国会質疑 Interpellation

2024年5月21日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・第三国による在沖米軍施設の使用について

・密約問題について

議事録

第213回国会 参議院 外交防衛委員会 第14号 令和6年5月21日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 第三国による在沖米軍施設の使用についてお伺いします。
 配付資料一の沖縄タイムスの新聞記事を御覧ください。
 オランダ軍の海兵隊の三人が、三月、米軍北部訓練場で行われた米海兵隊の訓練プログラムに参加していたというものです。第三海兵隊師団のSNSによると、米軍の第四海兵連隊とオランダ軍の海兵隊員が、三月十日から二週間、北部訓練場で訓練したということです。
 北部訓練場は、世界自然遺産のやんばるの森に隣接していて、訓練の規模によっては環境への影響が懸念されています。県道から訓練場に入る米軍のトラック内にいる迷彩服とは異なる格好の兵士を目撃した住民もいます。第三国による在日米軍施設の使用をめぐっては、一九七一年、復帰前年のいわゆる沖縄国会で、当時の福田赳夫外相が安保条約下では認められないとする見解を示しています。
 外務省は、沖縄タイムスの取材に対し、オランダ海兵隊の訓練参加は、訓練には参加せず、視察を目的に訓練場に立ち入った、民間機で通常の手続で入国したということでした。
 上川大臣に伺いますが、外務省はそのことを事前に把握されていたのでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) この二〇二四年の三月十日から約二週間程度でありますが、三名のオランダ海兵隊員が、北部訓練場にて米海兵隊が実施している訓練の視察等を目的として同訓練場に立ち入ったものの、訓練自体には参加していないものと承知をしております。
 政府としては、米国及びオランダを含みます関係国と日頃から様々なレベルでやり取りを行っているところであります。このやり取りの詳細につきましては、相手国との関係もございましてお答えすることは差し控えさせていただきますが、在日米軍による施設・区域の使用は日米安保条約及び日米地位協定に基づいて行われておりまして、今回のオランダ海兵隊員による訓練の視察等も日米安保条約及び日米地位協定に整合的な形で行われたものでございます。
○高良鉄美君 事前に把握していたかということでいうと、もう把握していたということでよろしいですかね。そうすると、この安保条約の下でということですが、この安保条約、地位協定、これは先ほど説明しましたようにちょっと否定をしているわけですね、認められないと。
 かつて、英国海兵隊の将校が沖縄県の在沖米海兵隊のキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンで米海兵隊の訓練に参加していたことが英国政府への情報公開請求で明らかになり、衆議院外務委員会で取り上げられました。
 この配付資料二を御覧ください。
 玉城デニー沖縄県知事が衆議院議員だった二〇一七年の外務委員会で質問をしています。外務省は、基本的には米国以外の国の方が使用することは日米安保条約上認められないとした上で、外務省は、この件については文書で事前のやり取りがあったと答弁しております。
 今回も同様に文書でやり取りをされたのでしょうか。上川大臣に伺います。
○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 米国との間では、今回の本件に関する事前の文書でのやり取りは行ってございません。
 いずれにいたしましても、在日米軍による施設・区域の使用は日米安保条約及び日米地位協定に基づいて行われておりまして、今回のオランダ海兵隊員による訓練の視察等も、日米安全保障条約、安保条約及び日米地位協定に整合的な形で行われたものでございます。
○高良鉄美君 この英国の軍人の入国の際には公表できたものが、なぜ今回公表できていないのかと。
 それでいうと、ないといっても、これ、やっぱりこの辺り、きちんと日付を含めた文書を公開するよう委員長にお取り計らいをお願いします。
○委員長(小野田紀美君) 後刻理事会で協議いたします。
○高良鉄美君 防衛省は、英国軍人が入国した際には、米軍が外国の軍隊とともに国内の施設を利用して訓練するという報告や連絡は特に受けていないということでしたが、今回のオランダ海兵隊員の視察について、事前に防衛省に連絡は受けていたか、あるいは把握されていたのでしょうか。木原大臣に伺います。
○国務大臣(木原稔君) 高良委員の御指摘のその英国軍人の案件というのは、平成二十八年、二〇一六年七月、キャンプ・シュワブにおいて、米英間の軍人の交流プログラムに基づく交換将校として米海兵隊に所属する英国軍人が、米軍の一員として米軍の訓練に参加した事例を指しているものと認識しております。
 これに関しては、防衛省は、平成二十九年三月十七日の衆議院での外務委員会において、事前の連絡は特に受けていない旨の答弁をしています。
 今回のオランダ海兵隊員による視察についてですが、沖縄防衛局は在沖米軍から事前の連絡を特に受けてはいなかったとの報告を私は受けておりますが、今回のオランダ海兵隊員は、訓練には参加せず、視察等を行うにとどまったものと承知をしております。
○高良鉄美君 いろんな軍の兵士が、分からないで、防衛省分からないで、通知も来ないでどんどんどんどん入ってくる。これ、特定の米軍のというのだったら分かるけれども、米軍の中にどこから一体入ってきているのか分からないというのは、これは、これ、今、沖縄を含めて日本の中でどこの米軍基地でもあり得ることですよね。だから、それ考えると、きちんとこれ、主権の問題としてこれ大問題だと思います。
 配付資料の三を御覧ください。これ、二〇一〇年三月十九日に衆議院外務委員会で行われたいわゆる密約問題に関する集中審議の議事録です。
 五ページにありますように、東郷和彦さんは、外務省条約局長時代に日米密約に関する資料の整理を行い、全資料五十八点のリストを作成し、そのうち最重要資料十六点に二重丸を付記したとあります。
 六ページを御覧ください。
 民主党政権時代に、有識者委員会で密約に関する調査が行われました。その報告に関し、東郷さんは、五十八点のリスト全部は今回発表されていないというふうに思います、二重丸を付けた文書のうち、八点、今回発表されました、残り八点については、私は見ておりませんと発言されています。
 その後の発言は極めて重要です。外務省の内情をよく知っていると思われる人から、情報公開法の施行の前に、本件に関連する文書も破棄されたという話を聞いたことがありました、私の個人的感触を申し上げれば、私が残した文書の全部は残っていないと発言されています。
 東郷さんのこの発言を受け、外務省に外交文書の欠落問題に関する調査委員会が設置され、二〇一〇年六月四日に報告書を提出しております。この報告書では、組織的、意図的な廃棄は確認されなかったとしつつ、文書の幾つかが廃棄された可能性は小さくないとしています。
 やはり、組織的、意図的に破棄したのではないかとの疑念を持ちますが、質問しても調査委員会報告以上の答弁は期待できないので、次の点を伺います。
 東郷さんが言及された五十八点の資料リストは、配付資料三の五ページにあるように、密約問題に関する有識者委員会に提出されていますので、外務省もお持ちのはずです。五十八点のうち外務省で現在も存在を確認できない資料は何点あるのでしょうか。また、東郷さんのおっしゃる最重要資料十六点のうち外務省で現在も存在を確認できない資料は何点あるのでしょうか。それぞれお答えください。
○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 御指摘の資料リストに関しましては、東郷和彦氏がいわゆる密約問題に関する有識者委員会に対して提出した文書に含まれていたものでございまして、有識者委員会は提出された文書を踏まえて報告書を作成したと承知しております。
 二〇一〇年、平成二十二年の六月に公表されました外交文書の欠落問題に関する調査委員会報告書におきましては、東郷氏が指摘している文書リストを含む引継ぎメモについて、上記有識者委員会への提出以前に知る者は東郷氏本人以外に確認できなかったという見解が示されております。このような状況におきまして、同リストの中に外務省で存在を確認できない資料が幾つあるかにつきましては、確たることを申し上げることは困難でございます。
 いずれにいたしましても、いわゆる密約問題につきましては、外務省においていわゆる密約に関する可能性のある四千を超えるファイルを全てを対象に徹底した調査を行いまして、その結果及び多数の関連文書を二〇一〇年、平成二十二年の三月に外務省として公表したとおりでございます。
○高良鉄美君 欠落しているものについてどうするかということですけれども、四月二十三日の本委員会で、欠落している外交文書について、私が、生存している関係者がいるならできる限り復元をと求めたところ、外交当局自らが存命の関係者に取材等を行って外交資料を復元するといったことは考えていないと答弁されました。
 これ、先ほどの、東郷さん本人しか分からないということですけど、本人はいますので、これきちんとやっぱりフォローしないといけないと思います。欠落を放置するということがどんな損失かということも考えないといけないと思います。しかし、これは文書がきちんと記録、保存されて初めて言えることです。外務省が重要な外交文書についてもし破棄やこの後指摘するような改ざんを行っているとすれば、とてもそんなに、そんなことを言う資格はありません。
 この辺も含めて、先ほどの点、しっかり見ていきたいと思いますけれども、その重要な外交文書の改ざんの話ですが、矢部宏治さんの「知ってはいけない2」には、核密約をめぐる日本政府の最も重要な報告書が実は改ざんされていることが分かったという記述とともに、改ざんされたと矢部さんが主張する文書のコピーが掲載されております。その文書ですが、念のため、矢部さんの本からではなく外務省のホームページから取ってきました。一番最後の方に付いている配付資料四ですけれども、それを御覧ください。
 配付資料四は、なぜ一ページと二ページで文字間隔が違うのでしょうか。また、一ページ、二ページと異なり、三ページと四ページはページ番号がなく筆跡も明らかに違いますが、なぜでしょうか。外務省に伺います。
○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 御指摘の文書を含めまして、公表された文書の体裁等について現時点で確たることを申し上げることは困難であると考えております。
 いずれにしましても、いわゆる密約問題に関しましては、外務省においていわゆる密約に関連する可能性のある四千を超えるファイル全てを対象に徹底した調査を行い、その結果及び多数の関連文書を二〇一〇年、平成二十二年の三月に公表した、そのとおりでございます。
○高良鉄美君 この資料の中の方ですね、ちょっと実物よりも小さいので確認できないかもしれませんが、文字の詰め方が全然違うということですね、一枚目と二枚目が。一ページ目、二ページ目ですね。
 だから、そういった意味では、少なくとも二回改ざんが行われているということではないかと思います。そういった意味で、二回は改ざんされたんじゃないかなという以外に合理的な推測ができないんです。
 委員長、これも、実物といいますか、外務省の中である文書として、併せて取り計らうようお願いいたします。
○委員長(小野田紀美君) 後刻理事会で協議いたします。
○高良鉄美君 配付資料四で触れられた、一九六三年四月の大平・ライシャワー会談についてのアメリカ側の文書の配付資料五を御覧ください。
 これは大平外相との会談内容をライシャワー大使が本国に報告した文書です。有識者委員会の報告書二十二ページでも紹介されています。このアメリカ側の文書の重要部分の日本語訳が矢部さんの先ほどの本にあります。配付資料六の二十六ページからです。ちょっと読み上げます。
  アメリカ側の記録によれば、一九六三年四月四日、ライシャワーは大平をアメリカ大使公邸での朝食会に招き、話を始めます。
  たしかにアメリカは日本政府に対し、事前協議なしには核を持ち込まないと三年前の安保改定で約束している。しかし、問題はその「持ち込む(イントロデュース)」という言葉の意味だ。これは日本の陸上基地のなかに核兵器を常時配備するという意味であり、その点については日米で合意があったはずなのだが、と。
  その後の展開は、おおむね次のようなものでした。
 「ライシャワーの説明を聞いた大平は
 「つまり、「イントロデュース」は艦上の核には当てはまらないんだね」
  と尋ねた。ライシャワーが肯定すると
 「これまでは厳密な意味で使っていなかったが、今後はそうする」
  と約束した。
  ライシャワーはさらに、〔一九〕六〇年一月六日、ダグラス・マッカーサー二世と藤山愛一郎が署名した「討論記録」〔という名の密約文書〕を取り出して、大平に示した。大平は〔このとき〕討論記録の存在を初めて知らされたが、驚いた様子を見せなかったという。最後にもう一度、記録に目をやると
 「池田〔首相〕にも伝える。問題はないだろう」
  と言った。
 この一九六三年四月、以上紹介したような答弁で、大平外相とライシャワー大使とのやり取りがあった事実はあるでしょうかということですね。
 なお、外務省は四月二十三日の答弁で、私がわざわざ吉田茂総理の発言の有無についてのみお答えくださいと聞いたにもかかわらず、密約の有無について長々と答弁しました。
 今日は、密約の有無ではなく、このやり取りの有無についてのみ端的にお答えください。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のやり取りについては、一九六三年、昭和三十八年四月三日に大平外相とライシャワー大使が会食し、核兵器の持込みに関する米側の意向が表明された旨が、いわゆる密約問題に関する調査に際しての公表文書に記載されています。
○高良鉄美君 じゃ、これもあるということでよろしいですね。
 政府は、そもそも、こういった一部の重要な対米の約束をきちんと記録をしたり、あるいは引き継いだりしていないということがあるんだと思います。そういった意味で、これ、文書を含めてそういった交渉、やり取り、あるいは密約にしてもそうでしょうけれども、そういったものに対する姿勢というのが、一体この文書は何なんだろうということが一番大事だと思うんです。それは何かというと、大臣が、個人でとか、それこそ自分の腹積もりで、これ自分が地獄まで持っていくという、地獄とは言わないけど、冥途まで持っていくかというようなことで自分で取っておこうというふうに考えたら、これは大変なんですよね。ところが、往々にして日本の歴史の中でそういうことがある。
 だけれども、アメリカの場合には、この長官であれ大統領であれ、これ自分のものではないわけですよ、情報は。これは国家と国家がやっている約束ですと、密約にしてもですよ。だから、ちゃんと、その取扱いが違うので、何年かたったらこれは公開されていって、後の世代がこれを見るわけですよ。
 後の世代というのは国をつくっていく人たちですよ。それをしっかり保護する、あるいは期待をするということを、残してやっぱり考えて、この情報あるいは密約を今後はどうしていくんだと、参考にするための大臣が持っている情報じゃなくて、これはもう国家がきちんとやるべき、国民が主権者ですから、この主権者に知らせるための大きな情報です。これが、憲法構造上、やっぱり行政庁、大臣等々で持っていくものじゃない、これは、知る権利を持っている国民の憲法上の権利をきちんと行うということがすごく大事だと思います。
 時間来ましたけれども、こういうような問題はきちんと今後も引き続き取り上げることにして、私の質問を終わります。