2020年4月7日 参議院 法務委員会 外国弁護士法改正案質疑
質問内容
・外弁法改正における国際的な法務人材育成の必要性について
・会社法改正のあり方について
議事録
第201回国会 参議院 法務委員会 第5号 令和2年4月7日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
外弁法改正における国際的な法務人材育成の必要性についてお伺いいたします。
今回の外弁法改正案では、外国法事務弁護士等による国際仲裁事件及び国際調停事件の手続代理の充実が図られています。先ほども言及がありましたけれども、二〇二〇年三月には東京虎ノ門に日本国際紛争解決センターが開設され、今回の法改正と併せて、国際仲裁、国際調停の活性化のための環境整備は着実に前進するものと思われます。
一方、この国際仲裁、国際調停の活性化のためには、国内における法務人材の育成も必要不可欠です。国際紛争解決センターは、法務省から国際仲裁活性化基盤整備調査も委託されていると承知していますが、先ほどもありましたけれども、人材育成、特に英語力を前提とした法務人材育成は、遅くとも大学やロースクールの段階で留学、インターン、国際法務プログラムの履修、国際模擬法廷への参加などの経験を積ませながら進めていく必要があり、国等の積極的関与が必要だと思います。これについては、先ほど安江委員の方からの質問の中で衆議院の附帯決議にありましたけれども。
そこで、国際仲裁、調停の担い手となり得る法務人材について、大学やロースクールの段階における育成の現状及び検討状況についてお伺いします。よろしくお願いします。
○政府参考人(森晃憲君) 御指摘の国際仲裁、調停の担い手となり得る法務人材を始め、多様化する社会の法的需要に応えて様々な分野で活躍できる法曹の養成は重要な課題でございまして、各法科大学院では先端的な法領域に関するカリキュラムの充実が図られているところでございます。
その中で、例えば、神戸大学法科大学院における海外の法律事務所でのインターンシップへの派遣や英語による調停ワークショップへの派遣、また、上智大学法科大学院におきます英文契約書を含む国際的なビジネス紛争を題材に模擬仲裁を実施する国際ADRワークショップなどの例があると承知をしております。
文部科学省といたしましては、各法科大学院が国際仲裁、調停の担い手となり得る法務人材を始め有為な人材を育成、輩出できるように、本年四月から施行される改正法を踏まえながら、めり張りある予算配分や好事例の普及などを通じまして、法科大学院教育の改善充実に取り組んでまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 今ありましたけれども、そもそも法科大学院の設置基準の中に国際化というのが入っていて、このような問題というのはスタートのときから意識をしてやるべき問題だっただろうと思います。そして現在、あったように、幾つかの法科大学院ではもうそういうものを既に行っているということですけれども、琉球大学においても、二〇〇四年のスタートのときから日本では一番早くハワイ大学とのプログラムを、交流プログラムを策定して実施をしました。その中で、この国際調停、仲裁の問題、こういったことをいろいろそこではもう広く開かれておりました。そういったことを踏まえると、かなり遅いんじゃないかと私はむしろ思います。
次の質問に移りますが、中小企業に対する配慮の必要性についてお伺いします。
二〇一八年一月、国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議幹事会の決定に基づき、法務省と経済産業省において国際仲裁の活性化に関するヒアリングが実施され、仲裁実施機関、経済団体、民間企業等から様々な措置、指摘がされたと承知しております。
経済団体からは、中小企業については、海外での仲裁に堪え得る人材がいないため、日本で仲裁を行うことができれば負担が軽くなるという指摘がされています。また、仲裁機関からは、中小企業向けのセミナーにおいて国際仲裁のメリットを紹介した際の中小企業の反応を踏まえると、日本を仲裁地とすることへのニーズが大きいと指摘されています。中小企業については、仲裁に関する費用の負担感が大きく、手続費用の一部を政府が助成する措置を求める意見が経済団体及び仲裁実施機関から述べられたと承知しております。中小企業では紛争解決条項の重要性や仲裁制度への理解が必ずしも進んでいないことから、国際仲裁の活性化に向けたニーズを発掘する上でも意識啓発が必要であると指摘されたようです。
利用者である企業、特に中小企業に対して国際仲裁等の利用を促すための方策は検討されているんでしょうか、経産省の見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(渡邉洋一君) お答えいたします。
国際仲裁は、一般的に、裁判の手続と比較いたしまして、一審で終了するという迅速性、また紛争処理の内容が公表されないという非公開性などの点でメリットもあるというふうに理解をしておりまして、外国企業と取引をする上で紛争解決の重要な手段の一つであると認識をいたしております。既に国際仲裁を活用している日本企業もある一方で、やはり、特に中小企業におきましては、国際仲裁の意義や有用性などに関する理解が十分ではないという指摘もされていると承知をしております。
経済産業省といたしましては、海外に展開するあるいは海外への展開を検討する中小企業などの皆さんに対して、ジェトロが主催するようなセミナーなどで国際仲裁に関するセッションを設けるなどいたしまして、国際仲裁に関する普及啓発に力を入れているところでございまして、引き続き、法務省や関係機関と連携してこうした活動をしっかり行っていきたいというふうに考えております。
○高良鉄美君 中小企業、特に日本の産業を支えているという、下支えをしているということがありますので、大企業ももちろんそうですけれども、中小企業も今のように啓発のプログラムを含めて是非前進させていただけたらと思います。
それでは、ちょっと外国人弁護士ということについて。外国人で日本国籍を持たずに日本の法曹資格を持っている弁護士がいます。先ほどの、本来のこの提案されている改正案の外国人弁護士とちょっと違うんですけれども、ちょっとこの関連の質問をしたいと思います。
そして、調停というのも、日本の民事調停あるいは家事調停というのが既にありますけれども、国際仲裁、国際調停というものとはちょっと違って、日本の法律の下でやっているものですけれども、民事調停委員あるいは家事調停委員の任命に関して外国籍の者を排除しているという問題について伺います。これは、外国籍であるけれども日本の司法試験を通って日本で弁護士として活躍している方ですね。
現在、多くの弁護士が弁護士会から推薦されて調停委員、司法委員、参与員などとして活躍されています。しかし、外国籍の弁護士は法律上の要件を満たしていてもこの委員に採用されることはありません。外国籍であるというだけで排除されています。
そこで最高裁に伺いますが、外国籍の者を排除している法的根拠をお示しください。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
調停委員も非常勤の裁判所職員として公務員に当たるわけでございますが、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするのが公務員全般に関する当然の法理であると解されておりまして、公務員の国籍要件の規定の在り方については、公務員に関する法体系全体のバランス等を踏まえた公務員全般の問題として検討される必要があると考えているところでございます。
民事調停委員、家事調停委員の法令上の権限、職務内容等といたしましては、裁判官とともに調停委員会を構成いたしまして、通常、裁判官一人、調停委員二人というものが多いわけでございますが、そういった形で調停委員会を構成いたしまして、調停の成立に向けて活動を行い、調停委員会の決議はその過半数の意見によるとされておりますこと、調停が成立した場合の調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有すること、調停委員会の呼出し、命令、措置には過料、過ち料の制裁があること、調停委員会は事実の調査及び必要と認める証拠調べを行う権限を有していること等がございまして、これらによりますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当し、その就任には日本国籍を必要とすると考えているところでございます。
○高良鉄美君 今、久しぶりに当然の法理というのを聞きましたけれども、法教育にもう携わって長いんですが、当然の法理というのはもう死語じゃないかと私は思っていたんです。
これは一九五三年の内閣法制局の解釈なんですよね。法律上はどこにも、この民事調停委員に関する、法律あるいはそういった規則等にもそれは入っていないんですね。だから、法的根拠としては当然であるということについて、これ解釈があったんでしょうけれども、それが法の支配とか、あるいはもう憲法の規定、平等の問題とか、そういったことからするとどうなのかなというのを、大いに疑問があります。
そして、公権力の行使とおっしゃいましたけれども、過去に外国籍の者が任命されて十四年間調停委員として任務を遂行して何ら問題がなかったと。国際化、グローバル化ということに伴って、外国人就労の促進からすると、外国籍を持つ者が調停委員として参画することは、多様な当事者の実情に即した紛争解決という観点において調停制度を充実させることに役立つんじゃないかと、多文化共生社会の実現にも資するのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 調停委員の任用に当たりましては、法律の専門家ばかりでなく、豊富な社会経験、人生経験を持つ良識豊かな方や、法律以外の分野での専門的な知識、経験を備えた方を迎える必要があると認識しておりまして、現在も社会の多様な分野で活躍されている方々、例えば弁護士、医師、大学教授、農林水産業、商業、製造業、宗教家等、多様な分野の方が調停委員として任命されているところでございます。
今後も、国際化の進展等の社会の変化に応じまして、当事者が様々なバックグラウンドを持っていることも踏まえて、そのニーズに応えることができるよう多様な人材を確保していく必要があると考えているところでございますが、先ほど御説明申し上げたような理由から日本国籍を有しない方を調停委員に任命することは難しいと考えているところでございます。
○高良鉄美君 調停委員の委員会の構成を今おっしゃいました、裁判官とお二人の調停委員であると、民事調停委員ですね。その中でお一人が弁護士会から推薦をされている。それなのに、そして多数決をしたところで、これは別にこの外国籍の弁護士の方の意見が直接反映されるわけじゃないですよね、多数決をしてしまえば。そういう中でどうしてなのかということが分からないわけですね。
この時代、その当時、当時というか一九五三年の内閣法制局の解釈をした時期と現在とは全く違うから、この外弁法の改正だってあるんじゃないですか。そういった点を考えると非常に、もう七十年ぐらい前なんですよ、そういったところをまだ使っているというのが非常に私は疑問があります。
そして今、国際的なと言いましたけれども、外国籍の者を排除しているという点において、国連人種差別撤廃委員会から二〇一〇年、二〇一四年、一八年と三回勧告を受けています。度重なる厳しい勧告をどのように受け止めていらっしゃいますかということと、それから、このような形でやっていると憲法の平等の問題やらありますけれども、この国際条約ですね、人種差別撤廃条約、これ憲法の九十八条で、日本が締結した条約及び確立された国際法規はこれを誠実に遵守することを必要とすると言って、この勧告というのはその手続の中なんですね、条約実施をする。どうしてそれを、わざわざ最高裁が進んで憲法違反を言っているようなもので、実施しているようなもので、だから、こういうことからするとどうなんですかということで、どのように、その勧告をどのように受け止めますかということについてお伺いしたいと思います。
○委員長(竹谷とし子君) 堀田人事局長、お時間が過ぎておりますので、簡潔に御答弁お願いします。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) 御指摘のような勧告を受けていることはもちろん承知しているところでございますが、先ほど御説明したような理由から、日本国籍を有しない方を調停委員に任命することは難しいと考えているところでございます。
○委員長(竹谷とし子君) 髙良鉄美君、おまとめください。
○髙良鉄美君 はい。是非、当時の状況とは違っているということをお話をして、この外弁法の改正の趣旨にも合うように是非前向きに検討していただければと思います。ということで、質問を終わりたいと思います。