国会質疑 Interpellation

2023年11月16日 参議院 外交防衛委員会 

質問内容

・辺野古新基地建設について

議事録

第212回国会 参議院 外交防衛委員会 第4号 令和5年11月16日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成をするということを申し上げ、質問に入ります。
 今月十三日、今週の月曜日でしたけれども、陸上自衛隊宮古島駐屯地への電子部隊配備について、ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会の皆さんとともに、沖縄防衛局に対し住民説明会を開くよう要請しました。宮古島市議会も市民への説明を求める意見書を全会一致で可決しています。沖縄防衛局は説明会開催の予定はないと回答しました。住民がストレス、不安を抱えて説明を求めているにもかかわらず、極めて不誠実な対応だと言わざるを得ません。説明会を開かないのは説明できないからだと思います。しかし、これは、法の支配の適正手続からいってもこれは開いていただきたいと思っています。
 私は、これまで繰り返し辺野古新基地建設問題についての沖縄県民の民意を示し、また法の支配に照らして建設強行の問題を質問してきました。一昨日の委員会でも、小西委員、山添委員、伊波委員が沖縄の基地問題について質問しましたが、防衛省は全く誠実に答えていません。これ以上聞いても時間と労力の無駄ではないかと思うほど不誠実な対応です。
 そこで、今日は別の視点から質問をしたいと思います。まず、B27地点のボーリング調査をせず埋立工事を行うことについて伺います。
 資料一を御覧ください。昨日も指摘がありましたけれども、辺野古の軟弱地盤が最も問題をはらむ部分ですね、箇所は海面から九十メートルの深さまで軟弱地盤があるB27地点です。現在の技術では、地盤改良ができるのは海面から七十メートルまででしかありません。B27地点のこの真上には、埋立地の周囲を囲む護岸が建設される予定です。つまり、埋立て後はここがずぶずぶと不均等に沈下したり、あるいは地すべりが起きれば当然のことながら護岸が傾いたり壊れたりして、埋立地に広く被害が及びかねないということです。
 この地点を工事するには、当然九十メートルの軟弱地盤の最深部まで調査をして、その組成や地盤の軟らかさをしっかりと測った上で行うべきです。しかし、政府はこの地点のボーリング調査を行わず、最大七百五十メートル離れた三つの地点を測定して、その測定値を基に深いところの地盤は十分固いと推測をして、地盤改良が七十メートルまででも工事は可能と結論付けています。
 そこで、木原防衛大臣に伺います。
 アメリカの大統領、国務長官、国防長官は、次の三点、つまり、一点目、護岸建設予定地点に水面下九十メートルまで軟弱地盤があるということ、二点目、地盤改良可能なのは七十メートルまでだが、日本政府は九十メートルまでの地盤改良がなくても深いところは十分固いので工事可能と判断したこと、三点目、深いところは十分固いという判断は、その地点の実測に基づくものではなく、最大七百五十メートル離れた三地点での測定結果から推定であるということを御存じでしょうか、お願いします。
○国務大臣(木原稔君) 普天間飛行場代替施設の建設につきましては、日米の両政府で合意をされておりまして、普天間飛行場の固定化を避けるために辺野古建設が唯一の解決策である点についても米側との間で累次にわたって確認ができているところであります。また、普天間飛行場代替施設については、沖縄防衛局において、技術検討会の助言を得つつ地盤改良について十分な検討が行われており、飛行場として問題なく建設可能なものであります。
 こうした内容については、米側にも累次にわたって説明を行い、確認もしてきておりまして、日米間に見解の相違はないと。そして、我が国から、今三つの点御指摘をいただきましたけれども、そういった我が国から行ったこのような説明内容については、米国においても適切に報告されているものというふうに考えております。
○高良鉄美君 これは大統領も国務長官も知っていらっしゃる、国防長官もね、ということではないんじゃないかと思いますけれども。これはやっぱり、ある程度、海外の一基地の予定地ですね、辺野古についてこのトップが細かいことまで分かるというのはごくまれだと思います。そういった意味では、むしろ、日本側に造ってもらうということがあるので、当然日本を信頼してこれを造っているんだろうと、しっかりと調べて、上でやっているんだろうなという、そういう信頼の下で外交というのは行われると思うんですね。ですから、外交のトップ同士のやり取りというのはこういうものだと思います。日本の総理大臣、外務大臣、防衛大臣は、万全の準備をした上でアメリカとそういう話をするという、やり取りをするのが当然だと思いますね。
 B27地点の実測データはないわけですから、なしで防衛省がこれを進めようとしたら、仮にこれ大丈夫じゃないかなというような状況であったとしても、総理大臣は、アメリカ大統領と約束をしている、だから推定値なので約束はできないと、絶対に間違いないようにしなさいということで、実測、測定しなさいということを防衛大臣に言うんだろうと思うんですね。これが当然だと思います。防衛大臣も、総理がこれはもうアメリカ大統領が約束をしていると、総理の間で。絶対に間違えないように、念には念を入れてこれ実際に測定しなさいということを事務方にきちんと強く言うべきだと思います。
 そもそも、B27地点においては、恐らく推定値で大丈夫といった状況ではありません。これもう軟弱地盤があるということは、この資料一の一から二のように、防衛省が採用しなかったデータでは、ここの地盤が軟弱ということが幾つもあります。どう考えてもB27地点の実測調査をすべき状況です。しかし、沖縄防衛局は、設計変更の申請をするに当たって大浦湾側で六十一本のボーリング調査をしましたが、最深部であって最も慎重に対応すべきB27地点のボーリングを行いませんでした。
 それに対して沖縄県は、変更申請の審査に当たって、いや、ここを調査すべきだと指摘したわけです。しかし、沖縄防衛局は費用の無駄として断り、福岡高裁那覇支部判決では、この知事がB27地点の調査がないことを理由に変更申請を認めなかったのは裁量権の逸脱又は濫用と言われる結末でした。どちらも結局こういったことをきちんと見ていないということで、信じられない判断です。私も憤りを感じながらいますし、こんなことを言われて大臣も何か感じていただきたいのですけれども、沖縄の民意とかいって、政府も与党の皆さんも心に響かないようですので、アメリカに対して誠実かという、そういう視点から聞きたいと思います。
 普天間移設という重要な事柄について、日米首脳会談や2プラス2で約束をする前に、本当にこの欠陥のない基地が完成するのか手を尽くして確認するのが外交を行うに当たっての誠実だと思います。木原大臣、B27地点の実測を避け、推定値をもって工事を進めていることとしたのは、アメリカに対して誠実だったと思いますか。
○国務大臣(木原稔君) 普天間飛行場代替施設建設事業におけます土質調査については、施工段階において土の種類及び強度を把握するための、御指摘のとおり、計六十一本、六十一地点のボーリング調査に加えて、これを補完するための電気式コーン貫入試験、CPTを、こちらは計十五地点で行っているところです。
 沖縄防衛局は、これらの調査結果を詳細に整理、分析することにより、大浦湾側の土の堆積状況やまた強度等を詳細に把握できていることから、御指摘のいわゆるB27地点でのボーリング調査を行う必要はないというふうに考えています。
 このような方法は国土交通省が監修しています港湾の施設の技術上の基準・同解説に準拠したものでありまして、沖縄防衛局が設置した有識者で構成されております技術検討会においても適切であるということを確認していただいております。
 こうした内容について、米側との関係ということですが、米側にも累次にわたって説明を行って、そして確認をしてきておりまして、日米間に見解の相違はないものと考えております。
○高良鉄美君 今、相違、考えに相違はないということでしたけれども、資料二を御覧ください。
 辺野古をめぐる訴訟で沖縄県が裁判所に提出した新潟大学名誉教授の立石雅昭さんの意見書の抜粋です。防衛省が取った手順が極めて不自然だったことが分かります。詳細は読んでいただきたいのですけれども、結論的な部分を読み上げますと、報告書としての体裁を整えるために様々な試行錯誤があったことがうかがえる、B27地点で試験を行った方が、早く、安く原位置の力学性状が把握でき、CPT試験との比較もできた、よって、時間も費用も掛かる三地点の追加試験を選択したことが不合理なことは明らかとのことです。そのとおりだと思います。
 資料三の一、二を御覧ください。二〇二〇年六月二十三日、米連邦議会の下院の即応力小委員会は、普天間代替施設について懸念を示した上で、国防総省に辺野古の海底地盤などについて報告を求める条項を含む形で二〇二一年度国防権限法案を可決しました。
 国防長官に求めた報告事項を一部読み上げますが、資料のとおり、建設予定地の地下のN値の検証結果を含む海底の詳細状況、海底の地盤強化を含む懸念事項に対する改善案、こういったものですけれども、その後、結局、下院の軍事委員会でこの条項が削除されました。
 日本政府は当時、当該条項の削除に向け、アメリカ議会関係者やアメリカ政府に働きかけをした事実はありますか。
○副大臣(堀井巌君) 米国とは、議会及び政府関係者を含め、平素から様々なやり取りを行っているところでございます。
 御指摘の二〇二一年度国防授権法案に関するものも含めまして、その外交上のやり取りの詳細についてはお答えを差し控えたいと存じます。
 いずれにいたしましても、外務省としても、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、沖縄の負担軽減を図るため、全力で取り組んでまいる所存でございます。
○高良鉄美君 今、外交上の問題でということでしたけれども、通告していませんけれども、これ、木原大臣、一般論として伺います。
 アメリカ政府が議会に対して、連邦議会に対してですね、辺野古の状況を説明することは日本政府として何も困ることはないということでいいですね。一般論として、説明を政府が、要するに米国政府ですね、の方が連邦議会に呼ばれてということです。
○国務大臣(木原稔君) 様々な米国との関係においては、私も十月にはワシントンDCを訪れて、国防大臣、国防長官とも、オースティン長官ともお会いしたり、そういう様々なレベルで日米間においては常にやり取りをしている中であります。
 そういった中で、累次にわたってこの点、先生の問題意識についても確認をしてきており、日米間にそういった相違があるというふうには考えておりません。
○高良鉄美君 私は、世界でアメリカの覇権は崩壊しつつあると、さらには、もうアメリカは中国に対する軍事的な駒として日本を利用しようとしているという立場です。日本はアメリカをもっと距離を取るべきと、アメリカとですね、考えています。ただ、政府の立場が自己矛盾ではないかと問いただすという観点からここまで質問をしてきました。
 今日は、B27地点についてだけ見てきました。日本政府がやっていることは希望的観測ですらなく、良く言っても現実逃避、悪く言ったら捏造です。埋立ての変更承認をしない沖縄県を批判するメディアあるいは論者がおりますけれども、しかし、その人たちがもし日米関係、日米同盟のこの信頼関係や重要性を本当に信じているのであれば、B27地点のボーリングは行わず形だけ整えた政府の行為に対して、アメリカに失礼だと批判するはずです。
 また、将来、基地ができたとして、仮に護岸の傾斜とかあるいは崩壊が起こって埋立地に広く被害が生じたときに、それこそアメリカの日本への信頼は決定的に害されます。ここにいる皆さんは、将来、外務大臣になったりあるいは防衛大臣になったり、場合によってはもう総理になっていたりするかもしれません。あるいは、事務方の方も、局長やあるいは事務次官になっているかもしれません。そういう立場に立ったときに、完成した後、この基地の護岸が崩壊したらどうやってアメリカに申し訳をするのでしょうか。想定外とは言えないですよ。もう私は、私だけじゃなくて、ほかの多くの方もこれはおかしいですよということを警告してきているわけです。
 埋立ての変更申請の代執行訴訟が今行われています。政府は、不承認が続けば日米間の信頼関係や同盟に悪影響を及ぼしかねないと言っていますけれども、軟弱地盤から現実を逃避したまま代執行を行い、工事を続行する方が日米間の信頼関係や同盟に悪影響を与えるというのではないかと思います。
 次の質問に移ります。
 辺野古の代替施設ができ上がっても普天間基地は返ってこないのではないかという疑念は、以前からいろんな人が抱いていました。
 資料四を御覧ください。普天間返還八条件というものがあります。これを満たさないと普天間返還はないわけですね。その条件の⑦には施設の完全な運用上の能力の取得というものがあり、防衛省は、飛行場の安全性を確保するため、米国政府機関による検査、飛行場認定を受ける必要がありますとコメントしています。
 新基地ができたとして、護岸が大きく傾いたり倒壊して埋立地に大きな被害が出るなど、現在の防衛省の計画より新基地の状態が悪くなった場合、普天間返還条件八条件の七を満たさず、普天間の返還が行われない可能性があるという、そういう理解でよろしいですか、防衛大臣。
○政府参考人(青柳肇君) お答えいたします。
 普天間飛行場の返還条件につきましては、平成二十五年に公表された沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画に示されてございます。先生御指摘の返還条件でございます施設の完全な運用上の能力の取得ということにつきましては、普天間飛行場代替施設の運用開始に先立ち、飛行場の安全性を確認するため米国政府機関から認定を受けることを指すものと承知してございます。この米国の認定、政府機関と申しますのは米国の連邦航空局でございます。
 その上で、普天間飛行場代替施設の整備に当たりましては、米国政府による基準を満たすことを前提といたしまして、詳細な設計について米側と調整を行いながら進めてきているものでございまして、返還条件を満たさないということは想定されないと考えてございます。
○高良鉄美君 想定されないと。ふだん防衛省言っていることは、最悪の状態を想定してやるというのがこれ普通の考え方じゃないですか。今、想定していないということは、これは何かこういうことが起こったときはもう仕方ないということですね。それぐらいのことを今おっしゃっているということですよ。
 要するに、アメリカが、いや、こんなんじゃいかぬだろう、こんな基地は要らない、あるいは駄目だと言ってしまったら、これは国防権限法の中でそういうことを言ってしまったら、もう日本側は手段がないということを指摘しておきたいと思います。
 軍隊の戦場での情報収集を例に取ってみますと、今のこのB27地点の問題、例えば、戦場ですから敵がいる可能性が最も高いところがあると、これがB地点だとしますと、簡単に直接偵察ができるのに、そこと離れた三つの地点を偵察して調べてB地点には敵がいないと推測すると。こんなことをやる軍人はいないと思いますよ。それで作戦を立てて、もしB地点に敵がいて味方が損害を受ければ、これはもう関係者も軍法会議物ですよ。新基地にもし大きな欠陥が生じて、アメリカの政府高官や議会に働きかけをしても、もう相手にされないと思います。
 私は、辺野古はまともに基地ができる可能性は低いと思っています。政府は軟弱地盤の件をきちんと対処して基地を造るとおっしゃるでしょうけれども、じゃ、どんな基地ができるんですかということです。
 これに関して、二〇二〇年の一月三十一日の参議院予算委員会で石橋通宏議員が質問されています。この議論の記録が資料の五です。石橋議員は、滑走路に不同沈下が起こる、例えばジャッキアップで補修することを予定している、凸凹が生じるといったことを指摘されています。防衛省の計画ですらこんな基地になることを委員の皆さん御存じでしたでしょうか。石橋議員は、こういった指摘の上で、これで問題ない旨アメリカ側とは話はできているのかと質問されています。
 これに対する中心的なコメント、答弁が、太いフォントにした河野大臣の答弁です。これは資料の五の二の方ですね。これまで米側に適宜説明し確認を得ていますが、これまで特段の懸念が示されたということはございませんとあります。
 特段の懸念が示されたことはないということは、明示的な同意は得ていないということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(木原稔君) いわゆるその海上の埋立空港でございますけれども、例えば一般的に言うと、羽田空港、東京国際空港もそうですし、また関空も中部国際空港も、そういったものについては、私は前職は航空会社でありましたけれども、一般論で言うと、長い年月を経て沈下が起こることというのはどの空港も一般的でありまして、これについては、設計、施工、維持管理の各段階でその沈下対策を行っていくことで十分対応可能だということが考えられています。
 このため、普天間飛行場代替施設の滑走路についても、同様の対応によって飛行場として問題なく運用可能であるというふうに考えています。また、普天間飛行場代替施設については、沖縄防衛局においてそういった技術検討会の助言なども得ておりまして、問題なく建設可能なものであるというふうに考えております。
○高良鉄美君 将来、国防権限法でこんな基地は駄目だと言われれば、もう終わりだということですね。これ、こういうのをアメリカが思うかということですよね。
 今、代執行訴訟において、政府は、この普天間基地の危険性の除去、それから日米間の信頼関係や同盟関係への悪影響を主張して、それを放置することが著しく公益を害すると言っているわけです。しかし、今見てきたように、このまま工事進めたら本当に普天間返ってくるか疑わしい。これも一の条件、違いますね。そして、軟弱地盤から現実逃避してアメリカに辺野古移設を約束する政府の行動というのは、日米の信頼関係や同盟関係を大きく損なうと。
 だから、沖縄の民意は、普天間代替施設の県内移設は反対です。しかし、この民意について、本質的な議論を行うまでもなく、政府の行動の自己矛盾をチェックしてみるだけで代執行の要件は到底満たされていないと申し上げ、質問を終わりたいと思います。