国会質疑 Interpellation

2024年3月21日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・法の支配について

議事録

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第213回国会 参議院 外交防衛委員会 第4号 令和6年3月21日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 昨晩、今情報の話がありましたけれども、石川、うるま市石川ですね、沖縄の、そこでの陸自の訓練場の予定地の問題で市民集会がありました。これはもう保革問わず、もうこの会館が満杯になる、一二〇%ですね、これほど今、寝耳に水だったというのが去年の十二月二十日ですね、二十日にあったことです。
 やはり、この前例のないという情報ということでしたけれども、沖縄にも、ちゃんとそういう前例のない情報を米軍並みに説明をするということを沖縄にも逆にやってほしいと思いますので、それをちょっと感想として申し上げて、質問に入ります。
 上川大臣にお尋ねします。
 大臣は所信で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化すると述べられました。法の支配に二重基準があってはならないと思いますが、外務大臣も同じ考えということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) ロシアによりますウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがすとともに、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしているところでございます。
 このような現実、これを踏まえますれば、国際法の誠実な遵守を通じた法の支配を目指すことが一層重要となっておりまして、全ての国は国際法上の義務を誠実に履行をする必要があると考えております。
 このような認識の下、我が国といたしましては、同盟国、同志国との連携を推進しつつ、対話と協力を通じまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に積極的に取り組んでまいります。
○高良鉄美君 今、ダブルスタンダード、二重基準のことを聞いたわけですけれども、これが法の支配を語る上では二重基準があっちゃいけないんじゃないかということをちょっとお伺いしたわけです。
 一九六七年十一月に採択された国連安保理決議二四二というのがあります。ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原などからのイスラエルの撤退を中東における平和に関する、平和に係る原則と宣言するなどとしています。総会決議ではなくて安保理決議ですので、法的拘束力があるものです。
 この安保理決議二四二は、上川大臣の所信にある法の支配の法に含まれると理解してよろしいでしょうか。
○政府参考人(藤本健太郎君) お答え申し上げます。
 御指摘の一九六七年に採択された安保理決議第二四二号は、国連憲章の原則を達成するためには、中東における公正で永続する平和を確立することが必要であり、それには第三次中東戦争によって占領した領土からのイスラエル軍の撤退を含む諸原則が適用されなければならないことを確認する旨規定しております。
 この決議に基づく取組については、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し強化するに当たって重要な役割を果たしているものと考えております。
○高良鉄美君 今答弁ありましたように、このルールに基づく国際秩序及び法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し及び強化するに当たって重要な役割を果たしているということが、この国連決議の二四二に基づく取組のことを言っているわけですね。
 この二四二は十分特定されていて、大臣所信に言う法の内容が特定できているなら、これはもう含む、含まないと端的に答えるのに何ら障害はないはずですけれども、今曖昧に何か答えていますけれども、これだけあればもう法の支配の法であるということですよ。それをちゃんと言ってほしいということですね。
 昨年十一月十一日、サウジアラビアで開かれたアラブ・イスラム共同臨時サミットで、パレスチナ人民に対するイスラエルの侵略について決議が行われました。お配りした資料の一ページですね。一枚めくっていただいたところにありますけれども、この決議の十三には、国際法の適用における二重基準を非難し、二重基準はイスラエルを国際法から保護し国際法よりも上位に置く国家の信頼性と多国間行動の信頼性を著しく損ない、適用の選択性を露呈させるものであると警告しています。要するに、国家の信頼性と行動の信頼性というのが最も重要だということを言っているわけですね。しかし、それを、イスラエルには二重基準を与えて保護しているということですね。
 上川大臣は所信で、ハマス等によるテロ攻撃を改めて断固非難します、その上で、ガザ地区の人道状況の改善が目下の最優先課題ですと述べられました。
 御参考までに、昨年、国連のグテーレス事務総長からの発言はこういうことでした。ハマスによる攻撃は何もないところで突然起こったのではないことを認識することも重要だ、パレスチナの人々は五十六年間、息苦しい占領下に置かれてきている、彼らの土地は入植地によって着実に食い荒らされ、暴力に悩まされ、経済は抑圧され、人々は家を追われ取り壊されてきた、自分たちの苦境を政治的に解決したいという希望は消えつつある、しかし、パレスチナの人々の不満はハマスによるひどい攻撃を正当化することはできないし、そうしたひどい攻撃はパレスチナの人々に対する集団罰を正当化することもできない。
 十分であるかは別にしまして、バランスの配慮があるグテーレス発言と比べ、過去にイスラエルが行ってきたパレスチナへの侵略や今回のガザでの行動を批判しない上川大臣の発言は、一方的にイスラエルの側に立つ全くバランスを欠いたものであるということが分かります。これで法の支配というふうに述べたところで、相手にしてくれるのは、恐らくG7や、アメリカ、こういった、に追随する国だけではないかなということですね。
 資料二の方に、この朝日新聞の見開きですね、A3になりますけれども、この地図があります。昨年十月のハマスの攻撃の件と切り離してちょっと考えますと、ヨルダン川西岸地区について見るだけでも、右の方にありますけれども、イスラエル側の入植の進行、イスラエル側による入植地の地図を御覧ください。
 イスラエル側がヨルダン川西岸を侵食し、この地域でのパレスチナの領域は幾つにも分断された小さな領域に限られてしまったことが分かります。日本は承認していませんが、パレスチナを国家と承認している国は二〇二一年時点で百三十八か国に上ります。イスラエルの行動は明白な国家への侵略です。
 余り報道されませんが、ヨルダン川西岸を侵略するイスラエルの行動は、今回のガザ紛争開始後、更にエスカレートしています、今ですね、今日、今日ですね。撤退を求めた安保理決議に反し、イスラエルは国際法違反の力による一方的な現状変更をしています。
 日本政府は、ウクライナに武力侵攻したロシアに対しては世界への働きかけや経済制裁などを行っています。ロシア非難の決議は拘束力のない国連総会決議ですが、イスラエルについては、国連決議のみならず、安保理決議も付いています。
 日本がイスラエル批判を各国に呼びかけたり、働きかけたり、経済制裁をしない理由を教えてください、大臣。
○国務大臣(上川陽子君) まず、ロシアによりますウクライナ侵略は、これは武力行使を禁じます国際法の深刻な違反でございまして、国連憲章の重大な違反であります。
 これに対し、今般のガザ地区におけるイスラエルの行動は、ハマス等によるイスラエル領内へのテロ攻撃、これを直接のきっかけとするものでありまして、ロシアが一方的にウクライナに侵攻している行動と同列に扱うということは適当ではないと考えております。
 その上で、イスラエル・パレスチナ紛争につきましては、我が国といたしましては、二国家解決の下で当事者間の交渉によって解決されるべきという立場から、イスラエルを含みます当事者に対し、一方的行為、これを控えるよう強く求めてきております。この点、イスラエルの入植活動につきましては国際法違反であり、また二国家解決の実現を損なうという立場から、入植活動を完全に凍結するようイスラエルに対して強く求めてきております。
 引き続き、今、今次の事態の早期鎮静化、また人道状況の改善に向けまして外交努力を粘り強く積極的に進めていくとともに、国際社会がまさに支持をする二国家解決の実現に向けまして、日本としては、平和と繁栄の回廊構想など、日本独自の取組などを通じまして当事者間の信頼醸成に取り組んでまいります。
○高良鉄美君 二重基準の話をスタートしたのは、これはやはりウクライナ問題、それからイスラエル問題、態度も違うんじゃないかと。そして、イスラエルについてはどうしているんだということが、今のいろんな世界情勢から、グローバルサウスなどからもう不信の目で見られているということがあるということですね。
 資料一ですが、先ほど触れたもので、二重基準について触れられているというのは、これはアラブ諸国がそういうふうに考えられるということなんです。それで、先ほどの安保理決議も列挙されていますけれども、このアラブ・イスラム共同臨時サミットの参加者、参加国の数は五十七か国で、対ロシア制裁に参加している国より多いということです。
 これで、いいかげんに、G7というのは普遍的価値を共有しているとかあるいはG7が世界を主導しているといった幻想はほかのグローバルサウスやほかの国々から見るとどうなのかということで、こういった幻想はやっぱり考えなきゃいけないだろうと、西側の道義的優位性が世界で受け入れられているというのはちょっと考え直した方がいいと思います。
 NATOのセルビア攻撃について伺います。
 これ、元外務省国際情報局長の孫崎享さんの「同盟は家臣ではない」という本の一部で、四ページぐらい、四枚ぐらいありますけれども、その中に、安倍元総理の発言があります。総理は、安倍元総理はこういうふうに言っています。かつてボスニア・ヘルツェゴビナが分離独立した際には西側が擁護したではないかと、その西側の論理をプーチンは使おうとしているのではないかと思う、これが安倍元総理の発言なんですね。
 ちょうど二十五年前の一九九九年三月、米国が主導したNATO軍がコソボを含むセルビア全土に向けて空爆を開始しました。国連憲章上、武力の行使が認められるのは、安保理決議がある場合と集団的自衛権を含む自衛権の行使の場合のみです。セルビア空爆について安保理決議はありません。
 上川大臣にお尋ねをしますが、NATOのセルビア空爆は、国際法上、合法でしたでしょうか。合法と考えるのであれば、法的根拠を教えてください。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘のNATOの行動についてでございますが、当時のユーゴスラビア政府が和平合意案をかたくなに拒否し、他方で、国連安保理決議に反した行動を取り続ける中にありまして、更なる犠牲者の増大という人道的、人道上の悲劇を防止するためにやむを得ずとられた措置であったと理解をしているところであります。
 我が国はNATOの当該の行動の当事者でないということに加えまして、作戦名を含みますNATOの軍事行動に関しまして詳細な情報を有していないため、武力行使の法的根拠等につきまして確たる見解をお示しするということにつきましては困難であるというふうに考えております。
○高良鉄美君 これ、触れたのは、ウクライナ、ロシアの問題に関連するのでやっているわけですけれども。
 先ほど、安倍元総理のお話の中で、それと同じようなことをロシアは受けるということを考えたんじゃないか、受けるというのはむしろ支持されるというんですね。これが、ミンスク合意というのがありますけれども、これはもう言うまでもありませんけれども、要するに、ウクライナ東部というのは、もう既にウクライナ軍と東部の親ロシア派の武装勢力がずうっと争ってきたわけですよね。そこで、これはいかぬということで、ベラルーシのミンスクで平和のためのということで、この親ロ武装勢力とウクライナ軍による戦闘を停止するように、そして、この地域、今のドンバス地域の特別な地位を与える立法措置を講じるということをウクライナと合意したわけです。
 ウクライナの侵攻直前、二〇二二年二月ですけれども、プーチン大統領は、ミンスク合意はロシアがウクライナ東部の親ロシア派二地域の独立を承認するよりはるか前にロシア側ではなくウクライナ側が放棄したと非難して、ミンスク合意はもはや存在せず、履行するべきことは何も残っていないということでありました。
 ちなみに、二〇一六年四月、当時の安倍総理は、訪日したウクライナのポロシェンコ大統領に対し、ミンスク合意の完全な履行を働きかけていた。
 上川大臣に伺います。
 ミンスク合意は法の支配に言う法に該当していたと理解してよろしいでしょうか。
○政府参考人(中村仁威君) 委員にお答えいたします。
 今、ミンスク合意に言及をいただきました。ミンスク合意は、二〇一五年の二月にロシア、ウクライナなどが署名をしたウクライナ東部の問題の解決に向けた文書の総称であるというふうに認識をしております。
 ロシアによるウクライナ侵略の前、我が国は、全ての当事者、これはロシアもウクライナも含みます、全ての当事者がこれらの文書を完全に履行することの重要性を指摘をしてまいりました。先ほど、二〇一六年の日・ウクライナ首脳会談、そこも御言及いただきましたが、そこの場も含めてでございます。
 しかし、ウクライナ、ロシア双方とも互いにこの合意の不履行を批判をし合っていたというのが実態であったと認識をしております。
○高良鉄美君 その当事者というか参加国は、ドイツとフランスがいました。このドイツの元、前首相ですかね、メルケル首相、前首相は、ミンスク合意というのはウクライナに時間を与えるための試みだったと。また、ウクライナをより強くするためにその時間を利用したと。プーチン大統領は、これ時間稼ぎだったのかということで、相当失望したということがありました。そういった意味では、だまされたというふうに思っているという部分があるかと思います。
 ここで、やっぱり価値観を共有するといったときに、国際約束であるこのミンスク合意を時間稼ぎのために結んだというようなことをする国は、日本と価値観を共有する国と考えられるでしょうか。
○委員長(小野田紀美君) 申合せの時間来ておりますので、おまとめください。
○高良鉄美君 はい。
 じゃ、もう質問終わりまして、やはり今言ったのは、これ、やっぱり国際的な二重基準がいろいろな形で今、世の中現れてきているんじゃないかということで、日本が今どう見られているかということをしっかりまた、外務省そして防衛省も含めて対応していただけたらと思います。
 質問終わります。