国会質疑 Interpellation

2023年3月16日 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

質問内容

・普遍的価値の民主主義について

・普遍的価値の基本的人権について

・三文書の策定に伴う地位協定の見直しについて

議事録

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第211回国会 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 第3号 令和5年3月16日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 先ほど来からありますけれども、是非、人権に関わるような問題については十分国の責任でやるということを、沖縄の振興の予算という問題じゃなくて、そこにやっていただきたいと思います。
 今日は、昨年五月十五日、沖縄県は本土復帰五十年を迎えました。沖縄県議会で、この日米地位協定の抜本的改定という、これを盛り込んだ決議が全会一致で行われたわけです。一方、参議院では、この地位協定の記述をめぐって復帰関係の決議が合意できなくて、本会議決議が見送られました。
 そこで、本日は、この県民が、沖縄県民が長く苦しんできた要因の一つということで、日米地位協定について質問をしたいと思います。
 新たな国家安全保障戦略の冒頭、これは、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値と、こういった記述があるわけです。この普遍的価値という言葉、これは新たな防衛三文書や今後のこの日本の外交におけるキーワードの一つになると言っていいと思います。しかし、日米の両政府がこの普遍的価値を共有しているということで、あるいは本当に大切にしているのかというのが、日米協定をめぐる諸問題を見るとちょっと疑問が出てくるわけですね。
 そこで、普遍的価値のうち、民主主義の観点からまずお伺いしたいと思いますけど、米軍機が米軍施設外で墜落事故を起こした場合を題材に質問したいと思います。
 現状では、墜落した米軍機について日本側は捜査ができません。その根拠は、日米合同委員会の合意議事録において、日本国の当局は、合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行う権利を行使しないとあるからです。権利を行使しないということは、日米両国の議会で承認された条約であるこの日米地位協定では日本側に捜索等を行う権利があるというふうに理解されるわけです。
 条約で日本に認められた権利を、国会に断りなく、日米合同委員会での日本側の高級官僚とそれから在日米軍の高級軍人との議論だけで、あるはずの権利を行使しないとしてしまったわけです。内容について問うと議論が拡散しますので、ここでは手続についてお伺いしています。
 林外務大臣の方にお伺いしますが、国会に断りなくというような形で条約上の権利を行使しないことについて、普遍的価値の重要な一内容である民主主義に照らして適切であったと思われるでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 日米地位協定の二十五条によりましてその設置が規定されております日米合同委員会、これは、同協定の実施に関して日米間の協議を必要とする全ての事項に関して協議を行うための両政府間の機関でございます。
 この合同委員会における日米間の合意、これは日米地位協定の実施に関する合意であることから、そもそも同協定に抵触する内容が合意されるということは想定をされず、また我が国の国内法に抵触する内容の合意を行うことは想定されないところでございます。
 まさに、そういった手続、政府としては、こういった取組を通じて引き続き丁寧に国民の皆様に説明するように努めてまいります。
○高良鉄美君 想定されないとすると、憲法違反の法律なんというのは想定されないわけです。そういうことを考えますと、この合同委員会の中での議論というのは何か問題はないのかということなんですね。
 今のは、手続的に言うと、やはり国会で批准をした地位協定ですよね。そこでは権利行使があると言っているけれども、この2プラス2あるいは日米合同委員会のようなところでは、これはちょっと違った解釈というんですか、行使できるものを行使しないというようなことがあるわけなので、是非この民主主義の問題について普遍的価値としてしっかり捉えてほしいと思います。
 次です。基本的人権について、これも普遍的価値ということですから、先ほどからずっと出ていますこのPFASの問題についてお伺いします。
 米軍基地に由来すると疑われるこのPFAS汚染ですけれども、沖縄や首都圏などにおいて発生していますが、日本側による米軍基地への立入りが米軍の同意がない限りできないこともあって、汚染の除去以前に原因の特定もなかなかできていない状況です。先ほど来あります。米軍による意図的な排出もありました。
 これ、資料御覧ください。二〇二一年八月二十六日、米軍は、普天間基地に保管されているPFASを含む汚染水約六万四千リットルを、日本政府や地元自治体の同意なく一方的に下水道に放出しました。当時、日米両政府はこの汚染水の処理方法について協議をしている最中、継続中です。地元自治体は、この処理は焼却処分をということを要望していたわけです。そんな中での放出でした。
 また、沖縄タイムスが米国の情報公開法を通じて入手した報告書によると、二〇一八年五月から二〇二一年一月の間に米軍嘉手納基地で泡消火剤に関する九件の事故があり、そのうち八件がPFASに係る事故でした。いずれも日本側には報告されていません。これ、四枚目ぐらいに書かれていると思います。
 さらに、PFASに限らないのですが、米軍普天間飛行場の環境事故対処ハンドブックには、緊急でない事故か政治的に注意を要する事故は日本側に通報しないようにということが記載されていました。これも資料にあります。
 ちなみに、ドイツでは米軍の対応は随分違うんです。米陸軍が使用するカッターバッハ飛行場で高濃度のPFOS汚染が問題となって、二〇一九年からアメリカ陸軍が調査を開始し、二〇二〇年には浄化作業を開始したようです。いずれも米側の費用負担です。
 このPFASに汚染された地域に住んでいる、あるいはPFASで体が汚染されてしまった日本国民、あるいは、逆に言うとドイツのような、何で主権を行使しないんだと、そういう立場になってちょっと考えてみていただきたいと思います。
 今述べたような対応をする米国政府、そして有効な手を打とうとしない日本政府が基本的人権という普遍的価値について説得力あるような説明をしているかどうか、伺いたいと思います。林大臣、お願いします。
○国務大臣(林芳正君) PFOS等をめぐる問題につきましては、先ほど来御議論をいただいておりますが、この地元住民の皆様が大きな不安を抱えていると承知をしておりまして、関係省庁とも連携しながら、政府全体としてこの問題に真剣に取り組んでおるところでございます。
 現在、米国内においてもPFOS等の規制に関して議論が行われていると承知しておりまして、また、日本国内においても関係省庁において対応の在り方を検討している最中と承知をしております。
 外務省としても、これまで米国環境保護庁や米国防省を含めて様々なレベルで米側とやり取りをしてきておりまして、本年一月に行われました日米2プラス2においても、私から環境に係る協力強化、これを要請し、日米間で環境に係る協力を強化することを確認したところでございます。
 日米間では、環境に関する協力の枠組みとして環境補足協定、そして日米合同委員会合意が存在しておりまして、在日米軍はこれまでもPFOS等の漏出が起こった際には日米間の合意に従って日本側に通報を行ってきておりまして、地元からの要望がある場合には、環境補足協定に基づき、地方自治体とともに米軍施設・区域内への立入り等を実施してきております。
 日米は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった基本的価値を擁護してきております。PFOS等の問題に対応する際にも、日米で連携して取り組んでまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 やっぱり、日本の国是もそうでしょうけれども、アメリカの民主主義、人権、自由と、そういったことをきちんと日本側からも訴えて、この人権の問題として、その環境の問題、ひいてはもう人権の問題ということで捉えていただきたいと思います。
 最後に、新たなこの三文書の策定に伴って、政府は防衛力の抜本的強化を行うとしています。防衛費は大幅に増額され、反撃能力も保有します。反撃能力用のアセットは相手国の攻撃目標になりますが、この反撃能力の行使に活用されるスタンドオフ防衛能力について、国家防衛戦略の十七ページで我が国の様々な地点からというふうに述べてあるんですね。そうすれば、相手国の攻撃目標になるのは南西諸島に限らず、様々な本土の場所も含むことになります。日米安全保障体制の中での日本の役割が増えてしまう、まあ増えていくわけですよね、もう今の状況で。かつ、本土を含む日本の領域が戦場になるリスクも大幅に増える。
 こういうことを見ますと負担が増えるわけで、米側に、これを問題として、日米地位協定による日本の負担を減らすように求めるこれいいチャンスじゃないですか。ここで言わないでいつ言うんですかと、今でしょ、ということなんですよ。
 しかし、安保三文書の改定を契機に、例えば今年の2プラス2ですね、一月にあった、あるいはもう日米首脳会談で、この日米地位協定の改定を提起したという話は聞きません。安保三文書の改定を契機に米側にこの地位協定改定を提起することを検討したことがなかったのかと、この際、林大臣に伺います。
○国務大臣(林芳正君) この外交上のやり取りの詳細は差し控えたいと思いますが、政府としては、これまでも米側と様々なやり取りを行いながら、事案に応じて効果的に、かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて一つ一つ具体的な問題に対応してきておるところでございます。
○高良鉄美君 この日本側の姿勢というのが非常に問われるのは何かというと、主権なんですよね。主権というのは、英語ではもちろんソブリンですよね、そしてドイツ語でもホーハイトですよね、高権。最も国の中で高い権利、権限の問題ですよ、主権というのは。このような考えでアメリカ側と交渉しているのかという問題です。
 先ほどもありました、沖縄県民以外でももちろん今PFOSの問題あります。そこをやっぱり人権の問題として日本がどう言うかということです。それはもう毎回、沖縄の場合の、事件、事故起こる場合に、言ったんですかと言うと、はい、伝えましたと、で、今問合せ中ですと言うんですよ。
 そうではなくて、やっぱりこの普遍的価値というのは世界中が持っているというふうに思うんですね。そういう普遍的価値を共有する、ほとんど、何ですか、G7の先進国でもそうでしょうし、そういう中でいいますと、この普遍的価値として主権というのは絶対譲れない権利というのが、これはヨーロッパでの常識なんですよ。だからドイツではああやって調べる、そして文句を言い、自分の費用でやれと言って米側がやるわけです。
 その主権というのをしっかり持っていただきたいと思いますので、今後、是非、この主権と独立を大切にしているんであれば、この機会に、この地位協定というのは一九六〇年ですよね。その前の名前からいうと、一九五二年で行政協定という名前ですから、今何十年たっているんだと。変わっていないんですよ。
 それをやっぱりしっかりやっていただきたいなと私は思いまして、是非とも、憲法の中でも、他国と対等に立とうとすると、主権を大事にして、ということがありますので、これをしっかり守っていただけるようお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。