国会質疑 Interpellation

2022年11月1日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・法の支配について

・米陸軍MDTFの日本展開の可能性について

議事録

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第210回国会 参議院 外交防衛委員会 第3号 令和4年11月1日

○高良鉄美君 本日最後になりました質疑ですね、沖縄の風の高良鉄美です。

 今国会からこの外交防衛委員会で伊波洋一議員とともに質問に立ちますので、阿達委員長を始め委員の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、また両大臣を始め、いろいろお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  私は三十五年間、大学で憲法や行政法を教えてまいりましたけれども、三年前に退官をして沖縄県の選挙区から初当選しました。三年間所属してこちらにいましたのは法務委員会です。法務委員会では、人権、民主主義、とりわけ法の支配を基軸に質問をしてまいりました。林外務大臣は所信で法の支配を三度も用いられておられるので、大変心強く、また期待をしているところです。

 さて、今夏の参議院選挙の沖縄選挙区、そこでの争点は辺野古新基地建設の是非でした。与党として辺野古新基地建設に初めて賛成を掲げた候補に対して、反対を掲げた伊波洋一議員が勝利し、再選を果たしました。続く九月の沖縄県知事選でも、普天間基地の危険性除去、辺野古新基地建設反対を訴えた玉城デニー知事が圧勝しました。

 沖縄県民の辺野古新基地建設反対の民意は、県民投票を始め、参議院選挙、県知事選挙で繰り返し明確に示してきました。しかし、政府は民意を踏みにじり、建設を強行しています。政府の傍若無人ぶりがひどいということで憤りを禁じ得ません。このような政府の力による一方的な現状変更の試みは、沖縄でも、民意を踏みにじる形であれば、これはもう許さないという強い決意を持って質問をしてまいります。

 先ほども触れましたけれども、林大臣は今回の所信で法の支配に言及されました。また、今年一月十七日の参議院本会議の外交演説でも、国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や国際秩序が厳しい挑戦にさらされているとした上で、先人たちの努力により世界から得た日本への信頼を基礎に、普遍的価値を守り抜く覚悟だと述べられました。

 林大臣が守り抜くとおっしゃった普遍的な価値、とりわけ法の支配はとても重要であると思いますので、この法の支配についての林大臣、そして浜田大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) 岸田内閣では、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視し、これを守り抜くことを外交、安全保障の柱の一つに掲げております。

 このうち、今お尋ねのございました法の支配とは、一般に、全ての権力に対する法の優越を認める考え方でございます。これは、国内において人権の保障と恣意的な権力の抑制を確保する公正で公平な社会に不可欠な基礎であり、これまで政府として、憲法の最高法規性の観念や個人の人権、法の内容や手続の公正を要求する適正手続などが法の支配の内容として重要である旨答弁をしてきておると承知をしております。

 同時に、国際社会において法の支配は友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤となっておりまして、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することによりまして、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくと、このことが重要であると考えております。

 こうした考え方の下で、我が国は、法の支配の強化を含む国際社会の取組に積極的に参加し、各国と緊密に連携してきておるところでございます。

○国務大臣(浜田靖一君) 法の支配とは、一般に、人権の保障と恣意的な権力の抑制とを趣旨として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であります。

 その上で、これまで政府としては、憲法の最高法規性の観念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容や手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重等が法の支配の内容として重要である旨答弁をしてきていると承知をしております。

 このような法の支配の考え方を前提として、防衛省・自衛隊としては、最高法規である憲法を始めとする法令に基づき、我が国を防衛するという任務を遂行してきております。

 また、法の支配に基づく秩序を国際社会に貫徹させることは、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保するために重要であると考えており、このような認識の下、例えば法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋ビジョンの下、防衛協力・交流のための取組などを推進してまいります。

○高良鉄美君 ありがとうございました。

 今、法の支配の内容ということでお話を伺いましたけれども、もちろんこの国際社会の中でこの法の支配が共有をされるべき基本概念であって、そして、日本の国内法制はもちろんのこと、国際関係、外交、防衛においても根幹に据えるべき概念です。

 私は、この法の支配ということについて今ちょうどお聞きをしたわけですけれども、これが果たして国内の全ての地域で貫徹されているかという問題なんですね、基本的に今日お伺いしたいのは。この国民の自由、人権を擁護するということを目的としているのは、この法で結局権力を拘束するということがありますので、沖縄県の、先ほどちょっと辺野古のお話をしましたけれども、沖縄県には法の支配が貫徹されているだろうかということで、委員の皆様もお聞きいただきたいと思います、今日は、話というか、沖縄の事情を知っていただきたいというような形になってくるかと思いますけれども。

 法の支配が貫徹されないで、むしろ、この反対概念というんですかね、対峙概念である人の支配でまかり通っているんじゃないかと、沖縄の場合ですね。これがちょっと懸念されることなんです。

 そして、適正手続というのも法の支配の内容だということで先ほどおっしゃいました。この適正手続というのはデュープロセスとよく言うわけですから、デューというのは、もうあるべき姿なんですよ、あるべき手続ということなんです。だから、途中で省いたりとかいろいろなことをしちゃいけないということがあって、この密約というのはもちろんこの典型的なもので駄目なわけですよね。銃剣とブルドーザーというのが復帰前ありましたけれども、これも全くそういった法の支配から外れるようなものですね。

 適正手続どころか、もう県民の意思に反するような核の持込みや、あるいは土地の強制接収が行われてきました。復帰後も法の支配の内容である憲法の最高法規性もないがしろにされて、憲法より沖縄では上位に扱われてきたのが日米安保と地位協定です。

 今年五月十五日、沖縄県は本土復帰五十年を迎えました。沖縄県議会では、日米地位協定の抜本的な見直しと、これを盛り込んだ決議が全会一致で行われました。ところが、参議院では、この地位協定の抜本的でもない、地位協定の見直しというこの文言を盛り込むことに対して与党が反対をして、この復帰の決議が見送られました。五十年という、もう今年しかありません。

 五十年前に当時の琉球政府が作成した復帰措置に関する建議書、いわゆる屋良建議書には、基地のない平和な沖縄としての復帰を願った県民の心情が記されていますが、基地はなくなるどころかますます強化され、県民は基地に起因する事件、事故の危険にさらされ続けています。

 政府が国内外で主張する法の支配は、御答弁をいただいた法の支配の内容の中身がきちんと機能していない部分があるんじゃないかということですね。適正手続も踏まずに強行されているような形で、今裁判になっています辺野古新基地建設、銃剣とブルドーザーと言われていたものから補助金とブルドーザーに形を変えた人の支配であると再度強調しておきたいと思います。

 外務大臣、防衛大臣の所信を聞いていると、確かに、人権や適正手続とおっしゃいましたけれども、確かにそれが貫徹されているだろうかと。沖縄のことを考えても、あるいは対外的なことを考えても、そうなっているだろうかということで少し気になることがよくあります。

 沖縄は、復帰前は主権在民ではなくて主権在米でした。アメリカが何でも決めると。今、日本はそのような部分がないのかということなんです。そうすると、主権在米というのは、これは主権の問題として考えるよりも、やはり法原理をきちんと理解しているかという問題になってくるんだと思います。  そこで、これを、ちょっと安全保障の面について質問したいと思いますけれども、在日米軍の再編に関する計画の主要部分は、米国が対テロ戦争を行っていた時代に作られたものです。二〇〇六年五月の再編の実施のためのロードマップ、それから二〇一二年四月の2プラス2の共同発表、いずれもそうだと思います。

 ただ、その後、米国の戦略は対テロ戦争から中国などとの大国間競争にシフトしました。これ、現在そうですね。中国をにらんだ新たな作戦構想も生まれ、海兵隊でいえば、二〇二〇年三月に、フォースデザイン二〇三〇ですかね、これは二〇三〇というのが発表され、遠征前方基地作戦、EABOといった構想で新たな時代の戦力構成も始まっています。この遠征前方基地作戦というのは、要約すれば、分散された小規模の部隊が、第一列島線上の島々を機動的に移動しながら、地対艦ミサイルや地対空ミサイルを中国軍に対し撃つというような構想と理解しております。

 ここで疑問に思うのが、米国の戦略あるいは米軍の作戦構想の変化が、在日米軍の再編、特に沖縄の海兵隊の人員などに影響を与えないかということです。

 一方、米陸軍には、マルチドメイン・タスクフォース、MDTFという部隊が創設されております。これも同じように、第一列島線上に機動的に展開して中国軍に対しミサイルを撃つ作戦構想を持っているようです。このMDTFの三つ目の部隊、今二つ部隊があるようですけれども、米本土、ヨーロッパですかね、この三つ目が立ち上がればアジアに配置されることも選択肢として議論の俎上にあると米太平洋軍司令官が答えたとの報道もありました。

 また、今年、奄美などで行われた陸上自衛隊と米陸軍との共同訓練、オリエント・シールド22では、米陸軍のHIMARSが米本土から南西諸島に初めて展開しました。このMDTFが恒久的配備なのか、あるいは外国からの一時的な展開なのかはさておきまして、日本に配備されるのは、日本にも配備されるのかも重要な点です。  吉田陸幕長は、今年四月のアメリカ訪問の際に、第一軍団司令部でインド太平洋地域の日米陸軍種間の今後の連携について意見交換を行い、第一MDTFの視察もしており、このMDTFの日本展開について話が出たと考えるのが自然です。

 そこで、浜田大臣にお尋ねをします。ちょっと長くなりましたけれども。

 米軍のこの新たな作戦構想に合わせ、在日米軍の再編計画に変更があるという話は今のところ聞いておりません。米軍再編の計画、特に沖縄の海兵隊に関連する部分に変更はないということでよいのか、あるいは変更がないという点は日本側から米側に確認をしたのか、それとも米側から変更の話がないというだけなのかです。

 また、このMDTFの日本展開の可能性、そして、可能性が仮にあるとすればその時期について、現時点での情報を明らかにしていただきますようお願いします。

○政府参考人(安藤敦史君) お答え申し上げます。

 日米間では、本年一月の日米2プラス2でも確認したように、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化するため、日米両国の戦略、体制及び能力、新興技術や共同訓練といった非常に幅広い分野における協力について平素から緊密に意見交換を行っております。

 その上で、米陸軍につきましては、先生が今御指摘がございましたとおり、陸上領域に限らず全ての領域において作戦を実施するためのマルチドメイン作戦構想を運用構想として掲げているものと承知をしているところでございます。また、この構想を前方で実施する部隊といたしまして、二〇一七年には米本土に、二〇二一年にはドイツにマルチドメインタスクフォース、MDTFを配備し、また、本年九月には三つ目のMDTFをハワイに配備することを発表したと承知をしております。今申し上げました以上の内容につきましては、米政府としては何ら決定していないものと承知をしております。

 防衛省といたしましては、日米で緊密に協力しながら日米間で合意した在日米軍再編計画を着実に実施していく考えに変わりはございません。

○高良鉄美君 ありがとうございました。未決定というようなことで理解をしました、現時点でですね。  先ほど述べましたように、アメリカの戦略は対テロ戦争から中国などとの大国間競争にシフトしておりますが、日本が大国間競争に巻き込まれないためにもアジアの国々との連携は重要であると思います。まあ、アジアの国々といってもいろいろあるわけですけれども。

 参議院で行われた北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する決議案では、緊密に連携する対象国を米国、韓国等としており、過去の決議にあった米韓中ロと連携して外交努力を展開すべきというようなものでありましたけれども、今回、ウクライナ情勢からロシアが省かれたというのだけじゃなくて、中国との連携にも言及がありませんでした。これは日中関係の後退、あるいは今後の日朝関係改善にもマイナスの影響を及ぼすのではないかと懸念をしております。

 朝鮮民主主義人民共和国の弾道ミサイル発射についての日本政府の対応についてお伺いをします。  日本政府はJアラートを五年ぶりに発令し、通過した後にもかかわらず、報道各社は番組を中断して速報をしており、各地でサイレンが鳴り、避難を呼びかけるアナウンスが繰り返されました。これは国会、永田町周辺でもそうだったと思いますけれども、かなり物々しい形で、もう通り過ぎた後でしたけれども、そういう形でありました。  浜田防衛大臣は所信で、青森県上空を通過させる形で弾道ミサイルを発射しましたとして、このような行為は断じて許されませんと、続けて、国民の生命、財産及び我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、冷静かつ毅然と対応してまいりますと述べられました。しかし、この状況を見ますと、冷静どころか、ちょっと不安をあおった形で国民に混乱をさせているような感じがいたします。これで本当の危機に対応できるのかと私も言わざるを得ませんし、これは与党内でもそういうような声が聞こえたと聞いております。

 報道によると、米韓は九月二十五日から二十九日まで日本海で共同訓練を実施し、アメリカの原子力空母ロナルド・レーガンも投入して、日米韓三か国が日本海で五年ぶりに共同訓練を行いました。北朝鮮はこれに抗議をしていましたから、北朝鮮側の対抗措置は織り込み済みだったのではないでしょうか。米韓両軍は、その報復として、地対地ミサイルを四発日本海に向けて発射しています。

 ところが、韓国軍の弾道ミサイル一発が自国の基地内で落下し、爆音に驚いた住民が通報する騒ぎとなりました。高度一千キロの宇宙空間から落下することはほぼないというのが防衛省のお答えでした。そもそも政府が領空を百キロ前後と定義していますが、領空を通過したかのような危機感だったと言わざるを得ません。  沖縄では、二〇〇四年八月、米海兵隊の大型ヘリCH46が沖縄国際大学に墜落し、炎上。そして、二〇一六年十二月には、今日朝もありましたように、オスプレイが名護市の集落の近くに墜落をしました。二〇一七年には、大型輸送ヘリから普天間第二小学校に窓枠が落下し、その後も、金属の水筒や部品が度々落下しています。それから、復帰前には、つり下げられたトレーラーが落下し、小学校五年生の少女が下敷きとなり死亡するという痛ましい事件がありましたけれども、現在でも民間地上空でオスプレイが物資をつり下げて飛行を行っており、県民は危険と隣り合わせの生活を強いられています。

 この沖縄の上空、まあ沖縄も領土でしょうから、この沖縄の領空です。でも、Jアラートはもちろん鳴っていません。沖縄にとっての脅威は北朝鮮というより米海兵隊であり、沖縄県民の生命、財産を軽視する沖縄防衛局、防衛省もその一部を担っていると言わざるを得ません。

 沖縄の高速道路を走っていると、かつて、流弾に注意と、流れ弾に注意という垂れ幕がありました。でも、どうやって注意すればいいのかと。注意の仕方が分からないわけです、もちろん。

 前回のこの質疑で伊波議員が取り上げた、米海兵隊のキャンプ・ハンセンに隣接する沖縄県金武町の民家の窓ガラスが割れ、銃弾が見付かったことについても、検証もしないうちに、早々に沖縄防衛局は、さびのようなものがあると今回の実弾演習とは関係がないかのようなコメントをして、事実を矮小化、隠蔽しようとしました。沖縄防衛局の対応には憤りを覚えます。これは伊波議員の質問の中で、そこに行ってもいない、行ってもいないというか、直接見ていないということでしたのでね。

 沖縄県警によると、復帰後、これ、一九七二年から二〇二〇年で、米軍関係者の検挙件数は六千六十八件、うち殺人、強盗、放火、強姦の凶悪事件は五百八十二件発生しています。SDGsの誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会を目指す、そうされていると思いますけれども、沖縄県民も日本国民として取り残さないで、同じように扱うということが重要だと思います。

 不安をあおるような政府の対応が、このアラートの場合にですね、在日朝鮮人への差別を助長しているということにも警鐘を鳴らさなければなりません。

 Jアラート発令直後、インターネット上に朝鮮人や朝鮮学校を標的とする差別書き込みが増えています。日本から出ていけ、あるいは強制送還しろといった排斥コメントだけではなく、朝鮮人を殺せ、迫害しろといった危害の扇動をするようなコメントもあります。また、朝鮮学校を強制閉鎖すべき、あるいは潰せといった朝鮮学校を対象とした暴力の扇動が数多く報告されています。

 ヘイトスピーチ解消法はできましたが、今回のように不安があおられるとヘイトスピーチは増幅してしまいます。人種差別撤廃条約四条は、人種差別的な扇動を禁止し、そのような扇動の犯罪化を締約国に義務付けておりますので、締約国としての責任もしっかり果たしていただきたいと思います。

 さて、この北朝鮮のミサイルの問題ですけれども、林大臣は、北朝鮮との間で、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します、最重要課題である拉致問題については、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆる機会を逃すことなく全力で取り組みますと述べられました。

 安倍政権になってから、拉致問題は政府の最重要課題であると繰り返し強調されてきました。国の行政の最高権力に長期間、最長期間在任していた安倍総理でさえ解決が難しかったということをどのように解決されるおつもりなのか、大臣の方にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) この北朝鮮による拉致が発生して長い年月がたった今も、二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していない、このことは痛恨の極みでございます。解決を強く求める御家族の切迫感を共有をいたします。

 拉致問題の解決に向けましては、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、我が国自身が主体的に取り組むことが重要だと考えます。

 これまで、岸田総理自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意を述べてきております。我が国としては、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す考えであります。

 御家族も御高齢となる中で、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するために、全力で果断に取り組んでまいる覚悟でございます。

○高良鉄美君 ありがとうございます。是非このような取組をもっと進めていただきたいと思います。今ちょうど言及されました日朝平壌宣言、これもう二十周年ということでございますし、それから米国等関係国と一緒にするだけじゃなくて、日本も主体的に動くということでしたので、是非ともよろしくお願いしたいと思います。

 ただ、私もちょっと心配しているのは、日本の国内政策の問題も心配しておりまして、北朝鮮との対話がうまくいくのかというキーワードというんでしょうかね、高等学校の授業料無償化のときに朝鮮学校が排除されました。それから、幼保無償化、幼稚園、保育園ですね、それから朝鮮の幼稚園を排除した形がありました。このような日本政府の対応について北朝鮮側の言葉では、卑劣な行為は一度や二度ではなかったが、今回のように幼児たちの童心まで乱暴に傷つけた極悪な妄動はかつてなかったとした上で、安倍政権は、当時ですね、安倍政権は無条件対話を口癖のように唱えても、対朝鮮敵視政策を追求し続ける限り、我が共和国の敷居を絶対にまたげないということを肝に銘じ、分別のある行動を取るべきであると、在日朝鮮人への差別解消が対話の前提条件になっていることを明らかにしています。  最重要課題というのであれば、対話の障害を取り除いて、先ほどもありましたけれども、直接対話を行うべきだと思います。そうでなければ、最重要どころか軽視しているように、そういうふうに捉えられても仕方がないと思います。

 これについても林大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) 人種や国籍などによって差別が行われるということはいかなる社会にあっても許容されることではなく、我が国としては、これまで外国人等に対する偏見や差別の解消に向けてしっかりと取り組んできているところでございます。

 その上で申し上げますと、我が国において、在日朝鮮人に対する差別を許容する国の政策や規則は存在せず、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組を進めてきております。

 いずれにいたしましても、拉致問題の解決に向けては、米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、先ほども申し上げましたように、我が国自身が主体的に取り組むことが重要でございます。この日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を目指す考え、変わらないところでございます。

○高良鉄美君 ありがとうございます。このヘイトスピーチも人権の問題、それから拉致の問題も非常に極めて人権の問題だと思いますので、両国でいろいろ今おっしゃったような形で対話を始め、そしてまた解決に向けて取り組んでいただきたいと思います。

 朝鮮被爆者問題について少し質問をしたいと思います。

 この問題については、昨年三月のODA特別委員会で私の方が質問したことですけれども、当時の茂木外務大臣は、「被爆者が放射能による健康被害を受けたという点で、重要な人道上の問題であると考えております。

 政府としては、引き続き、本件が重要な人道上の問題であることを踏まえ、被爆者援護法、」、「厚労省を始め関係省庁との間で緊密に連携しながら適切に対応していきたい」と大変前向きに答弁されました。

 しかし、残念ながら、これ、その後は全く進展しておりません。被爆者に残された時間は僅かで、もう一日も早い救済が必要です。誰一人取り残さないどころか、誰一人救済できなかったとならないように再度約束を果たしていただきたいと思いますが、林大臣の御決意をお伺いします。

○国務大臣(林芳正君) 御指摘の点に関しましては、この被爆者が放射能による健康被害を受けたという点で、重要な人道上の問題であると考えております。

 政府としては、引き続き、本件が重要な人道上の問題であることを踏まえ、今御指摘がありましたように、関係省庁間で緊密に連携しながら適切に対応してまいる考えでございます。

○高良鉄美君 ありがとうございます。非常に重要な人道上の問題ということで、よろしくお願いしたいと思います。

 普遍的な価値である人権の擁護のため、深刻な人権侵害に対してしっかり声を上げると林大臣は述べられました。国際的に使われている人権と日本政府が捉えている人権とでは、共通の普遍的価値なのだろうかと少し疑問を抱かれるところもあります。国連の人権機関から日本における様々な人権侵害が厳しく指摘されているからです。

 例えば、死刑については、国連加盟百九十三か国のうち、死刑制度がない国は百十二か国、十年以上執行していない国は五十か国に上っています。また、国連自由権規約委員会は一九九三年、一九九八年、二〇〇八年、二〇一四年に、そしてまた拷問禁止委員会からは二〇〇七年と二〇一三年に勧告を受けています。

 死刑存置の理由に挙げられているのが世論の動向です。しかし、人権政策を世論の多寡に委ね続け、見直さないこと自体が問題であり、共通の普遍的価値とは相入れないかと思います。

 また、婚姻の際に法律で同姓を強制している国は日本以外にはありません。国連女性差別撤廃委員会は、二〇〇三年から民法改正を行うよう勧告し、二〇〇九年からはフォローアップの対象とし、二〇一六年にも法改正をしない理由に世論を挙げていることを厳しく指摘しました。

 女性差別撤廃条約選択議定書についても、この加盟百八十九か国のうち、現在百十五か国が選択議定書に批准をしています。日本は現在まで批准をしておりません。

 このほか、難民申請をしている外国籍の方の処遇、外国籍への差別など、人権の面からことごとく厳しい勧告を受けており、日本の人権政策が問われているという認識が足りないのではないかと危惧しております。

 国連人権機関からの日本の人権政策について改善勧告を受け続けていることについて、林大臣の認識をお伺いして、終わりたいと思います。よろしくお願いします。

○国務大臣(林芳正君) 我が国が締結をしております国際人権諸条約の各条約に基づき設置された委員会、これは我が国が定期的に提出する政府報告に対する検討を行っておられ、その結果として公表される総括所見の中でこれまで、今委員からもございましたように、様々な勧告があったということは承知をしております。

 こうした勧告の内容については、我が国に対して法的拘束力を有するものではございませんけれども、関係省庁にもしかるべく情報を共有した上で、関係省庁において十分に検討することとしております。

 我が国として締結している国際人権諸条約、これを誠実に遵守してまいりたいと考えております。

○高良鉄美君 ありがとうございます。これで終わりたいと思います。