国会質疑 Interpellation

2024年5月9日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・防衛装備品の調達について

・自衛官教官と指導官の資質や適性について

議事録

第213回国会 参議院 外交防衛委員会 第11号 令和6年5月9日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 一九四五年五月八日、VEデーと言いますけれども、ビクトリー・イン・ヨーロッパですね、ドイツが降伏文書に署名して、欧州での戦争が終結しました。連合国は日本に対しても降伏を勧告しましたが、日本は五月九日、降伏勧告を拒否しました。
 当時、沖縄戦のさなかでしたけれども、首里城はまだ陥落しておらず、そのときに降伏していれば多くの命が助かったはずです。七十九年前の今日が、日本のみがもう戦争している状態になるということで、断固戦争に邁進すると降伏を拒否した日だということを申し上げ、質問に入ります。
 昨年六月の財政金融委員会との連合審査で防衛装備品の問題を指摘しましたが、本日も、関連して、防衛装備品の調達について伺います。
 私は、防衛費の増額やそれを賄う増税には反対です。それより先に防衛費の使い方の合理化を徹底して行うべきだと主張してきました。その姿勢が防衛省に見えないという視点から、本日も質問いたします。
 お配りした資料は、「軍事研究」二〇二四年四月号の抜粋です。軍事ジャーナリスト清谷信一さんが書かれた、「防弾プレートの価格はなんと他国の十倍 高額で調達進まぬ陸自最新型一八式防弾ベスト 陸幕/装備庁に装備品開発能力なし」という記事を御覧ください。
 性質の不合理、失礼、性能の不合理さについては記事の前半に多々書かれていますが、私が言うことではないので、委員の皆様にお読みいただければと思います。
 防衛省は、昨年度から陸上自衛隊の新型個人防弾システム、一八式防弾ベストを導入しています。配付資料の八十二ページにこの戦闘装着セットの構成品の単価が紹介されています。
 今日は財務省に来ていただいておりますので、価格について伺います。
 防弾板の価格が一つ三百四十一万円というのはあり得ない高価格だと思いますが、その後きちんと査定をして改善させたのでしょうか。財務省に伺います。
○政府参考人(寺岡光博君) お答え申し上げます。
 お尋ねの一八式防弾ベスト用の防弾板につきましては、令和六年度予算において単価三百三十万円で百セットを調達することを念頭に、諸器材購入費の内数として三・三億円が措置されてございます。
 当該防弾板につきましては、胴部のみに特化したより安価な海外製の防弾板に比べ、下腹部や上腕部等多くの部位をカバーするものであること、任務の必要上高い強度や軽量化を追求したこと等からこのような価格となっているものと承知してございます。
 令和六年度の単価である三百三十万円は、令和五年度の単価より若干価格が下がってございますが、同種の調達品と比べ依然高額な調達であると認識してございまして、このため、令和六年度につきましては、部隊の運用にとって喫緊かつ必要性が高いものに限定して予算措置を行う一方、今後防衛省において、防弾板の装備の在り方や調達方法を見直し、価格の低減に向けてしっかりと検討を進めていくと、このようになってございます。
 いずれにせよ、限られた予算を最大限効果的に活用して防衛力向上を図るため、財務省としましても、海外の調達、海外製の調達などあらゆる検討も踏まえた上で可能な限り効率的な調達を図っていく必要があると、このように考えてございます。
○高良鉄美君 今、国民の生活は非常に苦しいということを考えると、まず先に防衛費の増大というのは、こういうことをしっかりやった上で見せれば、ああ、なるほどというようなことがあるわけですよね。
 今日は会計検査院にも来ていただいております。昨年の連合審査でも伺いましたが、防衛省の調達価格について、外国政府の同種品の調達価格と比較した上で検査されてきたでしょうか、あるいは今後検査されるのか、会計検査院に伺います。
○説明員(長岡尚志君) お答えいたします。
 昨年令和五年五月三十日に委員に対しまして御答弁いたしましたとおり、これまでの検査の中では、例えば一般輸入による装備品の構成品等の調達について、外国政府の公表資料による調達価格との比較を行うといった経済性の観点からの報告も行っているところでございます。
 令和五年度の装備品の調達の検査に当たりましても、経済的な調達となっているかなどの経済性の観点も含め、多角的な観点から検査を実施してまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 やっぱり、この今日の資料の中に、これ長くありますので、そこをちょっと読んでいただくと、いろいろ安くなるというのはあるんですね。だから、こういった件も是非検査していただきたいと思います。
 少し長くなりますが、清谷さんの記事をはしょって紹介します。
 陸幕に取材したが、一八式防弾ベストの調達計画は事実上存在しないということだ、つまり何年までに何セット調達、戦力化するという計画が存在しない、これは陸自のほかの装備でも多々あることが軍隊としては失格だ、調達すること自体が目的化している、軍隊では何を、幾つ、いつまでに調達、戦力化して、予算は幾らになると納税者に説明する、それが議会で承認されて、メーカーや商社と契約する、この当たり前の調達計画を立てられないのは我が国だけである、陸幕では必要数を何年で調達、戦力化して、その総予算は幾らかが決まっていないから、一桁高い防弾板でも平気で採用できるのではないか、これはすぐれて政治の問題だ、政府は防衛産業の振興を宣伝しているが、これを直す気はないようだ、これを直さずに利益を上乗せしても、防衛産業の体質強化にはならない、むしろ弱体化が進むだけだ、また、国会が承認しないで調達が進むということは文民統制にももとっている、予算と人事を政治が管理することは文民統制の根幹であると厳しく指摘されています。
 防衛省に伺いますが、本当に計画はないのでしょうか。一八式防弾ベストは、何年までに何セット調達、戦力化する計画でしょうか。
○政府参考人(青柳肇君) お答えいたします。
 一八式防弾ベストにつきましては、これまで、令和四年度予算で約三千六百着、令和五年度予算で約七千五百着、令和六年度予算では六千着をこれ予算措置してございます。また、一八式の防弾ベスト用の防弾板、これにつきましては、令和五年度予算で約百式、令和六年度予算で約百式を予算措置したところでございます。
 今後の計画につきましては、これを明らかにすると自衛隊の能力が明らかになるおそれがあるということで、お答えは差し控えたいと思いますけれども、先ほど委員御指摘もありましたように、令和七年度以降の一八式防弾ベスト及び防弾板の調達につきましては、より効率的かつ速やかに必要数が確保できるよう、取得計画の見直しや価格低減の努力、こういうのも含めまして、整備の在り方、調達方法についてしっかりと検討してまいりたいと考えてございます。
○高良鉄美君 今のと関連して、記事の中でこの清谷さんは、陸自の調達で問題なのは、部隊の編成数しか装備を調達しないことだ、これは小銃から航空機まで同じであると、予備の装備がない、例えば小銃にしても、本来一定期間を過ぎれば劣化して故障が増えたり、命中精度が下がったりする、だから、普通は、メーカーに送り返して、調整して精度を回復させ、損耗部品は交換し、表面塗装もやり替える、これが陸自にはできていない、陸自の小銃はぴかぴかに地金が見えるものが多いが、これは手入れが行き届いているのではなく、劣化している証左でもある、対して海上自衛隊、航空自衛隊では、メーカーに送り返して整備させている、なぜ陸自だけできないのか、航空機にしても定期修理を必ず行うので、その予備があればその部隊でそれを使用できるが、陸自ではそれがないので部隊での可動率が落ちる、これは構造的な欠陥であり、整備予算を幾ら増やしても解消しないと批判されています。
 防衛省に伺いますが、陸自では本当に予備の調達をしないものなのでしょうか。仮にこの記事に誤解があるとして、そう誤解されるようなおかしな慣例はないのか、伺います。
○政府参考人(青柳肇君) お答えいたします。
 陸上自衛隊におきましては、御指摘のような予備の装備品という位置付けで調達を行っているわけではございませんけれども、例えば航空機につきましては、定期整備の計画も踏まえた機体の可動率を加味した上で必要な機数を取得するなど、部隊の運用に支障が出ないように、装備品ごとに必要な数量を精査し、計画的に調達を行っているところでございます。
 また、装備品の運用に当たりましては、各部隊において計画的に予防整備を実施するとともに、故障が生起した場合にも速やかに修理が可能な体制を取ることを通じ、任務に支障が出ないよう装備品の管理を行っているところでございます。
○高良鉄美君 先ほどの防弾板の数も百、百ということでしたから、能力が分かるということもあるんでしょうけど、聞いていて、少ないんじゃないかなと、それだけなんですかというようなことしか浮かばなかったんですね。ですから、やっぱり装備もきちんと余裕を持ってやるということが重要なことであり、私は、これだけの無駄遣いの問題をこの清谷さんも指摘しています。
 装備調達は国防のためにするのであって、既存の防衛産業の仕事維持のためのものではないと指摘し、最後に、装備庁や陸幕の開発指導能力、調達能力は失格レベルと言わざるを得ない、より高度で複雑な装甲車両や航空機の開発、調達能力がどのレベルか察しが付くだろう、このような当事者意識のない組織に何倍もの予算を与えれば、無駄遣いがより激しくなるだろう、優先するは防衛費の増大よりも防衛費の使い方、効率化の改革だ、開発、調達能力を抜本的に改善する必要があると締めくくられていることは、全くそのとおりだと思います。
 次に、昨年の六月三十日に防衛大学校の等松春夫教授が「危機に瀕する防衛大学校の教育」と題する告発を、告発文を公表されました。この告発文では、自衛官教官と指導官の資質や適性について問題視されています。
 例えば、海自の三佐が、前任地で金銭に関わる問題を起こした後、防大に送られ、学生たちを巻き込む補助金詐欺事件を起こした。また、防大の安全保障研究科を退学させられた別の空自の三佐が、ほとぼりが冷めると防大の学生舎の指導官に補職されていた。さらに、元海将の教授は論文盗作事件を起こしていた。このほか、ワシントンの日本大使館で部下の一佐に対する暴行事件を起こした陸将が防大教授に収まっていた等の事例を挙げていますが、これらは事実なのでしょうか、防衛省に伺います。
○政府参考人(三貝哲君) お答え申し上げます。
 まず、御指摘の件につきましては、防衛大学校におきまして、過去に保険金の詐欺事件や補助金搾取事件がございました。関係者を、これらの事件に基づき関係者を処分したことは事実でございますが、当該教授が自らの主張に基づく論考として、この根拠として必ずしも正確ではない部分もあると承知をしております。
 その上で、防衛大学校におきましては、近年、久保学校長の下、同校の教育や学生の生活、勤務環境など各種の改善に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、様々な御意見を踏まえつつ、不断の改善を図り、将来の幹部自衛官を養成する防衛大学校の教育がより良いものになることが重要であると考えております。
○高良鉄美君 校長が新しくなっていろいろ組織が変わると、気持ちも変わるというのもあると思います。是非努力をしていただきたいと思います。
 どんな組織でも問題を抱えた方はいますので、それを殊更に問題視するようなことではありません。ただ、告発は謙虚に受け止める必要があろうかと思います。
 等松さんは、現代の安全保障は単に兵器と人間の頭数が多ければよいというものではありません、刻々と変化する安全保障環境と技術革新に柔軟に対応できる想像力と論理的思考力を持つ幹部自衛官がいなければ、自衛隊を十全に機能させることは不可能です、にもかかわらず、幹部自衛官になるべき若者を養成する中枢である防大では、受験者の激減、学生の質の低下、パワハラ、セクハラ、賭博、保険金詐欺、補助金詐取、いじめやストレスからの自傷行為など、憂慮すべき事態が立て続けに起きる異常な事態が続いていますと指摘されています。
 木原大臣も、昨年十一月の衆議院安全保障委員会で見解を求められた際に、様々な御意見を踏まえつつ、防衛大学校も不断の改善を図りながら、将来の幹部自衛官を養成する大学校ですから、その防衛大学校の教育がより良いものになるように、ここも力を尽くしていきたいと答弁されています。
 この告発に対して、石破元防衛大臣は、集英社オンラインのインタビューで、一般論と前置きした上で、この告発の中で防衛大をより良い組織に改善するために有用だと思われる点を謙虚に受け止め、適切な対応を取ることが防衛省には求められるだろうと述べられています。
 特定の政治的立場にある外部講師を招き、防衛大生の前で講演をさせているとの指摘について、石破さんは、軍隊ほど、政治や宗教などから距離を置き、常に中立を求められる組織はない、国際法上は軍隊として認められている自衛隊の教育を担う機関において、特定の思想的傾向を持つ人物を招き、学生たちの前で講演や祝辞をさせることは、一般論としてふさわしいものではないと思いますと発言されています。
 さらに、石破さんは、国の独立とは国家主権そのもの、つまり領土、国民、統治システムです、国家の独立が侵されると、言論の自由や表現の自由といった国民一人一人の基本的人権も保障できなくなってしまいます、軍隊は、外部勢力に国家主権が侵害されようとしているとき、自らの危険を顧みることなくこの侵害を排除するための実力組織であり、国際法上は我が国の自衛隊も軍隊に当たります、つまり、基本的人権を守るための最後のとりでであり、国民の負託に応える実力組織なのです、防衛大はその自衛隊の幹部を養成するところですから、そこで不祥事が多発するようでは自衛隊の機能が阻害され、国の独立が守れないということにつながりかねません、だからこそ、ささいな欠陥でも迅速に改善されないといけないし、不断の改善が求められるのですと、とても重要な指摘をされています。
 木原大臣、この石破元防衛大臣の指摘は示唆に富むと思いますが、大臣はどのように受け止められるでしょうか。
○国務大臣(木原稔君) 防衛大学校ですが、近年、その学校長のリーダーシップもあって、各種改善に取り組んでおります、そういう報告を受けております。先ほど話題にあったその教授も含めた話合いの機会なども設けるなど各種の検討を重ねているという、そういうところであります。
 今後とも、そういった様々な御意見というのを踏まえながら、将来の防衛省・自衛隊の中核となる優秀な幹部自衛官を養成する防衛大学校ですから、その教育というものがより良いものになるために不断の改善に取り組んでいかなきゃいけないという、そういう考えでございます。
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 是非、この校長先生の、いろんな形で関わる方と、それから周りの人の努力、そして、必ずしもこの等松さんは、必ずしも駄目だ、駄目だと言っているわけじゃないんですよ。これも大事だ、大事だ、大事だということなんですね。
 これを考えますと、やはり石破元大臣が言われているように、基本的人権を守っていく、そこの最後のとりでが自衛隊なんだというような気持ちでいきますと、やっぱり法の支配の概念をきちんとこの防衛大学校やっていく。これはもう適正な手続、あるいは人権保障とか憲法の最高法規性をもっときちんと守っていくという、ここが一番大事なところだと思います。
 等松さんは、防大の上には陸海空の幹部候補生と幹部学校という、幹部候補生学校と幹部学校という幹部教育の機関があります、文官教官の比率が低く、教官の大部分が自衛官が占めるこれらの学校における教育内容は、防大以上に多くの問題を抱えています、幹部学校では在校中の三十、四十代の佐官クラス幹部の多くが安直なレポートを書いてお茶を濁し、ゼミ形式の授業では想像力に欠けた浅薄な議論しかできません、このような思考停止の中堅幹部が年々増えていくことに愕然としました、防衛大学卒業後、このような教育階梯を上がるたびに、まともな知性がそぎ落とされ、形式要件だけを満たす要領の良さと、建設的批判でさえ排除するパワハラ的習慣を身に付けた幹部自衛官が増えていきますと危惧されています。
 木原大臣、是非、この等松さんの指摘というのは、防衛大学校だけじゃなく、この防衛省全体についても有益な言葉じゃないかなと思います。是非とも一度お会いになってお話をされるといいんじゃないかなと思います。この辺りは、大臣の方、何か御見解ありますでしょうか。これ、通告していなかったですけど。
○国務大臣(木原稔君) 様々な御意見を踏まえながら、この防衛大学校、より良いものとしていきたいと思っております。
○高良鉄美君 時間がまだ前ですけれども、最後に、一番初め沖縄から始まりましたけれども、先ほど伊波議員のお話もありましたけれども、沖縄の状況は、今、沖縄県民が思っているのは、また戦前が来るんじゃないかとよくこれ言われますけれども、本当に、宮古、石垣の人たちを船に乗せてまた行くんですかと、あるいは飛行機に乗せて行くんですかと。こんな状況を決めているような状況では、これは県民の声と全く違うんですよ。
 先ほどもありましたけれども、攻撃対象になるということがはっきり分かって、基地を攻撃することについては、これは国際法違反ではないわけですよね。そうなると、沖縄はどうなるかというと、今どんどんどんどんミサイルが増えていますよね。そこはやはり、どのような防衛になるのか。沖縄戦でやらなければ、五月八日に降伏を受け入れていれば、十数万助かっているわけです。ですから、これは非常に重要な政治の問題でもあるし、やっぱり歴史を見ながら、私たちは考えていかなければいけないということを申し上げまして、私の質疑終わりたいと思います。
 ありがとうございます。