岸本聡子さんは、なぜ海外で暮らしてから杉並区長になったのか

岸本聡子さんって、杉並区長だよね。
でも、急に政治の世界へ出てきた人なのかい?

そう見えるかもしれませんね。
でも岸本さんの歩みには、学生時代の環境活動、ヨーロッパでの20年、そして杉並でのわずか約187票差の選挙があります。
その道のりを知ると、「対話の区政」という言葉が少し身近になりますよ。

岸本聡子さんは、東京都杉並区の区長です。
2022年に初当選し、2026年の区長選でも再選され、現在は2期目を務めています。[1][5]
杉並区は、東京23区の西側にある人口約58万人の自治体です。
都知事のように東京都全体を担うのではなく、保育、学校、福祉、防災、ごみ、地域の道路や公園など、住民のすぐそばにある仕事を区長としてまとめます。
学生時代に出会った「社会のことを自分たちで動かす」感覚
岸本さんは1974年、東京都大田区に生まれました。
神奈川県立川和高校を経て、日本大学文理学部を卒業しています。[1]
大学時代に参加したのが、国際青年環境NGOの活動でした。
卒業後の1997年からは、有給の専従スタッフとして働きます。[1]
身の回りの環境問題を、誰か任せにせずに考える。
そんな現場から仕事を始めたことが、岸本さんらしさの最初の場面です。

会社勤めや議員秘書から政治に入る人は多いけれど、岸本さんは市民団体からなんだね。

はい。
最初の仕事が、選挙や役所ではなく、環境や社会の課題を市民の立場で考える場だったんです。
この時期の経験が、その後の長い海外生活につながります。
岸本さんは2001年にオランダへ移り、2003年から国際政策シンクタンクNGO「トランスナショナル研究所」の研究員として働きました。
2008年にはベルギーへ移住しています。[1]
選挙に出ることを目標に歩いてきたというより、社会の仕組みを市民の側から見つめる仕事を、長く続けてきた人です。
環境の問題から始まり、海外で公共サービスや市民の動きに関わる。
この順番をたどると、後に区長選へ出たことも、まったく別の道へ急に曲がったというより、これまでの関心が杉並という一つのまちに向かった出来事に見えてきます。
オランダとベルギーで過ごした20年
海外にいた期間は、およそ20年です。
長いですよね。
研究所では、世界の自治体や公共サービス、市民の動きを見つめる仕事に携わってきました。
岸本さんが日本へ戻ったのは2022年4月。
その年の夏、杉並区長に就任することになります。[1]


帰国した年に区長選へ出たのかい?
ずいぶん大きな方向転換だね。

そうですね。
海外で政策を研究していた人が、今度は一つの自治体を預かる側になったわけです。
2022年6月の杉並区長選では、岸本さんが76,743票を獲得しました。
次点の田中良さんは76,556.724票。
差は約187票でした。[2]
有権者の数から見れば、約187票差というごくわずかな差です。
就任後の所信表明で岸本さんは、投票しなかった人や自分に票を入れなかった人にも目を向け、違いを乗り越えるために対話と理解を深めたいと語っています。[3]
「対話の区政」は、話を聞くだけで終わらせない
区長就任後、岸本さんは選挙で掲げた「さとこビジョン」の進み具合を、区のホームページで公開してきました。
そこでは、すでに実施していたもの、実現したもの、年度末までに実現が見込まれるもの、検討を続けるものなど、7つに分けて状況を示しています。[4]
進み具合は、すぐに進んだものだけではありません。
時間がかかるものも、検討を続けるものもあります。
その途中の状態も含めて区民に示すやり方です。

区長の仕事は、何でも一人で決めることではありません。
区役所の職員、区議会、地域の人たちと一緒に、暮らしの課題を形にしていく仕事なんです。
子どもの居場所、学童クラブ、福祉、防災、地域の交通。
区政で扱うテーマは、国会のニュースよりも、毎日の生活に近いものばかりです。
岸本さんが「対話」を何度も口にするのは、こうした身近な課題をめぐって、異なる立場の人がいるからでしょう。
約187票差の初当選から、2期目へ
2026年6月の杉並区長選で、岸本さんは106,487票を得て再選されました。
得票率は52.74%。
投票率は42.54%で、前回の37.52%から上がりました。[5]
初当選のときは約187票差。
4年後の選挙では4人が立候補する中で、半数を超える票を集めました。

2期目の所信表明では、岸本さんは「対話」は決断を先送りするためではなく、よりよい結論を導くための手順だと話しています。
区民と課題を共有し、考え、区として決めて実行する。
その流れを続ける考えです。[6]
2期目に掲げた重点は、子ども・教育、暮らしと福祉、防災、環境とまちづくり、地域経済と文化、そして対話の区政です。
子どもの居場所や学童クラブ、介護を支える人の環境、木造住宅密集地域の防災、暑さや豪雨への備えなど、話題は幅広く並びます。[6]
大きな言葉だけではなく、学校の放課後、買い物や通院、災害時の避難所といった、日々の暮らしの場面に下りてくるのが区政です。
海外で公共サービスを見つめてきた岸本さんにとって、2期目はその考えを杉並の具体的な仕事へつなげる時間になりそうです。
たとえば、学童クラブや子どもの居場所は、働く家庭の夕方の時間とつながっています。
防災は、もしもの時だけの話ではなく、古い住宅が多い地域の普段の備えにも関わります。
介護を支える人の環境は、本人だけでなく家族の暮らしにも響きます。
ニュースでは区長の名前だけが短く出ることもあります。
けれど、その先には予算案を作る区役所、議決する区議会、地域で暮らす人たちがいます。
岸本さんの2期目は、こうした身近なテーマを、対話と実行の両方でどこまで形にできるかが見える4年間になります。

話し合いが多いと、なかなか進まないイメージもあるけれどね。

その心配があるからこそ、岸本さん自身も「対話と実行」をセットで言っているんでしょうね。
2期目は、子ども・教育、福祉、防災、環境、地域経済などを重点に挙げています。[6]
空手とタンゴが好きな区長の、いま
公式プロフィールを見ると、岸本さんの趣味は沖縄剛柔流の空手とタンゴです。
そして信条として、「公(人々)の心(意見)に耳をかたむける」と記しています。[1]
学生時代の環境活動から、海外での研究生活、杉並での僅差の当選、そして再選へ。
岸本さんの歩みは、最初から政治家になる一直線の道ではありませんでした。
けれど今は、区民の暮らしに近い場所で、対話と区政の実行をどう両立させるかに向き合う区長です。

海外で公共サービスを見つめてきた人が、帰国後は杉並という一つのまちで答えを出していく。
そこが岸本さんの歩みの面白いところですね。
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参考文献
[1] 杉並区「区長プロフィール」
[2] 杉並区「令和4年6月19日執行 杉並区長選挙・区議会議員補欠選挙 開票結果」





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