国会質疑 Interpellation

2023年4月11日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・日米地位協定について

・セーフ・スクール・デクラレーション(学校保護宣言)について

・国際情勢の分析について

議事録

第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第7号 令和5年4月11日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 今日は、地位協定についてまずお聞きしたいと思います。
 私の手元でちょっとお見せしますけれども、沖縄からのメッセージといって、これ、復帰後大体二十五年ぐらいのときにできました。(資料提示)当時、一九九五年の少女レイプ事件がありました、米兵による。これを受けて、地位協定というのがその頃から随分日本のマスコミに出てきたんですけれども、その後まだまだこの地位協定の問題というのがなかなか解明されない、あるいは問題点というのがなかなか進展していかない、改善にですね、そういうのがあります。
 そこで、今日、さらにレイプ事件で、やっぱり刑事手続もそうですけれども、地位協定の中で米軍に特権というような形で免除、あるいはいろんなものがありますけれども、まだまだ見直す部分というのがたくさんあって、今日は、当事者でジェーンさんという方が、二〇〇二年に横須賀でレイプされまして、もう実名を自分で出してこれ訴えなきゃいけないと。しかし地位協定が阻んだというようなこともあるし、さらに、この取調べも、非常に、さっきもありましたけれども、まるで尋問して取調べをしているかのように、加害者に当たるようなすごい尋問の仕方をすると。これは取調べといって、逆に、被害の状況を聞くわけですけど、そういうものになっているということですね。米国まで行って、これも訴えて、その犯人といいますかね、それ捜したと。
 もう大変な努力をして、これ非常に深刻な問題だということをまず申し上げて、この日米地位協定の見直しというのが沖縄県でも決議をされましたけれども、沖縄県以外の地方議会でも決議されていると思いますが、外務省が把握されている決議した都道府県議会及び政令都市の名前と市町村議会の数を教えてください。
○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 二〇二二年度の一年間についてでございますけれども、外務省に接到いたしました日米地位協定見直しに関する地方議会発、それから外務大臣宛ての意見書などは合計三十三件ございます。その内訳に関しましては、都道府県議会は京都府、沖縄県の二件、それから政令指定都市の市議会は横浜市が一件、その他の市町村議会が三十件ございました。
 以上でございます。
○高良鉄美君 一年間ということですけれども、でも三十三件あるということですから、これ実はもうそれ以前の頃から比べるともっともっとあると思うんです。それで、さらに、この政令都市の名前もありましたけれども、県議会、市町村というような形ですが、実は全国自治体もやっているということなんですよ、この決議を。だから、そういった面で、この受け止め方、この地方議会の意見書の受け止めについて、外務大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 在日米軍の安定的駐留、これには地元の御理解が不可欠でございまして、地方自治体からの決議に基づく意見書、これは各地方自治体の住民から選出された議員が議会の意見として決議したものであり、真摯に受け止めております。
 日米地位協定に関しては、政府としてはこれまでも、米側と様々なやり取りを行いながら、事案に応じて効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて一つ一つの具体的な問題に対応してきているところでございます。今後もそのような取組を積み上げていく考えでございます。
○高良鉄美君 是非、法の支配の問題と、それから人権を尊重するということからすると、やっぱり地位協定どうあるべきなのかということを含めて検討いただきたいと思います。
 次に、セーフ・スクール・デクラレーションと、学校保護宣言についてお伺いをします。
 今、ウクライナを始め世界各地で学校や大学が爆撃や砲撃をされて燃やされているというようなことが状況としてあります。そして、子供たちや教師が殺害されたり、あるいは負傷したり、拉致されたり、恣意的に拘禁されたりもしています。教育施設は、武力紛争の当事者によって、特に軍事拠点とか、あるいは兵舎又は拘禁場所というような形で使用されてきました。このような行動は、生徒、学生や教育関係者の仕事、あるいは教育界そのものを危機にさらし、多くの子供たちの教育を受ける権利を拒否し、地域社会から未来を築く礎を奪うものです。
 学校保障宣言は、武力紛争下でも学校や大学は軍事目的で使用されるべきではないということを明示した国際的な指針ですが、現在、百十七か国が学校保護宣言の支持を表明し、今年三月にはオーストラリアも支持表明国となりました。G7の中で支持を表明していないのは、日本のほかには、他国から干渉を嫌う、そして子どもの権利条約や女性差別撤廃条約といった条約そのものを批准していないアメリカのみです。日本はこういった条約を批准していますが。
 二〇二一年の国連安保理事会決議二六〇一は、学校保護宣言に言及しつつ、武力紛争下における学校の保護を国連加盟国に対して求めました。また、児童と武力紛争に関する国連事務総長特別代表は、二〇二二年五月十三日の声明において、全ての国に対し、学校保護宣言を支持し、履行するよう奨励しています。国連子供関係の専門家、例えばこれは、国連子どもの権利委員会や児童と武力紛争に関する国連事務総長特別代表、児童に対する暴力に関する国連事務総長特別代表、ユニセフ、国連薬物犯罪事務所等は、二〇二二年十月六日の共同声明において学校保護宣言への支持を求めています。
 日本は、今年一月から国連安保理の非常任理事国になりました。五月には、日本がホスト国としてG7の開催もします。学校保護宣言は、法的な拘束力のある条約ではなくて、武力紛争下における学校の保護、教育の継続を国際社会全体で守るということを目指す政治宣言であり、子供の権利の観点から、より多くの国がこの宣言への支持を表明することは重要な意義があり、日本は国際社会のリーダーとして支持表明すべきであると考えますが、林大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(林芳正君) 我が国は、全ての紛争当事者による国際人道法を遵守し、国連、G7等の国際的な取組に積極的に貢献しておりまして、武力紛争下においても、紛争当事者は学校、学生の安全と教育を保護すべきであるという安全な学校宣言、学校保護宣言の目的自体、基本的に評価をしております。
 他方で、この宣言が支持するとしております武力紛争下で学校や大学を軍事目的利用から守るためのガイドラインは、既存の国際人道法の義務を超える内容について言及をしておりまして、用語の意味についても不明確な部分があります。例えば、当該ガイドラインでは、武力紛争の当事者は開校中の学校や大学を軍事上の努力を支援するためにいかなる形でも使用してはならないとしておりますが、国際人道法上、かかる義務は一般的に課されていないところでございます。また、自衛隊の部隊運用への影響等も踏まえますと、同ガイドラインには必ずしも我が国の実態にそぐわない内容も含まれていると考えております。
 こうした理由から、我が国として同宣言への支持は表明しないということにしておるところでございます。
○高良鉄美君 これは、安保理、理事会の決議として二六〇一でこういうことを言っているわけですね。で、安保理事会の非常任理事国になっているということからすると、その問題を支持しませんと表明しているわけですね、今の答えだと。だから、賛同はしても支持しないというのはどういうメッセージになるかと。
 G7のときにも、今度のサミットのときにも、結局、アメリカは条約そのものを批准していない、国際社会の中でそういう立場ですけれども、日本は、議長国がそういうことをやるということのメッセージは私もう非常に問題だろうと、もう法の支配や人権に対して後ろ向きだというようなメッセージにならないかということを指摘しまして、次の問題に入りたいと思います、時間ありませんので。
 次、国際情勢の分析について伺います。
 今日は資料を持ってきておりますけれども、三月十七日の本委員会で私は、民主主義陣営の一員として権威主義国家と対峙するんだと熱くなっているように見えるが、世界を少し見渡すだけで、そんなに単純化した物の見方で大丈夫かと心配になるというお話をして、アメリカや台湾などを例に議論をしました。
 また、今月七日のODA・沖北特別委員会では、民主主義対権威主義の構図で世界を見るとして、米国を中心とする側が世界で主流となる見込みをきちんと情勢分析しているのかという議論をしました。この日、大臣から、単一の価値観に収れんすることが困難であると、それから、日本らしい多様性と包摂性を重視する外交という御答弁をいただいたことは、これとても良かったと思います。
 本日も少し、資料にあるのは、日本の主流メディアがなかなか載せないものの、実は大切だと思うような視点を紹介してみます。
 まず、米ドルの基軸通貨としての地位、あるいはペトロダラー体制を突き崩そうという動きについてです。
 米国が大きな対外赤字を続けながら米ドルが価値を失わない大きな理由の一つとして、米ドルが世界に主要な決済通貨であり、特に原油の輸出入の決済が原則米ドルでしか使えないと、行えなかった体制があります。これをペトロダラー体制といったりするわけですけれども、この基軸通貨国は、他国から貿易や借入れで決済通貨を入手しなくても自国で通貨を発行して相手国に渡すだけで決済ができるとても大きな特権を持っています。
 ペトロダラー体制に挑戦する動きは以前からもありましたけれども、最近急速にその動きが大きくなっているように思います。その中でも、中東最大の産油国であるサウジアラビアに関する動きは非常に重要だと思います。
 昨年十月に、バイデン政権の要請をOPECプラスが断って減産したということがあります。また、昨年十二月の習近平主席のサウジアラビア訪問、そして今年三月の中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化。日本の新聞、テレビには余り載りませんけれども、最近も重要な出来事が起こっています。例えばサウジアラビアがアメリカから離れて中国と接近するということは、当然、ペトロダラー、オイルの関係が、そういった体制が根底から覆る可能性も考えてみないといけないと思います。
 また、軍事的な色彩が強い上海協力機構にサウジアラビアが入る意味は重く考えた方がいいと思い、資料を今日は用意したわけです。
 サウジアラビア、オマーン、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーンから成る湾岸協力会議という組織があります。こういった中でもリーダー格のサウジアラビア、そのサウジアラビアがアメリカから離れて、統一しながら中国に付くというような状況になってしまうと。そうすると、日本は、こういった場合に戦争を中国とできるのか、争えるのかという問題とか、石油はどこから持ってくるのかというと、アメリカからではなくて、もちろん中東からでもないことになるわけですね。
 こういったものがあって、今の状況というのは、中国を支持する国がこれから現れてくるんじゃないかと思うと、そこを心配しなきゃいけない面もあるかと思います。特に、サウジアラビアと中国の関係が緊密化したことで、米ドル基軸通貨体制には大きな影響があると思いますけれども、このサウジアラビアの上海協力機構に入る日本への影響をどう分析しているか、ちょっとお伺いをしたいと思います。