国会質疑 Interpellation

2020年6月4日 参議院 法務委員会 自動車運転処罰法改正案質疑

質問内容

・選択的夫婦別姓について

議事録

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第201回国会 参議院 法務委員会 第11号 令和2年6月4日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 自動車運転処罰法改正案、この参考人質疑では、各参考人から、視点は違いますけれども、切り口もいろいろ異なっていましたが、いずれも改正を支持するという、最終的にはそういう御意見でした。
 今井参考人は、同法の二条四号、現在のですね、現行規定ですけれども、この射程とそれから改正案の射程、追加される五号、六号の射程を丁寧に区別して説明され、改正の必要性を説かれました。いろいろ懸念事項も言われましたけれども、先ほども安江委員からありましたけれども、これは二条四号で対応できるんじゃないかと、それ以前の状況から見て。それで、法の欠缺というわけでもなかろうと思っていたんですけれども、この丁寧な説明で大分私にも参考になりました。
 また、松原参考人は、憲法三十一条の罪刑法定主義及び適正手続、法の支配に関連した私の質問に対して、特に罪刑法定主義の現代的意義を丁寧に説明されました。
 お二人の発言から、私は、民主主義社会において、国民からの処罰欲求にくみするというところではなく、立法府がこの刑罰規定の明確化の要請をきちんと理解すべきであるというふうに思いました。それは、刑罰というのが国家権力による制裁ということですので、これの構成要件の明確性が強く要求されるということがあって、この構成要件を明確にするために幾分でも補完をしていく今回の改正案には賛成いたします。
 そして、先ほどから、この適用拡大、あるいは因果関係の解釈、あるいは持ち方の拡大にならないかと疑念が出されておりますので、これが生じないような対応をしていただくよう求めていくのは当然だろうと思います。
 今回、法務委員会として最後になるかどうかというのは分かりませんが、これまでのちょっと、私は、先ほども柴田委員からありました、面会交流あるいは共同親権、養育費、こういった問題で、前回五月二十八日の、前々回ですかね、五月二十八日の法務委員会で離婚後の養育費と面会交流について人権の問題ということで質問いたしました。その質問をした後、子供たちに会えない全国の親たちから悲痛な意見が大分寄せられました、一挙に。養育費や面会交流の取決めを義務付ける必要性が改めて認識されたというふうに、私もそう思いました。
 法務省におかれましては、先ほどもありましたけれども、積極的に取り組むというようなところだと思いますので、期待をしていきたいと思います。
 また、本委員会では再三、これまでも最高裁に対して、調停委員の任命に際し外国籍の者を排除しないように求めました。調停委員は、公権力を行使するものでも、あるいは国家意思の形成に参画するものでもないという、そういった実態面と、法律や最高裁規則、あるいは最高裁事務総長依命通達、こういったものにも基づかないで行われているという、手続面でも問題があるというふうに指摘しました。しかし、残念ながら納得のいく答弁ではありませんでした。
 委員会でも御紹介しましたが、公権力を行使する公務員でさえ国籍要件の見直しが行われているのが実情です。例えば消防士は、延焼を防止するため消防法の中で建物を強制的に取り壊す権限を有しています。そのため、かつては日本国籍に限られていましたけれども、最近見直されました。
 実は、この問題を私に提起したのは大学の教え子でもある弁護士です。かつて司法修習は日本国籍に限られていましたが、今は外国籍にも認められています。彼は大変成績優秀で、司法試験に合格し、弁護士として家事事件にも精通していて、弁護士会活動にも熱心に取り組んで日本社会で活躍しているわけです。国籍がないというだけで調停委員の任命から排除されているというものでした。
 人権のとりでとも言われる最高裁が、外国籍者を排除する理由に、直接、各種の先ほど申し上げました最高裁規則や事務総長依命通達、あるいは法律にも基づかないで、当然の法理というものを用いて差別を改めないことに対して強く抗議して、これから質問に入ります。
 選択的夫婦別姓について伺います。
 今年三月から四月、朝日新聞と東京大学の谷口将紀研究室が無作為に抽出した全国の有権者三千人を対象に夫婦別姓について共同調査を実施しました。本日、この参考資料としてお配りしています新聞記事を御覧いただけると幸いです。
 調査結果を見ますと、夫婦別姓の賛否について、夫婦別姓に賛成、どちらかといえば賛成と答えた賛成派は五七%。反対、どちらかといえば反対と答えた反対派は僅か一七%でした。二〇一七年の衆議院選挙時に行った有権者を対象にした調査結果と比べると、夫婦別姓の賛成派は一九ポイント増えています。特に自民党支持層で見てみると、二〇一七年の衆院選のときには夫婦別姓に賛成は二九%でしたが、今回は二五%増の五四%と過半数を占めるなど、意識の変化が際立っています。
 このように夫婦別姓に賛成する意見が広がる中、地方議会でも夫婦別姓の導入や夫婦別姓に関する議論を求める声が高まっていると認識しています。
 そこで法務省に伺いますが、地方議会から地方自治法九十九条の規定に基づいて別姓の導入を求める意見書や別姓についての議論を進めることを求める意見書が提出されていると思いますが、これまでに何件受け取って、そのうち都道府県議会からというのもあるのかどうか、あるいはまた、これらを受け止めていらっしゃる、どのように受け止めているか、伺いたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 本日までに地方自治体の議会から法務省に提出された意見書は、選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見書が六十七件、選択的夫婦別氏制度の導入について議論を求める意見書が二十九件でございます。このうち都道府県の議会からは、同制度の導入を求めるものが三重県議会及び滋賀県議会から提出されておりまして、導入について議論を求めるものが大阪府議会及び神奈川県議会から提出されております。
 これらの意見書は各地方自治体の住民から選出された議員が議会の意見として決議したものでありますので、法務省としては真摯に受け止めております。これらの議会の意見を含む幅広い国民の意見に耳を傾け、引き続きこの問題、検討してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 滋賀県の方も非常に進んでいる、こういう御意見を出しているということですけれども、今、こういうふうに真摯に受け止めるということ、検討すると前向きの答弁がありました。非常に評価できると思います。
 私の地元の沖縄では、在日米軍に関連して度々こういった意見書というのが市町村議会あるいは県議会から出されているんですけれども、なかなか真摯に受け止めるということがなくて、ないがしろにされているようなところがあります。政府にこの地方議会の声を真摯に受け止めてほしいということを申し上げて、次の質問に入りたいと思います。
 女性差別撤廃条約の選択議定書について伺います。
 我が国は、一九八〇年七月に女性差別撤廃条約に署名し、国会承認を経た一九八五年六月に七十二番目の加盟国となりました。女性差別撤廃条約加盟百八十九か国のうち百十三か国が選択議定書を批准していますが、日本は現在まで批准していません。我が国は、女性差別撤廃委員会が一九八二年に設置された当初から現在まで途切れることなく委員を輩出し、多大な貢献をしていますが、選択議定書を批准していないために、女性差別撤廃委員会から度々勧告を受けています。選択議定書批准は、我が国の国際人権保障、ジェンダー平等への積極的な取組の姿勢を国際社会に示すというものであって、安倍政権が進める女性活躍促進にも資するものです。
 早期の批准を求め、外務省に伺います。
 地方議会から選択議定書批准を求める意見書が提出されていると思いますが、これらの地方議会の決議をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○政府参考人(赤堀毅君) お答えいたします。
 女子差別撤廃条約選択議定書に規定されている個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度と認識しております。個人通報制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法制度との関連での問題の有無及び個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識しております。
 個人通報制度の受入れの是非につきましては、地方議会からの意見書をしっかり拝見しております。その他、各方面から寄せられる意見を踏まえつつ、引き続き政府として真剣に検討を進めてまいります。
○高良鉄美君 個人通報制度の問題も確かにあると思いますけれども、政府として引き続き検討を進めていくということですので、地方議会の意見書の内容にもいろいろ耳を傾けるということがございました。
 今年三月十八日の参議院外交防衛委員会で、茂木外務大臣は、選択議定書批准について、早期締結に向けて真剣に検討を進めているという考えに変わりはない、検討を加速する、政府として、女子差別撤廃条約の完全な履行を通じて、ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントにつき、積極的に努力をしてまいりたいと、前向きな答弁をされました。
 そこで、外務省にお尋ねします。
 政府は、第五次男女共同参画基本計画策定の作業を進められ、今年十二月には閣議決定されると承知しています。女性差別撤廃条約に関する記述も含め、選択議定書については多くの女性団体やNGOが注視をしていると思いますけれども、どのように臨まれるかお伺いします。
○政府参考人(赤堀毅君) お答えいたします。
 茂木大臣答弁、御指摘ございましたけれども、その答弁のとおり、外務省としては女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結について真剣に検討を進める考えでございます。
 引き続き、各方面から寄せられる意見を踏まえつつ、関係省庁でしっかりと連携し、政府として真剣に検討を進めてまいりたいと存じます。
○高良鉄美君 大変ありがとうございます。
 やっぱり、こういうものは外部からの、外国との関係もいろいろあると思いますけれども、是非、今の真剣に取り組むということで高い評価をしたいと思います。今後も是非そういった努力を継続なさっていただけると有り難いと思います。
 この選択議定書は、批准して活用するということも大事ですけれども、そういったメリットよりも、批准しないことで条約の実施に後ろ向きだというふうに姿勢を見せてしまうと、批准しないことはですね、そういうデメリットが大きいとも言われています。また、政府は、選択議定書批准の意義について、我が国の人権尊重の姿勢を改めて内外に表明することを通じた人権尊重の普遍化への貢献としています。人権尊重に後ろ向きの姿勢を内外に表明することにならないよう、改めて選択議定書の批准を強く求めたいと思います。
 さて、森大臣は、これも私の感想ですけれども、三月十日の所信表明で、法の支配を貫徹することによって、全ての人が平和と公正を享受できる社会を実現していくことは、法務行政に課された責務であると述べられました。残念ながら、今国会、確かにコロナ国会という形もあるかもしれませんが、その法の支配というのが問われる国会であったんじゃないかと言わざるを得ません。
 日本の刑事司法が注目を集めるんではないかというふうに言われていました京都コングレスは、まあこれはコロナの関係もあって行われませんでしたが、この日本の刑事司法の問題が外部にどういうふうに捉えられるかということの一つの機会だったわけですね。黒川検事長の定年延長と検察庁法改正問題、これも刑事司法が大きく問われたわけです。同じ刑事司法で、外に向けた刑事司法の在り方と、中に向けた刑事司法の在り方では異なってはいけないと思います。私は、法の支配について当初、一番最初から度々委員会で取り上げてきました。やはり、法の支配がきちんと理解されるということがとても大事なんです。法の支配を言葉であるいは定義で言うだけではなくて、法の支配が行動に伴っていかなければならない。
 先ほど、いろいろ交通事故の問題も、法の支配でいうと、やはり起きた現状を理解するということもとても大事なんですが、交通の教育、交通教育の中で、やはり法の支配というものの理解も小さい頃からやっていくということはとても重要なことだと思います。それは、一つ一つの法改正にも非常に大きく影響するものだと思います。
 そういった意味では、先ほどの京都コングレス、残念ながら開かれませんでしたけれども、もし開かれていたら、今、京都コングレスの中で日本の刑事司法はどういうふうに評価されていたかと、この問題が集積されて、こういうことを考えますと、法の支配というものが国際的なレベルの中でもきちんと理解されるということがとても重要だと思っています。
 是非、法の支配の意義の重さを理解して、これを貫徹されることを切に希望して、時間前ですけれども、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。