2019年12月3日 参議院 法務委員会 会社法改正案質疑
質問内容
・企業における女性活躍について(女性差別撤廃条約・SDGs・ジェンダーギャップ指数・女性就労の障害の除去に関する取り組み等に関連して)
・会社法改正のあり方について
議事録
第200回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和元年12月3日
200-参-法務委員会-9号 令和元年12月3日
○高良鉄美 沖縄の風の高良鉄美でございます。
女性差別撤廃条約、これを日本は批准をしております。この国会でやっているわけですけれども、女性の活躍、企業における活躍についてお伺いをしたいと思います。
前回の質疑の最後の方で、社外取締役関連の質問の中で、義務付けということがありました。この女性取締役の義務付けもこれに関連して求めるような質問を私は行いましたけれども、森大臣は、女性の登用についての意義は強調されましたが、女性の登用についての明確な答弁、この義務付けに対する明確な答弁はありませんでした。
女性取締役を法律上義務付けるということについて、改めて法務大臣の見解をお示しください。
○国務大臣(森まさこ君) 高良委員にお答えをいたします。
取締役会がその機能を十分に発揮していくためには、取締役会の構成員に相応の知識、経験、能力がバランスよく備わっていることが必要でありまして、ジェンダーを含む多様性について十分に確保していくことが必要であると考えております。
他方で、各企業の経営実態やその置かれた状況等が多種多様であること等に鑑みますと、会社法において一律に女性取締役の設置を義務付けることについては慎重な検討が必要であると考えております。
法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会においても、取締役会の構成におけるジェンダーバランスに関する規律を設けるべきという特段の意見がございませんでした。そのため、改正法案においても女性取締役の設置の義務付け等の規律を設けることまではしておりません。
もっとも、ジェンダーを含む取締役会の構成の多様性については、コーポレートガバナンス・コード等のソフトローにおいて関連する規律が設けられております。
今後もますます女性の社会進出の必要性が高まっていくと考えられることから、法務省としても、このようなソフトローに基づく実務の運用状況等を注視していくとともに、女性の働きやすい社会を実現するために政府全体としてどのようなことができるかについて引き続き検討してまいります。
○高良鉄美 ただいまは、法律上の義務付けについては消極的だということをお伺いしたと思います。
この構成員やバランス、そういったような形が企業で取られる必要があるということで、この社外取締役の性格ですね、そういった面を今お話しいただいたと思うんですけれども、日本の国際化のためのこの会社法の改正の問題、あるいは国際的な視点から見た場合に社外取締役を置いている会社の問題、あるいは報酬の問題、そういったものがずっと議論されている中で、国際的な視点という意味でいうと、むしろこの社外取締役はほぼ大企業においてはもう九九・九%あると。しかしながら、女性の取締役の問題について、その点については非常に、何というんですかね、しっかりと目標を立ててはいますが、とてもじゃないけれどもそういった姿勢にはなっていないということを考えると、やはり今なすべきものは、この社外取締役を義務付けるというよりも、女性の取締役を義務付けるということが一つの肝要な制度だと思うんですけれども。
そこで、森大臣が所信で言及されたSDGsという、今日、今朝も、これは矢倉議員の方からもこのSDGsの関連がありましたけれども、会社はこのSDGsにおいてもキープレーヤーであるということをお話しされました。
持続可能な開発目標というのは、そういった持続可能な世界を実現するための目標は定めていますけれども、その中の目標の中で、ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児の能力強化を行うというふうに書かれているわけですね。
それで、じゃ我が国のこのジェンダーの平等の達成状況はというと、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが昨年十二月、二〇一八年の世界男女格差報告書を発表しましたが、昨年の我が国の順位は百四十九か国中百十位であり、特に経済分野では、男女賃金格差が大きいこと、あるいは女性管理職の少なさ、こういったことから、百十七位と、世界の中でももう相当な下位にとどまっている。
森大臣は、かつて男女共同参画担当大臣をされ、女性の活躍のために尽力をされたと前回も発表されました。女性の取締役の設置を法律で義務付けるのは困難であると先ほど答弁がありましたけれども、上場企業における女性役員の割合を増やすためにはどうすればいいとお考えでしょうか、大臣の見解を伺います。よろしくお願いします。
○国務大臣(森まさこ君) SDGsにおいて目標が設置されております。我が政府においても、私が大臣時代に目標値を設置いたしまして取組を展開してまいりました。前回も御紹介申し上げましたが、総理と私で官邸の方に経済三団体の長をお呼びして、自主的な取組として女性取締役を各企業に設置するということで提案をし、それを取り入れていただいて今日まで増加傾向にございます。
このように、上場企業における取締役会や監査役会等による監督の実効性を高めるために、そのジェンダーを含む多様性を十分に確保していくということは重要ではございませんが、法律によってその一定割合以上選任することを義務付けることは現在のところしておりません。しかし、ソフトローによる取組を含め、女性役員の登用を促進する取組、これを行うことは必要かつ有益であると考え、実際に取り組んできております。
法務省としても、改正法の施行前後における実務の運用状況等を注視していくとともに、女性の働きやすい社会を実現するために政府全体でどのようなことができるかについて引き続き検討してまいりたいと思います。
また、もう一つ付け加えますと、人材プールという点がよく指摘をされますが、これについても、当時内閣府の男女共同参画担当として人材のリストを作りまして、弁護士会等々に働きかけて、その人材の御紹介又は人材の育成という点で様々な研修等の予算も講じてまいりました。
○高良鉄美 森大臣の意気込みは理解をしたところでございます。
重要であるというふうなことで考えを問いたいと思いますが、このジェンダーギャップの指数でいうと百十位ということですが、政治分野と経済分野の順位がとても低いために総合順位がそういうふうに下がっている結果であると。経済分野の場合には、労働力率、あるいは賃金格差、先ほどの管理職比率等で相当厳しい評価を受けている、そういう結果になっているということですね。
上場企業における女性役員の割合を増やすためには、今大臣は、努力をしながら一個一個回っていってお願いをするとか、あるいはソフトローでやっていくということがありましたが、この女性管理職が一人いるだけでは意味がなくなってくるわけですね。それは、やはり協力をし合って、ほかの女性の管理職の中同士での会話やコミュニケーション、あるいはその他の努力によって管理職の中で女性を増やしていくというサポートをする、あるいは賛同をする者が多くないと、これは女性活躍の場あるいは環境というのが整わない、そういうことで女性の管理職を増やすということがもう不可欠だろうということですね。
先ほどもありました、企業を回っていったということですが、政府は指導的地位に女性が占める割合を二〇二〇年までに三〇%とする目標を掲げていますが、この二〇二〇・三〇という、こういうことですけれども、三〇%、これは、二〇一八年の民間企業の、特に百人以上における管理職の割合は、課長相当職で一一・二%、部長相当職で六・六%と、とてもその二〇二〇の三〇%からは程遠い状況にあります。
女性管理職を増やすためにはどうしたらいいとお考えでしょうか。先ほど、ソフトロー、あるいはお願いに行ったというのがあって、活動的になさっていますけれども、それについてのお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 先ほどの答弁を訂正したいと思います。
重要であると言うところを間違って重要でないと言ってしまいましたが、ジェンダーを含む多様性を十分に確保していることが重要であると考えております。失礼をいたしました。訂正をいたします。
そして、質問に対するお答えでございますが、二〇二〇・三〇ということで、これはたしか私が大臣になる十一年前ぐらいに政府全体で、十一年というのがちょっと不正確でございますが、立てた目標でございますけれども、私が男女共同参画担当大臣をしていたときに、各種業種ごとに、この三〇%というのをまたかみ砕いて、非常に難しい職種、それからもう既に達成近くまで来ている職種、いろいろありますので、職種ごとに具体的なまた目標値も定めまして、また、それの目標に対する取組方針も作りまして、それをチェックしながら進めてきておるわけでございますが、さらに、女性活躍推進法という法律も作りました。これも、条文から一つ一つ考えて作ったわけでございますが、これが、公表するという法律でございまして、各社の目標値、そして取組を公表して有価証券報告書等で発表するという、そういう情報開示を促進をしていくという取組、又は男女を問わず安心して継続就業できる両立支援体制の整備ということで、例えば、一度、休業ではなく育児のために退職をしたという方であってもまた再就職するための取組、又はそれを応援する企業に対する補助金等も新設をしたりいたしました。
また、女性役員の候補、先ほど申しましたけれども、人材プールに、またそれを充実させるための人材育成でございますが、女性役員候補育成のための研修でございましたり、また役員候補者となり得るその女性人材のリスト化でございましたり、また海外の先行事例を参考に、またその候補育成のために海外の女性役員の方に御講演をお願いをしたりもしてまいりました。
また、組織トップのやっぱり意識改革ということで、女性活躍へのコミットメントの拡大ということで、輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会というのを私が大臣時代につくりまして、最初は七人の社長さんが賛成してくれましたが、現在は二百三十三名まで増えまして、その企業のリーダーの皆様が、自分の会社、それから取引先などの関連会社、それから様々な業界団体の他の会社などに呼びかけて女性活躍を促進するという取組をして、毎年それを発表するということをしていただいております。
このように、様々な取組を政府全体で取り組んでいるところでございますが、法務省としても、女性の登用が加速されるように努めてまいります。
○高良鉄美 是非そこは力を、いろんなものを活用しながら女性活躍の場をつくるということで御理解をしました。
女性が継続して就労するためには、障害を取り除くということが非常に重要だと考えております。政府の規制改革推進会議は、仕事の継続性の観点から、旧姓使用の範囲拡大を答申しているなどと承知をしております。
法務省は、実は商業登記規則第八十一条の二の新設によって、二〇一五年から商業登記簿の役員欄に旧姓を記録、つまり付記するということを可能としており、これは女性の就労の際の一つの障害が除去されたものというふうに評価します。しかし、それ以後、女性の就労に当たっての障害を除去する取組、こういう点についてはいかがでしょうか。これ、政府参考人の方でお願いします。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
旧姓使用に関する政府全体の取組について御説明させていただきます。
本年六月十八日に、総理を本部長として全閣僚で構成される、すべての女性が輝く社会づくり本部で決定した女性活躍加速のための重点方針二〇一九におきましては、社会における活動や個人の生き方が多様化する中で、働きたい女性が不便さを感じ、働く意欲が阻害されることがないよう、女性活躍の視点に立った制度等を整備することが重要であるとされております。
こうした問題意識の下、委員御指摘の旧姓の使用に関しまして、マイナンバーカード等への旧姓併記が可能となることの周知、また旅券への旧姓併記の拡大に向けた検討、各種国家資格、免許等への旧姓使用の拡大、銀行口座等における旧姓使用に向けた働きかけなどの取組が、内閣府等の関係省庁を中心に政府全体で進められているものと承知しております。
法務省といたしましても、女性の働きやすい社会を実現するために必要な取組につきまして引き続き検討してまいりたいと考えております。
○高良鉄美 旧姓使用の拡大ということですね。これ、前回といいますか、民法改正の問題のときに少し質問しましたので、これは改めて別の機会になると思いますので、今、取組というので旧姓使用を推進するというところをお聞きしました。
会社法のこの改正の在り方、本件に関してですけれども、特に、先ほどからずっと取締役の報酬あるいは社外取締役、それから保険のこと、こういった点が出ておりますけれども、まずこの取締役の報酬等についてお尋ねをします。
取締役の報酬等は、定款に定めがなければ株主総会の決議によって定めることとされています。しかし、実務上は、取締役の個人別の報酬額が明らかになることを避けるために、株主総会では取締役全員の報酬総額の最高限度のみを定め、取締役の個人別の報酬額の決定は取締役会に一任する場合が多いとされています。さらに、取締役会に一任された取締役の報酬額の決定を代表取締役に再一任することも多いと言われています。
これらの取扱いは判例では適法とされていますが、このように、各取締役の報酬額の決定を代表取締役に再一任すると取締役の代表取締役に対する監督が十分に行われなくなるおそれがあるため許されないという、こういった見解もあります。法制審議会の部会の中間試案でも、再一任には株主総会の決議を要するという案が示され、この案に対してはパブリックコメントの支持も多かったようです。しかし、今回の改正案にこの再一任についての規定は設けられていません。
コーポレートガバナンス上問題がある取締役の個人別報酬額決定の再一任を規制する規定を置かなかった理由について、法務大臣に伺います。
○国務大臣(森まさこ君) 改正法案においては、上場会社等の取締役会から取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任を受けた取締役は、取締役会が決定した方針に従って個人別の報酬等を定めなければならないこととなるなど、再一任がされた場合を含め、取締役の報酬等の決定手続の透明性が高まるものと考えております。
他方で、取締役の個人別の報酬等の内容はプライバシーに属する情報であることなどから、再一任を規制し、これを取締役会において審議、決議しなければならないものとすることについては慎重な御意見が強いわけでございます。これらの点を踏まえ、改正法案においては御指摘のような規定を置くこととはしておりません。
もっとも、委員を始め、取締役の報酬等に関する規律の在り方について様々な御意見、御議論がございますので、実務においても検討が進められているところと承知しております。
改正法案が成立した後も、実務の動向を注視しながら必要な検討をしてまいりたいと考えております。
○高良鉄美 先ほど来ずっと出てきているのは、やっぱり取締役、会社、そして株主と、こういったところと市民社会、この社会の問題というのが全般的に関わっているわけですけれども、そこの中でやっぱり問題になっているのは、透明性や公正性、平等、あるいはそういった必要性の問題、そして前回からもありました会社というのは誰のものかということについての理解の問題も含まれていると思います。
前回、会社法改正について、検討はもっと時間を掛けてじっくり行うべきではないかと質問して、大臣は、法制審議会の専門部会において二年間、合計十九回にわたって会議を開催したと、精力的に審議を尽くして十分な検討を行ったと答弁されました。そうであれば、衆議院における数時間の質問、質疑の結果で、今回の法改正の柱の一つが与党の賛成もあった上で修正されました。このことは部会における検討が十分ではなかったということにはならないでしょうか。
この点について改めて見解をお示しください。
○国務大臣(森まさこ君) 国会において、改正法案について与野党から修正の提案がされ修正案が可決されたことについては、法案の立案を担当した法務省としても重く受け止めております。
もっとも、改正法案は、法制審議会に設置された専門部会において、ただいま委員が御指摘くださったように、約二年間、合計十九回にわたって開催し、精力的に審議を尽くした結果、最終的に法制審議会の総会において全会一致で取りまとめられた要綱に基づき立案されたものでございます。
同部会は、個人株主や提案権を行使する株主の立場を代弁する委員を含め様々な分野の有識者によって構成され、その調査審議の過程においては、中間試案を取りまとめ、これをパブリックコメントの手続に付した上、そこで寄せられた意見も踏まえて多角的な検討が行われたものと認識しております。
このように、改正法案は、法制審議会における精力的な調査審議の結果を踏まえて立案されたものであり、必要かつ十分な検討が行われたものと考えております。
○高良鉄美 冒頭に女性の取締役の関連のお話をしましたが、そういった問題など、あるいは、ほかのいろんな法改正の問題のときには五年や十年といったような審議もあります。しかしながら、そういったような改正の中で審議を重ねてきたということについては、先ほど答弁なさったとおりだと思います。
しかし、ずっとここで議論されてきた問題について、今回の会社法の改正は、株主総会資料の電子提供制度、これについてもいろいろ議論がありました。取締役の報酬に関する規定も問題がありました。会社補償あるいはDアンドO保険等、あるいはインセンティブを付与する規定、こういったことについても質疑がありました。
こういったものを見てみると、会社は誰のものかといったときに、この会社自身や取締役にとって有利であるような規定が多いというような感覚を受けるわけですけれども、株主提案権の制限、あるいは株主総会資料は請求しないと書面が交付されないと、これ意外な問題で、私もメールぐらいでは大丈夫かなと思っていたんですけれども、かなりデジタルデバイドの問題というのは深刻であるということがありましたので、そういった問題ももっと議論が必要じゃないかということがあります。
そういった意味のものと、会社は会社自体や取締役のためのものである部分と、それから住民や従業員その他の者にも関連するということは大臣もお話がありました。先日の参考人質疑で木村参考人は、政府がすべきことは株主総会の活性化であり個人株主の権利を制限することではないと述べられました。
今回の改正について、会社は株主のものであるという観点から妥当と言えるのかということで、まだ御質問大丈夫でしょうか、大臣のお考えをお聞きします。
○委員長(竹谷とし子君) お時間が過ぎております。森大臣、簡潔に御答弁お願いいたします。
○国務大臣(森まさこ君) 改正法案では御指摘のような改正をしておりますが、株主総会における審議の時間等が特定の株主からの提案のみに割かれないようにすることで他の株主からの提案にも十分な審議時間を確保することを目的としたものであり、株主総会の審議の充実を図るためのものでございます。
○高良鉄美 時間が過ぎましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、緊急性、必要性、そういったものを考えると、なかなか今回の改正について積極的に、うん、これで間違いないというふうな気持ちがまだ難しいところでございます。
ありがとうございました。