2020年5月28日 参議院 法務委員会 一般質疑
質問内容
・離婚後の養育費と面会交流について
・農業委員会の委員と海区漁業調整委員会委員の国籍要件について
議事録
第201回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和2年5月28日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
一昨日、少年事件を担当したことがある元裁判官の弁護士が少年法適用年齢引下げに反対する意見書を法制審議会少年法・刑事法部会長に提出しました。長官経験者五人を含む百七十七人が署名をしているということです。今日は資料としてお配りしていますので、意見書は是非お読みいただければと思います。
今月十五日に元検事総長や検察OBが検察庁法改正案の撤回を求める意見書を提出したことに続き、今回、元裁判官の方々が異例の意見書の提出に至ったというのは、法の理念やその趣旨が軽んじられているということへの危機感からであり、政府も立法府も重く受け止める必要があるということを申し上げ、質問に入りたいと思います。
離婚後の養育費と面会交流について伺います。
厚生労働省の二〇一六年度全国ひとり親世帯等調査の結果によれば、一人親世帯のうち現在も養育費の支払を受けていると答えた者の割合は、母子世帯で二四・三%、父子世帯では三・二%という極めて低い状況にあります。養育費は、子供が生きていき成長していくために重要なものですから、養育費の支払の問題は子供の人権の問題に関係するということです。
また、面会交流について、現在も面会交流を行っていると回答したのは、母子世帯で二九・八%、父子世帯で四五・五%であり、両親の離婚を経験した子供の多くは片方の親と会えなくなっています。親子が互いに会いたいと思う気持ちは人間としての根源的な感情として尊重されるべきものであり、親子の交流が阻害されているということは、やはり人権の問題として捉えるべきだと思います。
私は、父母が協議離婚するときは、養育費や面会交流に関する取決めをすることを義務付ける必要があるのではないかと考えていますが、この点については、五月二十六日の法務委員会で嘉田議員の方から質問があり、法務大臣からは、その点も含めて家族法研究会で検討しているという答弁がありました。私としても、早期の実現を目指し、家族法研究会での検討が進められることを期待しています。
もっとも、協議離婚をするときには養育費や面会交流の取決めをしなければならないと、そういう場合には、その法的知識について、離婚を検討している方に適切に情報提供する制度が必要だと思っています。
海外では、離婚を検討している未成年者の父母等対象に、裁判所などの機関が養育費や面会交流の重要性、父母の離婚後の子育ての在り方等に関するレクチャー、講義を行っている例があると聞いていますが、このような制度は我が国でも導入を検討すべきではないでしょうかということで、政府参考人に伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
法務省が外務省に依頼して二十四か国を対象に実施した海外法制調査の結果によりますと、アメリカのワシントンDCでは子の監護に関する裁判手続の初期段階において、また韓国では協議離婚の意思確認手続において、未成年の子を持つ父母については、面会交流等、離婚後の子育てに関するガイダンスの受講が義務付けられているものと承知しております。
委員御指摘のとおり、未成年者の父母が離婚をする場合に、父母に対し養育費や面会交流など離婚後の子の養育についての適切な情報を提供することは、離婚後の適切な養育を実現するために重要なことだと考えております。これらの海外の制度は、我が国の離婚後の子の養育に関する法制度の在り方を検討する上で参考になるものと考えているところでございます。
御指摘のありました法務省の担当者も参加して議論に加わっております家族法研究会におきましても、この一定年齢以下の子の父母が離婚をする場合には、公的機関等による離婚後の子育てに関するガイダンスの受講を義務付けることの当否が論点として掲げられ、検討の対象になっていると承知しております。法務省といたしましても、引き続きこの研究会における議論に積極的に参加してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 ありがとうございました。前向きに今取りかかるというようなところだと思います。
次に、父母が離婚した場合に、子供が離れて暮らす親に会いたいと思うことは当然ですし、親が子供に会いたいと思うことも当然だと思います。DVがあった場合など、面会交流を実施することが不適切な事案はありますが、そのような事情がなければ、面会交流を着実に実施することが子供の利益にかなうと言えます。
離婚した父母の間には感情的な対立があることも少なくありません。様々な感情を有する父母間では、面会交流に際して、子供の受渡しをするために相手と会うことが耐えられないと思う人もいます。そもそも、具体的な日時の調整をすることさえつらいという人もいるかもしれません。
このような状況に置かれている父母であっても面会交流を実施することができるようにするためには面会交流を適切に支援していく必要がありますが、我が国では限られた数の民間団体が支援を行っているだけというのが現状です。面会交流を促進するためには、民法を所管する法務省としても、面会交流の実施を確保、促進していく方策を検討、拡充していくべきだと思いますが、法務省の今後の取組についてお伺いします。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
円滑な面会交流の実施のためには、面会交流の取決め段階あるいは実施段階において適切な支援が必要であると考えられますけれども、委員御指摘のとおり、我が国ではそういった支援が限られた数の民間団体の努力に委ねられているという状況にある現状でございます。
先ほど申し上げました海外法制調査の結果によりますと、調査の対象となった国のほとんどで、父母の教育、カウンセリング、また面会交流が適切に実施されるよう指導する機関の設置など、面会交流を支援する制度を有していることが判明したところであります。これらの制度、我が国において面会交流を促進する方策を検討する上で参考になるものと考えております。
先ほども申し上げました家族法研究会におきましては、この面会交流を促進する方策として、面会交流を支援する団体と国との連携の在り方なども検討の対象となっておりますので、この論点につきましても引き続き積極的に議論に参加してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
支援団体との連携ということもありましたけれども、大変前向きな御答弁をいただきまして、引き続きしっかり取り組まれることを期待しております。
次に、調停委員任命に際し、外国籍の者を排除している問題について最高裁に伺います。
この問題は四月七日と十六日に質問をいたしました。前回の質問で、調停委員は、公権力を行使するものでも、あるいは国家意思の形成に参画するものでもないという実態面と、法律や最高裁規則、最高裁事務総長依命通達に基づかないで行われているという手続的な問題もあるということを指摘しましたが、到底納得できる答弁ではありませんでした。
そこで伺いますが、公権力を行使するとして調停委員には外国籍者を認めていないということですけれども、最高裁は、調停委員が国民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使を職務とすると考えているか、伺います。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
先日もお答え申し上げましたとおり、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となりますためには日本国籍を必要とするとされておりますところ、民事調停委員及び家事調停委員の法令上の権限や職務内容等に鑑みますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる非常勤の公務員に該当すると考えているところでございます。
○高良鉄美君 公権力の行使ということを言いますけれども、調停委員は、説得調整活動ということで、間を取り持つというような職務にするわけで、公権的な判断をするとか、あるいは公権力を使うと、こういうようなものには当たらないというふうに考えるわけですけれども、これは本当に、調停委員というその法の趣旨、役割を考えますと、そんなに公権力の行使を職務としているのかということですね。一部、何かいろんなことをおっしゃいましたけれども、やはりそれも公権力の行使に当たるかどうかというのに関して、当たらないんじゃないかと、私はそう思うわけです。
そこで、その関連で、公権力の行使に当たる公務員は、じゃ、外国籍はないのかという問題です。
破産管財人について考えたいと思うんですけれども、破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するため、裁判所の許可を受け、警察上の援助を求めることができます。破産管財人の職務を妨害した者に対しては罰則もあります。破産管財人は、破産者等に説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができます。説明及びその検査の拒否については罰則もあります。破産債権の調査において、破産管財人が認めて届出債権者が異議を述べなかった結果を裁判所書記官が破産債権者表へ記載したときは、確定判決と同じ効力を有します。
これらの破産管財人には多くの外国籍の弁護士が就任しています。調停委員とは比較できないほどの公権力を行使する破産管財人に外国籍者が認められている理由をお示しください。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
破産管財人についてでございますが、破産管財人は公務員ではございませんので、したがいまして、非常勤の公務員であります調停委員とはその身分が異なるということになります。
そのため、その就任に日本国籍を必要とするかどうかという点につきましては、同列に論じることはできないというふうに考えているところでございます。
○高良鉄美君 公権力を行使する公務員でない人が公権力を行使するわけですね。
そういった面で考えると、この点、ほかの例をちょっと挙げたいんですけれども、今日は農水省にも来ていただいていますので、農業委員会の委員と海区漁業調整委員会委員の国籍要件について伺います。
農地法では、農地について所有権を移転し、又は権利を設定し、若しくは移転する場合には農業委員会の許可を得なければならないと定めています。このように農業委員会委員は公権力を行使します。権利の設定ですね。
そこで、農水省に伺いますが、農業委員会委員に国籍を要件としているのか、お尋ねします。
○政府参考人(倉重泰彦君) お答えいたします。
農業委員会等に関する法律における農業委員の任命につきましては、国籍を要件としておりません。
○高良鉄美君 今、国籍を要件としていないということですけれども、これも権利を設定するという意味では公権力の行使に当たるということですね。
それでは、海区漁業調整委員会の委員について伺います。
海区漁業調整委員会の権限として、入漁権をめぐる紛争で当事者同士の協議がまとまらない場合などの裁定をする、漁業者に対する水産動植物の採捕の制限、禁止などの指示をする、漁業権の適格性の事項に関して認定がすることができるということが法定されています。
農水省にお尋ねしますが、海区漁業調整委員会の委員の欠格事由に国籍はあるでしょうか。ない場合には、外国籍者を委員とする場合にはどういう要件があるかを伺います。
○政府参考人(藤田仁司君) お答えいたします。
海区漁業調整委員会の委員につきましては、国籍による制限は設けられてございません。
なお、漁業者及び漁業従事者の中から選挙で選ばれる委員の場合につきましては、外国人の方は、外国人漁業の規制に関する法律というのがございまして、こちらの方で水産動植物の採捕が制限されております関係上、基本的に漁業者委員として選出されることはないというふうに考えております。
○高良鉄美君 選挙との関連ということがあるかと思いますけれども、いずれにしても、この法の趣旨というのは、地域の実情に、漁業なら漁業、あるいは農業なら農業、そういったものに通じた者を委員にするというのが趣旨ですね。
公権力を持つ農業委員会委員とか海区漁業調整委員会の委員は国籍が要件とされていないということですけれども、調停委員が国籍のみで排除されていることに、これは、先ほど言いましたように、通達やそういうものにもないわけですよね。合理性はないということを強調しておきます。
本日の質問の冒頭で、元裁判官百七十七人の意見書を提出したことに言及しました。
○委員長(竹谷とし子君) 高良鉄美君、お時間が過ぎております。
○高良鉄美君 はい。
最高裁は、調停委員会の調停委員の制度の趣旨を軽んじ、国籍だけで差別していることに強く抗議をして、質問を終わります。
ありがとうございました。