国会質疑 Interpellation

2020年4月2日 参議院 法務委員会 一般質疑

質問内容

・選択的夫婦別氏制度の導入について

議事録

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第201回国会 参議院 法務委員会 第4号 令和2年4月2日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 質問に入る前に、ちょっと二点ほど申し上げたいと思います。
 新型コロナウイルスの感染が極めて深刻な状況となっていますけれども、私が懸念している在沖米軍内における新型コロナウイルス感染の問題について言及したいと思います。
 御存じのように、米国での感染拡大は余りにも急激です。米国防省によれば、世界の米軍内の軍人軍属、家族など、約千人が感染しているとのことです。米軍は、基地別、部隊別の感染者数や詳細を全て非公開にする方針になっているということです、今後ですね。そういうことですが、日本国内の、特に沖縄の米軍基地、感染対応にも大きく影響するのではないかと危惧しております。
 もう一点は、先週、ちょうど一週間ですが、三月二十六日、辺野古新基地建設に係る沖縄県知事の埋立承認撤回に対して、この承認撤回を取り消した国交大臣の裁決は違法だとして県が裁決の取消しを求めていた裁判で、最高裁の第一小法廷は県側の上告を棄却しました。
 これは、沖縄防衛局をあたかも私人として扱うと、こういうことでしたけれども、本来国民の権利保護を念頭に入れた行政不服審査法の趣旨をねじ曲げているとして多くの行政法学者から批判が出ていることを強調し、質問に入ります。
 三月二十四日のこの法務委員会で、私は、選択的夫婦別姓を求める請願が四十五年間も出され続けていることについて、森大臣がどのように受け止めているのかを尋ねました。これに対し、大臣は、国民の声として真摯に受け止めております、他方で、選択的夫婦別氏制度の導入については、夫婦の氏が異なることで子供に好ましくない影響が生ずるのではないかといった御意見もあることを承知しておりますと答弁されました。
 四十五年間出されている基本的人権としての請願権に基づいた請願と、それと同列に、慎重な姿勢を取るその意見として披露されたものがアンケート、アンケートでそういった意見があったというだけで、具体的な事例も根拠も示さず答弁されたことに大変驚きました。これ比較するレベルが違うんじゃないかと思ったわけです。大臣の答弁としては、法務大臣の答弁としては余りにも不適切と言わざるを得ません。
 そこで、本日は、事実に基づいて、法制審議会が家族法改正の審議を開始するまでの経緯と、法改正に現在至っていないということについて法務省に伺いたいと思います。
 憲法二十四条の個人の尊厳と両性の本質的平等の理念に基づき、家族法は一九四七年に全面的な改正が行われました。明治民法は家制度を根幹としており、妻の無能力者扱いなど、こういった男女不平等な家族法でしたが、憲法に基づき大幅な見直しが行われたと承知しています。
 民法改正案が可決された一九四七年十月、衆議院司法委員会では、本法は、可及的速やかに、将来において更に改正する必要があることを認めると、そういう附帯決議が付されましたけれども、その理由をお示しください。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 委員御指摘の昭和二十二年の民法改正は、戦後の憲法の改正に伴い、憲法第二十四条が家族法の理念として宣言した個人の尊厳と両性の本質的平等の原理を民法に反映させる趣旨でされたものでございます。
 もっとも、この改正につきましては、改正の作業に許された時間が限られていたことから、家族法の近代化、合理化の観点から十分とは言えない点があり、将来における更なる改正を積み残しとして抱えたままになっていたという指摘もございました。御指摘の附帯決議はこのような観点からされたものであると承知しております。
 このような経過を踏まえまして、昭和二十九年に、法務大臣から法制審議会に対して、民法を改正する必要があるとすればその要綱を示されたいとの一般諮問がされ、以後、同審議会民法部会に設置された小委員会において身分法の調査審議が開始されたものでございます。
○高良鉄美君 憲法の言及がありましたけれども、戦後の民法改正時から改正が不徹底であったということが当時の司法委員に共有されていたんじゃないかと思います。
 そのような経緯から、先ほど言われましたように、一九五四年に法務大臣から法制審議会に対して包括的な諮問がなされたわけです。この包括諮問された一九五四年、そして一九九一年になって、法制審議会の身分法小委員会が婚姻及び離婚制度の見直しのための検討作業を開始していますが、その理由を法務省に伺います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、婚姻及び離婚制度につきましては、法制審議会民法部会の身分法小委員会におきまして、平成三年一月から検討に着手されたものと承知しております。
 この検討を開始することとなった背景でございますが、昭和二十二年の民法改正から約半世紀が経過し、家族の状況が変化したり、家族の構成員である個人の人生観、価値観等が多様化したりしているという社会状況や、昭和五十二年の女性の地位向上のための国内行動計画の策定や、昭和五十九年の国籍法改正、また昭和六十年の女子差別撤廃条約の批准及び男女雇用機会均等法の制定などの国内外の情勢の変化などがあったものと認識しております。
○高良鉄美君 ただいまありましたように、国内外の変化ということがありますけれども、特に、条約あるいは憲法のこういった理念に沿って見直すということで、人権状況、こういったものが出発点であったんじゃないかということを改めて理解いたしました。
 そこで、法務省も、この法制審の答申がありましたけれども、その法制審の考え方と同様であると理解してよろしいでしょうか、伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました国内行動計画でございますが、これ、昭和五十二年に内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部において策定されたものでございますが、この計画は平成三年四月に改定されております。そこでは、平成三年から七年までの地域社会及び家庭生活における男女共同参画の促進のための具体的施策の一つとして、男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うことが挙げられておりまして、法務省においてこれを検討することとされていたところでございます。
 このように、法務省といたしましても、平成三年当時、婚姻及び離婚の法制の在り方について検討する必要があると認識していたところでございます。
○高良鉄美君 今ありました家庭内の夫婦の平等、それから氏の問題も出ました、それから待婚期間の問題、そういったことの不平等等を検討するという姿勢があったわけですけれども。
 一九九六年の二月に法制審議会が民法改正案要綱を決定し法務大臣に答申しましたが、現在まで立法化されておりません。法制審が答申した一九九六年と、それから民主党政権下の二〇一〇年に法案提出が予定されていたと承知していますが、提出されなかったこの経緯など伺いたいと思います。法務省。
○政府参考人(小出邦夫君) お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、平成八年に法務大臣の諮問機関である法制審議会から答申を得たところでございます。法務省は、平成八年及び平成二十二年、法案の提出に向け、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備しておりました。
 しかしながら、この問題は我が国の家族の在り方に深く関わる重要な問題でございまして、それぞれその当時の与党内においても様々な意見があったことから、改正法案の提出には至らなかったものと認識しているところでございます。
○高良鉄美君 今も、様々な御意見があったということで、家族の在り方に関わるということで、これまで繰り返されたことだと思いますが、先ほどお伺いしたように、家庭内の男女平等の、夫婦平等の観点、そういったことから、これまで法制審の方は取り組んできたということでございました。
 そして、先ほども安江委員の質疑の中にもありましたけれども、紹介されていました夫婦別姓の訴訟でございますけれども、その裁判、元々何かというと、立法府がどうしてそういう立法をしないのか、これは憲法に違反しているんじゃないかと、だから国家賠償法で議員ないしは立法府を訴えるということなんですよね。それは、今まで私が質問してきましたけれども、これまで経緯がありました、四十五年間も出されていると。そういう中で、どうして立法しないんですか、それは憲法に違反していませんかという裁判なんですよね。
 で、安江委員の御紹介のあった先ほどの裁判の、裏を見ますと、やはりこの二十四条の問題として非常に重要な判断がされているということなんですね。そうしますと、裁判所のお考えも、これは裁判所がやるというよりも立法府にということで、これずっとボールはこっちに来ているわけですよ。そういう動きもずっとあって、先ほど言ったように、二度ほどもう法案としても出すというところまで来ていたけれどもというような状態でした。そういった意味で、この裁判が、今、これからも出るかもしれませんけれども、これ、立法府に対してやはり大きな責任がある問題だと思います。
 法務省は、法改正の必要性を認識してこれまで取り組まれてまいりました。四十五年の間の請願もあり、そして二度ほどのものもあると。行政が積み上げた討論を政治がゆがめてしまったんじゃないかという面もあります。政治に身を置く一人として、安江委員もおっしゃられましたけれども、やはりそういう者の責任、それからまた憲法の研究者として、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、法改正に前向きに検討していきたいということを申し上げ、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。