国会質疑 Interpellation

2020年3月24日 法務委員会 法務大臣の所信に対する質疑

質問内容

・選択的夫婦別姓について

・検事長の定年延長について

議事録

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第201回国会 参議院 法務委員会 第3号 令和2年3月24日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 前回、質問の途中でございましたけれども、それを引き続き扱いたいと思います。選択的夫婦別姓についてお伺いします。
 前回は、政府の男女平等のこれまでの取組を紹介して、法務省の民法改正への決意を示した上で、法制審議会が男女平等の見地から五年も見直し作業を行って答申したのに民法改正をしないことは、様々な意見があるから男女不平等のままでよいと言っていることにならないかと、そういうふうにお伺いしました。
 これに対して大臣は、二〇一五年に最高裁が憲法違反ではないと判断したことを答弁の冒頭に挙げられました。婚姻改姓した人がアイデンティティーの喪失感を抱いたり、あるいは婚姻前の個人の社会的信用、評価を維持することが困難になったりするなど不利益面も挙げておきながら、いつものように、答弁の中では、慎重に対応を検討するという答弁をされました。これは、男女不平等のままでよいと言っているのかということに対する答弁にはなっていないと思います。そういった意味で、そのままでも仕方がないというような形に聞こえました。
 アイデンティティーを喪失、あるいは個人の社会的信用や評価を維持することが困難になったりすること、こういったことよりも優先される様々な意見があるというのはどのような意見なのか、あるいは、国民が理解できるように法務大臣として示す必要があるのではないかと思います。
 法改正をしない理由に最高裁の合憲判決を挙げたということは、結果として、最高裁が、その二〇一五年の事件というのは立法不作為を問題にして挙げているものですから、これ立法をしないことが国賠の対象になるならないは別として、もう最後の最後で立法をしてくださいということを訴えるための手段として国賠の訴訟を起こしたわけですね。そういったことに対して、立法府がやらないでいいと、もう合憲が出たのでやらないでいいという法務大臣の答えになってしまったわけですね。ですから、そういった意味では、法務省がこれまでやってきたことも否定しているんじゃないかと、一生懸命培ってきたこともあるんじゃないかと、培ってきた問題について否定的な考えになっているんじゃないかということですね。
 それで、請願のお話を前回いたしました。この請願が最初に提出されたのはいつかということで、一九七五年だということが答弁されました。その一九七五年に、この選択的夫婦別姓を求める請願というのは、婚姻中の名前を離婚後も使い続けられるようにする、いわゆる婚氏続称の請願とともに提出されましたが、この婚氏続称だけが分離されて、それは翌年成立したわけです。ところが、このもう一方の選択的夫婦別姓の方は、四十五年間もそれ以降もずっと出され続けたということを言いました。
 また改めて聞きますけれども、森大臣はこのことについてどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 御指摘のとおり、昭和五十年から選択的夫婦別氏制度の導入を求める国会請願が提出されていることは承知をしており、国民の声として真摯に受け止めております。他方で、選択的夫婦別氏制度の導入については、夫婦の氏が異なることで子供に好ましくない影響が生ずるのではないかといった御意見もあることを承知をしております。
 この問題については、引き続き国民各層の様々な御意見を幅広く聞きながら慎重に対応を検討する必要があるものと考えております。
○高良鉄美君 今日午前中の質疑の中で、これやはり法務省として取り組むということで、困り続けている国民について一人でも多くの方を支えたいということを言われました。そういった面からすると、この選択的夫婦別姓には様々な意見があるからといって、困り続けている人が四十五年間ずうっと多くの人が出されてきているわけですね。そういった面でいうと、やっぱりこの請願の意味とその面について、やっぱりもっと慎重にもっと考えていただきたいというのが、私としては、法務大臣の御意見としてもっとそのようなことを期待していたわけです。
 請願について、今度はこの請願権そのものについてですけれども、そのような制度というのはどういう趣旨でできたのでしょうか。議事の方にお伺いしています。
○参事(金子真実君) 日本国憲法第十六条に、基本的人権の一つとして請願権が定められております。これを実現するため、国会におきましても国会法及び衆参それぞれの規則において、請願の提出及び審査に関する諸規定を設けまして制度の運用が図られているところでございます。
○高良鉄美君 今お答えがありましたように、憲法の十六条というのは、人権が十条から書かれていますけれども、非常に若い条文ですね。先の方にあるということは、それだけより基本原則に近いということ。この請願権というものが基本的人権であるということを考えますと、この請願の重みというのが随分違うと思います。
 そういった意味で、森大臣は、二〇一〇年の法務委員会の方で、その当時は大臣じゃなかったのかもしれませんが、元々夫婦別姓には反対であると、そのときはおっしゃったと。その後、男女共同参画担当大臣になられて、二〇一三年三月の内閣委員会では、家族の法制に関する世論調査の結果については、確かに年代別、国民それぞれの立場によって様々な意見があることが示されたものと受け止めております、若い世代の方が選択的夫婦別氏制度導入を容認する割合が高いという委員の御指摘についても、様々な立場からの意見の表れとして、この世論調査の結果を見る際の着眼点の一つになり得るものと考えている、こういうふうに改正を求める側に理解を示されました。
 人権政策では、世論調査は参考にはしても改正しない理由にはならないと言われています。少数者の人権が守れなくなるからです。森大臣がおっしゃった、この着眼点の一つにした上で、この若い世代の方々が選択的夫婦別氏制度の導入を容認する割合が高いと、そう言っている部分で着眼点の一つにしたということで、そういう上でどう対応されるのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 私の、前回大臣をしていたときの、少子化問題担当大臣のときの答弁を読み上げていただきました。
 おっしゃるとおり、この若い世代の間では選択的夫婦別氏制度を容認する意見が多いことを承知しておりますし、また、この当時からまた進んで直近の平成二十九年の世論調査の結果を見ても同様な傾向となっており、これがこの問題を検討する上での着眼点の一つになるものと考えております。
 また、前回の、私が大臣のときのその答弁の続きでございますが、続きとして、私は、そこをしっかり見て、私が法務部会長の際に検討していた案は、旧姓の使用を社会的に拡大するような制度を考えておりましたと答弁し、現在、自民党の中でもそのような案が議員立法として提出することを検討されているようでありますというふうに答弁していますが、その後に、その旧姓使用の拡大についても制度化されたものと承知をしております。
 もっとも、これまでの世論調査における賛否の傾向というのは必ずしも一定でない上、様々動いております。また、平成二十九年の世論調査の結果について見ても、全体として見れば国民の意見は大きく分かれている現状にございます。夫婦の、この選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族の在り方に深く関わるものであることから、私としては、今後も引き続き国民各層の意見を幅広く聞いて、そして、それとともに国会における御議論の動向を注視しながら慎重に対応を検討してまいります。
○高良鉄美君 この質問もう終わりますけれども、これに関しては。
 今、議員立法も、自民もいろいろ研究会もあってと。そして、四十五年間というのは相当な重みがあって、請願権を使ってやったということですね。そこを我々はきちんとしていただきたいし、今後も是非、そういった観点から、今の着眼点の後、あるいはその問題について御答弁いただきましたけれども、是非前向きに検討していただいて、今、多くの超党派でそういったことを検討している面もありますので、そういった取組にもまた期待したいと思います。
 それでは次に、先ほども山添議員からもありました、検察庁のですね、検事長の定年延長についてお伺いしますけれども、ちょっと視点を変えまして、法の支配という観点からお伺いをします。
 そこでまず、森大臣は所信表明でピース・アンド・ジャスティス・フォー・オールと、これ京都コングレスの関連で言っておられますけれども、森大臣は法務大臣、ミニスター・オブ・ジャスティスなんですね。そういった法務大臣として、ジャスティスの大臣としてどのようにこのジャスティスの概念を捉えていますでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) ピース・アンド・ジャスティス・フォー・オール、平和と公正を全ての人へというのは京都コングレスの標語として定めさせていただきました。ここでいうジャスティスとは、公正、正義という意味でございまして、法務行政を通じて正義が保たれる公正な社会の実現に向けて真摯に取り組むという思いを込めて述べたものでございます。
○高良鉄美君 今、ジャスティスの意味を言っておられました。
 前回、実は、見方を変えるわけではありませんけれども、法の支配について非常にいい御答弁をいただきました。法の支配というのは、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的としておりますので、ここでいう法は形式的な法律ではなく、様々な基本的人権や基本的価値を含む内容が合理的な法を指すものと認識しております、こういうふうに答弁されました。
 法の支配に対峙する、対抗する概念というのは人の支配ということですけれども、それはどのように理解されているでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) おっしゃるとおり、法の支配について答弁をさせていただいたところでございます。
 人の支配についてでございますが、人の支配は専断的な国家権力の支配とも言われており、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする法の支配に対応する概念として用いられているものと理解しております。
○高良鉄美君 ルール・オブ・ローというのを、ある新聞では法の原則とかあるいは法の規則というふうに訳して社説に載っていましたけれども、そういうことではなくて、法の支配、そして今大臣答弁されたように、人の支配はルール・オブ・マンということで、その時々の権力者の考え方次第でこういうふうに制度を変えていきますとか、あるいは法解釈を恣意的に変更することを指すわけですね。じゃ、法の支配というのは、それとは逆に、このような横暴がないようにするための法原理、今大臣の答弁がありました。
 検事長の定年延長における今回のような解釈の在り方というのは、この法の支配から外れて、まさしく人の支配ではないかということです。
 基本的な法分類の仕方の一つに一般法と特別法というのがあります。これもいろんな原理に関連していますが、国家公務員法と検察庁法は一般法なんですか、特別法なんですか、それぞれ。一般法と特別法というのは、法原理上どのような関係にあるかというのを理解されているか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 一般に、一般法とはある事項について一般的に規定した法令をいい、特別法とは一般法の対象となるある事項と同じ事項について、特定の場合、又は特定の人、若しくは特定の地域を限って一般法と異なる内容を定めた法令をいうと解されているものと承知しております。
 一般に、一般法と特別法の関係にある場合には、特別法が規律の対象としている事項、人又は地域に関する限りにおいては特別法の規定、特別の定めがまず優先的に適用され、一般法の規定は、それらの対象については、特別法の規定、特別の定めに矛盾しない範囲内で補充的に適用されると解されているものと承知しております。
 その上で、国家公務員法と検察庁法の関係でございますが、一般法と特別法の関係にあると理解しております。検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は定年年齢と退職時期の二点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは検察官であっても一般法たる国家公務員法によっているというふうに解釈しております。
○高良鉄美君 そういった意味では、検察庁法というのが特別法であると、特別法は一般法を破るということで、なぜそういう規定が、今二点ありましたけれども、この二点からすると、やはり検察庁法は特別な思いを持って、あるいは趣旨を持って制定されているということですね。そういった意味でいうと、検察庁法の変更解釈をできるというふうにもし試験で書いたら、私はこれは不可だというふうに答案に書きます。こういうようなことが、法教育についても所信で述べられていますけれども、こういったことが国家の機関の中で、国政の中で行われているということは非常にゆゆしき問題なんですね。そういったことからいうと、法原則の問題ということも含めて、非常に今後しっかりと応えて、捉えていかれることを期待いたします。
 そういった意味では、国家公務員法の定年延長というのは検察官には適用しないと、それが立法趣旨じゃないかということで、これはいろんなところでももう既に伺われたと思いますけれども、森大臣にお伺いします。
○国務大臣(森まさこ君) 先ほどお答えしたとおりでございますが、検察庁法で定められている検察官の定年による退職の特例は、定年年齢と退職時期の二点であると。したがって、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法によっているというふうに解されます。
 そして、定年延長、勤務延長の件でございますけれども、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶと言うべきでございますので、検察官の勤務延長については一般法たる国家公務員法の規定が適用されると解したものでございます。
 また、委員御指摘の立法趣旨の点でございますけれども、検察庁法が定められた当時の昭和二十二年の帝国議会議事録等においても、その定年延長の規定を入れなかった趣旨については特段触れられておらず、その理由はつまびらかではございません。
○高良鉄美君 これは、帝国議会の議論というのがありましたけれども、これ帝国議会は最後の帝国議会で、その後は日本国憲法になるわけですね。そういったところで、日本国憲法が制定されることを予定してこの検察庁法ができたわけですよ。そういう中で定年延長の規定を入れなかったということには特別な意味があります。
 そういった意味で、次の質問に入りますけれども、検察官というのは司法の入口ということで、そういうふうにも言われており、刑事裁判を起こすいわゆる公訴権を持っているということで、独任制の象徴であるということも、独任庁というふうにも言われましたけれども、形式的には行政官ですけれども、司法権の行使と密接不可分の準司法官ということで、法曹三者の一つであるわけですね。
 法と正義の守り手である検察官が一般行政から独立しているというのは、これは憲法の下で政治の介入を防いで恣意的な判断がされない、司法の独立を守るためとの関連性があるわけです。
 日本国憲法ではこういった人権保障のための司法制度ということを捉えているわけで、ですから司法の独立、そしてさらには、検察官の場合には、通常の行政としての違い、行政官としての違いは、司法との関わりの中で検察官が特別な位置付けになっているということですね。そういった意味で三権分立の関連があるわけです。
 そういった意味で、この三権分立というのは、今、この司法と立法がありますけれども、この行政の中でいろいろ任免権の問題とかありましたけれども、それだけじゃなくて、きちんと抑制と均衡していると、チェック・アンド・バランスをしているということなんですけれども、このチェック・アンド・バランスが外れていませんかということを心配しているわけです。
 今回の場合には、行政が解釈の問題もこれだけ大きく変更して、行政の思いのままにやる、あるいは司法権との関わりになると、司法、先ほど言いました検察官の、非常に、法と正義に従い、そして、中立的にやって公正にやっていくという問題からいうチェック・アンド・バランスからいうと、このようなやり方というのは特に問題はないのかということで、森大臣に、その懸念、チェック・アンド・バランスのアンバランスの問題、ちょっとお聞かせください。
○国務大臣(森まさこ君) 三権分立、立法、行政、司法のお尋ねがございましたが、検察権は行政に属するものでございますが、一方で、司法の入口とおっしゃいましたけれども、司法ではなく、行政に属するけれども、その検察の独立性というのは確保されるための要請が図られているわけでございます。この検察権が行政権に属することと検察権の独立性との調和を図っているのが検察庁法でございます。
 そこで、勤務延長について考えますと、勤務延長それ自体は、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認める趣旨に基づくものでございまして、司法権行使の前提となる検察権行使に圧力を加えるものではなく、検察権の独立性や司法の独立を害するものではないと解しております。
○高良鉄美君 そういった意味でいいますと、確かに形式的には任免権、それは内閣にあるということですけれども、内閣の意向でやるのではなくて、この検事総長の人事というものは、この検察庁の中でいろいろ積み上げてきたものがあるわけですから、本当に仕事に支障があるというのは、内閣が分かるんではなくて、この検察庁の方が分かると、それを今変更してやろうとしているわけですよね。そういった問題があって、そしてさらに、最初、ジャスティスという話をしましたけれども、このジャスティスというのは、公正というのは、公明正大に、誰が見ても文句が付かないと、おかしいとか変な疑念を持たせないと、不公平だとか。そういうようなことがジャスティスなわけですよね。
 それからいうと、この問題というのはいろんな問題が含まれていると思いますけれども、権力分立において、この権力が正しく動くためにいろんな原理があって、法の支配がそういうことになるわけですけれども。改めて、法の支配ということについて、そして、このジャスティスの問題について、今この関連性でどのように、改めて法の支配というのをどう考えていらっしゃいますかということをお伺いして、終わりたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 今委員が検事総長人事とおっしゃいましたけれども、お尋ねは検事長の人事のことかと思いますけれども、法の支配についてのお尋ねが再度ございました。
 法の支配とは、人権の保障と恣意的権力の抑制を趣旨として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方をいうものと認識をしております。先ほど申し上げたとおり、法の支配とは、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする原理でございまして、ここでいう法は形式的な法律でなく、内容が合理的な法をいうものと考えております。
 法務省においては、今般の国家公務員法、一般の定年の引上げに関する検討の一環として検察官についても検討を進める過程で国家公務員法と検察庁法との関係を検討し、先ほど申し上げましたように、特例、検察庁法の特例は年齢と退職時期の二点であり、勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶということから、検察官の勤務延長について一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈したものでございまして、また、関係省庁からも異論はないとの回答を得て解釈を改めたものでございますので、今回の解釈変更は適正なプロセスを経たものでございます。
○委員長(竹谷とし子君) 高良鉄美君、おまとめください。
○高良鉄美君 はい。
 ありがとうございました。この関係は、今、私が間違えた検事総長と、人事と言いましたけれども、検事長人事のことなんでしょうけれども、検事総長にどなたかがなるかもしれないということが強く今国民の中でも見えているわけです。その問題だということで御指摘をしておいて、終わりたいと思います。