国会質疑 Interpellation

2023年4月7日 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

質問内容

・陸上自衛隊所属ヘリコプターのレーダー航跡が消失したことについて

・1942年2月3日に起きた長生炭鉱水没事故について

・国際情勢の分析について

議事録

第211回国会 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 第4号 令和5年4月7日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 今日は大臣お二人いらっしゃいますのでいろいろお聞きしたいと思いますけれども、昨日の夕方の自衛隊ヘリの墜落については、昨日沖縄の方から連絡あって、いち早くこの事件のこと知ったんですけれども、恐らく、先ほど石橋委員からももうあったので、これはもう変わっていないと思いますので、ただ、これは航空事故として、もちろん陸将始め十名の隊員が乗っていたということはやはり安否が気遣われるということなんですけれども、沖縄の方でそういう事故が町の中で起こったらどうするかという問題ですね、それは非常にあるんだということです。
 普天間の沖縄国際大学に墜落したときのヘリ、米軍ヘリですけれども、そのとき沖縄の住民がどう思ったかというと、死者は出たのかということを物すごい心配したんです。米兵ですよ。それで、そうじゃないと思ったら、次は、周りにどういう被害が出たんだと、そういう思いでこの事故というのを見るわけです。
 ですから、是非とも、この事故に遭われたこの隊員の方々ももちろん非常に安否が気遣われるわけですけれども、やっぱりそれが沖縄の地域の中で起こっている、今そういう事故になっているということをまず心配していただきたいと思いますよ、ここ。
 そして、そのヘリは、航路は、以前ちょっと質問したことがありますが、屋良建議書といって、下地島空港を軍事利用させないということが復帰の直前に合意されているわけです、日本政府と。その屋良建議書で使わないようにと、軍事的にはという、この下地島空港のところを通っていくんですよ、この経路を見ますとね。その途中で事故に遭っているんですね。ですから、この宮古島空港というのは、またさらに、この経路の中の真ん中辺りにあるわけです。そういった状況だということをちょっとお話ししておきたいと思います。
 そして、これから、米軍だけでも大きな事故というのが沖縄でよくあり、低空飛行もしていつも怖いわけですけれども、自衛隊機も増えるということになると、そういった恐怖というのは、不安、そういったものはもう住民の中にますます大きくなってしまうということですね。
 そして、それだけじゃなくて、こういう事件、事故等々いろいろあると、これ九・一一のときに、沖縄の観光が一遍に落ちました。修学旅行来なくなったんです。大丈夫さ沖縄といって、大丈夫じゃないですよ。そういった状況になりますと、沖縄の経済まで全部影響してしまうと、修学旅行千二百校ありますから。
 今ようやくこのコロナの問題が少しずつ回復してきている。そして、軽石の問題も沖縄ありました。鳥インフルエンザもありました。いろんなもので今ようやく回復してきて、元の一千万人を目標にしようと、観光客をですね、そういうような状況にあるときに沖縄をこういうような軍事的な要塞化をしていくとどうなるのかということも、一つはゆっくり考えていただきたいと思います。
 これ、歴史はとありましたけれども、沖縄の歴史はそうだったわけですよ。みんな疎開させようと、九州に。その前に止めるべきじゃないかと、やらなくていい戦争をやったんじゃないかというのがこれ学術的な評価です。
 こういったものを、今沖縄で要塞化をどんどん始めているということに対して私は異議を申し上げて質問に入りたいと思います。
 資料の方、この長生炭鉱というのがありますけれども、この水没事故についてお伺いします。
 今年の二月四日、長生炭鉱の水没事故で犠牲となられた方々のこの追悼集会に参加するため、林大臣の地元の山口県宇部市に参りました。
 宇部市の瀬戸内海に面した床波海岸にあったこの長生炭鉱は、当時、全国でも最も危険な作業を伴う場所の一つとされ、植民地支配下で朝鮮半島出身者が多かったことから朝鮮炭鉱とも呼ばれていたということです。これ、今見ますと、海底なんですね。海底にある炭鉱です、坑道の入口は陸地の方からということだと思いますけれども。
 一九四二年二月三日に発生した水没事故で犠牲となった百八十三人のうち、百三十六人は朝鮮の人でした。事故後、この事実は全く知られることがなかったそうです。沖縄の人が五人犠牲になっていたことも、参加して初めて知りました。国会議員としては初めて参加者が私だったということらしいです。
 この水没事故のことを、炭鉱用語で水非常というそうです。井上洋子さんと佐々木明美さんの女性二人が共同代表を務める長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会が、毎年犠牲者の追悼集会を開催しています。
 今年の二月四日に行われた八十一周年の追悼集会には、韓国の御遺族のほか、駐広島韓国総領事、民団山口県本部長、総連山口県本部委員長、そして韓国の若者たちがたくさん参加していました。宇部市からだけでなく、山口県全体からも参加されていましたが、日本政府からは参加がありませんでした。
 市民団体がこの暗い海の底に眠っている犠牲者を追悼する集会を開催していますけれども、本来はこういうものも国がやるべき事業だと思います。というのは、市民団体が集める、あるいは行動するといっても、海の中でそのまま今も遺骨があるわけです。それを回収するとかいうことはもうとても無理な話ですね。
 林大臣は、この水没事故についてどのように認識されていますでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 一九四二年にこの長生炭鉱において発生した事故、これは日本人四十七名、朝鮮半島出身者百三十六名、この計百八十三名の方が犠牲となった痛ましい事故であったというふうに認識をしております。
 もう随分前に亡くなりましたが、私の母方の祖父でございますけれども、後の宇部興産ですが、こういうことの話をよく知っておりまして、子供心にこういうことがあったということはよく聞いておりましたので、改めてこの痛ましい事故であったということを今認識をしておるところでございます。
○高良鉄美君 林大臣のこの事故との関係も今分かりましたけれども、この犠牲者に対して寄り添った姿勢を示すということは、今、日韓関係、大分良くなっていると言う方もありますけれども、更に寄り添った姿勢を示すことは日韓関係の改善にも資すると思います。
 林大臣には是非、現地も訪問されましたでしょうか。是非、そちらに行ってほしいと思いますし、やはり林大臣のお名前も現地の方々よく話しておられました。いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今何か計画が決まっておるわけではございませんが、この資料に出していただいたこのピーヤという、この二本ですね、これは、私も随分子供の頃でございますが、行って、そのときに説明を聞いたのか、後で聞いたのか、ちょっと定かには覚えておりませんが、その場にいた記憶はあるわけでございます。事情が許せば訪問も検討ができればというふうに思っております。
 いずれにしても、今、この尹大統領の訪日、日韓関係正常化に向けた大きな一歩であったと思っておりまして、この一九六五年の国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係、更に発展させていきたいと考えております。
○高良鉄美君 非常に前向きな御意見と、もう恐らくこの今の答弁を聞いてとても喜んでいるんだろうと思います。
 沖縄県民だけじゃなくて、朝鮮半島の出身の方々同様、もちろん日本国民もそうですけれども、やはり先祖を敬って、死者の尊厳を守って丁重に弔うということがありますけれども、沖縄は今、辺野古の埋立工事に、沖縄戦の激戦地区であった南部地区の遺骨が交じった土砂というのを埋立てに使おうという候補地に挙がっていますが、これは、やはり日本全国の兵士ですから、死者を何度も踏みにじるような行為ではないかと、許し難いというようなことを申し上げて、次の質問に入りたいと思います。
 国際関係の、国際情勢の分析について伺います。
 最近、米国など民主主義国が結束をし、権威主義国家、特に中国やロシアに対抗するのだという議論が、政府からも、与野党の政治家からも、世の中でも多くされています。でも、このような構図で世界を見ると、米国を中心とする側が世界で主流となる見込みがどの程度あるのか、世界をきちんと情勢分析した上で議論されているのか、冷静に分析する必要があります。
 お配りした資料、今のこの三枚目ですけれども、赤い色と青い色で資料があります。この構図で見ますと、対米貿易と対中貿易とどちらが多いか、各国ごとに塗り分けてみた図です。世界の圧倒的多数の国が、中国との貿易の方が米国との貿易より多いということです。
 これをまた世界の中でロシアに対する制裁ということについて見ると、要するに対ロ制裁に参加した国としていない国ということで見てみますと、国連では確かにロシアに対する非難というのがありましたけれども、制裁ということに関して、対ロ制裁に参加した国は世界では少数派になっていると思います。
 そして、アジアでは、この対ロ制裁に参加した国は、日本のほかに韓国とシンガポール、国というわけではないでしょうけれども、台湾、それだけです。西アジア、中南米、アフリカはゼロです。制裁を加える国が増える動きはなく、逆にシンガポールでは、最近シンガポールの首相がロシアは敵ではないと発言したと承知しています。制裁解除はしていないようですけれども、これが事実であれば大きく軌道修正をしたということになるかと思います。
 その他、日本のテレビ、新聞、これだけを見ていると分からない大きな動きが最近たくさん出ています。アメリカのドルから脱却しようとする各国の動きやあるいはBRICS拡大の動きなど、激動と言ってもいいと思います。
 我が国の最大の原油輸入先であるサウジアラビアは、先月の二十九日、上海協力機構に参加する決定を閣議で了承しました。上海協力機構への参加は、昨年十二月に中国の習近平国家主席がサウジを訪問した際に協議されたもので、対話パートナーという形の国の地位というのは、サウジはもうそうなってきているわけですけれども、中期的にはもうサウジが加盟をすると、上海協力機構にですね、そういった第一歩になっているんじゃないかなと承知しています。御存じのとおり、上海協力機構には、中国、ロシア、インド、その対抗国とも言われますパキスタンも入って、イランも入っていると。十か国に達しようとしています。
 そういう状態で、日本が国際社会の中でそうなってほしいという願望と現実の情勢は、分析はしっかり分ける必要があると思います。いわゆる民主主義対権威主義との構図で世界を見た場合にどちらが優勢か、これ願望ということではなくて、将来の方針でもなくて、日本の施策をこれからつくる場合に、その前提として政府はどのように今分析をしているのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 大変重要な御指摘だというふうに思っておりますが、世界は本当に多様でございまして、現実問題として、様々な特色を持った、今ちょっと御紹介もいただきましたけれども、国々の力が相対的に増してきておりまして、国際社会はこの単一の価値観、これに収れんすることが困難な時代にあるんだろうと、こういうふうに考えております。
 一方で、このロシアによるウクライナ侵略、これが国際秩序の根幹を揺るがす中で、やはりこの法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、これを維持強化するということの重要性が一層高まっておると考えております。
 国家間の紛争が領域をめぐるものであれ、経済的利益をめぐるものであれ、力ではなくて、やはり法やルールによって解決されると。この秩序によって国際社会に公平性、透明性、予見可能性が保障されるわけでございまして、これは、いろんなこの体制、価値観を超えて、全ての国にとって平和と繁栄の基盤であるというふうに考えております。
 国連におけるこのロシアに対する決議、これは、そうした体制等を超えて百四十一か国が賛成をしております。
 そうしたことも踏まえて、このような国際情勢において、日本らしい多様性と包摂性、これを重視する、相手に応じたきめ細やかな外交を通じて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化、これが大事であるという点を強く訴えていくと。それと同時に、やはり気候変動であるとか、エネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題の解決に積極的に日本は貢献していくと、この姿勢を示していくということが大事であると考えております。
○高良鉄美君 私も、今の御意見もう本当に非常に大事だと思っています。
 そして、この民主主義対権威主義という色分けを、すぱっと切れるわけでもなくて、そこはやっぱり切れ目がないと思うんですね。そして、法の支配についても、どこまで理解しているかということを考えると、全くゼロではなくて、ある程度はあるというところと、それからしっかり歴史的に持っているというところと、近代になってから入ってきたというところと、これは、世界の中でもこのダイバーシティーはあると思うんですね。
 そこをやっぱり、今大臣おっしゃったように、是非見極めながら日本の立場をしっかりと守っていくという形で、日本独自の地位というんでしょうかね、立場をしっかりと見せていく、これが重要だと私も感じております。
 以上、もう時間になりましたので終わりたいと思います。
 ありがとうございました。