2020年4月16日 参議院 法務委員会 裁判所職員定員法改正案質疑
質問内容
・裁判所の職員に占める女性の割合と管理職に占める女性の割合について
・家事事件の増加に伴う家庭裁判所の充実について
・調停委員任命において外国籍者が排除されている問題について
議事録
第201回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和2年4月16日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
裁判所における女性活躍についてお伺いします。
裁判官、調査官、書記官など、裁判所の職員に占める女性の割合と管理職に占める女性の割合について伺います。最高裁判所の方、よろしくお願いします。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
令和元年十二月一日現在におきます裁判官に占める女性の割合は二二・六%でございます。
裁判官以外の裁判所職員につきましては、令和元年七月一日現在の数字ということになりますが、裁判所書記官が三五・九%、家庭裁判所調査官、これは家庭裁判所調査官補も含んだ数字でございますが、が五四・四%、裁判所事務官が四三・二%というふうになっております。
裁判官以外の裁判所職員の令和元年七月一日現在におきます最高裁課長相当職以上に占める女性の割合は一四・三%、下級裁の課長と最高裁の課長補佐相当職に占める女性割合は二八・三%、係長相当職に占める女性割合は四五・五%となっております。
○高良鉄美君 今ありましたけれども、最高裁を含めて上級審に行けば行くほど女性の割合は低いというのがありますけれども、最高裁は、たしか裁判官、女性の方お二人ですね。それ以前は三名だったと思います。各小法廷にお一人いたんですけれども、後退していると言った方がいいのかもしれません。
最高裁は、二〇一七年九月一日から裁判関係文書においても旧姓の使用を認めています。
最高裁にお尋ねしますが、二〇一七年九月以降、旧姓使用の申出がなされた件数をそれぞれお示しください。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) それぞれの時点で旧姓を使用している者の人数ということでお答えさせていただきますが。
そういう旧姓使用者の数でございますが、裁判関係文書につきましても旧姓使用を認めることといたしました平成二十九年九月一日の時点におきましては裁判官が十八人、裁判官以外の職員が二百三人でございましたところ、その後につきましては、毎年十二月一日現在の数で申し上げさせていただきますと、平成二十九年十二月一日現在では裁判官が二十八人、裁判官以外の職員が二百二十九人、平成三十年十二月一日現在では裁判官が五十一人、裁判官以外の職員が三百十五人、昨年、令和元年十二月一日現在では裁判官が七十九人、裁判官以外の職員が四百九人となっております。
○高良鉄美君 今お示しいただいたように、毎年上がっていっているということでありますけれども、こういった面も含めまして、女性活躍の振興というんですかね、そちらにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
家事事件の増加に伴う家庭裁判所の充実についてお伺いします。
訴訟事件件数の中で増えているのが、この家事事件のみなんです。それで、その事件内容も複雑化して、紛争の自律的解決としての調停合意に向けて困難な状況もあると承知しております。専門性を持つスタッフの果たす役割は極めて大きく、家事事件の増加、複雑化に伴い、調査官、医師などを増員するべきとの意見も多くあります。最高裁は、現有人員の有効活用によって全体として適正迅速な処理を図ることが可能であると、こういった姿勢ですけれども、現場からは逆に、裁判官だけじゃなくて、人的、物的にも更なる充実を求める声が上がっています。
改めて、家裁の充実についてどのように取り組まれるのか、最高裁に伺います。
○最高裁判所長官代理者(村田斉志君) お答え申し上げます。
令和二年度におきましては、民事訴訟事件の審理充実と併せてではございますけれども、家庭事件処理の充実強化のために判事三十人の増員をお願いしておりますが、これのみではございませんで、家庭事件処理の充実強化のために裁判所書記官八人の増員もお願いしているところでございます。
家事事件の新受件数が高水準にございまして、特に、高齢化の進展を背景として後見関係事件が増加傾向にございます。その適正な処理を図るとともに、成年後見制度利用促進基本計画に基づく市町村や各種団体の取組に対して家庭裁判所も積極的に協力してまいりたいと考えているところでございます。
また、近年の少子化や国民の権利意識の高まり、あるいは家庭の問題解決機能の低下というようなところも言われているところでございまして、これに伴いまして、当事者の対立が先鋭化しやすい子をめぐる事件等も高水準にございます。こうした中で、裁判官が適切にリーダーシップを発揮しつつ、調停委員と連携して、事案ごとの特徴を見極めながら円滑に調停運営を行うなどして当事者の納得性の高い調停を実現し、面会交流などの当事者の対立が激しく解決が容易でない事件にも適切に対応していきたいというふうに考えております。
裁判所としては、今後とも、事件動向を注視しつつ、家庭裁判所がその役割を適切に果たしていくことができるような人的な体制の整備という点では今申し上げたお願いをしておるわけでございますけれども、このほかにも、パンフレットの充実ですとか庁舎の設備の整備といった物的なところにも併せまして体制整備ということで対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○高良鉄美君 家事調停を含めて取り組んでいくということで、これだけ複雑な状況に、そして多様化しているということから、是非また取組を深めていただきたいと思います。
渉外家事事件、そしてハーグ条約案件ですね、こういったものの増加によって、国際化による当事者の多様性、人間関係、親族関係が希薄化して、当事者間の合意形成が困難なことも少なくありません。また、家族関係の多様化、例えば再婚家庭の形成における面会交流、養育費問題など、非常に複雑化しております。
調停、審判において、紛争解決のためにより一層専門性が必要だと言われています。裁判官の増員には賛成ですが、その他の職員も削減するべきではないということを申し上げて、外国人も含めた多様化、国際結婚もありますので、この家事調停委員を含め、民事調停委員を含めて、この調停委員の任命において外国籍の者を排除していることについて伺いたいと思います。
前回といいますか、四月七日の法務委員会で、調停委員任命において外国籍者が排除されている問題について質問いたしました。最高裁の答弁には到底納得できません。
改めてお伺いしたいと思います。
前回の質問で、外国籍の者を排除している法的根拠について質問したところ、法的根拠は示されませんでした。それは、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当し、その就任には日本国籍を必要とすると答弁されました。
調停委員が公権力を行使するとおっしゃっていますが、過去にどのような公権力を行使したのでしょうか。また、国家意思の形成に参画する者ではないという実態面をどういうふうに認識されていますでしょうか、お伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
先日もお答え申し上げたとおりでございますが、民事調停委員、家事調停委員の法令上与えられております権限でありますとか職務内容等に鑑みますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる非常勤の公務員に該当するというふうに考えておりまして、その就任には日本国籍を必要とすると考えているところでございます。
○高良鉄美君 一九七四年七月二十二日付けで、事務総長依命通達ということで民事調停委員及び家事調停委員の任免についてというものが出されております。任命等の上申について、地方裁判所及び家庭裁判所は、当該裁判所の民事調停委員又は家事調停委員として相当と認める者について、最高裁判所に任命及び所属裁判所の指定の上申をするものとすると。上申は、所轄高等裁判所を経由してするものとし、高等裁判所長官はこれに意見を付すことができる。地方裁判所及び家庭裁判所は、調停事件の実情を十分に検討し、民事調停委員又は家事調停委員の職業、専門分野等の構成が全体として適正なものであるよう、あらかじめ適切な計画を立てるものとする。
先ほども冒頭に、小野田委員の質問の中に答えられた中に、地方公共団体、弁護士会、医師会、大学、不動産鑑定士協会、その他適当と認められる団体に候補者とすべき者の推薦を求めるなど、広く社会の各界から適任者を得るように努めなければならない。候補者とすべき者については、推薦者及び適当な関係者から、経歴、業績、社会的活動状況を聴取するなど、その人物、識見を知るための参考となる事項について調査するものとすると。特に必要がないと認められる場合を除き、候補者とすべき者について裁判官が面接を行うものとするとしています。
調停委員の任命は、最高裁内部で、最高裁長官又は最高裁事務総長に委任され、最高裁判官会議は関与していないと伺っています。地裁及び高裁は外国籍弁護士を調停委員候補者として最高裁へ上申することを拒否していますが、これは最高裁事務当局の指示によるものと聞いています。
私は、先ほど調停委員は実態において公権力行使と国家意思の形成に参画するとは言えないと申し上げました。
さらに、手続面でも問題があります。法律、最高裁規則、最高裁事務総長依命通達、こういったものには国籍ということが入っていません。そういったものにも基づかずに排除が行われているということについてどのように認識されているか、伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君) お答え申し上げます。
調停委員の就任に日本国籍を必要とするということにつきましては、法令上明文の規定はないところでございますけれども、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするというのが公務員全般に関する当然の法理であると解されていると承知しておりまして、問題はないものと理解をしております。
また、公務員の国籍要件の規定の在り方につきましては、公務員に関する法体系全体のバランス等を踏まえた公務員全般の問題として検討される必要がありまして、調停委員の国籍要件につきましても、そのような公務員全般の国籍要件の問題との関係において検討される必要があると考えているところでございます。
○高良鉄美君 この公務員全体のバランス、そして公務員全般に関連するということが当然であるということになっていますが、これ、実は、一九五三年の三月二十五日の法制局第一部長回答では、その後半に、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするものと解すべきでありと、これが前回言われたんですが、その後があるんです。他方においてそれ以外の公務員となるためには、日本国籍を必要としないものと解せられると、こういうふうに言っているんですが、前回、この他方の部分が抜けているんです。それが、他方の部分がどうして公務員全般から外されているのかということが私は非常に疑問なんですね。
そういった面で、公務員全般に関する当然の法理というのは論理飛躍じゃないかということでお伺いしたいと思います。
〇委員長(竹谷とし子君) 堀田人事局長、時間が過ぎておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。
〇最高裁判所長官代理者(堀田𧩫𧩫哉君) 公権力の行使又は国𥾽𥾽意思の形成への参画に携わる公務員以外の公務員となりますためには日本国籍を必要としないものと、そのように理解されていることはもちろんでございますが、調停委員は公権力の行使又は国𥾽𥾽意思の形成への参画に携わる公務員に該当するということから、前回お答え申し上げたときには御指摘のその後段については言及しなかったところでございます。
〇委員長(竹谷とし子君) 髙良鉄美君、質疑をおまとめください。
〇髙良鉄美君 はい。私の質問はこれで終わりたいと思いますが、この問題も引き続き取り上げていきたいと思います。ありがとうございました。