2022年3月16日 参議院 法務委員会
質問内容
・技能実習実施者による実習生に対する暴行等の人権侵害について
・選択的夫婦別姓について
議事録
第208回国会 参議院 法務委員会 第3号 令和4年3月16日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
前回の委員会で、死刑執行について、適正手続や法の支配の観点から問題があるのではないかと質問をしました。古川大臣は、執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるとしつつ、法治国家においては確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないと答弁されました。
今回の前に執行されたものは、二〇一九年の十二月二十六日が死刑執行でした。その間、京都コングレス、オリンピックと、日本の刑事司法、人権状況に国際的な関心が集まるこの二年間は行われていません。それなのに、就任して、昨年ですね、国会で所信表明もしないうちに、執行の必要性や緊急性があったのかは明確に答弁されず、恣意的な運用じゃないかと批判されても仕方がないようなふうに思いますが、私は、歴代の法務大臣に、所信でこの法の支配の重要性を述べておられるので、確かに所信では法の支配が貫徹されておられますが、死刑執行を含め法務行政全般にこれからしっかり貫徹されることを願って、質問に入ります。
午前中の質疑の中で、川合委員の方から技能実習制度について御質問がありました。
実は、岡山市内の建設会社でベトナム人技能実習生に対して長期にわたり暴言、暴力行為が行われていたことが一月十七日の福山ユニオンたんぽぽの記者会見で明らかとなり、マスメディアでも大きく報道されました。一月二十四日には、入管庁、厚労省、技能実習機構の連名で、技能実習生に対する人権侵害行為についてとする注意喚起文書が発出されました。本日、資料としてお配りしております。
古川法務大臣も、一月二十五日の記者会見で、技能実習生に対する人権侵害の疑いがある事案等、緊急の対応を要する案件を認知した場合に、技能実習生の保護を最優先とすること、直ちに調査に着手すること、主務省庁との間で情報連携を徹底することなどについて改めて指示を行いましたと述べられました。
この受入れ企業であるシックスクリエイトに対しては二月十八日に技能実習計画の認定取消しが行われました。しかし、長年にわたり技能実習生から相談を受け問題解決に当たってきた支援団体の方に伺うと、こうした暴力行為は決して珍しいものではないということです。つまり、この企業での受入れをできないようにしただけでは解決にならないということです。
暴力行為は建設業や一部の製造業に多く発生しているということです。そこで、今回のケースを教訓に、建設業や製造業を所管する国土交通省及び経済産業省と連携して技能実習生に対する暴力問題に対して集中的な取組を実施されるよう要請したいと思いますが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。
○国務大臣(古川禎久君) 技能実習実施者による実習生に対する暴行等の人権侵害行為は、これは決してあってはなりません。
今委員から御指摘をいただいた事案を契機としまして、入管庁それから厚労省、技能実習機構から全国の実習実施者そして監理団体に対しても、技能実習生の人権侵害行為が生じていないか等について改めて確認をするように注意喚起を行いました。また、技能実習機構に対しましては、入管庁そして厚労省から、こういう人権侵害の疑いがあるような事案、これ認知した場合には直ちに調査に着手するようにという指示をいたしました。
このように対応しておるところでございますけれども、冒頭申し上げましたように、暴行等の人権侵害行為、これはあってはならないことです。したがいまして、このような不適正な事案を見逃すことのないように適切な対応を徹底していきたいと考えています。
○高良鉄美君 やっぱり、人権侵害に対して厳然、厳正と向かうというその御姿勢に、評価したいと思います。やはり前向きに取組を、この外国人の特に技能実習生の問題というのは、もうビデオでテレビに出たりですね、そういうのがありますので、是非この人権を守るためという法の支配の問題を貫徹させていただきたいと思います。
同じく、技能実習制度の構造上の問題について、これも午前中、川合委員の方からも少し触れておられましたが、この岡山での暴行事件の被害者である技能実習生は、朝日新聞の取材に対し、来日のために貯金を崩し、百万円の借金もしましたと。最初は相談せず我慢もしていました。もし相談したら、会社の人に嫌われ、退職、帰国せざるを得なくなり、借金が返せなくなってしまうだろうと思ったからです。原則として転職ができないということも、今回のトラブルが起きてから初めて知りましたと。建築の知識の習得を期待していましたが、危険な仕事や大変な力仕事は、私たち外国人技能実習生がやらされることが多かったと思います。長時間労働もひどかったです。ベトナムで役立つようなことは学べませんでした。
この証言には、技能実習制度が抱える問題が集約されていると思います。つまり、日本に来るまでに多額の借金をせざるを得ないこと及び転職の自由がないことにより、何か問題があっても正当な権利主張ができないということ、技能移転に結び付いていないことなど、技能実習制度の構造的な問題が明らかになっています。こうしたことが、暴行事件があっても、あるいはひどいセクハラや性的暴行があっても潜在化させることにつながり、技能実習生に対する人権侵害が絶えない原因となっています。
そこで、政府参考人に伺います。
多額の借金を負って来日する技能実習生の問題を解決するため、法務省としてどのような取組をされてきたのかを伺います。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘のとおり、技能実習生が母国で借金を抱えて来日するケースが一部に存在するものと承知しております。不当に高額な手数料を徴収するなどの不適正な送り出し機関等については、確実に制度から排除することが重要であると考えております。
技能実習制度におきましては、現在十四か国と二国間取決めを作成しており、不適正な事案を発生した、把握した場合には、この枠組みを通じて相手国に通報して調査を依頼し、その結果に基づき、送り出し機関への指導や認定取消し等を求めているところでございます。
例えば、外国人技能実習機構における技能実習計画の審査や実地検査において、送り出し機関が技能実習生本人から不当に高額な手数料等を徴収するなどの不適切な取扱いをしていないかなどを確認し、不適正事例を把握した場合には相手国政府への通報などを行っているところでございます。
法務省としましては、相手国政府との協力関係をより一層強化するとともに、関係機関との連携を密にし、不適正事案に対して厳正に対処してまいります。
○高良鉄美君 送り出し機関の方ですね、相手国の方にもいろいろな取組をなさっているということですけれども、この借金の問題として、こちらで、この技能実習の中でこの実習先を変えるということができることになっています。やむを得ない事由があれば実習先を変えることができるわけですけれども、この転職のハードルをもっと低くして技能実習生の権利が保障されるよう検討することも重要だと思います。古川大臣の御見解をお伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) ただいま委員から触れていただきましたように、技能実習は、限られた期間内に計画的かつ効率的に技能等を習得するという観点から、一つの実習先で行うことを原則としております。
ただ、やむを得ず技能実習の継続が困難になった場合で、かつ本人が技能実習の継続を希望する場合には実習先の変更が可能だと、こういうことになっておるわけですけれども、それではこのやむを得ずというのは具体的にどういうことかということですが、例えば、実習実施者による人権侵害行為があった場合はもとよりでございますけれども、実習実施者の経営上、事業上の都合のほか、実習実施者による実習認定の取消し、労使間の諸問題、対人関係の諸問題など、現在の実習実施者の下で技能実習を続けさせることが実習の適正な実施及び実習生の保護という趣旨に沿わない事情がある場合には、相当程度柔軟に実習先の変更を認めているものと承知をいたしております。
こうした取扱いについては、入国時に実習生に全員に配付をいたしております実習手帳、技能実習手帳にも記載をしておるところですけれども、これが監理団体等に確実に伝わるように、そして技能実習生本人の正確な理解、認識が徹底されるように、引き続き入管も、厚労省そして技能実習機構とともに連携して、きちっとそれを周知していかなければならないというふうに考えております。
もっとも、午前中の質疑の中でも私、触れましたけれども、この技能実習制度、あるいは特定技能制度もそうなんですけれども、今ちょうど見直しの時期に差しかかっておるわけです。ですから、今委員から御指摘をいただいたような点も含めて、幅広くいろんな意見を虚心坦懐に受け止めながら、あるべき姿は何かということを、常に不断の検討を続けていきたいと。そして、この見直しの時期における、改革すべきところがあるのであれば改革をしていかなきゃならないと、こう思っております。
○高良鉄美君 いろいろこのやむを得ない事由の説明もありました。
やはりこの実習生自体も、今大臣が言われたように、やっぱり周知をさせるということがとても重要で、このやむを得ない事由に当たるかどうかというのは、御本人の、実習生本人もどうだろうかとか、言いにくいとか、いろいろあるという事例もお話ししましたけれども、是非前向きにこういう捉え方をして、そして見直しということも御発言がありましたので、取り組んでいただきたいと思います。
次に、選択的夫婦別姓ということについてお伺いします。
古川大臣は、三月八日の法務委員会で、法制審に諮問する立場にある法務大臣としては、法制審からいただいた答申は重く受け止めるべきものと考えていると答弁されました。
これは、それこそやるべき、当然であり、かつ重要なことだと思います。同じ法務委員会で政府参考人から御答弁があったように、この問題は男女平等の見地から法制審議会で議論が開始されたものであり、女性の人権という観点から非常に重要な問題です。また、法制審議会では、様々な関係団体からも意見を幅広く聞くなど、国民の意見を十分に聞き、議論を尽くした上で答申されたものというふうに聞いています。
しかし、答申から二十五年以上が経過しているにもかかわらず、一部の国会議員の反対で実現していません。法制審議会の答申を重く受け止める法務大臣として、法制審議会の答申の内容や検討経過を反対議員に説明するなど積極的な活動をしていく必要があると考えますが、古川大臣の御決意をお伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) 前回の委員会でも申し上げましたとおり、この夫婦の氏をめぐる制度の在り方については国民の間にも様々な意見が存在をしておって、やはり大まかなこの一定の合意といいますか、そういうものができること、でき上がることが非常に大事なポイントだというふうに受け止めています。
また、各政党においてもこの件について様々な議論が進められているものというふうに承知をしておるわけですけれども、法制審議会での、平成八年の法制審議会での検討の経過あるいは今申し上げましたこの現在の様々な議論の状況、こういうことについて法務省は積極的に情報提供をしていくと、そういうことを通じて活発な議論を喚起していく、支援をしていくというふうな努力を、取組を続けているところでございます。
○高良鉄美君 ちなみに、自民党の方でも過半数がこれは夫婦別姓に賛成をしているということをお伝えしておきます。
それから、やはり今大臣言われたように、積極的にいろいろお知らせをしていくということがありました。これは高く評価したいと思います。
今後に向けて、やはり人権の問題だということで、この問題について後ろに隠れていらっしゃるいろんな方々がいて、これを進めていくことによって、今日、喫緊の課題というお話がありましたけれども、これもできていかないと、どんどんどんどん人権侵害、女性の人権侵害というのが起きてくるということもお考えなさって、多くの方々が、もしこれ実現したときには古川大臣に向かって皆涙を流すんじゃないかなと私思います。
その関連で、様々な意見という中で、今、地方議会から夫婦別姓を求める意見書があると思いますけれども、それについてちょっとお伺いします。
二〇一五年の最高裁大法廷判決以降で、法務省が把握している法改正とか制度導入を求める意見書、あるいは制度導入の議論や国会審議を求める地方議会からの意見書の数をお示しください。そのうち、都道府県議会については議会名を全てお示しください。政府参考人、よろしくお願いします。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
最高裁大法廷判決がされた平成二十七年十二月十六日から本日までに地方自治体の議会から法務省に提出された意見書のうち、選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見書が百三十五件、選択的夫婦別氏制度の導入について議論することを求める意見書が百四十三件でございます。
このうち、同制度の導入を求める意見書を提出した都道府県議会としては、三重県議会、滋賀県議会、岩手県議会がございます。同制度の導入について議論することを求める意見書を提出した都道府県議会としましては、大阪府議会、神奈川県議会、東京都議会、埼玉県議会、北海道議会、愛知県議会、香川県議会でございます。
○高良鉄美君 今、是非、この地方からの意見ということで、地方の議会の意見書ということでしたけれども、二年前の六月の参議院法務委員会で当時の小出邦夫民事局長は、これらの意見書は各地方自治体の住民から選出された議員が議会の意見として決議したものでありますので、法務省としては真摯に受け止めておられますと重要な答弁をされています。
古川大臣の地方議会のこの意見書の受け止めについてお伺いをします。
○国務大臣(古川禎久君) 地方議会の提出される意見書は、それは、それぞれの自治体の住民の皆さんの代表である議員が議会においてその意見書としてまとめたものでございます。
したがいまして、当然、法務省としてはこれを真摯に受け止めるべきものだというふうに考えております。
○高良鉄美君 今、真摯な姿勢をということで、是非ともこの意見書の中身というのも含めて、地方からもこれだけ上がってきている、先ほど紹介のありました三百件ほどの議会がそういうことを取り組む、あるいは期待をするということがありますけれども、是非今後もこの問題について、民法との非常に重要な問題があると思いますけれども、しっかりと応えてこれに取り組んでいくということで、私、個人的にも古川大臣の法の支配のお答えも非常にはっきりしておりましたので、期待を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。