国会質疑 Interpellation

2021年5月18日 参議院 法務委員会 少年法改正案

質問内容

・憲法の人権保障と少年法改正問題について

議事録

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第204回国会 参議院 法務委員会 第14号 令和3年5月18日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 冒頭、ちょっと今ニュースが入りましたので。入管法の改正について政府が取下げ方針を固めるということで複数の政府関係者等が明らかにしておりますけれども、もう既にマスコミからも出ているようですが、大臣はこれ御存じでしょうかということです。
○国務大臣(上川陽子君) 今、報道を承知しておりません。
○高良鉄美君 これ、所管のものですけれども、今、先ほど入ったことということを一応お知らせしておきます。
 そこで、この少年法の関連に入りますけれども、まず法務大臣に保護者についてお尋ねします。
 少年法部会においては、当初、少年年齢を十八歳に引き下げることを前提として議論が行われたことから、十八歳、十九歳が民法上は成年となり、親権者がいなくなるので保護者がいなくなる、そして少年年齢も引き下げる必要があるという議論が行われたと承知しています。しかし、少年を現に監護する者に当たるから少年年齢を引き下げる必要はないということで、保護者という概念は変更されませんでした。
 これまで、十八歳、十九歳の年長少年については、親権者である父母が法律上監護教育の義務ある者として保護者とされていました。しかし、改正民法が施行された後は、少年を現に監護する者として保護者とされることになる点が異なることになりますけれども、何らかの手当て、つまり特定少年の保護者については法律上の監護教育の義務ある者に準ずる形で法律上明示すべきではなかったかと思いますが、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(川原隆司君) 少年法二条二項におきましては、保護者につき、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者という定義をしているところでございまして、本法律案ではこれを改正していないところでございます。
 他方、同法第十条一項により、保護者は、少年の正当な利益を擁護し、適正な審判、処遇決定のために活動する付添人の選任権を有することとされておりますが、本法律案では付添人の選任権者の範囲を拡大することとしております。
 御指摘のとおり、十八歳以上の少年につきましては、法律上監護教育の義務ある者としての保護者が存在しなくなり、それによって付添人選任権者の範囲が狭くなることから、権利保障上の問題が生じないよう付添人選任権者の範囲を拡大することが適当であると考えられるところでございます。
 そこで、本法律案では、刑事訴訟法における弁護人選任権者と同様に、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹に付添人の選任権を認めることとしているところでございます。
○高良鉄美君 清水委員の方から出されているこの部会の、法制審の少年法部会の委員のメンバーのリストがありますけれども、この少年法の部会で川出委員から、十八歳、十九歳の者の親等につき、包括的に少年法の保護者と同様の法的地位を認めるのではなくて、少年法上の保護者が担っている手続等の役割を個別に検討し、家裁の手続に乗った十八歳、十九歳の者の権利を擁護するという観点から、必要と考えられるものについて、その内容ごとに、それに適する者に適する役割を与えるという方法を提案されていたというふうに伺っています。
 次に、家庭裁判所調査官による調査について最高裁に伺います。
 手嶋家庭局長は、今回の改正が、成長途上にある可塑性を有する存在である一方で、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場となった十八歳及び十九歳の者について、少年法の適用に関し、その立場に応じた特例等を定めるとした上で、基本的に立法政策であるから意見を述べる立場にはないという趣旨の答弁をされました。
 繰り返しになりますけれども、少年法の改正に危機感を持ち、声を上げているのは、少年の立ち直りに何が必要かを最も理解する家裁の元裁判官や調査官、事件を犯した少年の付添人や弁護士を経験してきた現場で頑張っている人たちです。これらの方々が立法政策の問題であることを承知の上で反対されている理由は何だと思いますか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 今般の少年法改正について、委員御指摘のとおり様々な御意見があることは承知をしております。
 その上で、今回の改正の当否につきましては先日も申し上げたとおりでございまして、成長途上にあり、可塑性を有する存在である一方で、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場となった十八歳及び十九歳の者について、それらの者の保護事件及び刑事事件の特例等を定めるものであり、また、裁判実務の運用という観点からいたしましても、犯罪の嫌疑がある限り全件家裁送致を維持するなど、現行少年法の枠組みをおおむね踏襲する内容のものでございまして、運用上大きな支障を生じることはないものと承知をしているところでございます。
 したがいまして、繰り返しにはなりますが、最高裁といたしましては、改正案の当否について意見を述べるべき立場にはないものと考えておりますが、いずれにせよ、法改正がされた際には、国会での御審議、法制審議会での御議論も踏まえ、少年の再非行防止と立ち直りに向けて一層の適切な運用に努めてまいる所存でございます。
○高良鉄美君 立法政策であるから意見を述べる立場にはないということについてですけれども、今述べられた答えですが、これも、少年法の部会のメンバーとして手嶋局長入っておられます。これはなぜ入っているかということを考えると、調査官が入っているわけでもないし、あるいは家庭裁判所の直接的な裁判官が入っているということではなくて、やはりその方たちの意見を代弁するというから局長が入っているんだと思うんですよ、家庭局長がね。それなのに、私は述べる立場にはありませんと言ったら、どの立場がどうなるのかという、そういう問題があるんだということをちょっと指摘しておきたいと思います。
 家庭裁判所の調査官による調査に関する現行法の規定に変更はありませんが、二〇〇〇年改正によって原則逆送制度が導入された後、家裁調査官による調査や少年鑑別所の鑑別が非行の外形的事実のみを重視し、要保護性を十分に掘り下げて検討しない傾向が生じていることが現場の調査官や参考人から指摘されています。
 犯情の軽重を考慮した結果、本来中心となるべき要保護性の調査よりも犯情の調査が重視され、少年の更生に重要な役割を果たしてきたことが形骸化され、調査官の役割を十分に果たし得なくなるのではないかと懸念しますが、そのことについて最高裁にお伺いします。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 今回の少年法改正による家庭裁判所調査官の調査への影響等につきましては、委員御指摘のものも含めまして様々な御意見があることは承知をしているところでございます。
 前回申し上げましたとおり、家庭裁判所は、現行の少年法第二十条第二項の定める原則逆送事件も含めまして、家庭裁判所調査官において、非行の動機、態様、結果等だけではなく、少年の性格、年齢、行状及び環境等も含め、少年の要保護性について十分に調査を尽くし、裁判官においてそれらの結果も十分に踏まえて処分を決定しているものと承知をしております。
 また、本法律案による改正後の少年法第六十四条第一項におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内、すなわち犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととされておりますが、犯罪の軽重を考慮するという改正法の趣旨は、法務省御当局の御答弁によれば、裁判所が犯した罪の責任に照らして許容される限度の範囲内で対象者の要保護性に応じて保護処分を選択するというものであると承知をしております。
 したがいまして、いずれにしましても、本法律案による改正後の十八歳以上の少年についても、家庭裁判所調査官において少年の要保護性について丁寧な調査を尽くし、その結果も十分に踏まえた上で処遇選択が行われることになるものと承知しているところでございます。
 裁判所としましては、国会での御審議、法制審議会での御議論を踏まえ、改正法の趣旨に即した適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 前回の質疑で、家裁調査官であった伊藤由紀夫さんの記事を資料として紹介しました。伊藤さんは、少年法改正を憂慮しながら、つい先日亡くなられました。さぞ無念だっただろうと思います。家裁の調査官が少年法の理念を守るために反対しているということを最高裁は深刻に受け止めるべきだと思います。
 次に、推知報道禁止の一部解除と憲法について法務大臣に伺います。
 五月十三日の本委員会で、推知報道禁止の一部が、結果として対象者の立ち直りを阻害し、再犯の可能性を高めることになりかねない、これが実証されてからでは取り返しが付かないと思うが、仮に立ち直りを阻害することが明らかとなったり再犯率が高くなった場合、推知報道は禁止するということでよいかという私の質問に対し、上川大臣は、御指摘の推知報道に関するものも含めて、仮に施行後に何らかの問題等が生じた場合には附則第八条による検討の対象となり得るものと考えている、国会での議論等も踏まえて多角的な観点から検討が行われることができるように適切に対応してまいりたいと答弁されました。本当に適切に対応できるのか、多くの人が懸念をしております。
 少年法の推知報道の禁止と憲法問題について、憲法を研究してきた者として一言申し上げたいと思います。
 憲法二十一条の表現の自由として、報道の自由は直接的に保障されているわけです。報道の自由の意味、性質というのは対国家として国民の権利という形で存在しているわけで、つまり国家権力によって制約を受けないという国民の権利なので、こういうことが基本です。報道の自由の重要性というのは国民の知る権利に寄与するもので、ひいては政治的権利を含む国民主権に関わるというところでもあります。
 経済的自由というのは経済政策が大きく関わるので、国家による政策内容などが経済活動を制約する領域、範囲は大きい、つまり同じ対国家権利ではあっても政策的制約が許される範囲が広いということです。
 一方、精神的自由としての報道の自由が制約される原理は、国家権力が制限してもよい、あるいは制約してもよいというものではなく、報道の自由によってほかの人権が侵害されるかもしれない場面では制約されるという内容です。
 少年法が推知報道を禁止しているのは、国家権力によって報道機関の推知報道を禁止しているのではなくて、可塑性のある少年の人権、健全育成に関する問題として、つまり人権と人権が衝突する問題として報道の自由が制約されるということになるわけです。報道の自由は、他の人権との関連で制約を受け、譲らなければならないというのが精神的自由の制約原理の考え方になるわけです。
 この推知報道の禁止は、少年の人権、健全育成の面から受ける制約であって、国家権力が制裁で行う刑罰とは別のフェーズ、別の局面の問題であって、刑罰的、制裁的視点から推知報道の解禁を捉える論理であってはなりません。
 これはもう質問の時間がなくなりますのでこれだけ続けて終わりますけれども、川原刑事局長は、十八歳、十九歳の少年に対する推知報道が一部解除されたことについて報道機関がどのように取り組むかというのは、憲法の報道の自由との関係もあり、報道機関の判断に委ねるというのが政府の立場であると答弁されています。
 少年法の基本理念にのっとれば、報道機関に推知報道の禁止を解禁するかどうか委ねていいのか、これ、憲法の目的である人権保障の原理及び少年法の理念から大きく外れるのではないかということを指摘しておいて、もう今回、質問ではなくて、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。