国会質疑 Interpellation

2023年5月11日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・沖縄復帰の日、「5.15メモ」について

・サイバー犯罪に関する条約について

・アメリカ政府による盗み見について

議事録

第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第13号 令和5年5月11日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 五月十五日は沖縄復帰の日です。
 昨年、参議院では本土復帰五十年決議が行われませんでした。その理由は、日米地位協定の改定というこの記述をめぐって与野党が合意できなかったからです。
 沖縄県議会では、与野党が一致して日米地位協定の抜本的改定を盛り込んだ意見書、復帰五十年決議が行われました。沖縄にとっては、与野党関係なく、日米地位協定による県民の負担が大きいという共通認識があるからです。先ほども高木委員よりありましたけれども、この地位協定の問題、主権の問題にも大きく関わっていると。五十年です。地位協定自体はもう七十年近いですね、六十何年です。
 沖縄へのこの地位協定の運用は五月十五日からでした。この五・一五メモというのがあります。それは米軍が沖縄県内で行う演習を日米両政府が合意したもので、非公開とされました。沖縄県民はそのことを一切知らされず、米軍のパラシュート降下訓練が突然始まったことに驚きと衝撃を受けました。県民の命と暮らしに大きく関わる情報が非公開とされたことは、アメリカだけでなく、日本政府に対して大きな不信感を持ちました。
 本日は情報に関わるサイバー条約と日米関係を中心に質問いたしますが、このような形で合意というものが国民に見えない場合には、このようないろんな問題が起こってくるということで、これは先ほどの日米宇宙協力枠組み協定においても、新たに何が出てくるんだと、両政府が決定した協力というのが新たに来るということも指摘しておきたいと思います。
 お配りした配付資料一、今日結構ありますけれども、サイバー犯罪に関する条約の本体の条文です。
 まず、この条約について伺います。
 外国政府が、我が国の政府が使用するコンピューターに使用者の同意なくアクセスをしたり、情報を盗み見たり、非公開通信を傍受したり、ウイルスを埋め込んだりする行為は、この条約、例えば第二条から第七条の対象となるでしょうか。当該外国の国内法令に当該行為の根拠がある場合とない場合とに分けてお答えください。
○政府参考人(市川恵一君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のありました行為とサイバー犯罪に関する条約との関係については、個別具体的に検討する必要があると考えてございます。
 その上で、一般論として申し上げれば、御指摘の行為については、当該外国の国内法令における当該行為の根拠の有無にかかわらず、同条約におけるコンピューターに対し不法にアクセスすること、違法にアクセスすること、コンピューターデータを違法に傍受すること、及びウイルス等のコンピューターの機能に対し重大な妨害を行うために使用されることを意図して製造されたプログラムを頒布することに該当し得ると考えられます。
○高良鉄美君 これは、有無にかかわらず、国内法の有無に、相手国のですね、有無にかかわらず該当するということでした。
 外国企業が、それでは、我が国の公的機関や私人が使用するコンピューターを使用者の同意なくアクセスをしたり、あるいは情報を盗み見たり、非公開通信を傍受したりする行為を目的とするハードやソフトを組み込んだ形で販売などをすることは、条約第六条の規定で犯罪とすべきものになるでしょうか。当該アクセスなどの行為が当該外国企業の所属国で法令上の根拠がある場合とない場合に分けてお答えください。
○政府参考人(市川恵一君) 御指摘の行為とサイバー犯罪に関する条約との関係については、個別具体的に検討する必要があると考えてございます。
 その上で、一般論として申し上げれば、御指摘のような行為については、当該外国企業の所在する国の国内法令における当該行為の根拠の有無にかかわらず、当該ハードウエアやソフトウエアが第二条から第五条までの犯罪を主として行うために設計などされたものであり、かつ、その販売などの行為が当該犯罪を行うために使用されることを意図して故意に行われたと評価できる場合には、第六条の規定で犯罪とすべきものに該当し得ると考えられるということでございます。
○高良鉄美君 今答弁の中で、犯罪を主として行うためにとありました。ということは、基本的には通常の用途の商品として作られているけれども、先ほどの犯罪も行おうと思えばできる機能を潜ませているというものは条約の対象となっていないということでしょうか。
○政府参考人(市川恵一君) お答え申し上げます。
 このサイバー犯罪に関する条約において、第二条から第五条までの規定に従って定められる犯罪を主として行うために設計などされた装置などに限定して、これを製造などする行為も犯罪化している趣旨は、犯罪以外の正当な用途のある装置を製造等した者まで当該装置が結果的に犯罪目的で用いられたことをもって処罰される事態を避けるためでございます。
 したがいまして、御指摘の行為と同条約との関係について個別具体的に検討する必要はあるものの、一般論として、犯罪に用いられ得る機能を有するような装置等であっても、基本的に正当な用途を前提に製造されている製品であれば、これを製造等する行為は同条約第六条の規定で犯罪とすべきものの対象にはならないと考えてございます。
○高良鉄美君 外見的には、基本的にはそういうことだということで、販売の中身ですね、実態というものを少し紹介したいと思います。
 今の議論を聞いて、多くの方々が中国のファーウェイ、ティックトックのことを思い浮かべられたと思います。もちろん、我が国にとっては、こういったところへの警戒が必要だとは思います。
 しかし、例えば、昨年、習近平主席がサウジアラビアを訪問した際、サウジアラビアとファーウェイとの大きな取引が成立したと聞いています。また、一昨日、五月九日の日経には、ティックトックの利用規制について東南アジアは欧米に追従しないと、マレーシアが5Gにファーウェイを採用する可能性が出てきたという記事が載っていました。
 こういった動きを背景として、アメリカやアメリカ企業が、先ほど質問で挙げたような行動を取っていると世界で見られているということを考慮する必要があると思います。
 四月上旬のニューヨーク・タイムズの記事をきっかけに、アメリカ国防総省の機密文書の漏えい事件について様々な報道が出ました。報道をうのみにすべきではないとは思っています。ただ、今日の案件に関連しては、アメリカが同盟国に対して情報の盗み見をしていたとされる件が挙げられます。韓国については、ウクライナへの砲弾の供与について韓国政府内での検討内容が米政府に把握されていたとされます。
 今回の機密文書とされるものでは、日本政府の内部情報がアメリカに盗み見られているという話は出ていないようです。しかし、これまでアメリカが日本政府に対しこのような行為を行っているという話は多々ありました。最も印象に残るのは、二〇一三年のエドワード・スノーデンによる告発です。米国家安全保障局、NSAはPRISMという監視プログラムを持っており、インターネット情報の収集対象はメールやウェブチャットなど多岐にわたっているとのことです。電話回線の傍受も行われており、米国の大手通信会社も協力していると聞いています。
 配付資料二は、産経新聞の記事です。
 二〇一五年には、ウィキリークスがNSAによる日本政府、企業への電話盗聴を暴露しました。経産大臣や日銀総裁ら要人、内閣官房、三菱商事など三十五か所の盗聴対象リストが明らかにされ、当時のバイデン副大統領が安倍首相に陳謝する事態となりました。
 そこで、林大臣にお伺いします。
 日本政府は、アメリカ政府により内部情報を盗み見られたり通信を傍受されている事態が今日も生じているとお考えでしょうか。また、過去に行われていたとお考えでしょうか。お願いします。
○国務大臣(林芳正君) 今委員から御指摘のありました報道につきましては承知をしておりますけれども、SNS上の出所不明の文書についてコメントすることは差し控えたいと思います。
 その上で、一般論として申し上げますと、政府としては、各種の情報収集活動が行われるおそれがあることを念頭に、当該活動に対する危機意識を持つことは大変重要なことであり、情報の保全に万全を期していく、このことについてはこれからもしっかり努力をしてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 更に危機意識を高めてしまいますけれども。
 次に、IT関連企業について見ていきたいと思います。
 中国企業を警戒するのと同様に、西側、特にアメリカ企業に対しても警戒すべきだと思います。アメリカのビッグテックを使うとアメリカ政府に情報が抜き取られるといううわさも多々ありましたが、この点で最も印象に残っているのは先ほどのスノーデン情報です。これによると、インターネット傍受は、マイクロソフト、グーグル、ヤフー、フェイスブック、アップル、AOL、スカイプ、ユーチューブ、パルトーク、こういった大手九社のウェブサービスが協力していました。NSAは、ユーザーの登録情報や電子メール、文書、写真、利用記録、通話などあらゆるメタ情報を収集していたそうです。
 配付資料三を御覧ください。下線を引いた名和利男さんの発言を御覧ください。名和さんは、自衛隊でサイバーセキュリティーを担当された後、民間に転じられた方で、日本のサイバーセキュリティーを勉強すれば必ず名前を目にする方です。
 米国のIT企業は米国の諜報活動に協力しているわけです。ですから、わざわざ後からウイルスを侵入させなくても、米国製コンピューターのハードウエアやOSには出荷時点で米国に都合の良いシステムが既に組み込まれている可能性があるのですというわけです。
 また、最近では、イーロン・マスクがツイッターを買収したことにより、いろんなことが明らかになってまいりました。配付資料四のフォーブスの記事を御覧ください。
 先月、米政府は、利用者のダイレクトメールを含め、ツイッターに完全にアクセスできるようになっていたとイーロン・マスクはFOXニュースのインタビューに答えています。ツイッターについてこのようなことがあるのであれば、ほかのアメリカのビッグテックについても同様と考えるのが自然です。
 そこで、林大臣に伺います。
 アメリカ企業の製品やサービスを使用する場合、中国企業の場合と同様、情報が盗み見られる危険性などを認識しなければならないと思います。御見解をお伺いします。
○国務大臣(林芳正君) 事柄の性格上、詳細につきましてお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、各種の情報収集活動が行われるおそれがあるということを念頭に危機意識を持つこと、これは大変重要なことであるというふうに認識をしております。
○高良鉄美君 危機意識は更に続くと思いますが。
 この漏えい文書に登場した韓国ですが、韓国政府も、この公開された文書のかなりが偽造されたものとするなど、余り問題視しない構えです。しかし、別の議論もあります。
 配付資料の五は、この韓国の革新系のハンギョレ新聞ですが、アメリカのダブルスタンダードや偽善性を批判しています。
 それから、配付資料の六の方は、イランのニュースサイトです。ここで言及されているドイツやデンマークのメディアの原典には当たっておりませんけれども、アメリカのドイツへの諜報、スパイ活動などが紹介されています。
 サイバー犯罪条約ですが、これの本体ですけれども、二〇〇一年十一月の署名開放から二十年以上たっているにもかかわらず、二〇二三年三月現在で締約国は欧米を中心に六十八か国にすぎません。
 一方、国連では、関連する別の条約の策定交渉が進んでいます。二〇一九年十二月、ロシア、中国などが提案した国連決議により、犯罪目的による情報通信機器の使用対策に関する包括的な国際条約を作成する特別委員会が設立され、現在手続が進んでいます。
 なぜ欧米中心の現条約の拡充でなく、ロシア、中国が主導した新条約締結の動きになっているかに関連し、高知大学の准教授塩原俊彦さんが朝日新聞の論座に書かれた記事がありますので、短文をちょっと読み上げたいと思います。
 塩原さんは、次のようにワシントン・ポストの指摘を引用されました。例えば、米国の世界的な監視、ハッキングプログラムに関するスノーデンの暴露とそれに伴う米国の偽善的コストは、インターネットが国家のコントロール外にあるという米国の主張を弱めることになった、オープンなインターネットへの支持が低下していると。その上で、塩原さんは、その結果として、最初に紹介したロシア主導のサイバー犯罪対策条約案が、国連の場で、多数の賛成の下に制定に向けて具体的に動き出すまでになっていることになると述べています。
 本議定書、第二議定書ですか、これについて、我が国は、自由、公正、安全なサイバー空間を確保する条約となるよう交渉するとのことです。
 ちょっとなくなりましたので。
 今回、沖縄の問題から最初に入ったのは、国と国の合意ではあるけれども、国民の生活に関連してくるという問題が、国民に知らないところでいろいろ広がっていくということなんです。ですから、この日米という両方で合意をしているということですけれども、この合意の中でいろいろ国民に分からないまま進んできたというのが紹介をいたしました。
 我が国の、欧米諸国の主張や説得力を持つためには、今日紹介しました米国や米国企業の行為を改める必要があると思います。
 昨年九月十日、プーチン大統領が、四州のロシア編入の際の演説でこう言いました。米国は、今日に至るまで、ドイツ、日本、大韓民国などを占領し、対等な同盟国だと皮肉っている、聞け、どんな同盟なんだろう、これらの国の指導者がスパイされ、国家元首がオフィスだけでなく自宅まで盗聴されていることは全世界が知っている、本当に残念なことだと。それをする人も、奴隷のように黙ってこのやぼったさをのみ込んでいる人も、恥ずかしくなると発言したことを御存じでしょうか。
 中国に対しても米国に対してもひとしくサイバー犯罪は行うなとはっきり言えないようであれば、プーチン大統領の言っている恥ずかしいと言われても仕方がありません。
 私は、これまで本委員会で、米国追従になることの問題点をるる述べてまいりました。今回はサイバーの話をしましたけれども、この日米宇宙協力に関する枠組み協定についても全く同じ懸念を持っています。ですから、この米国との協定には反対であるということを申し上げます。
 そして、この日米の宇宙だけでなくて、どうして全世界の宇宙の問題に入らないのかと。二国間でやるということは、アメリカに引っ張られていくということです。
 そして、さらにこの負担が、先ほども山添議員からもありましたけれども、安保三文書との関連でいえば、もう宇宙とサイバーと電磁波というこの三つが載っている中で、この宇宙はもうもろに当たるんじゃないかという懸念が強いわけです。そして、そうしますと沖縄に負担が来ると、そういったことから私はこの宇宙の協力協定については反対をします。
 そして、やはりそのほかにも懸念があるということを先ほど申し上げたわけですので、この懸念についてはありますけれども、残りの二つについてはまあ賛成をいたします。
 ということで、時間前になりましたけれども、お話を終わりたいと思います。ありがとうございます。