2023年4月28日 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
質問内容
○参考人質疑
我が国の開発協力をめぐる諸課題と開発協力大綱の在り方に関する件
議事録
第211回国会 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 第5号 令和5年4月28日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
今日は何の日でしょうというと、四月二十八日というと、沖縄がちょうど分離をされた講和条約の日ですね、発効した日です。その後、実質米軍統治ですね。その間に人権問題というのが出てきたので、復帰したのは五十年ちょっと前ですね。
そういう間にやったのは、やっぱり沖縄の問題ってどうするんだろうといったとき、日本政府に言ったけれども余り聞かなかったんですね、復帰の問題というのを。そこで、国際機関に訴えたんです、国連の方に。やっぱり国際機関に何か持っていくということは、この国全体のいろんなものが変わっていく可能性があるということを初めて六〇年代に見出したわけですけれども。
沖縄はそういった意味で歴史的にもちょっと古い、いろいろあるんですけれども、この沖縄県事務所が海外に六つぐらいあるんですよ。四十七都道府県でこんなに、韓国とか中国とか、あるいはアメリカ、台湾、そしてシンガポールとか、タイもあったかな、こういうようなのがあって、やっぱりそこの現地の考え方とくっついていくということがとても重要だなというようなのがあってこういう仕組みになっていると思うんですけれども。
中西参考人にお伺いしたいんですけれども、今回、この大綱の中で、NGOとかあるいは市民団体とか、こういうアクターを結構活用するというのがありましたけれども、ODAの中でですね、地方自治体の活用についてもありましたけれども、その辺はどういう中で考えられてお話が来たのかなというのを少しお話しいただけると有り難いです。
○参考人(中西寛君) ありがとうございます。
地方自治体との連携というのも前大綱から重視している柱ですが、引き続き重視しているということで、いろいろな角度での関わりがあると思います。とりわけ、今ちょうどその国際機関のお話がありましたが、外国人研修生の制度についても国際機関からの指摘も受けて変更が検討されているというふうに承知しておりますが、従来、日本から援助、支援のために行くという形が比較的多かったんですけれども、外国から受け入れるということも次第に増えてきて、JICA研修生というような枠組みで増えております。
そういうような仕組みと、それから外国人の方の様々な分野での活動というようなものを結び付けていくということもこれから必要になってくることだろうと思いますし、そういう場合に自治体レベルでの受入れ体制の拡充ということも問題になって、課題になってくるというふうに思います。
やはりJICAがやってきた活動という、まあJICAに限らないですが、日本の開発協力でNGOも含めてやってきた活動というのが点から線、線から面になっていかないといけない。それは、一九八〇年代、七〇年代に日本がやってきたその箱物であるとか教育であるとかそういうものの協力から生み出されてきた若い人材が、今度は日本に日本語の教育なども受けてやってきてくれるという形で日本と当該国や海外をつなぐ人材として育っていくという、そういうサイクルが徐々に見えてきた段階だと思うんですね。
そういう中で、地方自治体についても、この国際協力というのが単に海外のことだけではなくて、自分たちのその自治体レベルでの社会にも意味があることだという形で関わっていっていただければというふうに思っております。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
ちょうど中西参考人の書かれた国際政治構造の長期的変化ということで一番最初に言われて、やっぱり西側主導のグローバリゼーションの深化、拡大というのがまあ二〇〇〇年までぐらいかなということで、やっぱりこの過去を見るというと、今、日本の状況がまだこの二〇〇〇年に入る前の状況をやっているのかなと思うんですね。
だから、このODAの考え方も、今回、大綱であるなら、その後のことを考えて大綱作らなきゃいけないけれども、そこの中で示されようとしているのは、やっぱり二〇〇〇年より前の姿勢の中でやっているんじゃないかと。私は中西参考人のちょうどこれ非常に参考になりまして、やっぱりそこかなというので、その辺りはどうでしょうか、まあちょっと答えにくいかもしれませんが。
○参考人(中西寛君) 御指摘ありがとうございます。
おっしゃられるところ十分に理解しているかどうか分からないですが、私もある程度共有している観点で、先ほどの最初のお話でも申しましたけれども、どうしても日本では、ODAとか開発協力というと、日本が先進国になって途上国を助けるんだという観点が強くて、それはもちろん、その緊急援助とか支援ということはもちろん必要なところも当然あります。しかし、日本が東日本大震災のときに各国から支援を受けた、それもいわゆる先進国だけではなくて途上国からも支援を受けたということがありますように、現代世界では、様々な形の支援、協力というのは、むしろ水平的な、お互いさまという形に現実になってきているんですね。
そういうような観点は、むしろ現場で開発協力に関わっている方はもう実感として持たれていると思うんですが、特に日本社会の中で、まだその開発協力というのは日本の中で支援すべきお金を外に回してしまっていて無駄じゃないかというような考え方があって、もちろんその考え方は一定程度重要で、いろいろな形で評価をしていくべきだと思いますが、むしろ、お互いさまといいますか、この協力は明日の日本にプラスになるんだという観点を政策をつくられる先生方、行政にももっと持ってもらいたいというふうには思っております。
○高良鉄美君 佐藤参考人にお聞きしたいんですけれども、やっぱりこの過去を見てということですね、これ非常に衝撃を受けまして、やっぱりつくっていくときには過去を見ないことには、先にぽっとね、理念とかも、これから先やることをつくっていっちゃいけないなというのがあって、日本のこのODAの過去という形を見たとき、今回それが生かされていくというような形で、先ほどのお話の中ではちょっとまだ見ていないんじゃないかと、ちょっと薄いんじゃないかとか、その辺のことがありましたけど、これもう少しお話あればお願いしたいんですが。
○参考人(佐藤仁君) ありがとうございます。
先ほども申し上げましたけど、やはり、毎年予算を取って何ぼの組織というのは、昔のことを一生懸命やるというよりも、次、予算を取るためにどんなことをしなくちゃいけないんだろうかというふうに頭が行くんだと思うんですね。そういうところに対して、いや、昔の話は役に立ちますよというのは、なかなか、ああ、そうですかといって終わってしまうところだと思います。
だから、これはそういうふうにして、まあ昔の話の出し方ですよね。つまり、それは将来のその日本の開発協力を方向付ける非常に財産なんだという形で日本の系譜、というのも、私、一か月ぐらい前にカンボジアに行ってやっぱり衝撃を受けましたけれども、あらゆる政府機関の立派な建物が中国によって建てられているんですよね。もう中国の援助がばんばんばんばん入っていて、日本ももちろんカンボジアはJICA事務所があってそれなりに援助していますけれども、かつて援助されていた国がもう今や援助国になって、タイも援助国になっていますから。単にその援助する国、される国というよりも、新たに援助に加わる国と日本がどうやって組んでいくのかというような新しい次元の協力関係というのはやっぱり考えていかなくちゃいけないなと思いました。
一点だけ。ちょっと、今の話とちょっと関係するかどうか分からないんですけど、難民の受入れですね。これもODAカウントされるというふうに、ちょっと私、今正確なこと申し上げられないんですけど、ODAカウントされると聞いたので、今後とても重要な課題として取り上げなくてはいけないと思って、ちょっとキーワードだけ、済みません、放り込ませていただきました。済みません。
○高良鉄美君 今、人材の育成の問題も出てきましたけれども、若林参考人の方から、結構、これを見て、夢を持っている若者が行けるかというのは、やっぱりこれまた衝撃を受けまして、これとても大事なことじゃないかなと。やっぱり、ODAの性質として外に向けてということが中心だったんですけれども、やっぱりこの日本の国内の、要するにODAをこれから担っていく人たち、あるいは国際社会に出ていく人たちに対する支援というのは非常に重要だと、やっぱりお聞きしまして思いました。
それと同時に、やっぱりこれまでやってきた外の人材ですね、国外の人材でこういった国際的な支援活動とかを両方でやっていくための予算とか財源というのが非常に必要だということを感じたんですけれども、そこの辺りのこの予算の出し方というんですかね、そこに何か参考になるようなことがあれば、よろしくお願いします。
○参考人(若林秀樹君) ありがとうございます。
社会課題解決をしたいというのは、若い人に限らず年配の私でも根源的な欲求なんですよね。でも、それをどう使っていいかという場がないんですよ。だから、学生はどこへ行ったらいいんだろうかと。NGOの接点も、意外とあるようでないんですよね。で、結局普通に就職をしてそういうことに携わらない、入ったものの余りにも格差があってびっくりして出ていっちゃうというところはありますので、そういう意味では、さっき浜口先生からもありましたけれど、やっぱりNGOの基盤強化というのも大事じゃないかなというふうに思っています。やっぱりNGOもまだまだ未熟なところもありますから、その基盤整備で、ファンドレイジングとかガバナンスとか、いろんなところの能力支援も政府もしていただければ有り難いなというふうに思っています。
その上で、そこからNGOを通じての国際協力が拡大していくんじゃないかなという意味での戦略性を持って、五年、十年単位でやっぱり立てて支援していただくということが重要じゃないか。その中で、夢が持てる、ああ、これだけの給与がもらえる、それで社会課題解決に携われると。その夢が持てるようなやっぱり場をつくっていくという意味では、やっぱりお金も大事ですけど、やっぱり夢というものが大事じゃないかなというふうに思いますし、若い人は若い人でいいんですけれど、年配の方も大事なんですよね。
今、私は、ある大学で六十歳ぐらいの人を教えているんですけど、国際協力論みたいに。みんなやりたいんですよ。どう関わっていいか分からない。これだけの経験と能力がある人を使わないでもったいないなというのが率直なあれなので、やっぱり全体的なバランスを取って、せっかくすばらしい人材がいる日本が活躍できる、夢を持ってできるような環境づくりを是非つくっていただきたいなと思っています。よろしくお願いします。
○高良鉄美君 ありがとうございます。やっぱり夢を持つってすごく大事なことだと思います。
私も、沖縄が復帰して五十年ということですけれども、十八歳のときに日本国憲法が適用されました。基本的人権というのが十八歳からしか適用されなかったんですね。やっぱりもう復帰というのに物すごい夢を持っていました。それをやっぱり日本社会がいろいろやっているんだろうなと思ったら、ちょっと違う社会でした。何か憲法がちょっと邪魔だなという人たちもいるし、何かそこはやっぱりちょっと違うと思いますね。
やっぱり外から見た場合と中から見た場合というのがあって、やっぱり憲法がある意味、外で活動を、国際協力をやるときに、日本の憲法はこうだからと言って、何か協力しやすいというんですかね、そういうような側面があるかなということで、焼家参考人の方にお聞きしたいんですけど。
○参考人(焼家直絵君) ありがとうございます。
国際機関の場合は、どの国という、憲法なり、どの国の色が余りなくて活動していますので、基本的には国連憲章の下で活動をしているという状況です。
ただ、一方で、日本国憲法というのは基本的人権、人権主義というものを掲げていますので、そういったところで国連憲章と共通している部分もありますので、やはり現場に行くと、すごく日本から、日本人というのはやはりすごくいい、中立的で人に優しいというすごくいい意味で見ていただいて、自分が現場にいたときにすごくそういった面では活動しやすいので、そういった面では日本という国の良さというのは現場ではすごく感じています。
○高良鉄美君 この文書を見ると日本の強みとか信頼とかそういうのがよく出てきますけれども、日本の強みは、簡単に言ってどんな、どこ、何なんでしょうかねというのを四名の方に一言ずつ、簡単で。済みません、時間ないと思いますが、よろしくお願いします。
○参考人(中西寛君) ありがとうございます。
やっぱり日本の強みというのは、庶民という、何というか分からないですけど、割と一人一人が道徳的だし、ある種の能力を持っている、そういうところで、外国から評価されるのもそういう日本人の人間性だろうと思いますので、そういう人たちが活躍できる体制というのがこの開発協力でも重要だと思います。
○委員長(三原じゅん子君) 申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○参考人(佐藤仁君) はい。
私は、日本の強みは日本の発展経験だと思います。戦後、僅か平均寿命五十歳満たないぐらいだった国がこうやって豊かになった、これは一体どういうふうにしてそうなったのかという、その紆余曲折それ自体が、ネガティブな公害とかも含めて、その経験自体が私は強みであるし、強みにしなくてはいけないと思っています。
○参考人(若林秀樹君) 私は、やっぱり日本の人間性というんですか、日本人の。やっぱり相手を見て、相手の信頼感をつくりながら国際協力を、プログラムを実施していくというところがベースになっていますので、それがやっぱり現地の信頼感になっているんじゃないか、それを更に生かしていくことが重要かなと思っています。
以上です。
○参考人(焼家直絵君) 私は、やはり日本の和の精神で人を傷つけない、そういった優しさ、ハーモニー、そういったことが非常に海外でも受け入れられるところだと思います。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
終わります。