国会質疑 Interpellation

2023年6月1日 参議院 法務委員会

議事録

第211回国会 参議院 法務委員会 第19号 令和5年6月1日

○仁比聡平君 この事件では、口頭意見陳述をやりませんと難民参与員が決めた直後に弁護士が付いていまして、速やかに、この方が暴行、拷問を受けたときの傷の写真や、あるいはウガンダ本国の病院の医療の記録などの資料をその難民参与員の審査請求の手続として提出をして、そして審査を再開して意見陳述をちゃんとやってくれと、参与員ちゃんと話聞いてくれと頑張っているんですよ。ところが、それを全く聞かずに打ち切っている。
 私は、この弁護士、代理人の活動も難民参与員まで届いたのかどうかもよく分からないなと疑っていますよ。事務局としての入管が、もうあれは話、決まった話、だからもう難民参与員には届けないというぐらいのことをやっているんじゃないのかと。それが、送還ありきのノルマまで決めて、一体のベルトコンベヤーのようなシステムとして難民不認定をずっと乱発してきたこれまでの難民行政の実態ではないのかと、そう疑われたってしようがないでしょう、次長。
 その疑問に対してあなた方はお答えにならないじゃないですか。そういう議論のまんま衆議院の審査を通し、そして、その時間をそろそろ超えるということでもう質疑を終局しようなんというのは、私はあり得ないと思います。
 この不認定ありきで進んでいくというのが、そもそも一次審査、入管が行う一次審査を正すというのが難民参与員を要にした審査請求の役割のはずですけど、そこが全く果たされていないと。このウガンダの事件の例でも、それから柳瀬さんの発言をめぐる大臣の記者会見発言を撤回する、訂正するという件でも、そこが私は今明らかになりつつあるんじゃないかと思うんですね。
 そこで、憲法の専門家としても頑張っておられる高良発議者にお尋ねをしたいと思うんですが、皆さんのお手元に配付した資料で、難民法裁判官国際協会という団体の冊子の一番冒頭の表紙のところをお渡ししました。
 これは、世界の裁判官や難民認定の審判官が多数参加をしておられる協会で、UNHCRとも共同しながら難民法を浸透させ、世界における調和的な難民認定を目指しているという協会の資料なんですけれども、ここの中に、難民申請及び補完的保護申請の信憑性評価、ごめんなさい、信憑性評価、裁判上の判断基準及び適用基準という冊子の中で、瑕疵のある又は不適切な手続により、自己の主張及び裏付けとなる証拠を提出する公正かつ合理的な機会が申請者に与えられなかった場合、信憑性評価は根本的に誤りのあるものとなる可能性があると記述してありますが、高良さんの御認識はいかがでしょうか。
○委員以外の議員(高良鉄美君) 御質問ありがとうございます。
 申請者が十分な主張、立証の機会を与えられず、難民と認定されるべき人が送還されるということはあってはなりません。申請者が主張、立証を行うということは憲法三十一条の適正手続の保障の点からも重要であり、御指摘の記述は極めて妥当だと思います。
 国が個人の処分を決定する場合には法律に基づいて適正な手続を保障しなければならないという法の原則があります。この適正手続は、手続が適正であるというだけでなく、その内容が公正であるということも要求されます。法の支配の重要な内容であるこの適正手続は、デュー・プロセス・オブ・ローあるいはデュープロセスと言われています。このデューというのは、本来あるべきという意味なんですよ。ですから、残念ながら政府案には、申請者に十分な主張、立証の機会を与えておらず、手続保障の面から極めて問題があると思います。
 議員立法の案では、代理人の同席を認め、それから録音、録画を原則義務付けをするということなど、申請者に十分な主張、立証の機会を制度的に保障し、難民等の適切な保護を図ることとしている点からも、これは適正手続を保障していると言えると思います。
○仁比聡平君 ありがとうございます。