2023年11月9日 参議院 外交防衛委員会
質問内容
・外務大臣の外交姿勢について
・法の支配について
議事録
第212回国会 参議院 外交防衛委員会 第2号 令和5年11月9日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
先ほどから法の支配の問題が出ていますけれども、法務大臣を三度歴任された上川大臣には法務委員会で法の支配について既に聞いておりますので、本日はその関連も含めまして上川大臣の外交姿勢についてお伺いしたいと思います。
上川大臣は、法務大臣として十六人の死刑を執行されました。その中には、犯行当時に未成年だった、あるいは再審請求中の死刑囚もいました。二〇一八年七月には、オウム真理教事件の死刑囚十三人の死刑を執行されました。
二〇二〇年十一月の法務委員会で、死刑執行の正当性について、伊波議員の質問に対して上川大臣は、裁判所の確定した判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものとした上で、慎重な検討を重ねた上で最終的に発したと答弁されました。
今や法律上と事実上の死刑廃止国は百六十八か国に上り、死刑を執行しているのは、イランやアフガニスタンやシンガポールのほか、情報を公開していない中国、朝鮮、ベトナムなど僅かです。アムネスティによると、ガーナでは、昨年、七件の死刑判決が言い渡され、年度末の死刑囚の数は百七十二人に上りましたけれども、執行は一九九二年以降行われておらず、ガーナ議会は、今年、死刑条項を削除した改正法案を可決したということです。裁判所の確定した判断を尊重したと答弁された上川大臣とは対照的です。
上川大臣の死刑執行に対して、EU加盟二十八か国とアイスランド、ノルウェー、スイスは、同じ価値観を持つ日本には引き続き死刑制度の廃止を求めていくと共同声明を発表しました。EUは、死刑を基本的人権の侵害として、EU駐日大使、国連人権高等弁務官事務所の報道官も批判するコメントを出しました。G7からは、共通の価値とは思われないんじゃないか、あるいは価値外交ができるのだろうか、さらには人権を軽視する大臣と見られるのではないかと懸念します。
上川大臣は、死刑執行の正当性がG7の国々に理解されると思われるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 自由、そして民主主義、基本的人権の尊重といった普遍的価値に立脚した国際的な規範原則は、国際社会の平和と安定、さらに経済発展の礎、基礎となるものと認識をしております。
死刑制度そのものにつきましては外務省の所管ではございませんが、死刑制度に関しましては様々な議論があることは承知をしております。死刑制度の存廃は我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でありまして、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等、様々な観点から慎重に検討すべき問題だと考えております。
私といたしましては、国際社会において、日本の考え方を引き続き丁寧に説明していきたいと考えております。
○高良鉄美君 今、法の支配の中身をちょうど語られたと、言われたと思いますけれども、そこにあるのはやっぱり人権尊重の問題でした。それを、EUの駐日大使を含め、基本的人権の侵害として捉えているわけです。
ですから、法の支配を貫徹するのであれば、そこはしっかり、廃止をする問題をですね、死刑制度の廃止の問題あるいはその死刑制度が持っている人権上の侵害の問題というのを捉えるべきだということをちょっと指摘しておきたいと思いますし、それから人間の尊厳ということも所信の中にはありますので、そこも指摘しておきたいと思います。
次に、G7の国々と共通の価値となっていないのがジェンダー平等です。
G7の加盟国で、法律婚に際し、同氏、いわゆる同姓を強制している国は日本以外にはありません。また、カナダ、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツは法で同性婚、これはりっしんべんの方ですね、同性婚を認め、イタリアには同性カップルを公的に認める制度があります。この点でも、別姓、これは姓の方ですね、別姓も同性婚も認めていないのは日本だけですけれども、共通の価値を持っているとは言えません。
世界経済フォーラムのジェンダーギャップは百四十六か国中百二十五位で、G7では最下位、韓国や中国にも抜かれています。G7とのギャップはかなりあると思います。
国連女性差別撤廃委員会第八十九会期が来年の九月三十日から十月十八日に開催されます。八年ぶりとなる日本政府報告審査も予定されています。
上川大臣は、法務大臣時代、選択的夫婦別姓を求める質問に、度々、世論を理由に法改正に慎重な立場を繰り返し表明されました。しかし、国連の委員会は二〇〇九年の第六回日本審査で、本条約の批准による締約国の義務は世論調査の結果のみに依存するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うよう国内法を整備するという義務に基づくべきであると、人権問題を世論に委ね続ける政府の姿勢を厳しく指摘し、民法改正をフォローアップの対象としました。
二〇一八年二月に内閣府が公表した家族の法制に関する世論調査で、賛成が反対を大きく上回りました。しかし、当時の上川法務大臣は、今回の世論調査の結果を受けまして、直ちに選択的夫婦別氏制度を導入すべき状況にあるとは言えないと、民法改正に否定的な答弁をされ、夫婦別姓ができなくて困っている、とりわけ法改正を待ちわびている、待ち望んでいる多くの女性たちから失望の声が上がりました。
法務大臣でありながら選択的夫婦別姓実現に尽力しなかった上川大臣がG7の国々からどのように受け止められると思われるでしょうか。ジェンダー平等の積極的なG7で議長国を務める上川大臣がリーダーシップを発揮できるのでしょうか。
国連女性差別撤廃委員会第九回日本政府報告審査では、選択議定書を批准していないことや二度もフォローアップ対象となった選択的夫婦別姓が実現していないことに対し、厳しい指摘があると思います。外務大臣としてどのように臨まれるか、伺います。
○国務大臣(上川陽子君) 前回の審査におきましては、差別的な法規定や、また女性に対する暴力等の分野において様々な指摘を受けたところでございます。第五次男女共同参画基本計画に基づく取組を始め、一つ一つ真剣、真摯に対応してきているところであります。今般、民法の改正によります女性の婚姻年齢の引上げもその一つでございます。
引き続き、過去の審査におきまして、女子差別撤廃委員会の勧告を十分に検討の上、内閣府を始めとする国内関係省庁とよく連携をしつつ、女子差別撤廃条約を所管する外務大臣として次回審査にしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 是非とも、審査の前に積極的に対応よろしくお願いしたいと思います。
次に、木原防衛大臣に伺います。
私は、三十五年間、憲法や行政法を教えてきました。憲法を学生に正しく理解してもらうことが私の使命だと思っています。二〇一九年の選挙で国会議員になって驚いたのは、憲法尊重擁護義務を負っている国会議員の中に、憲法をきちんと理解していない、あるいはないがしろにしている方がいらっしゃることでした。ですから、委員会で質問する全ての大臣に憲法が統治原理として採用する法の支配についてお尋ねをしてきました。
木原大臣も所信で法の支配に言及されていますが、木原大臣の法の支配についての御認識を伺います。
○国務大臣(木原稔君) 私に対しても、法の支配に対する認識を御質問いただきました。
法の支配とは、一般に、人権の保障と恣意的な権力の抑制とを趣旨として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方だと理解をしております。
その上で、これまで政府としては、憲法の最高法規性の観念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容や手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重等が法の支配の内容として重要である旨答弁してきていると承知をしております。
このような法の支配の考え方を前提として、防衛省・自衛隊としては、最高法規である憲法を始めとする法令に基づき、我が国を防衛するという任務を引き続き遂行してまいります。
以上です。
○高良鉄美君 今のお答えは、概念としては間違ってはいないと思います。しかし、それを実際に各大臣が、あるいは政府がそういう形で運用しているか、あるいは向き合っているかというのは非常に大きな問題です。
その関連で少しお伺いしますが、政府は力による一方的な現状変更の試みは許さないと言いながら、沖縄では力による一方的な現状変更を強行しています。木原大臣の民意について御認識を伺います。
沖縄県民は、辺野古新基地建設反対の民意を、県民投票を始め、参議院選挙、県知事選挙で繰り返し明確に示してきました。これに対して木原大臣は、永田町にも民意があるとかつて発言されたと報じられたことがあります。
木原大臣は沖縄の民意をどのように捉えていらっしゃるのか、伺います。
○国務大臣(木原稔君) まず、その永田町の民意もあるということは、もう十年ほど前の報道で書かれたと思いますが、でも、それはもう恐らく、それは言っていないということがもう新聞に書かれているというふうに承知をしております。ですから、これ私は申し上げておりませんので、そこはまず冒頭お願い申し上げます。私は申し上げておりません。
そして、民意とは、一般に、国民の意見、一般の人々の考え方といった意味で使われているというふうに承知をしております。
また、この点、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、三文書に定められた安全保障政策を着実に実施していくためには国民の理解と協力が不可欠であり、その際、少数意見にもよく耳を傾けることが重要であります。
民主主義国家である我が国において、政府が安全保障政策について国民に丁寧に説明していくことは当然であり、国民の理解と協力が得られるように努めてまいります。
○高良鉄美君 永田町の民意とは言わなかったということかもしれませんが、国会の民意とはおっしゃいましたでしょうかね。国会の民意というのは、それこそ政府の民意という言い方に近いわけですよね。要するに、今お答えされたのは、一般の国民あるいはその地域の人々の、市民の意思だということをおっしゃいました。
やっぱり、憲法九十五条にこういう趣旨があります。ある特定の地方公共団体のみに適用する法律を制定する場合は、当該地域の住民投票で過半数の賛成を得なければならないと。つまり、国会の議決だけで制定することはできないということです。木原大臣の、あるいは国会にも民意があるという発言は、憲法九十五条に反すると言わざるを得ません。
木原大臣は所信で、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面していると述べられました。これは、戦後最も厳しい安全保障環境というこのフレーズは、二〇一七年十一月の安倍総理の所信表明からずっと使われ続けています。木原大臣のこれまでの言動と所信を聞いていると、不安をあおりにあおって国民を混乱させていると言わざるを得ません。これで本当に危機が、危機の対応ができるのか心配です。
というのは、今日、小西委員の方からいろいろ資料が出ていますけれども、やっぱりそういったところで一つのまた例もありますけれども、木原大臣が、二〇一五年六月二十七日の自民党若手議員が開いた勉強会で沖縄タイムスと琉球新報に圧力を掛けて言論を封じようとしたとして、役職停止の処分を受けました。報道機関への圧力は、憲法二十一条の報道の自由、表現の自由に反するものです。また、木原大臣の、教育勅語をかつて額に入れておられたことも、今日は批判を受けたということです。
国土面積の〇・六%にすぎない沖縄県に米軍専用施設・区域の約七割が集中しています。三文書の改定、防衛力強化により基地が強化された危険な沖縄と化しつつある中、不安をあおる木原大臣の所信は、沖縄県民だけでなく、多くの国民が懸念を持つのではないでしょうか。
木原大臣の所信を受けながら、ナチス・ドイツではヒトラーの右腕だったゲーリングの言葉を思い出しました。こういう言い方ですね、割愛して紹介しますが、一般市民は戦争を望んでいない。当然、普通の市民は戦争は嫌いだ。しかし、国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。簡単なもの、簡単なことだ。自分たちが外国から攻撃されていると説明するだけでいい。そして、平和主義者については、彼らは愛国心がなく、国家を危険にさらす人々だと公然と非難すればいいだけのことだ。この方法はどの国でも同じように通用するものだと。
そういったことがありますので、時間来ましたので、以上で終わりたいと思います。