国会質疑 Interpellation

2022年3月8日 参議院 法務委員会

質問内容

・死刑制度について

・法の支配について

・外国人技能実習生の家族の在留資格について

・民法の嫡出推定について

・選択的夫婦別氏制度の導入について

議事録

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第208回国会 参議院 法務委員会 第2号 令和4年3月8日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 少し紹介したい文書がありまして、ロシア、午前中からずっとこのロシアの侵攻の話がありますが、ウクライナに武力行使をしたことについて、私の地元の沖縄県議会が三月二日、沖縄県は、県民を巻き込んだ地上戦を経た経験から、我が国を始め、世界に向けて恒久平和を希求し発信してきた、戦後七十七年を経た現在においても、凄惨な戦争を体験した県民の心は癒えず、戦没者の遺骨収集、不発弾処理、軍事基地の返還と跡地利用など、戦争に起因する問題を抱え今日に至っていると述べた上で、ロシアによるウクライナ侵攻は許し難い蛮行であるとして、ロシア軍の撤退と早期解決を求める決議を行いました。
 いろいろ違った表現がありますけれども、一緒くたにこの沖縄戦の問題というのが今回すぐに沖縄の防衛とかあるいは軍事的な強化ということに走ることを要求しているわけではないということを申し上げて、ウクライナの方々の平穏な生活ということに対して本当に願いをしながら質問にしたいと思います。
 就任直後、いきなり古川大臣にということですが、もう話題が完全に変わりまして、就任直後の死刑執行についてお伺いします。
 法務省は十二月二十一日、死刑囚三人の死刑を執行しました。衆議院法務委員会で古川大臣は十二月十七日に命令書に署名をされたと答弁しましたが、就任して一か月余りで、委員会での所信表明も行わないうちに行われたことに驚きを禁じ得ません。
 死刑制度については様々な議論があるところで、法務委員会で度々質問してきました。なぜそれほど急ぐ必要があったのか、適正手続の観点からも疑問があるので、明確に御答弁ください。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
 まず、私、就任後一か月余りということでございましたが、就任から約二か月半ぐらい経過しております。それをまずはお断りをさせていただきます。
 そして、個々の死刑執行の判断に関わる事項につきましてはお答えを差し控えさせていただきます。
 その上でお答え申し上げますと、死刑というのは、人の命を絶つ、これはもう極めて重大な刑罰であります。したがいまして、その執行に際しましては慎重な態度で臨む必要があるものというふうに考えております。それはもう本当に言うまでもありません。慎重な態度で臨む必要がございます。
 しかし一方で、それと同時に、法治国家でございます。法治国家においては確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということもまたこれは申すまでもないことだと考えております。特に死刑の判決というものは、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対しまして裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものでございますから、法務大臣としましては、この裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものだというふうに考えているところです。
○高良鉄美君 この三名の死刑囚の方のうち二人は再審請求中であるということと、それから、これ緊急性とか必要性というのはもう最低限の基準ですよね、要求されるものだと思うんですね。それだけやらなきゃならないと、今じゃなきゃいけないとか、そういう問題が含まれていることを指摘しまして、今回、次の法の支配の問題に移りたいと思います。
 法治国家と法の支配は違うということを、まずこれ憲法論とか基本だと思います。そこを指摘していきたいと思いますけれども、古川大臣は所信表明で、人類社会は、人の尊厳が重視され尊重される社会へと、一歩ずつではありますが、着実に進んできました、自由、基本的人権の尊重、法の支配、そして民主主義は、そうした社会を実現するために、人類があまたの困苦を乗り越えながら獲得してきた原理と言ってもよいでしょうと述べられました。所信表明では五回も法の支配に言及されております。
 憲法を研究してきた私にとっても、この法の支配というのは最も大切な原理だと思っておりますので、これまで歴代の大臣に、法務大臣に質問をしてきました。古川大臣の法の支配についての御認識をお示しください。お願いします。
○国務大臣(古川禎久君) お答え申し上げます。
 法の支配というのは、元々、専断的な国家権力の支配、人の支配を排斥して、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする原理であると認識をしております。現在、この法の支配の内容として重要なものは、憲法の最高法規性の観念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などと考えられているというふうに認識しております。
○高良鉄美君 今、法の支配の内容を言っていただきましたけれども、問題は、法の支配といったときの、その法の支配に基づいて法務行政が行われるという形でずっと所信でも表明をされております。
 それはやっぱり、法の支配が貫徹されているかどうかということが非常に重要で、先ほどの緊急性や必要性ということを死刑制度において求められているということは、例えば、これは法律上こういう権限があるように書かれている、だからやったというのが必ずしも法の支配に適合しているかというと、先ほどの適正手続からいったら、法務委員会もまだ一回も開かれていない。たしか二か月前、二か月間だったと思いますけれども、二か月前に就任をしていたということかもしれませんが、やはりこの問題を、じゃ、しないのは法の支配に違反するのかというと、そうではないと思いますね。
 だから、そういった部分を、法の支配といったときには人の支配との対決でおっしゃいましたので、そこが人の権限でやるのが、この人の場合にはこういう権限でやってしまおう、この人の場合にはこういう権限で全く逆のことをやってしまうというのが、内容にするのが法の支配であるということなんですね。
 だから、その辺を少し指摘をしてここはもう終わりたいと思いますけれども、これからも法の支配の問題というのはまた大臣にお聞きをするという機会があると思いますので、よろしくお願いします。
 次に、技能実習生及び特定技能一号、先ほども、特定活動の話が午前中も出ましたので、その外国人の子供の、要するに技能実習生の、それから特定技能一号外国人の子供の在留資格について伺います。
 技能実習及び特定技能一号では、その在留期間に上限があるため、家族滞在の対象から除外されています。そのため、このような外国人の子供の在留資格については必ずしも保障されていませんでした。これまでの国会での議論や質問主意書への回答では、およそ個別の事案ごとに諸般の事情を考慮し、人道上の観点も踏まえて、在留資格、特定活動により例外的に配偶者又は子の在留を認める場合があるとされてきました。
 この趣旨を具体化する形で、昨年六月九日、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課長名での通知が出されました。子供の在留資格に関する部分について、この通知の内容及び従来の国会答弁等との関係がどのようになるか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘の通知でございますが、令和三年六月、入管庁から地方入管宛てに、技能実習生である親について、在留資格、技能実習を維持したまま産前産後休業や育児休業を取得などし、その後復職する場合、在留期間の更新を許可すること、在留期間の上限に達している場合に特定活動への在留資格変更を許可すること、また、その子について、出生した時点で何らかの在留資格を決定できない場合には、一時的に特定活動六月を付与することなどを指示したものでございます。
 この取扱いは、従来答弁してきた、個別の事案ごとに諸般の事情を考慮して、人道上の観点を踏まえて、在留資格、特定活動の付与を判断するとの取扱いを具体的に示したものでございます。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 次に、この通知の内容について質問しますけれども、子供の在留資格として特定活動六か月を許可する場合に、在留期限内に他の在留資格への変更又は帰国することを誓約させとし、また、やむを得ない事情がある場合を除き原則として在留期間の更新は認めないとしているのはどのような趣旨でしょうかと。さらに、やむを得ない事情として想定される具体例をお示しください。
○政府参考人(西山卓爾君) 現行入管法上、技能実習生の子については家族滞在が認められていないことから、本件特定活動については、在留期限内に他の在留資格へ変更すること又は帰国することを誓約させた上で、やむを得ない事情がある場合に限定して在留期間の更新を認めることとしております。
 やむを得ない事情が認められる類型を一概にお示しすることは困難ではございますが、在留期間内に他の在留資格への変更又は帰国ができなかった理由、本国における子の監護者の有無等、個別の事情を踏まえ判断することになると考えております。
○高良鉄美君 その前に質問した線に沿っていて、人道上の問題を含めて、この理由を聞きながら、まあやむを得ない事情として判断をするというふうに捉えました。
 技能実習及び特定技能一号は、確かにこの在留期間に上限があるとはいえ、技能実習で最長五年の在留が認められ、特定技能一号でも通算五年の在留が認められます。
 したがって、技能実習から特定技能一号に移行した場合は通算して十年になり得るので、もはや一時的な在留というわけではありません。この長期間に及ぶ在留を家族と離れさせ、あるいは家族形成ができないままにさせておくというのは人権の観点からも大いに問題があります。
 技能実習及び特定技能一号において一律に家族滞在を認めないこととしている入管法について再検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。法務大臣、お願いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
 技能や技術・人文知識・国際業務などのいわゆる就労資格の外国人の家族に対しましては、家族滞在の在留資格を付与しているところであります。この家族滞在の在留資格は、入管法上、日本に在留する者の扶養を受ける配偶者又は子に対する独立した在留資格でありまして、在留期間に上限のある技能実習、特定技能一号や長期の滞在が想定されない短期滞在の在留資格で滞在する者の家族につきましては家族滞在の対象から除外をされております。
 これは、この家族滞在の在留資格は扶養者に十分な扶養能力を求めるものでございますけれども、一定期間の在留後出国することが予定されている在留資格で滞在する外国人につきましては、子弟の教育等、家族に係るコストを含め、社会全体としてそのコストを負担することのコンセンサスが得られているとは認められないためでございます。
 もっとも、この人道的見地から、在留資格、この特定活動というこの在留資格によりまして例外的に配偶者又は子の在留を認める場合がありまして、引き続き、外国人の方が置かれているその状況を踏まえて適切に対応していきたいと考えています。
 それから、この特定技能及び技能実習制度の在り方につきましては、実は私の下で法務大臣勉強会というのを今立ち上げて、いろいろ在り方について総合的な検討を始めているところでございます。
 いずれにしても、様々な御指摘がありますけれども、虚心坦懐にいろんな御意見をいただいた上で総合的な検討をしていくことといたしております。
○高良鉄美君 この外国人の技能実習あるいは特定技能一号の問題というのは、やはりいろいろ日本全体のこの外国人法制、あるいは入管の関連ですね、そういったのがあって、日本の仕事の中の問題で人手不足ということから始まっているということを考えると、やはりその政策をもっと議論をしながらきちんと検討するということで今お答えいただきましたので、また今後もフォローをしていきたいと思います。
 民法の嫡出推定についてお伺いします。
 法制審議会は二月十四日、女性だけにあった再婚禁止期間の撤廃や、生まれた子の法律上の父親を決める嫡出推定を見直す民法改正案要綱を古川大臣に答申しました。体罰、虐待を助長すると指摘されてきた懲戒権の削除も盛り込まれ、法改正は待ったなしだと思いますが、今国会にはまだ上程されてはおりません。今国会での上程に向けて取組を加速させるべきだと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
 先月、二月十四日に法制審議会から民法等の改正に関する要綱が答申をなされました。この答申の内容なんですけれども、今幾つか委員からも御指摘をいただきましたけれども、無戸籍者問題の解消を目的とする民法の嫡出推定制度に関する規定等の見直し、児童虐待を防止する観点からの親権者の懲戒権に関する規定の見直し、それから女性のみに存在する百日間の再婚禁止期間の廃止などの内容が盛り込まれております。
 これらはいずれも国民生活における大変重要な課題に対応するものばかりだというふうに考えております。これらの答申の内容は、これは大変重要な意義を持つものだというふうに考えておりますので、できる限り早期に改正法案を国会に提出をしていきたいというふうに考えています。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 同じ関連で、ジェンダー平等と選択的夫婦別姓についてお伺いをしたいと思います。
 私は今日、こういう花を胸に付けておりますけれども、今日は国際女性デーということで、一九〇八年に、参政権のなかった女性労働者が労働条件の改善を求めてデモを行ったことが契機とされています。国連は一九七五年に、三月八日、今日ですね、日付、を国際女性デーと定めました。この年、第一回世界女性会議がメキシコシティーで開催されました。一九七五年以降、女性への差別撤廃、ジェンダー平等は進み、日本も一九八五年に女性差別撤廃条約を批准し、国際的なジェンダー平等の取組と歩調を合わせてきました。
 実は、このcを求める請願が初めて国会に提出されたのも一九七五年です。以降四十七年間も、請願が出されながら実現には至っていません。法制審議会が一九九一年、もう三十年以上前ですけれども、審議を開始したのもそこが原点だったはずですが、大臣の答弁を伺っていると、そのことが余り認識されていないのかもしれないなというふうな危惧をしているところです。
 そこで、法制審議会が一九九一年に議論を開始した背景や経緯、審議内容や答申についてお伺いします。その点については、前の民事局長が私の質問に対して丁寧に答弁をされています。
 法務大臣は、法制審答申を受け、それを引き継ぐ立場であり、国会で理解が深まるよう働きかけを行う立場だと思います。広く御理解をいただくために、改めて政府参考人にこの経緯等々を御説明を求めたいと思います。
○政府参考人(堂薗幹一郎君) お答えいたします。
 平成八年に選択的夫婦別氏制度の導入に関する答申をした法制審議会の審議は、平成三年一月に開始をされたものでございます。当時、政府におきましては、昭和五十九年に国連において採択されたいわゆる女子差別撤廃条約を批准したことや、総理府の婦人問題企画推進本部に設置された有識者会議において、男女平等の見地から、婚姻及び離婚法制の見直しについて提言がされることが見込まれていたことなどを踏まえまして、法務省における検討を開始したものでございます。
 法制審議会の審議の過程では、それまでの審議によって明らかとなった問題点とこれに対する意見を取りまとめて公表をし、関係各界に対して意見照会を行っており、そこでは多数の幅広い意見が寄せられたところでございます。これらの意見を踏まえまして、法制審議会は平成八年二月に民法の一部を改正する法律案要綱を決定し、法務大臣に答申したものでございます。
○高良鉄美君 法制審の答申というのはそれほど長い期間を掛けてきたということで、この選択的夫婦別姓を求める質問に対して古川大臣は、選択的夫婦別氏制度というのは、これは広く国民全体に影響を与えるものでありますから、それこそ現代でも、現在でも国民の間に様々な意見があると承知しておりますと述べられた上で、合意形成されるということも期待したいと答弁されました。
 夫婦同姓の義務付けは、長い間、多くの女性に負担や不利益という影響を与えています。最高裁もそのことを認めた上で、国会に議論を託しました。法務大臣は、合意形成に期待ではなく、女性に偏る不利益を解消するために努力する立場であると思います。
 先ほど政府参考人から、法制審議会が長期間にわたる慎重な審議の上、各界の意見や世論も参考にしてまとめ、答申された経緯が説明されましたが、大臣は法制審議会の答申をどのように受け止めておられるのかをお伺いします。
○国務大臣(古川禎久君) いわゆるこの選択的夫婦別氏制度の導入を含む、導入を要綱とする、この民法の一部を改正する法律案要綱、ごめんなさい、法制審の答申が出たのは、今説明がありましたとおり、平成八年でございました。
 その後、もちろんこの法制審の答申に基づいて法務省としては改正法案を準備したわけでございます。しかしながら、この平成八年、それから平成二十二年、それぞれこの提出に向けて準備を進めるのですが、やはり国民の間にまだ様々な意見がございましたことや、あるいは当時の政権内、これは平成八年の場合は自民党を中心とする政権ですし、平成二十二年は民主党を中心とする政権でございましたけれども、当時のこの政権内においても様々な意見があったことから改正法案の提出にまで至らなかった、こういう経緯がございます。
 したがいまして、この法制審に諮問する立場にあります法務大臣としては、もちろんこの現時点でも、法制審における、法制審からいただきました答申は、これは重く受け止めるべきものだというふうに考えております。
 ただ、申し上げましたとおり、様々なこの経緯を見ましても、この制度を導入するか否かということについては、やはりより幅広い国民の理解を得る必要があるというふうに考えておりまして、したがいまして、法務省としては、より活発にこの議論がなされることを期待して様々な情報提供を行っているところであります。今後も積極的に努めていきたいと思っております。
○高良鉄美君 もう時間が参りましたので、一言だけ。
 世論も参考にしたということは、様々な意見も当然考えた上での法制審の答えだったと思います。そして、人権であるということを最高裁の方でも訴えているということがあって、最初にありました法の支配ということと結び付けて考えていただけたら、また古川大臣の今の御答弁の中で、今後の取組ということに前向きということを考えまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。