国会質疑 Interpellation

2024年3月26日 参議院 外交防衛委員会

・オスプレイの飛行再開について

・法の支配と二重基準ついて

議事録

PDFはこちら

第213回国会 参議院 外交防衛委員会 第6号 令和6年3月26日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 オスプレイの飛行再開についてお伺いします。
 昨日、沖縄防衛局にオスプレイの飛行停止の要請をしました。そこには、嘉手納爆音訴訟団、そして、普天間爆音訴訟団、オール沖縄会議のこの三者、三団体が行きましたけれども、いずれもオスプレイに関連するということですね。
 昨年の屋久島の沖で墜落したのは嘉手納に向かっていたということですし、普天間には二十四機、今あるわけですね。オール沖縄の方は、これはオスプレイの配備に最初から反対をしているという問題がありますので、これ以上に更に多くの県民がオスプレイの飛行再開には大変な懸念と疑問を持っています。
 限られた時間であるというふうに、いろいろ承知をしていますけれども、この要請の際に。ですけれども、できる限り県民の不安や疑念を丁寧に聞いていただきたいと思いますけれども、防衛省、いかがでしょうか。
○政府参考人(大和太郎君) お答え申し上げます。
 各種の要請への対応につきましては、要請を受ける部署がその時々の状況に応じ適切に判断しているものでありますが、他の業務との兼ね合いもございまして、要請への対応に当たって時間を区切る必要もあることを御理解いただければと思います。その上で、御指摘の要請に際しても、沖縄防衛局長が参加者からの御要望や御質問に対してできる限り丁寧に回答をさせていただいたところであります。
 今回の事故は地域の方々に大きな不安を与えるものであったというふうに認識をしております。引き続き、丁寧な説明や適切な情報提供を行い、地元の方々の不安や懸念の払拭に努めてまいります。
○高良鉄美君 局長の丁寧な対応を、沖縄防衛局長はしてもらいました。それを、やっぱりこれだけの大きな問題ですので、重要な問題という場合には、そういった時間を三十分というふうに、三団体が来るわけですし、局長も答えるわけですから、これじゃとても足りないということですね。是非、県民に寄り添って、丁寧な説明、さらにはそういう気持ちを大切にして、時間に余りとらわれずに大事な問題は取り扱うというふうにしていただけたらと思います。
 国民の多くは、オスプレイは欠陥機で、飛行すべきではないと考えています。ところが、木原大臣は、国民の不安を払拭するどころか、米側からかつてないほど詳細な説明を受けたので問題はないとして、この安全の根拠を示さず、飛行再開を強行しています。
 事故が起きた場合は木原大臣が責任を取られるということでよいでしょうか。
○国務大臣(木原稔君) オスプレイは米軍だけが運用しているものではなくて、私ども陸上自衛隊も運用している機体でもありますから、防衛省・自衛隊としても、その飛行の安全を確保した上で運用を再開するということは、防衛大臣としてはもうこれ当然のことだというふうに思っております。
 飛行の安全確保、今回墜落したのは米軍のCV22でありますけれども、飛行の安全確保は最優先であるということ、そして、事故の原因が確定し、そしてそれに対する安全対策を行っております。
 その安全確保というものは最優先であるということは、これはオースティン国防長官とも私、電話で会談をし、もう日米間で、防衛大臣間、そしてあらゆるレベルで確認をさせていただいておりますので、引き続き、これは日米で協力し、安全確保に万全を期してまいるという、それに尽きるということでございます。
○高良鉄美君 アメリカの議会の方では、これ大丈夫かとアメリカの議会でも心配をしているということですね、問題があって。その上で、今、木原大臣、飛行の安全を確認した上でということで、自信を持ってこう言っているわけですから、それはやっぱり事故があれば当然責任を取ってもらうというふうに私は解釈をいたします。
 次に、法の支配と二重基準について伺います。
 二十一日の外交防衛委員会で上川大臣に、法の支配に二重基準があってはならない、外務大臣も同じ考えということでよいかとお尋ねをしたんですけれども、問いにお答えにならなかったので、改めて、この二重基準があってはならないかどうか、それをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のいわゆるこの二重基準に関する議論に関しまして、我が国といたしましては、法の支配を目指す上で国際法上の義務を誠実に履行する必要性は全ての国にとって同様であると考えており、その意味で、一般論として二重基準はあってはならないと考えております。
○高良鉄美君 法の支配の重要な根幹、一つの問題として、この場合にはこうする、この場合はこうすると、ばらばらになっちゃいけないということですね。ですから、二重基準というのは、これはあってはならないというのは基本だと思います。
 前回もお尋ねしましたが、一九六七年に国連安保理事会決議が、決議二四二が採択されています。ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原などからのイスラエルの撤退を中東における平和に係る原則と宣言するとしています。総会決議ではなく安保理決議ですので、法的拘束力があります。
 この安保理決議二四二は、上川大臣の所信にある法の支配の法に含まれると理解してよいですか、再度伺います。
○政府参考人(藤本健太郎君) お答えいたします。
 御指摘の安保理決議第二四二号は、その内容として、国連憲章の原則を達成するためには中東における公正で永続する平和を確立することが必要であり、それには第三次中東戦争によって占領した領土からのイスラエル軍の撤退を含む諸原則が適用されなければならないことを確認する旨規定しているものであり、それ自体、厳密な意味において法的拘束力を有するものではございませんが、法の支配の観点から極めて重要な決議として尊重すべきでございます。
 また、戦争による領土取得の禁止という当該安保理決議でも示された考え方は、国連憲章の下での武力行使の禁止の帰結であり、慣習国際法として確立されていると考えてございます。
 こうした点を踏まえれば、安保理決議第二四二号に基づく取組については、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し強化するに当たって重要な役割を果たしているものと考えております。
○高良鉄美君 慣習法という話もありましたけれども、法の支配は、法律の支配ではないということ、人の支配ではないということが重要な意味があるわけで、慣習法というのも、これは国際法上、重要な法源、法のもと、源ですね、であるということですから、これはもう法の支配であるというのを、今の答えですね、もう真っ先にそれを言わなきゃいけないんじゃないかなと私思います。
 憲法も、九十八条二項で、日本国の締結した条約と確立された国際法規は誠実に履行する必要があると。この確立された国際法規というのは国際慣習法ですよ。だから、もう憲法そのものが法の支配としてこれは強調されているということ、慣習法に対して、私はここで訴えておきたいと思います。
 パレスチナですね、これはハマスのいないヨルダン川西岸地帯についても撤退を求めているこの安保理決議に違反し、イスラエルは国際法違反の力による現状変更をしているのではないですか。上川大臣に伺います。
○国務大臣(上川陽子君) 政府といたしましては、このイスラエルと将来独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決、これを支持しておりまして、第三次中東戦争によって占領され、占領した領土からのイスラエル軍の撤退等を求めますまさに第二百四十二号を含みます累次の安保理決議及びこれまでの当事者間の合意等に基づきまして、当事者間の交渉により解決されるべきであるとの立場でございます。
 イスラエルの入植活動につきましては、国際法違反であり、また二国家解決の実現を損なうという立場から、我が国として、引き続き深く懸念するとともに、改めて強い遺憾の意を表明するものであります。また、このような立場に基づき、入植活動を完全に凍結するようイスラエルに対して累次の機会に強く求めてきております。
○高良鉄美君 この点はやはり、今、イスラエルの状況を私たちは見ていくということですけれども、おとといも病院を攻撃するというような事態がありました。日本は承認していませんが、パレスチナを国家承認している国は二〇二一年時点で百三十八か国に上ります。イスラエルの行動は明白な侵略です。ヨルダン川西岸を侵略するイスラエルの行動は、今回のガザ紛争開始後、更にエスカレートしています。ガザ地区ではなくて、もう一つの、イスラエル、ヨルダン川西岸もということですね。
 答弁にありましたけれども、撤退を求めた安保理決議に反し、イスラエルは国際法違反の力による一方的な現状変更をしていると申し上げて、次の質問に入ります。
 国連憲章上、武力の行使が認められるのは、安保理決議がある場合と集団的自衛権を含む自衛権の行使の場合のみです。セルビア空爆について安保理決議はありません。
 前回、NATOのセルビア空爆は、国際法上、合法だったのか、合法と考える法的根拠は何かと質問したところ、上川大臣は、当時のユーゴスラビア政府が和平合意案をかたくなに拒否し、他方で国連安保理決議に反した行動を取り続ける中にありまして、更なる犠牲者の増大という人道的、人道上の悲劇を防止するためにやむを得ずとられた措置であったと答弁されました。しかし、武力行使の法的根拠等について確たる見解をお示しすることは困難と答弁されました。
 これでセルビア空爆が正当化されるなら、安保理決議に反する行動を取り続けるイスラエルに対して、更なる犠牲者の増大という人道上の悲劇を防止するためにやむを得ず攻撃することも正当化されるのではないですか。安保理決議も自衛権行使でもない攻撃は許されないはずです。そうでなければ、法の支配ではなく、人の支配とのそしりは免れないです。資料一の方で、この人道上の悲劇というものがこの数字に表れていると思います。
 上川大臣に伺います。
 NATOのセルビア空爆では、NATO諸国から自衛権を行使した旨の安保理への報告はあったのでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のNATOの行動につきましては、この自衛権を行使した旨の安保理への報告がなされたとは承知をしておりません。
○高良鉄美君 そういう形で、この安保理決議の問題や、あるいは自衛権といった問題が非常に重要なわけですから、そこはきちんと確認をしていただきたいと思いますし、そうでない場合には、これはきちんと主張しなきゃならないと思います。
 前回の質疑の際には、元外務省国際情報局長の孫崎享さんの「同盟は家臣ではない」という本の一部を紹介しました。
 資料二を御覧ください。外務省条約局長や大使の経験のある東郷和彦さんと東工大の中島岳志さんの対談を紹介します。
 ウクライナ戦争開始四か月後、東郷さんは、ウクライナをめぐる状況は深刻です、アメリカを始め西側諸国はウクライナを支援し、彼らに武器を提供してきましたが、それはむしろ戦争を長引かせ、事態を悪化させるだけです、今必要なのは武器の提供よりも停戦交渉です、ロシアはウクライナ戦争の結果、日本を非友好国ないしは敵対国と位置付ける可能性があります、また、日本は韓国と安全保障上の利益を共有していると言っていますが、植民地問題に関して和解へと動き出す様子はありません、日本は大切にすべき二つの国に対して、取り返しの付かないことをしているのではないでしょうかと述べています。
 残念ながら、東郷さんの懸念のとおりの状況になってきていると言わざるを得ません。
 そこで、ミンスク合意について伺います。
 ミンスク合意とは、二〇一四年に始まったウクライナ東部紛争をめぐる和平合意で、ロシアとウクライナのほか、ドイツとフランスの首脳が二〇一五年二月にベラルーシの首都ミンスクでまとめたものです。親ロ派武装勢力とウクライナ軍による戦闘の停止、ウクライナが東部の親ロ派支配地域に特別な地位を与える恒久的立法措置を講じるなど、和平に向けた項目を定めていました。
 二〇二二年二月のウクライナ侵攻直前、プーチン大統領は、ミンスク合意はロシアがウクライナ東部の親ロシア派二地域の独立を承認するはるか前にロシア側ではなくウクライナ側が放棄したと非難し、ミンスク合意はもはや存在せず、履行すべきことは何も残っていないと述べました。
 上川大臣に伺います。
 ミンスク合意は法の支配に言う法に該当していたという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(中村仁威君) お答えいたします。
 今委員から言及のございましたミンスク合意でございますが、まず、このミンスク合意という文書、これの当事国に我が国は入っておりません。そのため、この文書の法的な性格について確たることを申し上げることが困難であるというふうに思っております。
 ですが、このミンスク合意というのは、二〇一四年、一五年当時、現地での緊張状態を緩和して地域の安定を確保するために極めて重要なものであるという観点から、我が国は、関係する全ての国々に対して、ミンスク合意が完全に履行されることが重要であるということをつとに指摘をしてきたところでございます。
○高良鉄美君 ミンスク合意、現在のウクライナ戦争の中身ですね、重要な中身だと思います。この国際約束、確かに当事国間では法であっても、じゃ、日本には関係ないかというと、少なくとも、国際約束上は、国際約束というものは法ではあるわけですよね。
 で、二〇二二年十二月、ドイツのメルケル前首相が雑誌のインタビューで、二〇一四年のミンスク合意はウクライナに時間を与えるための試みだった、また、ウクライナはより強くなるためにその時間を利用したと述べました。これに対するプーチン大統領の反応も報道されています。一部を紹介します。
 ミンスク和平合意の目的はウクライナの時間稼ぎだったというドイツのメルケル元首相の告白に驚き、失望したと述べた。しかし、彼は、それがモスクワのキエフに対する軍事作戦を正当化すると付け加えた。ウクライナが合意を履行する意図がないことは知っていたが、そのプロセスに参加した他の参加者は正直だと思っていた、結局のところ、彼らも我々をだましていたのだとプーチンは述べています。
 上川大臣に伺います。
 国際約束は誠実に履行することが求められるのは当然と思われますか。また、履行するつもりのない国際約束を時間稼ぎのために結んだり仲介したりする国は日本と価値観を共有する国と言えますか。見解を伺います。
○政府参考人(中村仁威君) 今委員からメルケル・ドイツの前首相のインタビューに言及をいただいた上で御質問いただいたと認識をしております。
 御指摘のメルケル前首相の発言の真意、これについて日本政府の立場からお答えすることはなかなか難しいことがあることについては御理解いただきたいと思うんですが、その上で申し上げますと、該当の記事でございます、ドイツの新聞にあるこのメルケルさんの発言の中身を読む限り、メルケル前首相は、ミンスク合意の成立後、ウクライナが防衛力を強化したことによって、二〇二二年二月以降のロシアによる侵攻時には、二〇一四年当時と比較して対応能力が向上したという見方を示しているものと理解しています。
 また、同じ記事においてメルケル前首相は、戦争の防止が成功しなかったからといってその試みが間違っていたということにはならないといって、自身が首相に在任していた頃にロシアによるウクライナ侵略を防ぐために努力したということを強調しているところもございます。
 いずれにいたしましても、ドイツというのは日本にとって基本的な価値を共有する重要なパートナーでございます。ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に対して、これからも緊密に連携しながら対応していくというふうに考えております。
○委員長(小野田紀美君) 時間が過ぎております。おまとめください。
○高良鉄美君 はい。
 ロシア、ウクライナの問題もこれからもやっていきたいと思いますけれども、やはり外務省も、きちんとこのロシアがどういうふうな状況にあるか分析をした上で、やっぱり法の支配で、人の支配ではないということをきちんとしないといけないということで、分析の方もしっかりやっていただきたいと思います。
 質問を終わりたいと思います。