国会質疑 Interpellation

2024年5月15日 参議院 憲法審査会

質問内容

・参議院の緊急集会について

議事録

第213回国会 参議院 憲法審査会 第3号 令和6年5月15日

○会長(中曽根弘文君) 高良鉄美君。
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 今日は、くしくも五十二年前に沖縄が平和憲法の下に復帰した日です。当時、県民は、平和憲法を持つ国と呼ぶにふさわしい日本に復帰することについて、政治的にも社会的にも憧れと希望を持っていました。やがて、この国の政府は平和憲法の理念を実現しようとしていないこと、今や崩していこうとさえしていることが分かり、県民は、大きな失望とともに、憧れは落胆に、希望は失望へと期待は裏切られました。
 法の支配に対する政府の無理解は、法の支配の連呼をしながら、国家権力の濫用を抑える立憲主義憲法の桎梏をあの手この手をしゃにむに外そうとする姿からも浮かび上がっています。
 憲法五十四条二項の国に緊急の必要があるとき、このときに開かれる参議院の緊急集会の規定があります。それにもかかわらず、緊急の際のというような形のこの緊急集会を取り上げて改憲議論に持ち込んでいるということも、法の支配の無理解の表れだと思います。
 この緊急集会の制度はマッカーサー草案にはありませんでした。これは、日本政府が強い要望を出して盛り込まれたものですけれども、そのときの要望は、明治憲法の八条の緊急勅令を念頭に置いていた、先ほどもあります緊急財政処分ですね、これも入れていたと言われます。日本国憲法制定過程での、先ほどからあります衆議院の憲法委員会の中でも非常に、法の支配に基づいた権力抑制の議論が、先ほど川崎参議院法制局長からもありましたように、そういう形で議論が進んでいる、しかも明治憲法についてと、その後の今の憲法の問題を捉えていたわけですね。
 そういった、やっぱり行政の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えたものであるということからすると、見事に国の国家権力の濫用を抑えて、緊急のときにはやっぱり参議院だけでも民主的に国会の権能を行わせる形を取り入れたというふうになっていると思います。やはりここでも、人の支配ではいかぬのだと、法の支配じゃないといけないと、これはお互いにもう対抗する概念ですけれども、国家権力の濫用を抑える見事な説明をしていると思います。
 今回も、この憲法審査会は、このような形で法の支配あるいは立憲主義の視点でこの緊急集会の議論を持ち出しているのか、大いに疑問があります。
 衆議院の任期延長の問題も、主権者の国民の側からすれば、なぜ任期が切れているのにわざわざ延長を試みて、しかも権力の一翼を担う機関が自らその地位を確保するために憲法を変えてまで実現したいのか、保身のように映るという声をよく聞きます。権力が目的のために自ら憲法を変えるのは、法の支配にもとるものであると言っていいと思います。別の意図があるのか、この緊急集会の議題が緊急事態になるということについては大きな問題があると思います。
 そして、国家緊急権という言葉があります。今、日本の緊急事態の問題については、もう法的に対処されていると見るべきだと思います。これはもう資料の中にあると思いますね。
 そして、実は、憲法保障という言葉をなかなか聞いたことないと思いますけれども、憲法保障というのは、憲法が自ら憲法を守るために作っている条項です。その中には憲法尊重擁護義務も入っています。最高裁判所が憲法の番人であるという旨も入っています。こうやって、憲法自ら憲法を守っていこうと、その憲法の視点というのは、やはり緊急事態とかそういう形のものも捉えているわけですね。
 ですから、国家緊急権というのが緊急の際に現れるのは、これは憲法を守るために国家緊急権を行使して、一時的に憲法を止めるかもしれないけれども、それが憲法保障の一種であるということを考えると、やはり法の支配の視点からこの問題もずっと捉えるべきだろうと思っております。
 ちょっと時間が来ましたので、終わります。