかり努力をしたいと思っております。
○高良鉄美君 古川大臣の方から力強いお言葉でした。もうチャンスだと、これは。日本の今海外からの評価の問題も含めまして、外国人からの取扱い、そして基本的人権の問題、それに前向きに取り組んで改善をしていくということですので、これはまさにそれを改めて見せるためのチャンスだと私も思っています。
 今年一月から四月末にかけて、出入国在留管理庁及び厚生労働省による来日時の費用負担に関する実態調査が技能実習生を対象に、技能実習機構による実地検査の際に実施されていると伺っています。
 この調査を行う趣旨、目的、調査内容、調査対象の抽出基準及び対象数、調査方法等を明らかにしてください。また、調査結果の公表時期はいつ頃になるんでしょうか。技能実習制度及び特定技能制度の見直しとの関連はどういうふうにお考えでしょうか。こうした手法で技能実習生から本当の実態を確認できるのか。多額の債務の実態が明らかになると技能実習が継続できないと思えば、事実と異なる回答をする技能実習生が多いことも想定されるのではないでしょうか。その点についてどのような配慮がなされるのか、政府参考人にお伺いします。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘の調査は、技能実習生については来日前の多額の費用負担などの問題が指摘されていることから、今般、費用負担の実態把握を目的として、技能実習生およそ二千人規模で、来日前に送り出し機関等に支払った費用、実習実施者や監理団体に対して支払った費用などについて、外国人技能実習機構の実地検査等の機会を捉え、調査票を用いて技能実習生から直接ヒアリングを行うこととしたものでございます。
 調査結果については、不適正事案の個別具体的な内容にわたらない限度でできる限り公表することを検討しているところでございますが、現時点でその時期をお示しすることは困難でございます。また、本調査によって得た結果については、制度の在り方を検討するに当たり、適切に分析、活用してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 実態調査ということですから、実態と離れてしまっては余り意味がないということなので、是非とも、今のちょうど答えのように、いろんな形で関係団体も含めまして、そして主に技能実習生の二千人規模ということですので、分析も非常に重要だと思います。是非ともこの点を考慮していただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
 もう時間がなくなってまいりましたので、この問題、実はILOの関係もありまして、民間職業仲介事業所条約というのがありまして、その関連のことは次回に回して、私の質問はこれで終わりたいと思います。
 ありがとうございます。