国会質疑 Interpellation

2024年6月11日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・牛島司令官の辞世の句について

・日独ACSAについて

・情勢分析や見解について

議事録

第213回国会 参議院 外交防衛委員会 第19号 令和6年6月11日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 条約の質問に入る前に伺います。
 六月四日の本委員会で、沖縄戦を指揮した牛島司令官の辞世の句が陸上自衛隊第一五旅団の公式ウェブサイトに掲載されていることについて削除を求めたところ、木原防衛大臣は、情報発信の趣旨が正しく伝わるように努める必要はあると答弁されました。
 これ、趣旨が正しく伝わっていないのではありません。司令官の句は、戦略持久戦で捨て石として沖縄県民を犠牲にした第三二軍が皇国を守ったという考えに基づき作られたということを正しく認識すべきです。
 今月二十三日に慰霊の日を迎えますが、沖縄県民は削除しない防衛省・自衛隊を受け入れるわけにはいきません。岸田総理も沖縄入りし、追悼式で言葉を述べられますが、削除しなければ犠牲者の霊を慰めることなどできません。
 早急に削除すべきではないですか。
○国務大臣(木原稔君) 御指摘の記載に関しましては、様々な御意見があるということを承知しております。
 当該ホームページの記載につきましては、一五旅団の前身部隊である臨時第一混成群の部隊史を基に、沖縄の本土復帰直後の歴史的事実を示す史料として、ホームページ内の部隊の沿革を紹介するページに掲載されているということでございます。
 前回の委員会でもお答えしましたが、いかなる情報発信であれ、その趣旨が正しく伝わるよう努める必要がございます。また、こうした情報発信を含め、部隊の、自衛隊の活動には地元の御理解を得ることが不可欠であるとも思っております。
 いずれにしましても、ホームページの記載内容を含めて部隊の情報発信の在り方につきましては、日頃から地元の方々と身近に接して地域の実情に通じている、沖縄に限らず、全国の陸海空自衛隊三百の、約三百の駐屯地や基地がございますが、各部隊において、最も地域住民と密着して地域の実情を知るそういう部隊の判断、対応するものというふうに考えております。
○高良鉄美君 大臣、これ簡単に考えたらいけませんよ。慰霊の日がいつ定まったのかというと、復帰後じゃないですよ、一九六五年です。立法院が定めたんです。この慰霊の日というのは、もうすぐですけれども、この時期、六月というのは、もう最後の決戦という状況なんですよ。そうすると、もう南部ではどんどんどんどん人が、遺体が転がっているわけですよ。そんな状況で、なぜここまでその当時延びたかという問題を真剣に考えないと、これ簡単にいかないですよ、本当に。
 そういう意味では、もう何か県民のこれだけの思いに寄り添っているようには思えないわけですよ、この神経というのが。ですから、しっかり、もう琴線に触れるんだと、県民の、そこまで思っていただいて、もう削除すべきだということをもう一度私は訴えたいと思います。しっかりやるべきですよ。
 次に、日独ACSAについて伺います。
 この日独ACSA一条の(1)(a)、自衛隊及びドイツ軍の双方参加を得て行われる訓練には、米軍も参加する多国間の合同訓練が含まれるのか、外務省に伺います。
○政府参考人(中村仁威君) 日独ACSA第一条(1)(a)に定めます双方の参加を得て行われる訓練には、日独に加えて、アメリカなどが参加する多国間の共同訓練も含まれます。
○高良鉄美君 これでACSAの今回の性質がよく分かったと思います。日独ですけれども、これ日独の問題じゃないということですよね。先ほどありましたけれども、七か国目ということですから、その間で全部いろんな弾薬を含め物品や役務が提供されていくということなので、その位置付けということもきちんと見ないといけないということも今の質問には含まれていました。
 続きまして、同じく、同一条の(1)の(d)ですね、締約国部隊の艦船又は航空機による他方の締約国の領域内の施設への訪問を含むとありますが、この施設には米軍基地が含まれるのでしょうか。
○政府参考人(中村仁威君) 日独ACSAの付表におきましては、提供する物品、役務として施設の利用や空港・港湾業務が挙げられており、これには自衛隊基地を一時的にドイツ軍の利用に供することが含まれます。
 しかし、在日米軍施設・区域は米軍に管理権を付与していることから、日独ACSAの下で日本側がドイツ側に提供する物品、役務としては基本的には想定されないところであります。
○高良鉄美君 日本とこの七か国ですね、七か国目ですけれども、その物品の間はACSAがあるからということですけれども、米国もいろんな国々とACSAを持っているわけですよね。そうすると、米軍基地というのはACSAがあるのと同じじゃないですか。そこを考えると、やっぱり米軍基地も含まれると考えるべきだと私は思いますけれども。
 ですから、そういった訪問をするというのは、前回、オランダの問題がありましたけれども、オランダ兵が沖縄に来たと。これ、訪問ということでしたのでね。こういうふうになってくると、どんどんどんどん、いろんな国の軍隊がどんどん入ってくるということも当然考えておかなきゃいけないわけで、その場合の対処もしっかり考えていかないといけないと思います。
 日独に限らず、これまで他国と結んだACSA全般について、提供物品、役務の施設の利用には射撃訓練場も含まれるでしょうか。
○政府参考人(熊谷直樹君) お答え申し上げます。
 これまで我が国が締結したACSAの下で提供される物品、役務の対象でございますが、これには施設の一時的利用が含まれております。射撃訓練場を含む自衛隊基地に関してもその対象から排除されるわけではありません。ただしでございますが、実際の提供に際しては、関係法令等を踏まえ、我が国として個別具体的に判断することになります。
 その上で申し上げれば、ACSAの下での相手国軍隊による我が国の施設の利用につきましては、会議室及び事務室等の利用を想定しているところでございます。
○高良鉄美君 想定しているのは会議室、事務室ということですけれども、今の答弁で、射撃訓練場も含まれ得るということなので、これ、宮古島市の保良というところに弾薬庫が今建設されています。そこでは、屋内射撃訓練場があります。三百メートルの射撃訓練ができるわけです、屋内で。そうすると、これ日本中の自衛隊が使うということにもなると思いますね、これだけの距離でしたら。大体百メートルのものが多いんですけれども。
 そういうと、こういった場合に他国の軍隊が宮古島の射撃訓練場をどんどんどんどん使うということになると、これは地域としてもそうでしょうけれども、やっぱりそういった地域との関連で問題が出てくるんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。
 同じく、日独ACSAの三条の二で、事前の同意がなければ受領締約国部隊以外には物品、役務を移転してはならないということがありますけれども、ということは、第三者への提供を前提としているのではないでしょうかということで、外務省、伺いたいと思います。
○政府参考人(中村仁威君) 日独のACSAにおきましては、提供された物品、役務の第三者への提供は排除されておりません。しかし、第三条において、協定の下で提供される物品、役務は締約国政府の事前同意を得ないでは受領する締約国政府の部隊以外の者又は団体に移転してはならないということを明確に規定しておるところであります。
○高良鉄美君 事前の同意が断れますかね。日本は、求められれば、これまでの様子からすると断れないんじゃないですか。何の歯止めにもならないんじゃないかなと私は思いますけれども。
 やはり、この第三者への提供も前提としているという部分がありますので、やっぱりACSAの問題をしっかり考えていかないといけないと思います。
 次に、この四条の(2)ですけれども、それぞれの国の法令が許容する範囲内という規定がありますけれども、この法令には憲法が含まれるのでしょうか。例えば、明確に安保条約、日米安保条約第三条のように、憲法上の規定に従うことを条件としてとするべきではないでしょうか。
○政府参考人(中村仁威君) 今委員御指摘のありました日独ACSAの第四条の(2)でございますが、この規定は、日独ACSAの下で提供する物品、役務に対して、日本では消費税を、ドイツでは付加価値税をそれぞれ課さないということを定める規定であります。ここで言いますそれぞれの国の法令というのは、我が国で申せば消費税など、これの、税金に係る、関係する国内法が該当するわけでございます。
 その上で申し上げれば、我が国が物品、役務を国内法令に基づいて提供するに当たっては、憲法の規定に従うことは当然のことでございます。
○高良鉄美君 安保条約のように、もう少し大きい範囲ということの場合に使っているということだと思うんですけれども、憲法上の規定というのは当然だと、従うのは。
 ということで、やっぱり、この日独ACSAの問題というのもやっぱり憲法の理念がしっかり入るべきだと私は思うんです。だから、そこがなし崩しでどんどんどんどんいろんな国が入ってくるというのは、これはやっぱり一度きちんと日本の理念は何なのかということを憲法に照らしてきちんと示していかないといけないんじゃないかと思います。それだけは意見として言っておきます。
 次に、情勢分析や見解について伺います。
 今回は資料をお出ししておりますけれども、今回も遠藤誉さんの論考を配付資料にしています。
 配付した資料一の三枚目を御覧ください。
 図がありますけれども、日本はパレスチナの国家主権を認めず、対ロ制裁をしています。この図の中でですね。しかし、国交を樹立していないのは四十七か国で、百三十一か国がパレスチナと国交を樹立しています。また、対ロ制裁をしている国も四十七か国で、百三十一か国は制裁をしていません。この百三十一か国というのは世界人口の八五%を占めます。そこが対ロ制裁をしていないわけですし、またパレスチナとは国交を持っているということですね。
 そこで、上川大臣に伺います。
 イスラエルの蛮行と、それを止めようとしないどころか支援すらするG7の行動のため、世界の中でますますG7が孤立化する流れが強まっています。イスラエルを強力に支援するドイツとの軍事的結び付きを強めることは、グローバルサウス又はグローバルマジョリティーから見た日本の評価を更に悪くするのではないでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす中、我が国は、G7を始めとする同盟国、同志国との多層的な連携を通じまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けました外交に積極的に取り組んでまいりました。
 イスラエル・パレスチナ情勢につきましても、私自身、事態の早期鎮静化とガザ地区の人道状況の改善に向けまして、関係国への直接的な働きかけ、またG7及び安保理の一員としての外交努力を粘り強く積極的に続けてきたところであります。さきのイタリアにおきましてのG7外相会合におきましても、G7として、ガザ地区南部ラファへの全面的な軍事作戦に反対を表明するなど、現下の情勢に緊密に連携して対応していくことで一致をしたところでございます。
 その上で、日独両国でありますが、自由、民主主義、人権及び法の支配という基本的価値を共有する重要なパートナーであります。日独ACSAを含みますドイツとの連携強化は、我が国の安全保障に資するのみならず、日独両国が国際社会全体の平和及び安全に積極的に寄与することにつながるものと考えます。
 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、グローバルサウスを含みます全ての国にとりまして平和と繁栄の基礎であることから、ドイツを含む同志国とのあらゆる協力の取組はグローバルサウスを含みます幅広い国際社会に裨益するものと考えております。
○高良鉄美君 資料の一の図がありますけれども、この図を見ると、G7というのはどこにあるかと。この黄色い部分ですけれども、こういったところに位置付けられるということで、一目瞭然です。三十か国ぐらいの中にしか入っていないということですね。
 アメリカ合衆国の下院は、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防大臣に対する逮捕状を求めた国際刑事裁判所、ICC関係者に制裁を科す法案を可決しました。また、米国務省報道官は、国際刑事裁判所はロシアを起訴する権利はあるが、イスラエルを起訴する権利はないと述べていますが、日本も同じ考えでしょうか。アメリカとイスラエルのこの行動を批判しないのでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) ICCの第一予審裁判部は、パレスチナの事態に関しますICC検察官からの逮捕状の請求につきまして、今後、本件請求及び検察官が提出をした証拠その他の情報を検討した上で、逮捕状を発付するか否か判断するものと承知をしております。
 我が国といたしましては、一般論として、ICCは、ローマ規程を始めとする関連のルールに基づき中立公正で公平な手続を行うべきである一方、ICCの独立性は尊重されるべきとの立場でありまして、こうした立場に基づき対応してまいります。
○高良鉄美君 やはりアメリカに一辺倒にならないように今注意をなさって、そしてICCの立場、それから成り立ちも含めて中立に見ていくということですので、やはりアメリカに寄り過ぎた場合には、もう日本の場合、この憲法前文の、国際社会の先ほど構造を言いましたけれども、大部分のグローバルマジョリティーから外れていくということが懸念されるわけです。ですから、憲法前文で言う名誉ある地位を占めたいと思う、こういうことから離れないようにしていただきたいと思います。
 西側諸国の働きかけにもかかわらず、多くの国が中国やロシアとの関係を維持発展させる理由を外務省はどのように分析されているでしょうか。
 例えば、NATOのセルビア空爆は、安保理決議はなく、自衛権行使の際に国連憲章上要求される安保理への通知もないことが私への答弁で明らかになりました。つまり、国際法上違法だと外務省も知っているということです。
 NATOは自ら侵略を行い、日本は、これを非難せず、ロシアのウクライナ侵攻は声高に批判をする。こういったダブルスタンダードが西側が信頼されない理由の一つだとは考えないでしょうか、外務大臣。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のNATOの行動についてでありますが、当時のユーゴスラビア政府が和平合意案をかたくなに拒否をし、他方で国連安保理決議に反した行動を取り続ける、こうした中におきまして、更なる犠牲者の増加という人道上の惨劇を防止するためにやむを得ずとられた措置であったと理解をしております。
 一方、ロシアによるウクライナ侵略につきましては、ロシアが一方的にウクライナに侵攻し、ウクライナの主権と領土一体性を侵害しているものでありまして、我が国も賛成した関連する国連総会の決議におきましても、国連憲章第二条四に違反するものとされております。ロシアによるウクライナ侵略が武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であることは、これまで多くの国が述べてきたとおりでございます。
 したがいまして、事情が異なるこれらの行動を同列に扱うということは適当ではなく、ダブルスタンダードとの批判は当たらないと考えているところでございます。
○高良鉄美君 次の記事ですけれども、今日お出ししていますけれども、遠藤さんは、記事で、ロシアがウクライナを侵攻したことは、ロシア以外は誰も良いことだとは思っていないだろう、中国もそれを肯定しているわけではない、それでも対ロ制裁をしないのは、アメリカがウクライナを使ってロシアがウクライナ侵攻する以外にないところまでプーチンを追いやったことを知っているからに違いないと述べています。
 これに関連して伺います。
 遠藤誉さんの論考では、中国が、世界の多極化を加速化するため、積極的に動き、成果を上げていることが示されています。一方、ロシアも、単にウクライナ戦争で勝利するというレベルではなく、世界の多極化を加速する戦略目標のために動いており、例えば、今月五日から八日に開催されたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムには、世界百二十八の国と地域から政財界のリーダーら一万二千人以上が参加しています。パレスチナ・イスラエル戦争がロシア経済の追い風になるという皮肉な結果となったことが分かります。
 二〇二三年の購買力平価GDPランキングでは、これも資料二の方にずっとリストがありますけれども、一位中国、二位アメリカ、三位インド、四位日本、五位ドイツ、六位ロシアでしたが、資料二の中で、世界銀行を始めとする複数のデータでは購買力平価GDPでロシアは日本を追い抜いたということです。プーチン大統領は演説で、ロシアは購買力平価GDPで世界第四位を占めていると述べています。
 購買力平価GDPで見ると、二〇二二年にロシアがドイツを抜いてヨーロッパ一位になった。ロシアが大きく経済成長をし、ドイツが経済的に停滞する理由をどのように分析されているでしょうか、お伺いします。
○国務大臣(上川陽子君) まず、ロシアの購買力平価GDPがドイツを上回ったということでありますが、この要因として考えられるものを申し上げれば、ロシア経済は、ウクライナ侵略開始以降に落ち込みも見られましたが、政府、中央銀行によります政策支援、大幅な財政出動の下、経済の回復が続いていることが挙げられます。
 また、近年のドイツ経済の停滞の要因といたしましては、このロシアによるウクライナ侵略開始以来のエネルギーや食料品価格を中心とした物価上昇を受けた消費の低迷等が指摘されていることは事実でございます。他方で、現在では、ピーク時と比較をし、物価上昇率は落ち着きつつあるものと承知をしております。
 いずれにいたしましても、この指標のみで両国経済を比較することは困難でございまして、政府といたしましては、引き続き、両国の経済情勢や、また関連の国際情勢、これを注視してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 やはりいろんな、多角的に見ていくということで今大臣からお答えありましたので、それも含めまして、この資料で、中国やロシアの外交がいろんな国に、特にグローバルサウスあるいはグローバルマジョリティーの方にどんどん行っているということを見て、やっぱり外交の力、非常にまた大変だと思いますけれども、大臣、しっかりまた発揮していただきますようお願い申し上げまして、私の訴え、訴えじゃないですな、質疑を終わりたいと思います。
 ありがとうございます。