国会質疑 Interpellation

2020年3月18日 法務委員会 委嘱審査質疑

質問内容

・難民認定制度とその収容の長期化について

・選択的夫婦別姓について

議事録

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第201回国会 参議院 法務委員会 第2号 令和2年3月18日

○高良鉄美君 会派沖縄の風の高良鉄美でございます。
 先ほど来、法の支配に関連するような問題もずっと指摘されたり、あるいはコロナウイルスの問題、いろいろありましたけれども、私は、大臣の所信については、法の支配の観点から、次の機会にこれはちょっと質問したいと思いますけれども。
 本日は、コロナウイルスの関連もあると思うんですけれども、難民認定制度とその収容の長期化についてお伺いをしたいと思います。
 森大臣の所信表明の、送還忌避者の収容、送還問題への対応という、そういった箇所で、もとより、被収容者の人権に配慮した適正な処遇につきましても改めて徹底してまいりますと、そういうことが昨年の森大臣の所信表明に追加されています、今回ですね。これは、被収容者の人権に関して、森法務大臣も懸念をお持ちの点があるんじゃないかなということだと思うんですけれども。
 昨年六月、大村入国管理センターでの被収容者の餓死事件というのがありました。その報告書も出されたその時期に、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会の下に、専門部会ですね、収容・送還に関する専門部会が設置されました。今年一月二十八日の第六回の専門部会では、長崎インターナショナル教会の柚之原寛史牧師、彼の方からヒアリングがなされて、その後、収容の在り方が議論されたと承知しています。三月末で報告完了というふうになっていると思いますので、その際には、大臣には是非報告書を見ていただきたいと思います。
 実は私、先月十八日に大村の入国管理センターを視察いたしました。その際に、被収容者の方々、そして柚之原牧師にもお話をお伺いしました。場所も見ながらそういうお話を聞いて、いろんな思いを聞いたわけですけれども、建物自体は、もう印象としては、一瞬見たら刑務所なのかなと思ったりもしたところで、ちょっと驚いたところがありました。そのほか、医務室とか、あるいは反省をするような、何ですかね、個人、単独室のような、そういうところも見せていただきましたが、この大村入国管理センターでは、昨年六月に死亡事件が起きたにもかかわらず、常勤医師の確保ができていないということでした。
 佐々木入管局長は、昨年、こういうことを言っています。常勤医師の確保が急務であるとおっしゃっていますが、大村入国管理センター、そして東日本入国管理センター、各地方入国管理局の収容所に常勤医師は現在おりますでしょうか。森大臣、お願いします。
○国務大臣(森まさこ君) 現在、入管収容施設の常勤医師については、配置枠がありますところが東日本、東京、大村の入国管理センターに一名ずつ、三名の配置の枠がございますが、しかしながら、常勤医師の採用は難航しておりまして、現状としてはいずれの入管収容施設も常勤医師の配置には至っておりません。
○高良鉄美君 常勤医師をこういうふうに確保することができていないといって、そういう状況でありながら、先ほどのこの佐々木入管局長は急務であるとおっしゃっているわけですけれども、常勤医師がいないこういった体制をどういうふうに乗り越えていくつもり、お考えでしょうか。よろしくお願いいたします。
○国務大臣(森まさこ君) 委員の御指摘、また当委員会での委員の皆様からの御指摘もございまして、私からも、常勤医師の確保、急務であるということで、事務方に指示をしているところでございますが、なかなか常勤医師が確保されていない現状が誠に深刻な課題であるというふうに捉えております。
 私としては、出入国在留管理庁に対して、引き続き常勤医師の確保に努めるとともに、常勤医師のいない現状の体制の下での医療的な対応にも遺漏を生じさせないように、特に強く指示をしているところでございます。
 出入国在留管理庁においては、常勤医師の確保のための取組として、関係機関に対し医師の紹介に関する協力を依頼するなどしているほか、各出入国在留管理官署においても、都道府県医師会に医師の紹介を依頼するなどしているものと承知をしております。
 また、現在の医療体制としては、近隣の外部医療機関の医師に交代で入管収容施設の非常勤医師として来診していただくなどしているところでございます。さらに、規模の大きい収容施設では、常勤の看護師を確保するとともに、入国警備官に准看護師資格を取得させ、よりきめ細かい対応が可能となるように努めているところでございます。
 このような取組を通じて、引き続き被収容者に対する医療的な対応に遺漏を生じさせないよう取り組んでまいります。
○高良鉄美君 いろんな形で協力をし合っていくということですけれども、二〇一五年に矯正関係の、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律が成立しました。
 これは、矯正施設に勤務する医師について、医者について、その能力の維持向上の機会を図り、優れた人材を継続的に、安定的に確保するために国家公務員法の特例が設けられたということで考えていいんでしょうかね。そういったことも一つの質問にしたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。
 それからまた、入国管理センターの医療体制を改善するために、先ほど大臣もおっしゃいました、協力関係があるということですけれども、近隣の地域医療、矯正局の医療従事者、特に医師との関係ですね、そういった連携を図っていくという考えがあるか、これは政府参考人の方、大臣、可能ですか、まあどちらでも結構です。
○政府参考人(高嶋智光君) では、私の方からお答えいたします。
 委員御指摘のとおり、矯正医官の兼業の特例等に関する法律は、矯正医官につきまして、その兼業についての国家公務員法の特例等を定めることにより、その能力の維持向上の機会の付与等を図り、もってその人材の継続的かつ安定的な確保を図ろうと、確保に資することを目的としているものでございます。御指摘のとおりでございます。
 また、委員御指摘のとおり、入管収容施設における医療の充実を図る上では、外部診療に御協力いただく地域医療機関等と連携することや、常勤医師の確保等に当たり、矯正局を含む関係機関の協力を得ることが重要であるというふうに認識しております。
 大臣からは、出入国在留管理庁に対しまして、引き続き常勤医師の確保に努めるようにという御指示をいただいておりますし、また、現状の体制の下で医療的な対応に遺漏を生じさせないようにという御指示をいただいているところでございます。
 委員の御指摘も踏まえて、これからなお関係機関との適切な連携を改めてやっていきたいというふうに考えております。
○高良鉄美君 是非、この常勤医師の確保が急務であるという、そういう現場の、局長のお話ですね、そういったことを踏まえて、これは法律上特例を設けるとか、そういった措置をとって、議論にのせていくと、実現をしていくということまで含めて御検討いただけるといいと、御検討いただけたらと思います。
 そして、この大村入国管理センターを視察した際に、自傷行為の、自分でこう傷つける自傷行為などが行われているというふうにお伺いしたんですけれども、支援者の方からそういうふうに伺いました。この大村の入国管理センター、そして東日本管理センターの二施設、この二〇一七年、一八年、できれば一九年の自傷行為の数をお知らせ、お示しいただけたらと思います。
○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。
 入管収容施設の被収容者による自傷案件のうち、出入国在留管理庁として件数を把握しておりますのは、自傷行為を理由に隔離措置、隔離室に隔離措置をとった件数ということで把握しておりますが、その限りという数字でお答えいたします。被収容者の自傷による隔離件数は、東日本管理センターでは、平成二十九年が七件、平成三十年が九件となっております。また、大村入国管理センターでは、平成二十九年が三件、平成三十年が二件となっております。平成三十一年、昨年の隔離件数は現在なお集計中でございます。
○高良鉄美君 こういった形で、七件、九件、そして三件、二件と、この東日本入国管理センターと大村の方の入国管理センター、合計すると結構な、二十人以上いるわけですけれども、そういった、去年が出ておりませんが、そういった原因をやっぱり大臣はどう考えていらっしゃいますでしょうか、原因ですね。
○国務大臣(森まさこ君) 一般論として、自傷行為の原因や背景としては、様々な要因が作用していると思いますけれども、それぞれの被収容者の状況が違うことから、自傷行為に至った原因について一概にお答えすることがまた困難でもございますけれども、自傷行為を行った被収容者に対しては、心情の把握や動静監視の強化などにより、各入管収容施設において再発防止に努めております。
 今後も、今回の委員の御指摘を含む様々な御指摘に耳を傾けながら、被収容者の心情、人権に配慮した適正な処遇に努めてまいります。
○高良鉄美君 是非、この原因も含めてお調べいただきたいと思います。
 特に、私が実際に収容者の方、被収容者の方からお聞きすると、もうかなり参っているんですね。参っている原因というのは何かなというと、これ長期化しているという問題があります。そして、この六か月以上の長期被収容者というのは、大村入国管理センターでは八十人というふうに聞いております。そういった長期化している中で、もう強制送還まで、とにかく帰るまでは入れるというような、仮放免させないという、そういった側面もあって、かなり精神的なところから自傷行為に走っているんじゃないかというようなことが考えられるわけですけれども、この所信の中にもあった、あるいは国際的な関連もあって、この人権に配慮をするということについてはやはり懸念を示されているということを最初に言いましたが、やっぱりそういった面で、しっかりとこの点も今後も議論させていただきたいと思いますけれども、またその点にも目を向けていただけたらと思います。
 それでは次に、選択的夫婦別姓についてお伺いをします。
 この選択的夫婦別姓というのは、かなり議論もこれまで何度もされてきたと思うんですけれども、以前も質問しましたけれども、これまでもずっとあって、政府は、この法改正の必要性を十分に認識しているというふうな形でいながら、あるいは、答えの一方では、我が国の家族の在り方が深く関わるもので、国民の間にも様々な意見があることから慎重に検討すると、こういうふうに同じような、判で押したようなことを繰り返して答弁をしていますけれども、これは法改正をしなければならないという要請を受けている、そういったことの理由には、答えはならないんじゃないかと、この答えはですね。
 さらにはまた、法務省の民事局の方でのこれまでの取組も、この夫婦別姓ですね、選択的夫婦別姓の取組も、もう肯定的にだんだん取組を深めている、そういったことでも逆行するんじゃないかと言わざるを得ないと思います。
 戦後の今の日本国憲法によって民法の大改正が行われました。それ以降、九一年の法制審議会の議論が出るまで法務省が認識されていた民法の関係については、国民の人生観、価値観の変化、多様化ということがあります。そして、男女平等を推進する方針という政府の方針があります。それから、三番目に、国民の氏、氏に対する権利意識の変化ですね、元々の氏を称し続けることが一種の人格的利益であると主張する見解が結構出てきたと、広がりを見せてきたということ、これが理由です。そして、さらに、諸外国の法制の整備や国連機関からの要請など、こういったことから法改正の必要があるんじゃないかということですけれども、こういった面をしっかりと捉えなければならないと思います。
 そして、新国内行動計画には、平成三年から七年までの地域社会及び家庭生活における男女共同参画の推進のための具体的施策として、法務省が、男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間、結婚までのですね、その名称の問題ですけれども、待婚期間の在り方を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うこととされています。
 そういった意味で、森大臣にお伺いしますが、法制審議会は、男女平等の見地から、五年掛けて審議をして法律案の要綱を答申いたしました。これを改正しないということは、様々な意見があるから不平等のままで法改正の必要はないと言っているような感じに聞こえるんですけれども、それでよろしいでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 平成二十七年に最高裁判決が出されまして、夫婦同氏制度について、性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけでないから憲法十四条一項に違反するものではなく、社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められることなど、相応の合理性があるから憲法第二十四条の規定に違反するものではない等として、夫婦同氏制度を定める民法第七百五十条は憲法に反するものではないとの判断が示されたものでございます。
 他方で、この最高裁判所の判決の中に、夫婦同氏制度の下では、婚姻によって氏を改めた者がアイデンティティーの喪失感を抱いたり、婚姻前に形成してきた社会の、あっ、失礼いたしました、婚姻前に形成してきた個人の社会的な信用、評価等を維持することが困難になったりするなどの不利益があるとも指摘されています。
 もっとも、選択的夫婦別氏制度の導入の問題は我が国の家族の在り方に深く関わるものでありまして、私としては、今後も引き続き国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における御議論の動向を注視しながら、慎重に対応を検討してまいります。
○高良鉄美君 最高裁の判決の趣旨も、基本的にはこれは立法問題じゃないかというようなところで、立法に委ねたような形で合憲だと。ですから、合理性があるということの一方の、もう一つの部分というのが非常に重要なことだと思いますし、それに対しての取組をやっていくということですので、そういったことからいいますと、この家族の在り方ということですが、この法改正を求める声というのはかなり早い時点、つまり憲法ができてから後、どんどんどんどん社会変わっていくわけですけれども、この声が国会の方に国民から上がってくる、請願という形で。
 今日は参議院の事務局にも来ていただいておりますので、この選択的夫婦別姓制度の導入、これを民法改正に是非入れてくださいという請願が最初に出されたのはいつ頃か、お伺いします。
○参事(金子真実君) お答えいたします。
 最初に提出されましたのは、昭和五十年、第七十五回国会でございます。この請願は民法の一部を改正する法律に関する請願でございまして、いわゆる選択的夫婦別姓と、復氏の義務付けをやめ、婚姻中の氏の使用をも認めることを求める内容となっております。
○高良鉄美君 この、昭和五十年と、要するに一九七五年ですけれども、もう四十五年も前に、出され続けているという、これ現在まで出されて、採択は別として、こういったもので、実は、同じときの一九七五年に出されたもう一方の婚氏続称、離婚した前の称をそのまま、離婚する前の、つまり同姓のときの使っていたものをそのまま使うということは、これは採択されているわけですね。
 同じ名前を使うという、同じ姓を使うという点では同じなんですね。選択をして、こっちを私は婚姻の前の使いたいと、そういうことから出され続けているんですけれども、それを、どういうふうに、この両方との差が……
○委員長(竹谷とし子君) 高良鉄美君、お時間が過ぎております。
○高良鉄美君 はい。
 じゃ、これは次回お伺いしたいと思いますけれども、この問題、やはり男女平等の問題だけじゃなくて、多くの、先ほどの国際社会の問題もありましたので、是非今後も取り扱っていきたいと思います。
 ありがとうございました。